登校した朝
『モモ――』
優しくまるで大切な人を呼ぶように自分の耳に聞こえてくる。
いつもぶっきらぼうでどこか距離のあるのに、どうして今日はこんなに優しいのだろう。
それに目を開けたらそこには私の身体に覆い被さるようにタクトさんがいた。
「…タクトさん?」
一体これはどういう状況なんでしょう?
どう考えても答えが出ません。
それに今のタクトさんの表情も声も本来なら、春菜さんにしか向けられないものなのに今はこうして私に向いている。
まるで愛しい人に接するようで頬が赤くなっていく。
『可愛いよモモ』
ニッコリ笑いそっと頬にタクトさんの手が触れる。
もうこのままタクトさんに身を任せていいのではないのだろうか?
ここで私が勇気を出さなきゃダメじゃないですか!
タクトさん!
私の全てをアナタに――――――
▽▲▽▲▽▲
「……ふぇ?」
飛び起きて私の視界に入ったのは真っ白な天井。
カーテンの隙間から明るい陽がモモの顔を微かに照らす。
その日差しを視界に入れながらモモは寝癖を直し髪をかきあげる。
「……そりゃ夢ですよね」
小さく溜め息を吐き朦朧とした意識がハッキリしていく。
あのタクトさんが私にあんな風に接してくれる訳ない。
なんなら春菜さんに対してもそんな風に接するイメージも想像できない。
だけど改めて自覚してしまう。
私ってこんなにタクトさんの事を考えてるんだなーっと。
身体を起こし、とりあえずシャワーを浴びる事にしましょう。
少しはスッキリするでしょう。
「……そういえば」
タクトさんはもう起きているのでしょうか?
もうリビングにいるのかもしれないと部屋から出て扉を開けてリビングを覗くとそこには、
「目は覚めたようだな、モモ」
「おはようございます、タクトさん」
タクトさんはソファーに座りながらコーヒーを飲んでいた。
「あっ…」
私の視界にはタクトさんが用意してくれた朝ごはんがテーブルに並んでいた。
昨日の夜に引き続き朝まで用意してくれている。
「タクトさん、今日は学校へ行かれるんですか?」
「……今日はバイクでドライブの気分だから休むつもりだが」
「そうですか。じゃあ私も一緒に…」
「さて学校へ行くとするか」
さっさと用意してバイクのカギを手にしカバンを持ち出ていこうとしたタクトはマンションのカギの一本をモモに渡す。
「それ持ってろ。この部屋のカギは俺が持ってるやつと予備の一本しかないからな」
「いいんですか?」
「いいも何も一緒に住んでんだから渡さなきゃ困るだろ?」
それだけ口にして拓人は部屋を出ていくとバイクのある場所まで向かう。
そしてカギを受け取ったモモはしばらくカギを見つめていたが、
「………嬉しい」
カギを愛しそうに見つめしばらく余韻にひたっていた。
▽▲▽▲▽▲
「あ~ダルい」
バイクで学校に登校して屋上でガムを噛みながら溜め息を吐く拓人。
あのバレンタインから俺の日常は少しずつ変わってる気がする。
カイのやつはあれ以来この街から姿を消したと、ジェノスやシャオは言ってたが果たしてどこに消えたのやら?
春菜との仲は少しずつ昔のように戻っているが、今俺自身気を付けなきゃいけないのは同じマンションに住んでいるララの妹――
【モモ・べリア・デビルーク】である。
モモはララやナナと違ってどこか計算された何かを感じてしまう。
アイツが俺と住むと言ったとき、何かを決意したようにも見えたが――
「……んっ?」
ふと屋上の扉が開いて拓人は人の気配を感じて振り返るとそこにいたのは、
「やっぱりここにいたんだね、拓人くん」
「よく分かったな。……春菜」
拓人の幼馴染みであり拓人が最も優先する存在が拓人の後ろにいたのだ。
「おはよう拓人くん」
春菜はどこか嬉しそう笑いながら拓人の横に来ると、拓人の鼻に女の子特有の甘いニオイが入り頬を赤く染める。
「いいのか?今ってホームルーム中だろ?」
「拓人くんが登校してるってリサが言ってから呼びに来たの。一緒に教室に行こっ!」
「もう少ししたら行くから先に戻ってろよ」
「そういってサボるつぼりだよね?ダメだよ」
「………ったく」
ガシガシと頭をかいて小さく『敵わないな』と呟く。
あのバレンタインの日から春菜は二人っきりの時だけ頑固になっている気がする。
こうなると春菜は俺が動くまで絶対に動かないだろうな。
「……わかったよ。行けばいいんだろ」
「うん!」
何でそんなに嬉しそうに笑うかね?
