このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

答え合わせの夜

どこまでが、あの人の計算だったのか。

──それは、分からない。

“髪を伸ばしてみるといい”と、そう言われた。
伸ばした。
いつしか背に届く長さになった。

けれど、それで視界に入れたのかどうか。
“彼がそういうのを好む”と、誰かが言ったから。
その“誰か”に、私は選ばれたのか。

──それも、分からない。

「君は……今、失くすには惜しいな」

あの言葉。
あの目。
あの背筋の真っ直ぐな白衣の男が放ったそれは、
“命を見極める側”の声だった。

それが、その瞬間だけの気まぐれだったのか
それとも、いまもまだ私はどこかの“計算上の地点”に置かれているのか

──分からない。

けれど。

分からないことばかりでも、
それでも、私にできることは、たったひとつしかない。

今日も、“いい人”として生きること。

怒りに支配されないように。
悲しみに浸りきらないように。
誰かのために、過去を視る。
誰かのために、今日を選ぶ。

織田作さんが目指した背中を、
太宰さんがいま、ようやく見ようとしている未来を、
私も、“救う側の人間”として進みたいと願う。

だから、今日も私は仕事に向かう。
静かに、まっすぐに。

それが、私に残された選択肢の中で、
一番まっとうな“意志”の示し方だから。
2/2ページ
スキ