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2期

とある研究所のような施設に1人の少女が赴く。

身丈、相貌そうぼうなどから推定すると年齢はおよそ5、6歳といったところだろうか?

少女は着ている白いワンピースを翻しながら施設内を駆け巡り、目的の部屋へとたどり着いた。

自動ドアが開き、少女が室内へ入ると、そこには眼鏡を掛けた青年と数人の助手が忙しく動き回っていた。

眼鏡の青年が入室してきた少女の存在に気付く。

「やぁ、来てたんだ」

「こんにちは!お願いしてたの、できてる?」

「うん、調整は済んであるよ」

青年の返答を聞き、少女は嬉しそうにニコッと満面の笑みを浮かべ、とある装置へと近づいた。

「確認しておくけど、前に言った約束は覚えてるよね?」

青年は真剣な眼差しで少女へ問い掛ける。

「うん、大丈夫だよ!『あの世』だよね?」

少女は笑顔で物騒な言葉を口に出した。

(覚えやすい様に合言葉にしてみたけど……改めて聞くと縁起の悪い言葉だね……)

「……お願いだからその合言葉、パパとママの前では言わない様にね?」

「はーい!」

青年の意図を理解したのか否かは定かではないが、少女は元気よく返事をした。

「じゃあ、装置の中に入って」

青年の指示に従い、少女は怪しげな装置の中へと入った。

扉が自動で閉まり、少女は装置の中に閉じ込められた状況になる。

「準備はいい?」

「うん!いいよ!」

少女が装置の中で頷くのを確認すると、青年は起動スイッチを押した。

装置のてっぺんに伸びる2本のアンテナから高圧電流がほとばしり……

ドォン!!!

