3期
第 17 話 『光と共に④』
繁華街を抜け、闇の広がる小路をカオルは1人歩いていた。
そこへ辿り着いたのは無意識の行動だったのだろうか、回想からハッと我に返ると、いつの間にか古めかしい家屋の前に立ち止まっていた。
カオルがそれをすっと見上げる。
(なぜ俺はここへ来た……?苦しむだけだというのに……)
もう二度と来るつもりのなかった場所に再び足を運んだ自分の心理を理解できず、苦悶の表情を浮かべ、奥歯をぎりっと噛みしめた。
「カオル……」
暗闇の小路に、突然の呼び声が響き渡り、途端にカオルは警戒心を露わにした。
思い出に気を取られていたせいか、人の気配に全く気が付かなかった自分に舌打ちをする。
ぬっと大きな影が闇から現れ、ゆっくりとカオルに近づく。
月明かりで顔を認識すると、カオルは目を見開いた。
同時に全身からたぎらせていた警戒心も自然と解ける。
「……ベル?」
何故お前がここに?と言いたげな表情をするカオルを見て、ベルは頭をポリポリと掻き、苦笑いを浮かべた。
「その、街を歩いてたらカオルを見かけて、突然この通りに入っていったから何だか気になって……迷惑だったなら謝るよ」
「いや……」
カオルはそう一言返すと、口を閉ざした。
辺りを包み込む静寂と闇。
その空気が何となく重々しく感じられ、居たたまれなくなったベルが話題を振る。
「そ、そういえばさ!カオルはこんな所で何をしてたんだい?それに、この古びた建物は一体……?」
「……ここは道場だ」
「道場?剣道とか柔道とかの練習するあの?」
「ああ。1年だけだが、ここで空手と合気道を教わっていた」
「へぇ……そうだったんだ。どうりでカオルが強い訳だよ」
サヴァイヴでのカオルの高い身体能力の根本を知り、ベルは納得の声を洩らした。
「でも、人の住んでいる気配が無いね。何ていうか、廃屋みたいな……」
「……だろうな。今はもう誰も住んでいない」
「じゃあ、カオルに合気道を教えていた人は……?」
その質問に、カオルが一瞬躊躇したようにベルには見えた。
それをひた隠す様なカオルの淡々とした声が、静寂と闇に包まれた小路に嫌に大きく響きわたる。
「……死んだ」
その一言を聞き、ベルの体がピクンと僅かに震えた。
「え……あ……ご、ごめん……」
「お前が謝る事じゃない。それに……元々俺には糾弾されこそすれ、謝られる資格なんてないしな」
ベルにはずっと引っ掛かっている事があった。
カオルは何かと自虐的な発言が多い様な気がしてならない。
ベル自身も、自分の性格にコンプレックスを抱いていた時期があったし、ハワードやシンゴの様に、自分に強い自信を持つ者を羨ましくも思っていた。
それでも、カオルほどに自分を嫌悪していた訳でもなかった。
カオルのそれは、謙遜にも自信喪失にも当てはまらない、全く異質のものの様に感じてならなかった。
『お前は〈呪い〉を信じるか?』
ふと、クリスマスパーティーの時にカオルが洩らしたフレーズが脳裏に蘇る。
普段から口数が少ないカオルだからこそ、ベルにはあの言葉がカオルの『叫び』に聞こえてならないのだ。
その直感に従うように、しばしの沈黙の後、ベルが
「カオル、1つ聞いてもいいかな?」
「……なんだ?」
「『呪い』って……一体何の事なんだい?」
「……覚えてたのか。忘れろ、と言ったのに」
「あんなインパクトのある言葉、忘れられる訳ないよ」
ベルの返答に、カオルは「それもそうか」と苦笑いを浮かべた。
そしてカオルの口から放たれた言葉は、ベルへ更なる衝撃を与える事となった。
「俺は……呪われているんだよ」
「呪い……ですか?」
アキラの口から語られるカオルの過去に静かに耳を傾けていたルナは、その奇怪な単語に怪訝な顔を向けた。
しかし、対するアキラは真剣そのものであった。
「バカバカしいと思う?……でもね、カオルはずっとそれに振り回されて生きてきたの」
少なくとも、ルナの知るカオルは、神仏や占術、霊などを否定する側の現実主義者である。
その為、『呪い』の存在をカオルが信じているとは、ルナにはどうしても納得できなかった。
