願いと祈り
──アンドレ・ジイド。
その名を、私は後になって知った。
織田作之助と同じ異能。
わずか数秒先の未来を視る能力。
それは、避けるためでも、逃げるためでもない。
“確実に殺すため”の予知。
(同じ能力で……力量に大差がないなら)
私の中で、ひとつの結論が冷たく弾けた。
(相打ちしか、成立しないじゃない……)
空気が、鋭く張り詰めていた。
崩れかけた洋館の奥、広間。
埃舞う石床の上で、ふたりの男が向かい合っていた。
ひとりは、私の知る人。
優しさと静けさを身にまとった、かつての“殺さない殺し屋”。
そして、もうひとり。
死の匂いを纏った異国の男。
静かに笑いながら銃を構えるその目には、未来が映っていた。
──ふたりとも、“未来を視ていた”。
だからこそ。
相手の行動が、互いに読める。
数秒先が見えるということは、相手の視線の先にも同じ“予測”があるということ。
それはまるで──洗練された舞だった。
一発、また一発。
誰も無駄撃ちをしない。
一切の虚勢も、怒りもなく、ただ淡々と命を削る音が続いた。
弾丸が弾丸を打ち落とし、
予測と現実が交差し、
静寂が、何度も断ち切られる。
私はただ、異能の中でそれを“視る”ことしかできなかった。
(これが──殺し合い)
いや、違う。
これは、“誇りの奪い合い”だった。
そして──終わりは、訪れた。
ジイドが、静かに、満足そうに笑う。
「……作之助。最後まで……素晴らしい弾丸だ」
その言葉とともに、彼の身体が倒れる。
重たい音。
そしてすぐ、織田作さんも倒れた。
血が滲む。
床を濡らす紅が広がっていく。
(……ああ)
(もう、戻れない)
(本当に──お別れなんだ)
その名を、私は後になって知った。
織田作之助と同じ異能。
わずか数秒先の未来を視る能力。
それは、避けるためでも、逃げるためでもない。
“確実に殺すため”の予知。
(同じ能力で……力量に大差がないなら)
私の中で、ひとつの結論が冷たく弾けた。
(相打ちしか、成立しないじゃない……)
空気が、鋭く張り詰めていた。
崩れかけた洋館の奥、広間。
埃舞う石床の上で、ふたりの男が向かい合っていた。
ひとりは、私の知る人。
優しさと静けさを身にまとった、かつての“殺さない殺し屋”。
そして、もうひとり。
死の匂いを纏った異国の男。
静かに笑いながら銃を構えるその目には、未来が映っていた。
──ふたりとも、“未来を視ていた”。
だからこそ。
相手の行動が、互いに読める。
数秒先が見えるということは、相手の視線の先にも同じ“予測”があるということ。
それはまるで──洗練された舞だった。
一発、また一発。
誰も無駄撃ちをしない。
一切の虚勢も、怒りもなく、ただ淡々と命を削る音が続いた。
弾丸が弾丸を打ち落とし、
予測と現実が交差し、
静寂が、何度も断ち切られる。
私はただ、異能の中でそれを“視る”ことしかできなかった。
(これが──殺し合い)
いや、違う。
これは、“誇りの奪い合い”だった。
そして──終わりは、訪れた。
ジイドが、静かに、満足そうに笑う。
「……作之助。最後まで……素晴らしい弾丸だ」
その言葉とともに、彼の身体が倒れる。
重たい音。
そしてすぐ、織田作さんも倒れた。
血が滲む。
床を濡らす紅が広がっていく。
(……ああ)
(もう、戻れない)
(本当に──お別れなんだ)
