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美しき夜の女神

会場は煌びやかな照明とグラスの音、やけにテンションの高い司会者の声で騒がしい。
探偵社からは社長、乱歩、与謝野の三名が参加。もともとは“地域企業との友好と交流”がテーマの堅めな集まり……の、はずだった。

けれどその夜、空気は一変する。

──与謝野晶子が、会場の空気を一口で飲んだ。

濃紺のドレス。
艶やかな脚にスリットが揺れ、グラスを持つ指先にまで気品と戦場の空気をまとう。

「どちらの女優さんですか?」
「いえ、あの方は……」
「えっ探偵……⁉」

驚きの波紋が広がるなか、与謝野先生は“いつもの笑顔”で淡々と受け流す。
ただ、その視線の先にいた軽薄な実業家が──

「女性はやっぱり、柔らかくて素直じゃなきゃね?」
と言ったその瞬間、

グラスが割れた音がした。
(※あくまで手元が滑っただけです。決して、誰かのシャツに飛んだワインで懇親会が地獄絵図になったわけではありません)

***

終盤、社長がしみじみと漏らす。

「まるで戦場だったな」
「え?懇親会ですよね?」と乱歩。
「会場の誰よりも強かったよ。いろんな意味で」
「…ああ、うん。見た目は夜の蝶、中身は戦場の砲台だったね」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
そう笑った与謝野先生の視線の先では、某企業の社長がすでに真顔で名刺を差し出していた。

翌日、社内に届いたアンケートの一文。
「あの美しい女性探偵さんを次回もぜひ」

社長、そっと溜息をついた──
「……与謝野がドレスを着たときは、敵に回すな」
と。
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