「もちろん、祟りだとか、そういった超常現象的な意味ではないわ。生まれ持った体質……ってカオルは思っている」
「体質……?どういう事ですか?」
質門するルナから顔を逸らし、アキラがわずかに顔を歪ませる。
それでもゆっくりとした口調でルナの疑問に答えた。
「ルナちゃんは……カオルの本当の両親の事、聞いてる?」
「確か……カオルが生まれてすぐに亡くなったとか……」
遠慮がちに返答するルナに、アキラはコクリと頷いた。
「……カオルの家にね、強盗が侵入してきたの。運悪く居合わせたカオルの両親は……殺されたの」
ルナの体がビクッと震える。
それを押さえ込む様に膝の上で拳をギュッと握りしめ、その空色の瞳をアキラへと返した。
カオルを知ろうとするルナの意志を感じ取り、アキラは話を続けた。
「……まだ赤ちゃんだったカオルは無傷だったわ。カオルの本当の母親が……最期まで我が子の盾になるように、抱きしめて亡くなっていたって……そう聞いてるわ」
そこまで話すと、アキラは一度閉ざした。
どうしたのだろう、とルナがそっと目配せをすると、アキラは唇を噛みしめ、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。
「でも……その後にカオルを引き取った里親は、悪魔の様な人間だった……!!あろう事か、まだ幼かったカオルへその事実を嬉々として突きつけたの……!」
『知ってるかぁ?お前の両親はなぁ、強盗に殺されたんだってよぉ。しかもお前を庇ってって話じゃねぇか。お前がいなけりゃ、パパもママも死なずに済んだのになぁ。分かるか?お前は呪われているんだよ!周りを不幸にする疫病神だ!そんなお前を引き取ってやってんだ、感謝してもらわねぇとなぁ』
ルナは言葉を失った。
幼いカオルは、その発言にどれほど傷ついただろうか。
自分の存在が他者を不幸にすると告げられ、どれほど苦しんだろうか。
『時々思う……俺は何の為に生まれたんだろうって……もしかしたら俺はこの世に必要の無い人間なんじゃないかって…… 』
ソリア学祭の時に洩らしたあの言葉は、まさしくカオルの心の叫びに他ならなかったのだ。
「でもねルナちゃん。アキちゃんとレノに出会って、カオル君は少しずつ心を開いていったのは間違いないと思うの」
ずっと黙っていたカトレアが、それだけは分かって欲しい、とでも言いたげに口を挟む。
その考えにはルナも同調できた。
だからこそ、カオルが何故2人との間にいまだ壁を作っているのか分からなかった。
「……カオルは優しすぎるのよ。だから責任を他人に押しつける事もせず、1人で背負い込んで、結果自分を余計に追いつめちゃうの……。あの時もそうだったわ……」
脳裏に浮かぶ回想に胸を締め付けられる思いを抱きながら、アキラは話を再開した。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
カトレアの店を訪れた日から数日後、カオルは再びロカA2へ赴いた。
カオルが向かったのは、繁華街から続く小路に佇む道場であった。
虐待を受けながらも為す術の無かった当時の経験から、自分の身を守る手段を学習しなくては、という結論に至り、カオルは行動に移す決意をしたのであった。
彼を初めて目にした道場の師範はさぞ驚いた事であろう。
まだ5歳の子供が、保護者も連れずに「強くなりたい」とたった一言だけ添えてやってきたのだから。
単身乗り込んできたカオルに対し、師範は思わず尋ねてしまった。
「お父さんとお母さんは?」と。
それに対してのカオルは返答した。
「俺は孤児だ。親はいない」と。
月謝は両親の遺族年金から支払うと彼が申し出た時、師範は事情を察し、カオルを迎え入れた。
その日からカオルは、アキラとレノックスにその事実を告げること無くロカA2へ赴き、武術の習得に励んだ。
そしてそれから1年後、カオルは過去類を見ない速さで、眠っていた才能を開花させる事となった。
しかし一方で、6歳にしてその強さは群を抜いていた為に、組手の相手として釣り合う者はいなくなっていった。
