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チェリーハント

──午前0時。
煌びやかなライトの海に紛れる、真紅のドレスの女。
ガーターベルトに網タイツ、ヴェネチアンマスクで素顔を隠し、
まるで“欲望”を演じる役者のように、フロアの中央へと歩み出る。

探偵社の任務──
それは情報を引き出す潜入調査。
でも、ここまでしなくてはいけないの?と
一瞬でも思ってしまったのは、“恋する女”だから。

彼の前で、
誰よりも大胆で、誰よりも綺麗な“歌姫”になりたいと思ってしまった。




潜入任務:午前0時のステージ
「真紅と仮面のおあずけチェリー──歌姫は一夜限りの本音を歌う」


荒事は片づいた。
爆音の音楽と、酒と、視線と欲望が交錯する空間から
抜け出した先の、静かな仮設ステージ。

そこには、
赤いドレスのままマイクを持つ君と、
脚を組んで眺める太宰がふたりきり。

照明だけが優しく光を落とす。

君は、少しだけ恥ずかしそうに微笑んで、
それでも──大胆に、挑発するように歌い始める。

 

「さあドレスコードも恥らう午前0時──」
「フロアで絡み合う欲望と視線セブンスター──」

 

マイク越しの声は艶めいて、
リズムに合わせて揺れる腰、
真紅のドレスのスリットから覗く脚に、
太宰の視線が絡みつく。

**

「この恋がもっとカゲキでムジャキな快楽に堕ちるなら──
それもアリでしょ?」

**

そこで、君はマイクを外し、
片目を隠す仮面をゆっくり外す。

そして太宰の前に立ち、
まるで“役を脱ぎ捨てるように”、
素の声で囁く。

「……この続きは、アフターでお願い。
今夜くらい、私から誘わせて?」

 

太宰の口元が、ゆっくりと笑みに変わる。

「……ふふ、君
それ、プロの営業じゃなくて本音なら──
今夜のギャラ、命で払ってもいいくらいだよ?」

君が一瞬だけ視線を落とすと、
太宰は立ち上がって、
ステージの淵に腰掛けた君の脚を軽く撫でながら言う。

「本当の心、見せてほしいって言ってたけど、
僕にはもう全部バレてるよ。
“帰れないキスが欲しい”んだよね?」

君はもう、歌姫でも仮面の女でもない。

ただ太宰治のためだけに咲く、
誰よりも艶やかで、誰よりも愛おしい女。

 

「“おあずけチェリー”、今夜もおあずけだなんて言って──
ほんとは全部、俺にだけ許したいくせに」

静かな笑い声。
シンデレラの魔法はもう、解けない。

真夜中の任務は終わった。
でも、ここからが──

「君と彼の“アフター”」の始まり。


→「声をかけられなかった夜」
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