まるで雷鳴の様な轟音と共に閃光が室内を照らした。


青年と助手達はゆっくりと目を開ける。

起動停止した装置内をそっと覗くと、そこに先程の少女の姿は無かった。

「やりましたね!成功ですよ!」

助手達は歓声をあげ青年の功績を讃(たた)えるが、一方の青年は浮かない表情であった。

「まだ安心は出来ないよ。無事に帰って来てくれないと……あぁ、後が恐ろしい……」

青年がもしもの展開を想像し、体を震わせた。

「何でこんなの引き受けちゃったんだろ……」

「それは所長があの子の口車に乗せられるからでしょう?」

助手達に指摘され、青年は「うっ」と言葉を詰まらせた。

「あぁ、胃が痛くなってきた……お願いだから早く戻って来てぇ~!」

青年はキリキリと痛む腹を押さえ、消失した少女に切実に懇願するのであった。



第 12 話 『真夏の夜の夢①』



本日のロカA2の最高気温はおよそ28℃。

屋外を歩く者は皆その暑さに汗を流し、冷房を稼働させた屋内へ早々と入る。

衣服は夏仕様へと移行し、アイスやかき氷などの氷菓店は多くの客が列を作り大繁盛している。

ロカA2は夏色に染まっていた。


「ルナ~、まだかいな?」

チャコがカーテンの向こうにいるルナへ呼び掛ける。

「ち、ちょっと待ってよ!もう少しだから!」

チャコに急かされ、ルナが慌てた口調で返事をする。

「い、いいよ!」

その声と共にカーテンがシャッと音をたてて開いた。

「ど、どう……?」

ルナがおずおずとチャコに尋ねる。

「ええやん。よう似合っとるで」

チャコの目に映る現在のルナは、普段とは違う夏を感じさせる浴衣姿。

デザインは涼しげな水色に白い花柄。

それは水面に咲く儚くも美しい睡蓮の花をイメージさせる。

チャコの感想を聞き、ルナはホッとしたような表情をするも、どこか恥ずかしそうに体をモジモジさせていた。

ルナとチャコが現在いるのは繁華街にある百貨店内の呉服コーナー。

ルナがわざわざ浴衣の試着をしている理由、それは毎年この時期にある催しの為。

今日は年に一度の夏祭り。




炎天下の繁華街を、白いワンピースの少女がトボトボと歩く。

「……暑いよぉ」

容赦なく照りつける人工太陽の熱で、少女はバテ気味となっていた。

暑さに耐えきれず、丁度目に入った百貨店へと少女は逃げる様に入っていった。

「涼し~!」

店内の涼しい空気を肌に感じ、少女の気力が回復する。

「のど渇いたなぁ」

しかしお金など持っていない為、自販機でジュースを買う事も出来ない。

少女は周囲をキョロキョロと見回し、水飲み場を発見してそこへ駆け寄ると、水をがぶ飲みして喉を潤す。

その後はしばらく近くのベンチへ座り、ボーッと店内を眺めていた。

「おかーさん!おなかすいたー!」

「はいはい、じゃあ何か食べにいきましょ?」

そんな会話が耳に入り、視線を親子へと向けた。

その親子は幸せそうに手を繋いで歩いていた。

その後、何組かの親子を目にする度に、少女の表情が暗くなる。

「ママ……パパ……」

両親への思いを馳せ、今にも消え入りそうな声で少女はポツリと呟いた。




その日の晩、ルナ達は夏祭りが開催されている神社へ集結した。

普段の静寂な雰囲気とは一転して、祭り囃子が周辺へ響き渡る。

道に沿って多くの夜店が並び、多くの参拝客で賑わいを見せていた。

「相変わらず凄い人だな」

「ホントね。はぐれない様にしないと」

人混みを眺めながら呟くメノリにシャアラが頷く。

メノリもシャアラも浴衣姿をしており、普段とは違う雰囲気を漂わせていた。

「おっ!射的があるぞ!?ベル、来いよ!僕の腕前を見せてやる!」

言った側から、ハワードはベルの腕を引っ張り、射的の出店へと駆け出す。

「ハワード!!勝手に行くなと言っただろう!!」

メノリが怒鳴りながらハワードの後を追いかけた。

が、そこへ押し寄せてきた人の波に飲まれ、ルナ達は仲間達と散り散りになってしまった。


「あれ?みんなはどうしたんだ?」

「……はぐれちゃったみたいだね」

いまだ状況を把握せず射的の店にたどり着いたハワードに、ベルが苦笑いして答えた。


「シャアラ大丈夫か!?」

「え、えぇ……何とか」

人の波からようやく抜け出せたメノリとシャアラが、「ふぅ」と一息つく。

「……これではみんなを見つけるのは難しそうだな」