本当にお前には敵わないよ春菜。
▽▲▽▲▽▲
拓人が教室に入ると中にいた生徒達は目を丸くする。
それもそのはずだ。
あの神谷拓人が朝から登校して教室にやってきたのだ。
一体何事かと教室内がざわついていると、
「あ~タクトだ~!」
「朝から元気だな~ララ」
リトの嫁でもあるララ・サタリン・デビルークがニコニコしながら近付いてきた。
その隣には夫のリトも「…夫でも旦那でもねぇ!」何故ばれた。
「珍しいな。拓人が朝から来るなんて」
「サボるとモモがついてきそうだったからな」
「あぁ……」
苦笑しながら大変そうだな~って思っているようだが、お前と美柑もその原因の一つだからな。
ララが許可したとはいえ少しは反対してくれてもよかったんだぞ。
「モモちゃん?」
事情を知っているリトと違い事情を知らない春菜は首を傾げる。
そういえばまだ春菜に伝えてなかったな。
何作るか考えて買い物してて料理もして、悪友から連絡きてたからすっかり忘れてたわ。
あ~ここで説明するとめんどくさいよな~。
拓人はどうするか悩んでいたが、ここにはそんなことなどお構い無しのララがいる。
つまり―――
「いやだな~タクト!ついてくるもなにもモモもこの学校に転入したんだから一緒に住んでるんだし一緒に来ればよかったのに~!」
来ればよかったのに~!
来ればよかったのに~!
ララの声が教室内に響き渡る。
『なぁぁぁにーーー!?』
ララの爆弾発言で2-Aに驚愕の声が上がる。
普段なら話し掛ける事すらしない拓人に詰め寄ろうとする者、どこから取り出したのか分からないが武器を手にしている者。
そんな状況で拓人は、
「モモのやつ転入してたのか。……って事はナナも一緒か?」
「何でお前はそんなに冷静なんだよ?」
「逆に言うがリト…」
「なんだよ?」
「遅かれ早かれバレるだろうしいいかなって…」
本当にお前はマイペースだよな拓人。
だけど気づいてんのかな?
西連寺が顔色真っ青にして固まっているんだけど。
「なによ神谷~。春菜という幼馴染みがいながら…」
「あん?何言ってんだよ。モモが俺と住んでようが、俺にとって誰よりも春菜の方がだ…………」
里紗が何やってんのよーと言いたげな顔をして近寄ってきたので、拓人は軽くあしらうように返したのだが、この時拓人は自らが犯した失態に気づく。
ここは教室で里紗が話しかけた時に教室は静まり返っていたのだ。
つまり今の拓人の言葉はバッチリ春菜だけじゃなく教室にいた者達全員に聞こえていた。
「「………ッ!?」」
それに気づいた拓人は顔を赤く染めて、その言葉を耳にした春菜もまた顔を真っ赤にする。
さらに二人はお互いバッチリ目が合うと同じタイミングで視線を逸らしてしまう。
「だってさ~春菜。よかったわね~」
「リ、リサ!?」
「よかったね~春菜!」
「ララさんまで!」
もはや拓人以上に真っ赤になっている春菜に対して拓人は顔を赤く染めたたまま里紗を睨み付ける。
普段の拓人の睨みなら恐ろしいが今は恥ずかしさでその恐ろしさもない。
里紗はニヤニヤしたまま口笛を吹いてその場から離れると、拓人はただただ溜め息を吐いた。
「大変だな拓人」
「やっぱり来るもんじゃねぇな」
拓人はやはり思ってしまう。
学校に来るとろくでもない事しか起きないなと。
そして―――
『神谷ーーー!!』
嫉妬に狂った男達が拓人に襲い掛かってくるが、その男達は一瞬で屍に変わり果てるのであった。
To_Loveる~だーくねす~
一話END
優しくまるで大切な人を呼ぶように自分の耳に聞こえてくる。
いつもぶっきらぼうでどこか距離のあるのに、どうして今日はこんなに優しいのだろう。
それに目を開けたらそこには私の身体に覆い被さるようにタクトさんがいた。
「…タクトさん?」
一体これはどういう状況なんでしょう?
