旧校舎パニック
「…ったく何で俺が」
頭をガリガリ掻きながら一人の男が旧校舎を歩いていた。
いかにもめんどくさそうにしている男こと神谷拓人は先程保健室で話していた御門とのやり取りを思い返す。
――――――
『はっ?旧校舎の噂?』
『そう。あの旧校舎に幽霊がいるって噂よ。聞いたことない?』
『生憎と学校の噂なんざ一つも知らねぇな。そんでその旧校舎がどうしたんだよ?』
『ちょっと気になるから貴方に見てきてほしいのよ。噂があるって事はその旧校舎で何かがあったって事じゃない?退屈しのぎにはぴったりじゃない』
『くっだらねぇ。そんな噂なんかより屋上で寝てた方がまだ退屈しのぎにはなる』
『そう言うと思ったわ。でも行ってくれるなら貴方が欲しがってる例の薬をいつもより多く渡してあげてもいいわよ』
『……チッ』
―――――
保健室でのやり取りを思い返し拓人は不機嫌な表情のまま歩き、ポケットに入れていたガムを袋から出して口の中に放り込む。
拓人から見てこの旧校舎はハッキリ言ってボロイの一言につきる。
天井には蜘蛛の巣がいくつも作られ、旧校舎の床は歩く度に床が軋み腐っているのがわかるほどだ。
足元に視線を向ければ汚れた数匹のネズミがちょろちょろと動き、あちこちに数え切れないほどのゴミが転がっている。
「幽霊じゃなくて浮浪者がいたりしてな」
そっちの方が信憑性もあるだろうしある意味幽霊より怖いと思う。
ミカドにもそう誤魔化してさっさと旧校舎から帰るか。
「…んっ?」
ふと来た道を戻ろうと足を踏み出した瞬間、拓人のいる場所から少し離れた所で何かの気配を感じて拓人の足がピタッと止まった。
自分のいる場所から気配のする場所はそれほど遠くないようで感じられる気配は一つではなく複数だった。
拓人はガムを膨らませながらその気配が感じられる場所に足を進めていく。
自分以外にも旧校舎に誰かがいたようだが本当に浮浪者だろうか?
「……」
息を殺しだんだん近づいてくる足音を耳にしながら拓人は目を細める。
自分の耳に聞こえてくる足音は一人や二人ではない。
少なくとも四人はいるように聞こえてくる。
「団体さんか?」
好奇心を表情に出しながら拓人は壁の方に身体を寄せ向かってくる足音を確認する。
先頭を歩いている気配が近づいている事を感じながら拓人は自分の蹴りの範囲に入ってくるのを待つ。
一歩一歩と近付きその気配が範囲に入った途端に拓人は勢いよく壁から離れて気配の正体に向かって蹴りを喰らわせようとしたのだが、
「…あん?何してんだお前ら」
「えっ!?拓人!?何でお前まで旧校舎にいるんだよ!?」
「あ~タクトだ~!!」
「なっ!?神谷拓人!?」
「…神谷君?」
拓人の目に入ってきたのは何故かぼろぼろの制服姿のリトとララと唯と春菜の姿で拓人はゆっくりと足を下げながら怪訝な表情をするのであった。
―――――――
「ふ~ん幽霊の噂ね~」
「そうなの!皆で一緒にホントかどうか確かめに来たの」
旧校舎を歩きながら何故自分達が旧校舎にいるのかを話すララに拓人は納得しながらもため息を吐く。
ララなら幽霊のような存在を見たいに決まっている。
宇宙人からしたら幽霊は未知な存在なのだから。
「けど何でタクトはここにいるの?」
「退屈しのぎだよ。(ミカドに頼まれたなんて言えねぇしな)」
ララの問いにめんどくさそうに答えつつガムを膨らませる拓人にララは楽しそうな表情で隣を歩く。
この場所でそんな顔が出来るララにリトや唯や春菜は青ざめた表情で見つめる。
いや、春菜だけはどこか複雑な表情をして二人の後ろ姿を見つめているのであった。
「なぁ、拓人」
「んっ?どうかしたかリト」
ララと話をしながら歩いていた拓人に声を掛けるのは顔色が悪いリト。
どうやらリトはポルターガイスト現象を怖がっているようで拓人に話し掛けながらもしきりに辺りを見回していた。
「お前怖くねぇのか?」
「全然怖くねぇよ。どっちかって言うとララの突拍子もない発明の方が怖いしな」
「え~!タクトひど~い!」
拓人の言葉にぷんぷん怒るララに拓人は苦笑しながらララの頭をぽんぽんと軽く叩くとララは嬉しそうに笑う。
お姫様が扱いやすくて助かったなと拓人は苦笑していたが、前方からガチャッガチャッという音が聞こえてくると拓人の視線はそちらに向く。