メノリの見解を聞き、シャアラはガックリと肩を落とした。


「はー、えらい目にあったなぁ」

「チャコはまだいいじゃないか。僕の足にしがみついていただけなんだし」

ゲンナリとした顔つきのチャコにシンゴが不平を洩らす。

「何言うとんねん!ウチかて、蹴られたり踏まれたり散々な目に遭ぅてたんやで!?」

「あーはいはい、わかりましたよ」

チャコの反論に、シンゴは手をひらひらと動かして、話し半分で聞いていた。




繁華街から少し外れた高台への道を、少女が俯きながら歩く。

静寂な闇夜が、不安を恐怖へと変貌させる。

ふと暗闇の中で、軽快な音が耳に入る。

音のする方へ視線を向けると、高台へ続く道に沿って灯りが点々と続いていた。

「あれ……何だろ?」

少女はその音と灯りの方へと歩み始めた。


たどり着いた灯りの正体は夜店の照明、軽快な音の正体は太鼓や笛の祭囃子。

「お祭り……?」

少女は小さな体で人混みの中をすり抜けてながら、キョロキョロと辺りを見回した。

店の前を通る度に流れてくる美味しそうな食べ物の匂いが鼻を刺激する。

少女は誘われる様に店へと足を運んだ。

「はい、まいどあり~」

少女が行き着いたのは、わたあめ屋。

売り子のおじさんが器用に割り箸へ糸状の飴を巻いていく。

少女はその動作をジーッと眺めていた。

「ママ~!わたあめ買って~!」

「はいはい。すみません、わたあめ1つ頂けます?」

「はいよ!どうぞ!」

わたあめを受け取り、上機嫌の少年は母親と手を繋いで祭りへと戻っていった。

「ママ~!パパ~!私も……」

途中まで言いかけ、少女は気付く。

いつも隣にいるはずの両親がいない事に……

自覚してしまった孤独感と寂寥感せきりょうかん

無駄だと理解しながら周囲を見渡すも、視界に入るのは見知らぬ人、人、人……

「あ……あ……」

5歳程の子供ともなれば、それらに対する恐怖の度合いは計り知れない。

少女の感情が大粒の涙となって一気に溢れ出る。

「うぁあぁぁあん!!」

店の前で突然泣き出した少女に驚き、売り子が慌てた様子で話し掛ける。

「ど、どうしたんだい嬢ちゃん!?」

「うぁあぁぁぁあん!!」

「えーと……パパとママはどうしたんだい!?」

「うぁあぁぁぁあん!!」

売り子があたふたしながら尋ねる質問にも、少女はただ泣き叫ぶばかり。

「参ったなぁ……」

売り子は頭をガリガリと掻いて困り果てた。




「みんないないなぁ」

ルナがはぐれた仲間達を探して周囲を見渡す。

「カオル、そっちはどう?」

同様に後ろで周囲を見渡すカオルへ、ルナが声を掛ける。

「いや、今のところは」

カオルが静かに首を横に振る。

「そっかぁ……でもこうしてみると、あの時カオルが近くにいてくれてホントに助かったわ」

人の波に呑まれそうになったルナの手を、カオルが寸での所で掴んでくれたお陰で、ルナは1人はぐれずに済んだ。

「カオル、ありがとう」

「いや、気にするな……ん?」

カオルが何かに反応する仕草を見せる。

「どうしたの?」

「……泣き声が聞こえる」

「泣き声?」

ルナが耳をすませてみるも、祭り囃子や歩く人の会話が優先的に入り込み、カオルの言う『泣き声』を聞き取る事が出来なかった。

「私にはよく聞こえないけど……カオルには聞こえたのね?」

「あぁ。たぶん子供だと思う」

カオルの感覚が人並みはずれている事をルナはよく知っている。

だからこういう時は、自分よりもカオルの感覚を信じる事にしている。

「どっち?」

「あっちだ」

「行ってみましょ!」

カオルが指差す方向を確認し、ルナはそちらへ向かおうとする。

「ベル達を探さなくていいのか?」

「そうだけど……ほっとけないじゃない?」

「もしかしたら駄々こねて泣いてるだけかもしれないぞ?」

「それならそれでいいじゃない。心置きなくみんなを探せるわ」

ルナはウィンクして走り出した。

カオルは、そんなルナに苦笑いしながらその背中を追った。


「うぁあぁぁぁあん!!」

「頼むから泣き止んでくれよぉ……」

いまだ泣き止まない少女に売り子はお手上げ状態となっていた。

「どうしたんですか?」

そんな声を掛けられ、売り子が顔を向けると、そこに立っていたのはオレンジ色の髪の少女と黒髪の少年の姿。

