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探偵社 美術館潜入任務記録

──そもそも。
サポートこそが主戦場である自分が、
なぜわざわざ“太宰治と潜入捜査”に行かねばならないのか。

いくら「夫婦役がハマる」と噂されていようと、
いくら太宰が「私たちが一番自然だよ」と言い張ろうと、

「だってあなたの方が向いてるじゃないですか」
「口も上手いし、人当たりも良い。私なんかより、よっぽど向いてる」

と、君は真顔で訴えた。

 

ところが太宰は、肩をすくめて少し笑って、
それでも――反論しなかった。

 

しばらく沈黙があって、
彼はふっと視線を落として言った。

「……うん、たしかに、私は得意だよ」
「嘘をつくことも、誰かを騙すことも。演技なんて、呼吸みたいなもんだ」
「でもさ、それを“本当に必要だと思える任務”でやれるのは、君が隣にいるときだけなんだ」

 

「……私が何を言っても信じられない人、たくさんいるよ。でも、君が隣にいると、
“この人と一緒にいる私”だけは、たぶん本当だなって、見抜かれる気がしてさ」

「だから、僕にとっての“真実の仮面”をつけるには、君が必要なの」

 

君が役者のように振る舞うのが得意ではないことも、
裏方に徹する性格であることも、太宰はちゃんと知っている。

それでも、隣にいてほしい。

それは必要だからではなく、欲しいから――。

「それにさ……君の“お芝居”って、いつもちょっと素直で、可愛いからね」
「私以外の人に見せるのは、やっぱり嫌なんだよ」

 

そう言って君の頬を指でなぞりながら、
太宰はゆるく微笑んだ。

 

「だから、今度の任務も一緒に行こう?」
「……大丈夫。何があっても守るから」
「演技でも、本気でも、君が隣にいれば、私は完璧になれる」

 

──つまりこれは、理屈じゃない。

“得意だから”でも、“必要だから”でもない。
「一緒にいたいから」。

それだけの理由で、今日も太宰治は君を隣に連れ出すのだった。
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