小道をぬけて
『……また夢……』
アラーム音で起きた私は
いつも見る夢から毎朝覚める。
あの小さな子は誰なんだろう、
どうしてあの場にいるのか、
なにをしていたのか。
そして夢は現実の記憶?
それとも……単なる夢?
どちらにしても
私には覚えがないのだ。
あの小道も
風景も住んだことの無い場所なのだから。
『はぁ……』
ため息をつくなり
起き上がる私はそんなことを考えながら
洗面所へ移動する。
きっちりと並んだ化粧品の棚。
鏡に映った寝起きの自分を見るなり
前髪を上げ、顔を洗う。
冷たい水が寝起きの私を起こしてくれる。
歯磨きをしながら
また考えたりもする。
(気になっちゃうんだよなぁ……夢)
制服に着替え
リビングへ行くとキッチンに母。
テーブルには父が座り新聞を読んでいた。
『おはよう』
2人に声かけると
優しい表情で返事を返してくれる。
「おはよう、紗枝」
「おはよう、紗枝ちゃん」
手際のいい母はさっと料理をテーブルに並べる。
温かいスープ、
手作りのドレッシングをかけたサラダ、
私の大好きなトーストに紅茶。
毎朝の楽しみでもある朝食は
今日も美味しそうで、元気になれる。
『いただきます!』
*
電車に揺れながらいつもの様に景色を眺める。
ビルが建ち並び、走り去っていく何も変わらない景色。
変わるのは乗り降りする人たちと駅と流れる駅内の音楽のみ。
大して面白みもない日常に私はただ最寄りの駅まで乗る。
友達通しで話したり、仕事前に書類確認してる人、
親子で乗ってる人、ご年配の夫婦。
沢山の人がいつもの様に変わらぬ時間を過ごしている中、
私はまたもや夢のことを考える。
この都会での生活は好きな方で、鬱陶しいとも思わない。
だけどあの場所はどこにあるのかな。なんて。
『…もしもあるなら……見てみたいけど』
そんなことを口に出していた。
*