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未来を視る瞳

そこから先は、私の知らない織田作さんだった。

いつも子どもたちに読み聞かせをしていた手。
私に紅茶の淹れ方を教えてくれた手。
無言で本を渡してくれた、あの静かな指先。

その手が、銃を構えた。

──人を殺さない殺し屋ではない。
今、私の目の前にいるのは、
人を殺す殺し屋だった。

その動きは、無駄がなかった。
狙いは正確で、躊躇は一切なかった。

それは──とても、美しかった。

古びた石畳の小道。
その先に見えるのは、崩れかけた洋館。

敵の拠点。

織田作さんは、音もなくその道を進み、
潜伏していた敵を、次々に“処理”していく。

一発で仕留める。
無駄に傷つけることはない。
苦しめず、叫ばせず、ただ一撃で終わらせる。

それでも、銃口の先にあった命は確かに消えていた。

私は、異能の中で彼の背を追っていた。

(……っ、もう少し……)

頭が割れるように痛い。
鼻から血が垂れるのがわかる。
視界が二重にぶれて、手足が痺れている。

これほどまでに異能を酷使したのは初めてだった。

(けれど──ここで止まるわけには、いかない)

彼が辿った最期を、私はこの目で見届けなければならない。

館内。

銃声が鳴り響く。

乾いた発砲音。弾ける壁。崩れる瓦礫。
視界の端で、敵の兵士たちがひとり、またひとりと崩れていく。

誰も、彼の動きに追いつけない。
誰も、止められない。

そして、次第に音は途切れた。

最後の一人が、倒れた。
織田作が銃を向ける。

──そのときだった。


血の滲む唇から、こんな言葉が流れてきた。

「……ありがとう……戦って……くれて……」

なぜ。
どうして、そんな言葉を。

思念が流れ込んでくる。

敵の感情。恐怖。絶望。
けれどその奥にある、戦場に立つ者としての“共鳴”。

(やめて……お願い……やめて……)

感情が溢れてくる。
彼らの痛みと、感謝と、死への安堵が混ざり合い、
私の中に流れ込む。

頭が割れる。胸が苦しい。息ができない。

(……もう、だめ……)

けれど彼は、先に進んでいた。

司令官がいるという、奥の部屋へ。

冷たい鉄の扉を、
躊躇なく蹴り開け、
織田作之助は、最後の戦場へと踏み込んでいった。

その背は、静かに、でも確実に“死”へ向かっていた。

そして私は、そこに手を伸ばすことしかできなかった。
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