「あ、いや、この子が突然泣き出しちゃってねぇ、親御さんの姿が見えないからたぶん迷子だと思うんだけど……」

売り子から事情を聞き、ルナは前屈みになって少女に優しく微笑みかけた。

「どうしたの?」

ルナの声を聞くと、不思議と少女は泣き止んだ。

まだ涙を流し、しゃくり上げて肩を上下させてはいるものの、その瞳はしっかりとルナを見つめていた。

そして、少女はルナの腰に腕を回して抱きついた。

「え……?」

ルナは戸惑いつつも、抱きつく少女を受け入れ、優しくその頭を撫でた。

「君、悪いんだけどその子の事を任せちゃってもいいかな?俺そろそろ仕事に戻らないといけないし、その子君に懐いてるみたいだしね」

「あ、はい。いいですよ」

ルナが頷くのを確認すると、売り子は「ありがとよ」と礼を言って持ち場へ戻って行った。

「その子はルナの知っている子なのか?」

「ううん。でも、きっと心細かったのね」

ルナは微笑んで抱きつく少女を見下ろした。

「あなた、お名前は?」

「……イヴ」

少女は埋めていた顔を上げて名乗った。

「イヴっていうんだ?いい名前ね」

「うん。パパとママが付けてくれたの。私、この名前大好きなの」

「そっかそっか、イヴはパパとママが大好きなんだね?」

「うん!」

その時、少女──イヴは初めて笑顔を見せた。


カオルは2人のやり取りを見て、ルナの対応に感服した。

アダムの時もそうであったが、ルナは子供を笑顔にさせるのが上手い。

母性本能の目覚めとも言えるが、そう言い切るには勿体ない。

それは一種の才能とも言える。

もし惑星開拓技士を目指していなかったら、教師か保育士なんかに向いているのかもしれない、とカオルは密かに思うのであった。

「じゃあ今日はパパとママと一緒に来たの?」

次のルナの質問に、イヴの表情が少しだけ暗くなる。

「えっとね……『こっち』には来てないの」

「……『こっち』?」

イヴの妙な言い回しにルナは首を傾げた。

グゥゥゥ……

ルナが聞き返そうとした所で、少女の腹の虫が大きく鳴いた。

「お腹、空いてるの?」

イヴはコクリと頷いた。

「何か食べる?」

イヴは再びコクリと頷いた。

「何が食べたい?」

「フランクフルトが食べたい」

「俺が買ってくるから、ルナはこの子とここで待ってろ」

イヴの要望を聞き入れ、カオルが買いに行こうとすると、イヴはルナから離れ、今度はカオルに後ろからギュッと抱きついた。

「……どうした?」

「一緒に行く。置いてかないで」

少女のすがる様な眼差しを受け、カオルは困惑してルナへ助けを求める様な視線を送った。

ルナはカオルの珍しい様子にクスッと笑みを洩らして「私も一緒に行くわ」と答えた。

「……わかった。はぐれるなよ?」

「うん!」

イヴは再び笑顔を見せると、カオルの手をギュッと握った。


「ルナ」

ご所望のフランクフルトを美味しそうに頬張るイヴを間に挟む形で、カオルがルナに話し掛ける。

「これからどうするつもりだ?」

カオルが聞いているのはもちろんイヴの件である。

「そうね……少し考えたのは、こんなちっちゃい子がこんな夜にいなくなってたら、この子の親もきっと今頃探してるんじゃないかって思うの。もしかしたら捜索願いが届けられてるかもしれないし、一度警察に行った方がいいかもって」

「……妥当な所か」

カオルの反応にルナは首を傾げた。

「どうかしたの?」

「いや……とりあえずはルナの案でいこう」

カオルはルナの提案に賛同するも、ルナはしっくり来ない気分であった。




「…………え?」

交番へ出向いたルナは、そこで衝撃的な事実を知らされた。

「うーん……やっぱり女の子の捜索願いは出てないなぁ。それに……『イヴ』っていう名前の子供は、ロカA2にはいないみたいだよ?その子は一体どこから来たんだい?」

警官の言葉を聞き、ルナは声が出せなかった。

(ロカA2に……イヴが存在しない……!?どういう事!?)

ルナは先程のイヴの言葉を思い出す。


『じゃあ今日はパパとママと一緒に来たの?』

『えっとね……《こっち》には来てないの』


あの時の『こっち』とは夏祭りの事ではなく、ロカA2の事なのだろうか?

ルナの中に次々と疑惑が生まれる。

宇宙船に乗船する際、小学生以下は必ず保護者同伴でなくてはならない。

イヴはどうやってロカA2へ来たのか?

