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小道をぬけて




「それって運命なんじゃない??」


三つ編みお下げの親友、
西野めぐみ。

いつもの様に図書館から借りた本を読みながら、私の問いかけに答える。
彼女は本が大好きでよく物語を書いている。
その事を知っているのは私だけで唯一の親友であり、よき相談相手。
小中高と一緒に過ごしているので一番話しやすいし、私の尊敬する子でもあるが……

……たまにちょいとおかしい。
それは本人には言わない。
だって天然な子なんだもん。


『運命……ねぇ』

「じゃなかったらなんだっていうの?」

めぐみは本を閉じるや否や両手を握りしめ、空想を膨らませはじめる。
本のタイトルを見ると童話の“不思議の国のアリス”。

アリスも夢を見ていたんだっけ。
でもあのお話は私みたいに何度も見ない夢のお話で、運命の出会いというより大切な何かをって感じじゃなかった?

ストーリーを思い出そうとはしてみたが、
ちゃんと出てこなかった。

「でもさー。
もしも運命で本当にその場所があったら行ってみたいでしょ?」


そう、行ってはみたい。

ずっと見てきた夢だし
なんとなく気になってもきている。

本当にあの小道と花畑に、
あの子がいるのなら…………。


『……まぁ、、その場所があればって話だけどね』


現実を言ってしまえば夢なのだと。
思い込んでは見るものの、もしもなんて考えるんだ。










帰るとリビングから話し声。
いつもより早く両親が帰ってきていた。

ゆっくりとコーヒーを飲みながら、なにか見ていて私に気づいたふたりはおかえりと言って手招きをしてきた。

「ねぇ、紗枝ちゃん。ここ綺麗だと思わない??」

母が見せてきたパンフレット。
そこには綺麗なマンションと自然に囲まれた場所、入居者募集の文字。
私は何が何だか分からず、2人のことを見つめる。
隣同士に座っている両親はそんな私の反応に嬉しそうに言うのだ。


「ここにな?引っ越すことになったんだ」


ん??今なんて?

引っ越すって……言った?


『え?ひ、っこす?』

「そうなの!綺麗でしょー?」

訳が分からない。
私は今両親の口から“引っ越す”という単語を聞いて、どうしてそうなったのか検討ができていない。


『どうして、引っ越すの?』

私の問いに答えたのは父。
先月発表した企画が審査に通りその企画の責任者に任命されたという。
企画場所が今の住んでるとこではなく県外になるため、引っ越すんだとか。

「綺麗よねーここで3人で暮らすのよ?」

『暮らすって……私、学校は?』

「申し訳ないんだが転校する」

『……転校って、そんな』


聞いてないよ。
それにとっさすぎて頭が追いついてない。
転校って事はめぐみに会えなくなるし、話だって一緒にごはんもできなくなるってことだよね。

(そんな……)

だけど、お父さんもお母さんも嬉しそうで私には反論も何もできず、受け入れる事にした。


『おめでとう、お父さん』


にこりとした父を見て、私は部屋に向かった。
階段を上る一段一段の足取りがいつも以上に重く、部屋に入るは否や制服のままベットへ倒れ込んだのだった。



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