生徒の中には何年も通い続け、厳しい練習に耐え、それでも試合で勝ち進めない者もいる。
そんな彼らの努力をあざ笑うかの様に、カオルの卓越した武術センスと身体能力は突如頭角を現してしまったのだ。
『才能』という越えられない壁を前に、心穏やかにいられる者などいはしない。
露骨なまでに漂う周囲からの強烈な嫉妬。
にも関わらず、逸材の発掘に唯一歓喜していた師範は、そんな周囲の感情に気付いていないかの様にカオルを囃し立てた。
その行為が、一層生徒達に不信感を与える結果となった。
同時に、師範は凡人の域を越えられない自分たちには目を掛けてくれないのだろう、と失望の念を抱いていき、彼らは次々と退会していった。
師範が自らの失態に気が付いた時には後の祭りであった。
残った生徒はカオルを含めたった数名にまで減少してしまい、経営困難となった道場は閉めざるを得なくなった。
そして、道場が潰れてから数日後、師範は首を吊り、自らの生涯を強制的に終わらせてしまった。
カオルが道場に通っていた事をアキラとレノックスが知ったのは、丁度その時であった。
普段のラフな黒服とは違う、正装に近い黒服を着て出かけようとする姿を見て疑問に思い、問い詰めたのだ。
始めは話すのを渋っていたカオルも、一向に引く気配のないアキラに折れ、それまでの事を白状した。
そして、今日は亡くなった師範の葬儀であったのだ。
話を聞いたアキラとレノックスは、顔を見合わせ小さく頷くと、カオルに少し待つよう伝え、急いで支度を始めた。
「何をしている?」
「もちろん私達も葬儀に出席するんだよ」
カオルの質問に、さも当然と言わんばかりの顔つきでレノックスは答えた。
「どういうつもりだ!?お前らには何の関係も……」
「『息子』が世話になったんだ。弔いくらいはさせてくれてもいいだろう?」
声を荒げて反発するカオルの言葉を遮り、レノックスはキッパリと答えた。
芯の通った様なその発言に、カオルは何も返答することは出来なかった。
師範の葬儀には、辞めていった生徒達の姿もあった。
彼らはカオルを一瞥するだけで、話しかける事は無かったものの、その視線には憎悪や悪意が含まれている様に感じられた。
ふと聞こえてきた内緒話がカオルの耳に入る。
「今までは楽しくやれてたのによ、カオルが来てからだせ?おかしくなり始めたのは」
「道場つぶれたのだって、ぶっちゃけカオルのせいだろ?カオルさえ来なけりゃ僕達が辞める事もなかったのにさ」
「それってつまり、先生が死んだのもカオルのせいじゃねぇ?」
「そういう事になるね」
そこまで話したところで、近くにカオルがいた事に気が付いた生徒達は、慌てた様子で顔を逸らし、その場から立ち去っていった。
その場に立ち尽くすカオルの背中を、レノックスとアキラが静かに見つめる。
何か言葉を掛けなくては、と必死に模索するも、適切な言葉が浮かばない。
何を言っても、気休めにすらならない虚言に過ぎない。
『カオルを絶対に傷つけない』
そう約束したはずなのに、何も守れてはいなかった。
(こんなんじゃ、『母親』って認めてもらえなくて当然よね……。私は命懸けでカオルを守った本当の母親の足下にも及ばない……)
感情を押し殺すかのように堅く結ばれたカオルの拳を見つめながら、アキラの心は深い深い負の泥沼に飲み込まれていった。
その日を境に、カオルは再び自分の殻へと閉じこもってしまった。
これにはアキラは相当堪えた。
今まで少しずつ築き上げてきた関係が一瞬で崩されてしまったショックによるダメージは想像以上に大きかった。
同時にカオルが家にいる時間も次第に減っていき、顔を合わせる頻度も大幅に少なくなっていった。
そんな苦痛の日々が続き、2年の月日が経過した。
ある日、カオル宛てに封のされた書類が届く。
カオル自身は不在であった為、配達員から受け取ったのはアキラであった。
大きな封筒に載っていた送り主の名がふと目に入り、アキラは思わず「え!?」と声をあげた。
その封筒には『宇宙飛行士訓練学校』の名称が記載されていた。
しかも端には『入学願書在中』の印も押されている。
カオルは宇宙飛行士になりたいのだろうか?
