すき焼きパーティー
結城家からリトを引っ張り出して二人は少し離れた公園に来ていた。
拓人のバイクも公園にあり最初から自分を公園に連れてくるつもりだったのかと、リトはジと目で拓人を見つめ拓人はそのリトの視線に気づき苦笑してリトに向かって飲み物を渡すと二人はベンチに座って話を始めた。
「わりぃなリト、嫁さんから許可なく連れてきて」
「嫁じゃねぇ!いや、別にいいんだけどさ。家では話せない事なのかと思って」
リトは飲み物を一口飲みながらふと頭に疑問を浮かべる。
拓人がどうして自分をここに連れてきたのだろうか?
ララ達がいる場所では話せない事なのだろうか?
リトの疑問に拓人はベンチに寄り掛かり、視線を夜空に向けてゆっくり口を開いた。
「なぁ、リト」
「なんだ?」
拓人は夜空を見上げていた目を一度閉じて、ゆっくり開くとポツリポツリと話を続けた。
「お前にだけは言っておこうと思ってな」
「なんだよ改まって」
「……決めたんだ」
公園で語り合う拓人とリトの二人。
この日話した事を拓人もリトも忘れる事はないだろう。
何故なら――
「西連寺と……いや、春菜と本気で向き合おうってさ」
「拓人…」
「中学の時のあの日に俺は春菜と関わらないようにしようと決めて今の今まで春菜の事を極力避けてた」
「もしかしてお前が学校をサボってるのはそれが原因だったのか?」
「さてな。まぁ、学校サボって遊ぶのが楽しいってのもあったしよくわからん」
「おいっ!」
楽しそうに笑う拓人にリトはたまらずツッコンでしまう。
結局のところ春菜の事があってもなくても拓人が学校をサボるのは決定事項のようだ。
これからもそうなのだろう。
「だけど今じゃその決断が鈍っちまってな」
「どうして?」
「春菜といる時間が楽しいからだよ」
旧校舎の出来事から今の今まで春菜と関わって楽しんでいる自分がいた。
学校にたまに来る自分を春菜はいつも声を掛けて心配していた。
それが春菜らしいと言えば春菜らしいのだが。
春菜はただ純粋に優しすぎるのだ。
「拓人…」
「まぁ、そういう事だからお前にだけは言っておきたかったんだよ」
ベンチから離れ拓人は飲み物を一気に飲んでそのまま放り投げると、飲み物が入っていた缶はそのままゴミ箱に入り音を立てて落ちていった。
「じゃあお前はこれからちゃんと学校に来るのか?」
「……」
「あれ?」
リトの言葉に拓人は押し黙る。
春菜と関わるつもりなら学校に来るだろうとリトは考えていたからだ。
しかし拓人がリトに返した言葉はリトの予想をはずしていた。
「学校はいつも通り気分で行くつもりだが?」
「えっ?何でだよ?」
「今さら――」
拓人はバイクに乗りエンジンをかけてリトの方に目を向けて真剣な表情で答えた。
「行けるわけねぇだろ」
そう答えて拓人は公園から消えていき、その場に残ったリトは拓人の言葉の意味を考えていた。
(拓人が学校に来ないのは噂の事や春菜ちゃんの為なんだろうな。春菜ちゃんと向き合うって言った拓人に俺は何をしてやれるんだ?)