「――っ!!」
「でっ!出たーーー!!」
拓人達の前に現れたのは人体模型と骸骨のようで、現れた人体模型と骸骨に春菜は声にならない悲鳴を上げて、リトは目を丸くしながら驚き唯はぺたんと腰を抜かしてしまう。
この反応が当たり前なのに対し拓人とララの二人は楽しそうな表情を浮かべて近付いていた。
『出ていけ…』
『出ていけ…』
人体模型と骸骨の方からまるでこの世のものとは言えない声が聞こえてくると、今まで必死に耐えていた春菜が恐怖のあまりふらりとリトの方に倒れ込んでしまう。
リトは恐怖よりも春菜が自分の方に倒れ込んだ事により違う意味でパニックに陥る。
「ねぇ~タクト」
「何だよララ?」
「コレってどこから声を出してるんだろ~?」
まるでオモチャを扱うようにララはひょいっと骸骨の頭を持ち拓人の方を向き、拓人は骸骨の頭をコツコツ叩きまるで遊んでいるかのように口を開く。
「もしも~し入ってますか~?」
「誰もいませんよ~」
「「……アハハハハハハ!!」」
「ななな!何してんだーー!?」
「ア、アナタ達!幽霊に失礼よ。返してあげなさい!」
拓人とララによる漫才についツッコミでしまったリトと唯の二人は心底必死な顔をしているが、拓人とララは不思議そうな顔をしたまま首を傾げていると、
『頭を返せ~!』
「へっ?」
骸骨の頭を持っていたララに人体模型が突っ込んできてララから強引に骸骨の頭を奪うと、人体模型の身体が蛇口に当たりそこから勢いよく水が噴き出し拓人とララに襲いかかってきた。
「…チッ!」
「きゃっ!」
勢いよく噴き出された水がララに直撃する前に拓人がララを自分の方に引き寄せ拓人だけが水を浴びてしまったのだが、この時拓人はある重大なミスを犯してしまった。
ララを引き寄せる際にララの頭につけられていたペケを気づかぬうちに弾いてしまいペケはララから離れてしまったのだ。
つまり―――
「ララ…大丈…夫…ッ!?」
「冷たぁ~い」
拓人の腕の中にいたのは全裸のララであり、はっきり言ってララの裸体は芸術品に近いほど美しいものでありそのスタイルもレベルがめちゃくちゃ高い。
そんなララを至近距離から見てしまった拓人の顔は茹でられたタコのように真っ赤になる。
「あれ?顔が真っ赤だよタクト。大丈夫?」
「…大丈夫だから…早くペケをつけて…制服姿に戻れ!」
腕の中にいたララを離し顔を赤くしたまま拓人は同じように顔を真っ赤にしていたリトの所に避難する。
リトもまたララの裸を見てしまい顔を赤くした一人であり、リトの頭からは煙のようなものまで噴出していた。
拓人もリトも女性の裸に対し全くと言って免疫がなくこのような反応になってしまうようだ。
「ララさん!こんな時にまでハレンチなっ!!」
全くもってその通りだと口にしないが拓人は小さく頷く。
しかし悲しき事に彼は男であり性欲だってある。
ララの裸を見てドキドキが簡単に消える訳もなく、彼の脳裏にはララではなく幼馴染みの春菜の姿が浮かび上がる。
『……拓人君』
幼馴染みの春菜もまた素晴らしいスタイルであり、テニスで鍛え上げられた身体は拓人の好みにドンピシャだったりする。
(……チッ!アイツをそんな目で見ちゃいけねぇだろうが)
一度息を吐き心を落ち着かせるように目を閉じると、拓人のドキドキはいつの間にか消えていつもの拓人に戻っていた。
『出ていけ…』
『出ていけ…』
そんな拓人の背後から人体模型と骸骨が現れて襲い掛かってきたが、拓人はその二体の気配を察知して二体が己の身体に触れる前に回し蹴りを喰らわせると二体は身体をバラバラにして吹き飛んでいく。
その時拓人だけでなくララ達もある事に気付いた。
二体の模型から小さな生き物が出てきて拓人達と目が合った瞬間逃げ出したのだ。
「……まさかな」
「もしかして今のって…」
「気付いたかリト。多分リトの考えている通りだと思うぞ」
そう考えると旧校舎で起こっていた事も説明がつく。
あの声もまたさっきの生き物と同じ存在のやつがやったに違いない。
「こ…今度は何なの!?」
「じ、地震か!?」
考え事をしていた時にまるで旧校舎全体が揺れているかのような現象が起こり、ララを注意していた唯と春菜を起こそうとしていたリトが驚きながら口を開く。