そう考えが浮かんだ途端、アキラは喜びの感情を抑えきれず、書類を抱きしめたまま涙を流した。
どんなきっかけだろうと構わない。
カオルが前へ進む為の目標を見つけた事が堪らなく嬉しかったのだ。
アキラは手で涙を拭うと、書類を携えてカオルの部屋へと向かった。
そっと扉を開ける。
初めてここへやってきた当初とほとんど変わっていない、生活感の無い質素な部屋。
その一方で、机の上には大学レベルの教材が積み重ねられ、勉強をしていた形跡が見て分かる。
もしかしたら、今までの2年間はずっと勉強に費やしてきたのかもしれない。
そう思えると、それまでの苦しみが報われたかのように感じられた。
(そっか……カオル頑張ってるのね)
アキラは小さく微笑むと、書類の入った封筒をそっと机の上に置き、部屋を後にした。
それから3ヶ月後、カオルは超難関と呼ばれる宇宙飛行士訓練学校の試験を見事パスし、宇宙飛行士への道の第一歩を踏み出したのであった。
しかし、それから4年後……
カオルに深い傷を残す事となった『あの事件』が起きるのであった。
自主退学する事を決断したカオルは、ロカA2へと帰還した。
その日は運悪くも『雨』の日であった。
傘を持ち合わせていなかったが、カオルは構わず雨に打たれながら久々のロカA2のメインストリートを彷徨う様に歩いていた。
しばらく進んだ所で、カオルは見覚えのある顔とすれ違った。
相手もカオルに気付き、歓喜の声をあげた。
「あ……カオル君!!帰って来たの!?うわぁ、懐かしいなぁ!!おっきくなったねぇ!」
傘を差したカトレアが驚きと喜びの混じった声でカオルに駆け寄る。
そしてカオルの肩に触れようとしたその時……
パシン
「……触るな」
触れようとするカトレアの手をカオルが払い除ける。
「カオル君……?」
冷たい視線で一瞥し、カオルは降り注ぐ雨の中を再び歩き出した。
カトレアは引き止める事も出来ず、その場に立ち尽くし、立ち去るカオルの背中を見つめていた。
その後すぐにカトレアはアキラとレノックスへ、カオルが帰ってきた旨の報告をメールした。
アキラとレノックスは家でカオルが帰って来るのを待ったが、いつまで経ってもカオルが帰って来る気配はなかった。
連絡を受けたカトレアは早急に2人の家へと赴いた。
あの時のカオルの様子は尋常では無かった。
もしかしたら、訓練学校で何かあったのではないか、という結論に至り、3人は学校へ問い合わせた。
「カオルの件で」と申し出ると、電話対応したのは校長であった。
校長から出た言葉は一言、「カオル君は自主退学されました」と。
それで納得出来るはずもなく、さらに深く校長へ追及した。
「一体何があったんですか?」
すると、校長はやや言い辛そうな表情を浮かべながらも、説明を始めた。
『事故が遭ったんですよ。うちの生徒が1人訓練中に亡くなったんです』
「事故?」
『カオル君と同乗したルイ君という生徒です。ルイ君は類稀(たぐいまれ)なる才能に恵まれた優秀な生徒でして、常に1位を獲得していたんですよ。カオル君も優秀ではありましたが、彼には一歩及ばなかったようです』
「……まさか、あなた方はカオルがライバルを蹴落とす為に事故を装って殺したとでも……?」