「拓人…」
公園に残っていたリトはしばらくベンチに座ったまま自問自答を繰り返し家に戻ったのは、自分の携帯に美柑が電話をかけたときだった。
――――
拓人とリトが公園で話していた同時刻、ララと春菜はお風呂に入り今はララの部屋で二人ともパジャマ姿でベッドに腰掛けて話をしていた。
「リト、遅いな~」
「多分まだ神谷くんと話しているんじゃないかな?」
頬を膨らませているララの横で春菜は苦笑しながら口を開いた。
春菜の脳裏によぎるのは、あの日拓人をウチに招いてお茶をして話をした一時。
姉の秋穂から応援されて少しだけ前に進めた春菜は拓人と会った時は少しでも話をしようと決めていたのだが、拓人と会ったとしても緊張してか思うように話せなかったりする。
「ねぇ、春菜~」
「どうしたのララさん?」
春菜が小さくため息を吐いていると、春菜の横に腰掛けていたララが春菜の顔を覗くように顔を寄せてきて春菜は首を傾げるとララは笑みを浮かべて口を開いた。
「春菜はタクトの事好き?」
「えっ…!!へっ!?えぇっ!?」
ララの核爆弾並みの言葉に春菜の顔は一瞬で赤く染まる。
「ララ…さん…どうして…急に…そんな事を…」
顔を赤くさせポツリポツリと言葉を紡ぐ春菜にララは嬉しそうな顔をして答えた。
「ん~、春菜ってタクトと話してるとき嬉しそうだからかな?さっきもタクトが春菜を送って行くって言った時に嬉しそうだったし」
ララの言葉に春菜は顔を俯かせる。
確かに春菜の中で拓人は幼馴染みであり大切な存在である。
しかし――
「ララさん、私ね神谷くんの事は大切だと思ってる。お姉ちゃんにも後押しされて前に進もうと決めたんだよ。でも――」
春菜の脳裏によぎる中学の時の事件。
全てはあれが始まりだったのだ。
あの事件で拓人は春菜と距離を置いてしまった。
それからすぐ拓人に対して悪い噂が流れ始めて拓人は変わってしまった。
「私…どうしたらいいんだろ…」
「春菜…」
春菜の顔から赤みが消えていつの間にか目には涙がたまっている。
そんな春菜を見つめていたララは手を伸ばして春菜の手を優しく握った。
「ララさん…?」
「春菜はタクトと昔みたいに仲良くしたいんだよね?」
「…うん」
「じゃあ私やリトや皆に任せて!」
「えっ…!」
優しく手を握りニッコリ笑って言葉を放ったララに春菜は顔を上げてララを見つめた。
ララの顔はいつも以上に優しさが溢れて暖かみのあるものだった。
困惑している春菜にララは再び口を開き始める。
「私にとって春菜もタクトも大切な友達だもん!!友達が困っている時に助けてあげるのが友達でしょ?」
「ララさん…」
「春菜の為にも頑張るからね!!」
春菜はこの日ララと友達になれて本当によかったと思い、自分もまたララが困った時には助けようと誓うのであった。
とらぶる五話
END
拓人のバイクも公園にあり最初から自分を公園に連れてくるつもりだったのかと、リトはジと目で拓人を見つめ拓人はそのリトの視線に気づき苦笑してリトに向かって飲み物を渡すと二人はベンチに座って話を始めた。
「わりぃなリト、嫁さんから許可なく連れてきて」
「嫁じゃねぇ!いや、別にいいんだけどさ。家では話せない事なのかと思って」
リトは飲み物を一口飲みながらふと頭に疑問を浮かべる。
拓人がどうして自分をここに連れてきたのだろうか?
ララ達がいる場所では話せない事なのだろうか?
リトの疑問に拓人はベンチに寄り掛かり、視線を夜空に向けてゆっくり口を開いた。
「なぁ、リト」
「なんだ?」
拓人は夜空を見上げていた目を一度閉じて、ゆっくり開くとポツリポツリと話を続けた。
「お前にだけは言っておこうと思ってな」
「なんだよ改まって」
「……決めたんだ」
公園で語り合う拓人とリトの二人。
この日話した事を拓人もリトも忘れる事はないだろう。
何故なら――
「西連寺と……いや、春菜と本気で向き合おうってさ」
「拓人…」
「中学の時のあの日に俺は春菜と関わらないようにしようと決めて今の今まで春菜の事を極力避けてた」
「もしかしてお前が学校をサボってるのはそれが原因だったのか?」
「さてな。まぁ、学校サボって遊ぶのが楽しいってのもあったしよくわからん」
「おいっ!」
楽しそうに笑う拓人にリトはたまらずツッコンでしまう。
結局のところ春菜の事があってもなくても拓人が学校をサボるのは決定事項のようだ。
これからもそうなのだろう。
「だけど今じゃその決断が鈍っちまってな」
「どうして?」
「春菜といる時間が楽しいからだよ」
旧校舎の出来事から今の今まで春菜と関わって楽しんでいる自分がいた。
学校にたまに来る自分を春菜はいつも声を掛けて心配していた。
それが春菜らしいと言えば春菜らしいのだが。
春菜はただ純粋に優しすぎるのだ。
「拓人…」
「まぁ、そういう事だからお前にだけは言っておきたかったんだよ」
ベンチから離れ拓人は飲み物を一気に飲んでそのまま放り投げると、飲み物が入っていた缶はそのままゴミ箱に入り音を立てて落ちていった。
「じゃあお前はこれからちゃんと学校に来るのか?」
「……」
「あれ?」
リトの言葉に拓人は押し黙る。
春菜と関わるつもりなら学校に来るだろうとリトは考えていたからだ。
しかし拓人がリトに返した言葉はリトの予想をはずしていた。
「学校はいつも通り気分で行くつもりだが?」
「えっ?何でだよ?」
「今さら――」
拓人はバイクに乗りエンジンをかけてリトの方に目を向けて真剣な表情で答えた。
「行けるわけねぇだろ」
そう答えて拓人は公園から消えていき、その場に残ったリトは拓人の言葉の意味を考えていた。
(拓人が学校に来ないのは噂の事や春菜ちゃんの為なんだろうな。春菜ちゃんと向き合うって言った拓人に俺は何をしてやれるんだ?)