どう考えても答えが出ません。
それに今のタクトさんの表情も声も本来なら、春菜さんにしか向けられないものなのに今はこうして私に向いている。
まるで愛しい人に接するようで頬が赤くなっていく。
『可愛いよモモ』
ニッコリ笑いそっと頬にタクトさんの手が触れる。
もうこのままタクトさんに身を任せていいのではないのだろうか?
ここで私が勇気を出さなきゃダメじゃないですか!
タクトさん!
私の全てをアナタに――――――
▽▲▽▲▽▲
「……ふぇ?」
飛び起きて私の視界に入ったのは真っ白な天井。
カーテンの隙間から明るい陽がモモの顔を微かに照らす。
その日差しを視界に入れながらモモは寝癖を直し髪をかきあげる。
「……そりゃ夢ですよね」
小さく溜め息を吐き朦朧とした意識がハッキリしていく。
あのタクトさんが私にあんな風に接してくれる訳ない。
なんなら春菜さんに対してもそんな風に接するイメージも想像できない。
だけど改めて自覚してしまう。
私ってこんなにタクトさんの事を考えてるんだなーっと。
身体を起こし、とりあえずシャワーを浴びる事にしましょう。
少しはスッキリするでしょう。
「……そういえば」
タクトさんはもう起きているのでしょうか?
もうリビングにいるのかもしれないと部屋から出て扉を開けてリビングを覗くとそこには、
「目は覚めたようだな、モモ」
「おはようございます、タクトさん」
タクトさんはソファーに座りながらコーヒーを飲んでいた。
「あっ…」
私の視界にはタクトさんが用意してくれた朝ごはんがテーブルに並んでいた。
昨日の夜に引き続き朝まで用意してくれている。
「タクトさん、今日は学校へ行かれるんですか?」
「……今日はバイクでドライブの気分だから休むつもりだが」
「そうですか。じゃあ私も一緒に…」
「さて学校へ行くとするか」
さっさと用意してバイクのカギを手にしカバンを持ち出ていこうとしたタクトはマンションのカギの一本をモモに渡す。
「それ持ってろ。この部屋のカギは俺が持ってるやつと予備の一本しかないからな」
「いいんですか?」
「いいも何も一緒に住んでんだから渡さなきゃ困るだろ?」
それだけ口にして拓人は部屋を出ていくとバイクのある場所まで向かう。
そしてカギを受け取ったモモはしばらくカギを見つめていたが、
「………嬉しい」
カギを愛しそうに見つめしばらく余韻にひたっていた。
▽▲▽▲▽▲
「あ~ダルい」
バイクで学校に登校して屋上でガムを噛みながら溜め息を吐く拓人。
あのバレンタインから俺の日常は少しずつ変わってる気がする。
カイのやつはあれ以来この街から姿を消したと、ジェノスやシャオは言ってたが果たしてどこに消えたのやら?
春菜との仲は少しずつ昔のように戻っているが、今俺自身気を付けなきゃいけないのは同じマンションに住んでいるララの妹――
【モモ・べリア・デビルーク】である。
モモはララやナナと違ってどこか計算された何かを感じてしまう。
アイツが俺と住むと言ったとき、何かを決意したようにも見えたが――
「……んっ?」
ふと屋上の扉が開いて拓人は人の気配を感じて振り返るとそこにいたのは、
「やっぱりここにいたんだね、拓人くん」
「よく分かったな。……春菜」
拓人の幼馴染みであり拓人が最も優先する存在が拓人の後ろにいたのだ。
「おはよう拓人くん」
春菜はどこか嬉しそう笑いながら拓人の横に来ると、拓人の鼻に女の子特有の甘いニオイが入り頬を赤く染める。
「いいのか?今ってホームルーム中だろ?」
「拓人くんが登校してるってリサが言ってから呼びに来たの。一緒に教室に行こっ!」
「もう少ししたら行くから先に戻ってろよ」
「そういってサボるつぼりだよね?ダメだよ」
「………ったく」
ガシガシと頭をかいて小さく『敵わないな』と呟く。
あのバレンタインの日から春菜は二人っきりの時だけ頑固になっている気がする。
こうなると春菜は俺が動くまで絶対に動かないだろうな。
「……わかったよ。行けばいいんだろ」
「うん!」
何でそんなに嬉しそうに笑うかね?