頭をガリガリ掻きながら一人の男が旧校舎を歩いていた。
いかにもめんどくさそうにしている男こと神谷拓人は先程保健室で話していた御門とのやり取りを思い返す。
――――――
『はっ?旧校舎の噂?』
『そう。あの旧校舎に幽霊がいるって噂よ。聞いたことない?』
『生憎と学校の噂なんざ一つも知らねぇな。そんでその旧校舎がどうしたんだよ?』
『ちょっと気になるから貴方に見てきてほしいのよ。噂があるって事はその旧校舎で何かがあったって事じゃない?退屈しのぎにはぴったりじゃない』
『くっだらねぇ。そんな噂なんかより屋上で寝てた方がまだ退屈しのぎにはなる』
『そう言うと思ったわ。でも行ってくれるなら貴方が欲しがってる例の薬をいつもより多く渡してあげてもいいわよ』
『……チッ』
―――――
保健室でのやり取りを思い返し拓人は不機嫌な表情のまま歩き、ポケットに入れていたガムを袋から出して口の中に放り込む。
拓人から見てこの旧校舎はハッキリ言ってボロイの一言につきる。
天井には蜘蛛の巣がいくつも作られ、旧校舎の床は歩く度に床が軋み腐っているのがわかるほどだ。
足元に視線を向ければ汚れた数匹のネズミがちょろちょろと動き、あちこちに数え切れないほどのゴミが転がっている。
「幽霊じゃなくて浮浪者がいたりしてな」
そっちの方が信憑性もあるだろうしある意味幽霊より怖いと思う。
ミカドにもそう誤魔化してさっさと旧校舎から帰るか。
「…んっ?」
ふと来た道を戻ろうと足を踏み出した瞬間、拓人のいる場所から少し離れた所で何かの気配を感じて拓人の足がピタッと止まった。
自分のいる場所から気配のする場所はそれほど遠くないようで感じられる気配は一つではなく複数だった。
拓人はガムを膨らませながらその気配が感じられる場所に足を進めていく。
自分以外にも旧校舎に誰かがいたようだが本当に浮浪者だろうか?
「……」
息を殺しだんだん近づいてくる足音を耳にしながら拓人は目を細める。
自分の耳に聞こえてくる足音は一人や二人ではない。
少なくとも四人はいるように聞こえてくる。
「団体さんか?」
好奇心を表情に出しながら拓人は壁の方に身体を寄せ向かってくる足音を確認する。
先頭を歩いている気配が近づいている事を感じながら拓人は自分の蹴りの範囲に入ってくるのを待つ。
一歩一歩と近付きその気配が範囲に入った途端に拓人は勢いよく壁から離れて気配の正体に向かって蹴りを喰らわせようとしたのだが、
「…あん?何してんだお前ら」
「えっ!?拓人!?何でお前まで旧校舎にいるんだよ!?」
「あ~タクトだ~!!」
「なっ!?神谷拓人!?」
「…神谷君?」
拓人の目に入ってきたのは何故かぼろぼろの制服姿のリトとララと唯と春菜の姿で拓人はゆっくりと足を下げながら怪訝な表情をするのであった。
―――――――
「ふ~ん幽霊の噂ね~」
「そうなの!皆で一緒にホントかどうか確かめに来たの」
旧校舎を歩きながら何故自分達が旧校舎にいるのかを話すララに拓人は納得しながらもため息を吐く。
ララなら幽霊のような存在を見たいに決まっている。
宇宙人からしたら幽霊は未知な存在なのだから。
「けど何でタクトはここにいるの?」
「退屈しのぎだよ。(ミカドに頼まれたなんて言えねぇしな)」
ララの問いにめんどくさそうに答えつつガムを膨らませる拓人にララは楽しそうな表情で隣を歩く。
この場所でそんな顔が出来るララにリトや唯や春菜は青ざめた表情で見つめる。
いや、春菜だけはどこか複雑な表情をして二人の後ろ姿を見つめているのであった。
「なぁ、拓人」
「んっ?どうかしたかリト」
ララと話をしながら歩いていた拓人に声を掛けるのは顔色が悪いリト。
どうやらリトはポルターガイスト現象を怖がっているようで拓人に話し掛けながらもしきりに辺りを見回していた。
「お前怖くねぇのか?」
「全然怖くねぇよ。どっちかって言うとララの突拍子もない発明の方が怖いしな」
「え~!タクトひど~い!」
拓人の言葉にぷんぷん怒るララに拓人は苦笑しながらララの頭をぽんぽんと軽く叩くとララは嬉しそうに笑う。
お姫様が扱いやすくて助かったなと拓人は苦笑していたが、前方からガチャッガチャッという音が聞こえてくると拓人の視線はそちらに向く。