「拓人…」
公園に残っていたリトはしばらくベンチに座ったまま自問自答を繰り返し家に戻ったのは、自分の携帯に美柑が電話をかけたときだった。
――――
拓人とリトが公園で話していた同時刻、ララと春菜はお風呂に入り今はララの部屋で二人ともパジャマ姿でベッドに腰掛けて話をしていた。
「リト、遅いな~」
「多分まだ神谷くんと話しているんじゃないかな?」
頬を膨らませているララの横で春菜は苦笑しながら口を開いた。
春菜の脳裏によぎるのは、あの日拓人をウチに招いてお茶をして話をした一時。
姉の秋穂から応援されて少しだけ前に進めた春菜は拓人と会った時は少しでも話をしようと決めていたのだが、拓人と会ったとしても緊張してか思うように話せなかったりする。
「ねぇ、春菜~」
「どうしたのララさん?」
春菜が小さくため息を吐いていると、春菜の横に腰掛けていたララが春菜の顔を覗くように顔を寄せてきて春菜は首を傾げるとララは笑みを浮かべて口を開いた。
「春菜はタクトの事好き?」
「えっ…!!へっ!?えぇっ!?」
ララの核爆弾並みの言葉に春菜の顔は一瞬で赤く染まる。
「ララ…さん…どうして…急に…そんな事を…」
顔を赤くさせポツリポツリと言葉を紡ぐ春菜にララは嬉しそうな顔をして答えた。
「ん~、春菜ってタクトと話してるとき嬉しそうだからかな?さっきもタクトが春菜を送って行くって言った時に嬉しそうだったし」
ララの言葉に春菜は顔を俯かせる。
確かに春菜の中で拓人は幼馴染みであり大切な存在である。
しかし――
「ララさん、私ね神谷くんの事は大切だと思ってる。お姉ちゃんにも後押しされて前に進もうと決めたんだよ。でも――」
春菜の脳裏によぎる中学の時の事件。
全てはあれが始まりだったのだ。
あの事件で拓人は春菜と距離を置いてしまった。
それからすぐ拓人に対して悪い噂が流れ始めて拓人は変わってしまった。
「私…どうしたらいいんだろ…」
「春菜…」
春菜の顔から赤みが消えていつの間にか目には涙がたまっている。
そんな春菜を見つめていたララは手を伸ばして春菜の手を優しく握った。
「ララさん…?」
「春菜はタクトと昔みたいに仲良くしたいんだよね?」
「…うん」
「じゃあ私やリトや皆に任せて!」
「えっ…!」
優しく手を握りニッコリ笑って言葉を放ったララに春菜は顔を上げてララを見つめた。
ララの顔はいつも以上に優しさが溢れて暖かみのあるものだった。
困惑している春菜にララは再び口を開き始める。
「私にとって春菜もタクトも大切な友達だもん!!友達が困っている時に助けてあげるのが友達でしょ?」
「ララさん…」
「春菜の為にも頑張るからね!!」
春菜はこの日ララと友達になれて本当によかったと思い、自分もまたララが困った時には助けようと誓うのであった。
とらぶる五話
END