本当にお前には敵わないよ春菜。
▽▲▽▲▽▲
拓人が教室に入ると中にいた生徒達は目を丸くする。
それもそのはずだ。
あの神谷拓人が朝から登校して教室にやってきたのだ。
一体何事かと教室内がざわついていると、
「あ~タクトだ~!」
「朝から元気だな~ララ」
リトの嫁でもあるララ・サタリン・デビルークがニコニコしながら近付いてきた。
その隣には夫のリトも「…夫でも旦那でもねぇ!」何故ばれた。
「珍しいな。拓人が朝から来るなんて」
「サボるとモモがついてきそうだったからな」
「あぁ……」
苦笑しながら大変そうだな~って思っているようだが、お前と美柑もその原因の一つだからな。
ララが許可したとはいえ少しは反対してくれてもよかったんだぞ。
「モモちゃん?」
事情を知っているリトと違い事情を知らない春菜は首を傾げる。
そういえばまだ春菜に伝えてなかったな。
何作るか考えて買い物してて料理もして、悪友から連絡きてたからすっかり忘れてたわ。
あ~ここで説明するとめんどくさいよな~。
拓人はどうするか悩んでいたが、ここにはそんなことなどお構い無しのララがいる。
つまり―――
「いやだな~タクト!ついてくるもなにもモモもこの学校に転入したんだから一緒に住んでるんだし一緒に来ればよかったのに~!」
来ればよかったのに~!
来ればよかったのに~!
ララの声が教室内に響き渡る。
『なぁぁぁにーーー!?』
ララの爆弾発言で2-Aに驚愕の声が上がる。
普段なら話し掛ける事すらしない拓人に詰め寄ろうとする者、どこから取り出したのか分からないが武器を手にしている者。
そんな状況で拓人は、
「モモのやつ転入してたのか。……って事はナナも一緒か?」
「何でお前はそんなに冷静なんだよ?」
「逆に言うがリト…」
「なんだよ?」
「遅かれ早かれバレるだろうしいいかなって…」
本当にお前はマイペースだよな拓人。
だけど気づいてんのかな?
西連寺が顔色真っ青にして固まっているんだけど。
「なによ神谷~。春菜という幼馴染みがいながら…」
「あん?何言ってんだよ。モモが俺と住んでようが、俺にとって誰よりも春菜の方がだ…………」
里紗が何やってんのよーと言いたげな顔をして近寄ってきたので、拓人は軽くあしらうように返したのだが、この時拓人は自らが犯した失態に気づく。
ここは教室で里紗が話しかけた時に教室は静まり返っていたのだ。
つまり今の拓人の言葉はバッチリ春菜だけじゃなく教室にいた者達全員に聞こえていた。
「「………ッ!?」」
それに気づいた拓人は顔を赤く染めて、その言葉を耳にした春菜もまた顔を真っ赤にする。
さらに二人はお互いバッチリ目が合うと同じタイミングで視線を逸らしてしまう。
「だってさ~春菜。よかったわね~」
「リ、リサ!?」
「よかったね~春菜!」
「ララさんまで!」
もはや拓人以上に真っ赤になっている春菜に対して拓人は顔を赤く染めたたまま里紗を睨み付ける。
普段の拓人の睨みなら恐ろしいが今は恥ずかしさでその恐ろしさもない。
里紗はニヤニヤしたまま口笛を吹いてその場から離れると、拓人はただただ溜め息を吐いた。
「大変だな拓人」
「やっぱり来るもんじゃねぇな」
拓人はやはり思ってしまう。
学校に来るとろくでもない事しか起きないなと。
そして―――
『神谷ーーー!!』
嫉妬に狂った男達が拓人に襲い掛かってくるが、その男達は一瞬で屍に変わり果てるのであった。
To_Loveる~だーくねす~
一話END