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花宴と経理と、桜と桃の妖精たち

――3月も半ばを過ぎた、年度末の探偵社。

「国木田さん……胃薬、半分こしません?」
「……まさか、君もか。いや、当たり前か」

机に積まれた経費伝票、領収証、契約書控え、そして何より、無言の圧を放つ“未処理フォルダ”。
朝から数字と文字と格闘する国木田と君。
社内で一番の几帳面コンビに、春の風は吹かない。

そんな中、ポン、と届いた新しい依頼書。
【潜入:チャイニーズマフィア/春の宴会場】
内容は“宴に紛れ込んで情報を引き出せ”という、まあよくあるパターン。

「太宰さん一人でも……いや、隙を作った方が進めやすいな」
ちらりと報告書を見ながら、君はぴんと閃いた。

「……うちには、かわいい女の子がいるじゃないか」


【作戦名:花宴の妖精たち】


ナオミ:桜をモチーフに、薄桃色のドレスに桜の刺繍をあしらったデザイン。髪も明るいピンクのウィッグにチェンジ。

鏡花:桃をイメージした、柔らかな桃色のチャイナドレス。流れるような袖に小さな花を編み込んで。
髪は淡い金桃色。儚げな透明感に「これは妖精」と全会一致。


太宰:満面の笑みで「妖精ちゃんと僕?優勝でしょ」と言っていたが、
準備完了後のナオミと鏡花を見て「え、なんか僕…添え物になってない?」としょんぼり。



【任務開始】



チャイニーズマフィアの春宴。
煌びやかな酒宴の中、突如現れた“人外のように美しい二輪の花”。

「……あれ、なんだ?」
「天女か……?」
「こっち見た、死ぬ……」

会場の空気が、二人に向けてごっそり吸われる。
太宰の任務など、5分で終了。
視線が逸れている間に情報を盗み、脅しの証拠を回収し、華麗に退場。

【探偵社】

夕方、事務所に戻った三人を迎えたのは――

ガリガリガリ……
唸りを上げるシュレッダーと、胃を押さえて沈んだ表情の国木田と君。


「任務完了しましたー!妖精おかわりいかがですかー!」


「……ナオミちゃん、はい。領収書ね」
「わ、きっちりしてる……」
「鏡花ちゃんは、これ。差額出たから戻しといて」

「えっ、もう経費精算済んでる……」

君は言った。


「私?今日は妖精の管理者よ。美しさで仕事して、数字で世界を回すのが私の仕事」

その笑顔に、ナオミと鏡花は尊敬のまなざしを向け、
太宰はこっそり言った。


「……やっぱり、君が一番魔性だよね」

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