レノックスの声が低くなる。
「いえいえ、そこまでは。ただ周りがそう噂していましてね、カオル君とルイ君はルームメイトでありながら折り合いが良くなかったみたいですし。何より当事者のカオル君が何も言わないもので……それこそ否定もせず、といった様子で……」
「ふざけないで!!」
強烈な怒号が室内に、そして電話の向こう側にまでも響き渡る。
声を張り上げたのはカトレアであった。
普段滅多に怒る事のないカトレアが、この時ばかりは感情を剥き出しにして画面の向こうにいる校長へ詰め寄った。
「確かにカオル君は他人と関わる事をあまり得意としないわ!でも、そんな卑怯な真似をしてまで自分に利益を与えようとするような子じゃない!カオル君の事、何も知らない癖に勝手な事を言わないで!!」
カトレアは怒りに任せて電話を切った。
それから少し冷静になり、カトレアは「しまったぁ……」と反省を言葉を洩らした。
感情的になって一方的に電話を切ってしまった事が大人げなく恥ずかしく感じたのだろう。
しかし、アキラは目に涙を浮かべながらカトレアをギュッと抱きしめた。
「……ありがとう、カトレア。カオルの為に怒ってくれて……」
「アキちゃん……」
今この中で一番辛いのはアキラであるのに、自分が気を落としてどうするんだ、とカトレアは自らを鼓舞する。
「さ、早くカオル君を探しましょ」
カトレアに促され、アキラとレノックスは大きく頷いた。
カオルがいたのはカトレアのカフェ近くの公園であった。
3人がカオルに近寄ろうとすると、まるで威嚇するかの様に、カオルは全身から拒絶のオーラを発した。
思わず誰もがその場に立ち止まった。
「……何しに来た?」
「何って……迎えに来たのよ。ほら、一緒に帰りましょ?傘も差さないでそんな所にいたら、風邪をひいちゃうわよ」
アキラが優しく声を掛ける。
しかし、カオルから帰ってきたのは同様に拒絶の返答であった。
「もう……俺に関わるな!俺の近くにいると必ず不幸になる……!」
それはカオルが幼い頃から抱えていた闇そのもの。
かつての里親に掛けられた呪いの言葉が強烈な暗示となって、今もなおカオル自身を蝕んでいるのだ。
「まだ自分を疫病神だなんて思っているの?カオルはそんなんじゃ……」
「そうさ……疫病神どころじゃなかったんだ……人を死なせてるんだからな……俺は──」
周囲は嫌に静かで、雨音が耳障りなほどに空間一体に響き渡る。
「……カ……オル……」
絶望に満ちた顔で言葉を吐き捨てるカオルを見て、アキラがその場に座り込み泣き崩れる。
レノックスは震えるアキラの肩を優しく支えながら、神に恨みを抱いた。
(何故あの子がこれほどまでに苦しまなければならない!?これがもし神が決めた運命だというなら……これがもし本当に『呪い』だというなら……私は神を殺してでも運命をねじ曲げるぞ……!!禁忌を犯してでもその『呪い』を解くぞ……!!)
レノックスにそこまで言わしめるその言葉は、追い詰められたカオルの心そのものであった。
その時のカオルの言葉を、カオルの表情を、その場にいた3人は決して忘れはしないだろう。
『疫病神どころじゃなかったんだ……人を死なせてるんだからな……俺は──
俺は……死神だ……!!』
つづく