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探偵社 美術館潜入任務記録

【探偵社 美術館潜入任務記録】
― 夫婦設定:国木田独歩 × 君(事務員)―

 

薄く晴れた昼下がり、芸術の香り漂う郊外の美術館。
任務とはいえ、館内は静寂と美しさに満ちていた。
「ある収集家が闇取引の現場として使っている」という情報を元に、潜入調査が命じられた今回の任務。

 

「夫婦のフリ」で潜入というのが上からの指示であった。
当然ながら、太宰は「僕が行く」と言い張ったが、社長命令であえなく却下されている。

 

国木田は、冷静で優秀である。だが、色恋が絡むと急激にぎこちない。
特に、君のような“しっかりしすぎた女性”が隣に立つと、どうしてもペースを乱されるらしい。

 

「ほら、怖いお顔になっていますよ」
「そんな顔で見られたら、モナリザだって目を逸らしてしまいます」
「ねぇ、いつもみたいに……笑ってくださいな?」

 

そう優しく微笑む君に、
少しだけ顔を赤くして――国木田は、視線を外した。

 

「……ふ、普段、そんな顔をされることがないのでな……」
「……すまない、助かる」

 

彼女の服装は、清楚で品があり、目を惹く美しさ。
けれどそれは下品ではなく、まるで本当に国木田の“よくできた妻”に見えるほど自然だった。

 

任務中の会話はほとんどが冷静に交わされていたが、
警備員に話しかけられたときも、

「あら、うちの主人は照れ屋でして」
と自然に笑い、スムーズにやり過ごした。

 

まさにプロ。"任務ですから"の鏡である。

 

しかしこの話には、まだ裏がある。

後日――

 

【探偵社事務所】
太宰が、珍しく机に肘をつきながら静かに言った。

「へぇ……“モナリザも目を逸らす”ほどの微笑みを、国木田くんにねぇ」
「“笑ってくださいな”だって? ふぅん、随分優しいんだね、君」

 

明らかにトーンが低い。
だが、嫉妬というより“拗ねてる”様子。

 

「それで? 任務中は手、繋いだ? 腕は?肩くらいは、寄せたよね?」
「あ、気を遣って触れないようにしてくれたの? それとも、“そういう役作り”?」

 

隣では国木田がそっと距離を取っている。

 

「……依頼料が良かったので」と小声で言った君に、

太宰は肩をすくめ、微笑んだ。

「うん、わかってる。仕事だもんね……」
「……でもさ。私なら――依頼料なんていらない。君の“奥さんごっこ”ができるなら、それだけで幸せだよ?」

 

少しふてくされていたくせに、
やっぱり君の横顔を見ると甘くなる。

「……今夜、私の前でも言ってくれる? “笑ってくださいな”って」

「今度は“役”じゃなくて、“本物”としてね」

 

 

──やっぱり、君の笑顔は世界一だ。
モナリザも、ルーヴルから出てきてしまうかもしれない。
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