何故両親は来ないのか?

そして仮に来れる方法があったとして、何の目的でロカA2へ来たのか?

ルナは不安げな表情で、隣で手をギュッと握るイヴに視線を落とした。


ひとまずルナとカオルは神社へ戻る事にした。

先程から、カオルの携帯へハワードからの電話が嫌がらせの様に掛かってきていた。

不在着信が約30件。

31件目でようやくカオルが出ると、ハワードが泣きそうな声で「遅ェよ!」と叫んでいたという。

神社の鳥居前に改めて集合する事に決め、ルナとカオルはイヴを連れてその道中にいた。

ルナは交番を後にしてからずっと元気が無かった。

イヴの件がショックだったのかもしれない。

「イヴ」

カオルが手を繋いで歩くイヴに声を掛ける。

イヴはあくびをし、少し眠そうな顔つきであった。

「……眠いのか?」

「……うん」

小さくそう答えるイヴの頭は既にコックリコックリしていた。

カオルは溜息をつき、体を屈ませ背中をイヴへと向けた。

「乗れ」

促されるまま、イヴはカオルの首に腕を回し、負ぶさった。

その後すぐにカオルの耳元に寝息が届いた。

「……限界だったみたいだな」

「……そうね」

ルナも小さく頷いた。

カオルの背中で眠るイヴはとても気持ちよさそうな寝顔をしていた。

それを見ているうちに、不思議と心が温かくなる気分となった。

先程の暗いな気持ちが少しずつ晴れていく様な気分である。

イヴの寝顔を見つめ、その時ルナの中に1つの決意が生まれた。




ルナとカオルが鳥居前に到着した頃には、仲間達は既に全員集結していた。

「一体どこまで行ってたんだ?……って、その背中の子供は誰だカオル?」

メノリが怪訝そうにカオルを見つめる。

ルナはこれまでの経緯とイヴの事を皆に説明した。

「ふむ……何とも奇妙な話だな。両親もいない上に、コロニーにも戸籍が無いとは……」

メノリが腕を組んで考え込む。

「で、とりあえず連れて来たみたいやけど、その子どうするつもりなん?」

「その事なんだけどね……私の家でしばらくは預かろうと思うの」

「はぁ!?ルナお前、マジで言ってるのか!?」

ハワードがルナの決意を聞き、驚きの声をあげる。

「もしかしたらイヴを探しに両親がここへ来るかもしれないし……でもその間イヴを放っておく訳にもいかないじゃない?だからせめて両親が迎えに来るまで、生活する所は必要だと思うの」

「ルナ……本当に大丈夫なの?」

シャアラはルナへ心配そうな眼差しを向けた。

単身生活を送る中学生の身で、子供を1人養う事は経験が無くとも大変である事は容易に想像が出来る。

シャアラはいつかルナが潰れてしまうのでは?という不安感を抱いてしまっていた。

「ルナなら問題ないだろ」

シャアラの不安感を払拭する様に、そう口に出したのはカオルだった。

「ルナにはアダムの時の経験もあるし、何よりイヴはルナといる時に一番笑顔になる」

「カオル……」

自分の考えに賛同してくれるカオルの言葉を聞き、ルナは頬を少し赤く染めながらはにかんだ。

「……そうだね。ルナならきっといい母親代わりになれるよ」

ベルもいつもの笑顔を向けて同意した。

「せやな!いざという時にはウチもいるしな!」

家族であるチャコからも許しが出る。

ルナは皆に「ありがとう」と礼を言い、カオルの背中でスヤスヤ眠るイヴに視線を向けた。

「イヴ……あなたの笑顔、私が必ず守るから」

ルナはそう誓いを口に出して、イヴの頭を優しく撫でた。

夢の中にいるイヴはそれに呼応する様に、にへらと幸せそうな笑みを浮かべた。

つづく
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