「――っ!!」
「でっ!出たーーー!!」
拓人達の前に現れたのは人体模型と骸骨のようで、現れた人体模型と骸骨に春菜は声にならない悲鳴を上げて、リトは目を丸くしながら驚き唯はぺたんと腰を抜かしてしまう。
この反応が当たり前なのに対し拓人とララの二人は楽しそうな表情を浮かべて近付いていた。
『出ていけ…』
『出ていけ…』
人体模型と骸骨の方からまるでこの世のものとは言えない声が聞こえてくると、今まで必死に耐えていた春菜が恐怖のあまりふらりとリトの方に倒れ込んでしまう。
リトは恐怖よりも春菜が自分の方に倒れ込んだ事により違う意味でパニックに陥る。
「ねぇ~タクト」
「何だよララ?」
「コレってどこから声を出してるんだろ~?」
まるでオモチャを扱うようにララはひょいっと骸骨の頭を持ち拓人の方を向き、拓人は骸骨の頭をコツコツ叩きまるで遊んでいるかのように口を開く。
「もしも~し入ってますか~?」
「誰もいませんよ~」
「「……アハハハハハハ!!」」
「ななな!何してんだーー!?」
「ア、アナタ達!幽霊に失礼よ。返してあげなさい!」
拓人とララによる漫才についツッコミでしまったリトと唯の二人は心底必死な顔をしているが、拓人とララは不思議そうな顔をしたまま首を傾げていると、
『頭を返せ~!』
「へっ?」
骸骨の頭を持っていたララに人体模型が突っ込んできてララから強引に骸骨の頭を奪うと、人体模型の身体が蛇口に当たりそこから勢いよく水が噴き出し拓人とララに襲いかかってきた。
「…チッ!」
「きゃっ!」
勢いよく噴き出された水がララに直撃する前に拓人がララを自分の方に引き寄せ拓人だけが水を浴びてしまったのだが、この時拓人はある重大なミスを犯してしまった。
ララを引き寄せる際にララの頭につけられていたペケを気づかぬうちに弾いてしまいペケはララから離れてしまったのだ。
つまり―――
「ララ…大丈…夫…ッ!?」
「冷たぁ~い」
拓人の腕の中にいたのは全裸のララであり、はっきり言ってララの裸体は芸術品に近いほど美しいものでありそのスタイルもレベルがめちゃくちゃ高い。
そんなララを至近距離から見てしまった拓人の顔は茹でられたタコのように真っ赤になる。
「あれ?顔が真っ赤だよタクト。大丈夫?」
「…大丈夫だから…早くペケをつけて…制服姿に戻れ!」
腕の中にいたララを離し顔を赤くしたまま拓人は同じように顔を真っ赤にしていたリトの所に避難する。
リトもまたララの裸を見てしまい顔を赤くした一人であり、リトの頭からは煙のようなものまで噴出していた。
拓人もリトも女性の裸に対し全くと言って免疫がなくこのような反応になってしまうようだ。
「ララさん!こんな時にまでハレンチなっ!!」
全くもってその通りだと口にしないが拓人は小さく頷く。
しかし悲しき事に彼は男であり性欲だってある。
ララの裸を見てドキドキが簡単に消える訳もなく、彼の脳裏にはララではなく幼馴染みの春菜の姿が浮かび上がる。
『……拓人君』
幼馴染みの春菜もまた素晴らしいスタイルであり、テニスで鍛え上げられた身体は拓人の好みにドンピシャだったりする。
(……チッ!アイツをそんな目で見ちゃいけねぇだろうが)
一度息を吐き心を落ち着かせるように目を閉じると、拓人のドキドキはいつの間にか消えていつもの拓人に戻っていた。
『出ていけ…』
『出ていけ…』
そんな拓人の背後から人体模型と骸骨が現れて襲い掛かってきたが、拓人はその二体の気配を察知して二体が己の身体に触れる前に回し蹴りを喰らわせると二体は身体をバラバラにして吹き飛んでいく。
その時拓人だけでなくララ達もある事に気付いた。
二体の模型から小さな生き物が出てきて拓人達と目が合った瞬間逃げ出したのだ。
「……まさかな」
「もしかして今のって…」
「気付いたかリト。多分リトの考えている通りだと思うぞ」
そう考えると旧校舎で起こっていた事も説明がつく。
あの声もまたさっきの生き物と同じ存在のやつがやったに違いない。
「こ…今度は何なの!?」
「じ、地震か!?」
考え事をしていた時にまるで旧校舎全体が揺れているかのような現象が起こり、ララを注意していた唯と春菜を起こそうとしていたリトが驚きながら口を開く。