扉はひらかれた
最近、太宰さんはよく部屋に来るようになった。
と言っても、決まった時間に来るわけではない。
仕事の帰りだったり、ふとした夕方だったり、
気づけば、窓からひょっこり顔を出していた。
「やあ、今日の夕飯は何かな?」
「太宰さん、それ不法侵入って知ってます?」
「だって鍵、かかってたし」
「……だからですよ」
そんなやり取りが、当たり前のようになっていた。
一緒にご飯を食べる。
お茶を飲みながら、くだらない話をする。
テレビを見ながら、他愛もない冗談を交わす。
彼は何も求めてこない。
私も、何もはっきりさせようとはしない。
けれどその空気は心地よくて、
どこか、“織田作さんが見ていたかった未来”のようでもあった。
同僚以上、恋人未満。
けれど確かに、ただの友人ではない。
そんな曖昧な距離。
ある夜、いつものように窓を開けて入ってこようとする太宰さんに、
私は溜息混じりに言った。
「……太宰さん」
「ん?」
「窓から入ってくるの、そろそろやめてくれませんか?」
彼は、片足を窓枠に乗せたまま、きょとんとした顔でこちらを見た。
「だって、合鍵なんてもらってないし」
私は言葉もなく、静かに立ち上がると、
玄関の小さな鍵をひとつ──差し出した。
「……じゃあ、今渡します」
一瞬、太宰さんの表情が止まった。
そして、ふっと笑う。
「……ありがとう、莉緒」
「……どういたしまして。鍵は貸すだけですから、悪用したら回収します」
「ええ、真面目な“事務員”さんに怒られるのは嫌ですからね」
くすくすと笑い合って、
それでもふたりとも、どこか顔を逸らした。
あたたかい一夜の始まりだった。
と言っても、決まった時間に来るわけではない。
仕事の帰りだったり、ふとした夕方だったり、
気づけば、窓からひょっこり顔を出していた。
「やあ、今日の夕飯は何かな?」
「太宰さん、それ不法侵入って知ってます?」
「だって鍵、かかってたし」
「……だからですよ」
そんなやり取りが、当たり前のようになっていた。
一緒にご飯を食べる。
お茶を飲みながら、くだらない話をする。
テレビを見ながら、他愛もない冗談を交わす。
彼は何も求めてこない。
私も、何もはっきりさせようとはしない。
けれどその空気は心地よくて、
どこか、“織田作さんが見ていたかった未来”のようでもあった。
同僚以上、恋人未満。
けれど確かに、ただの友人ではない。
そんな曖昧な距離。
ある夜、いつものように窓を開けて入ってこようとする太宰さんに、
私は溜息混じりに言った。
「……太宰さん」
「ん?」
「窓から入ってくるの、そろそろやめてくれませんか?」
彼は、片足を窓枠に乗せたまま、きょとんとした顔でこちらを見た。
「だって、合鍵なんてもらってないし」
私は言葉もなく、静かに立ち上がると、
玄関の小さな鍵をひとつ──差し出した。
「……じゃあ、今渡します」
一瞬、太宰さんの表情が止まった。
そして、ふっと笑う。
「……ありがとう、莉緒」
「……どういたしまして。鍵は貸すだけですから、悪用したら回収します」
「ええ、真面目な“事務員”さんに怒られるのは嫌ですからね」
くすくすと笑い合って、
それでもふたりとも、どこか顔を逸らした。
あたたかい一夜の始まりだった。
