因縁襲来

「テメェら二人がいるって事はアイツはここにはいねぇな。答えろ久米島!アイツはカイはどこにいる?」


殺気を込めて口を開く拓人に久米島が鼻で笑いそれに答えた。


「誰が答えるかよバーカ」

「それにテメェが知ることはないんだよ。テメェはここで死ぬんだからな」


人をバカにしたように挑発する久米島と有志に拓人は静かにぶちギレるとゆっくり足を進めた。

次の瞬間、


「遅いんだよ拓人!」


有志が拓人の眼前に一瞬で現れて、メリケンのついたその拳で殴りかかってきたが拓人はそれを首を動かし交わすと有志の顔を両手で掴みそのまま自分の膝に勢いよくぶつけると有志は鼻から大量の血を吹き出し仰け反るが、拓人はそのまま腹部に拳を叩き込み有志は身体をバウンドさせて地に伏せる。


「拓人ーー!!」


有志がやられた瞬間に久米島が後ろからもう一本の木刀で襲い掛かってきたが、拓人は鋭い目付きで振り返り久米島の顔を思い切り蹴り飛ばした。


「ぐぞがぁぁぁぁ!!」


蹴り飛ばされた久米島は鼻血を流しながら拓人を睨むが、拓人の尋常じゃない殺気にゾクリと身体を震わせていると拓人は久米島に近付いて久米島の頭を思い切り踏んづけて地面に押し付けていた。


「答えろ久米島。カイの野郎はどこだ?」

「誰がごだえるがぁ!!」

「あっ?」


その言葉に拓人は押し付ける力を強め、久米島はミシッと何かが音を立てている事に気付く。


「拒否権はねぇんだよ。カイはどこだ?さっさと答えやがれ」

「テメェで探せ…ッ!!」


そう口にした瞬間、久米島は拓人の足が離れた事に気付いて顔を上げた途端に『ひっ!』と声を出してしまう。

拓人は本気でキレているらしく誰が見ても恐ろしいと言うぐらいの顔をしており、顔を上げた久米島の顔を足蹴りして久米島は自分の鼻が折れた事に気付きながら気を失うのであった。


「……クソッ!」


いつになく焦る拓人。

久米島も有志もカイがどこにいるか教えなかった。

こうしている間も春菜が危険だと言うのに。

どうする?

どうすればいい?


「あれは?」


拳を握り締め顔を歪めていた拓人だが、前方から見知った人物がこちらに走ってくる事に気付いて口を開く。

「古手川か?悪いが今お前の説教を聞いている時間は…」

「西連寺さんが連れていかれたわ!」

「詳しく聞かせてくれ古手川」


拓人の言葉に唯は先程の事を話し始める。

春菜が怯えながら男に連れていかれ、その男は##NAME2##がここに来たらとある場所に来るようにと唯に伝え消えたこと。

春菜が尋常じゃない怯え方をして震えていたことを。


「…とある場所だと?」

「えぇ。確か廃工場って言ってたけどアナタそれがどこか知ってる?」


その言葉に拓人はとある場所を思い出したのか、ギュッと拳を握りながら古手川に背を向ける。

そこは中学の時にカイと殴り合いをした場所で二人にとっては因縁の場所である。

そこを指定したとなると、ヤツの狙いは春菜ではなくもしかすると―――


「この事は結城くん達にも話した方がいいわよね?先生達も警察に連絡するって……」

「古手川…」

「何よ?」

「アイツは春菜は必ず助け出す。だからリト達にも教師達にも余計な事は言うな」


自分とカイが殴り合いをする光景を見られる訳にはいかない。

ましてリト達にとって無縁な事だ。

見せるわけにはいかない。


「神谷拓人!私はアナタの言葉を信じるなんて…」

「信じなくていいさ。ただ俺は大事な幼馴染みを助けに行くだけだからな」


そう口にして拓人はバイクを走らせ廃工場に向かうのである。

そんな拓人の姿を見つめながら唯は、


「非常識よ神谷拓人。私だって西連寺さんを助けたいんだから」


唯はポケットから携帯を取り出して結城家へと電話をするのであった。


To Loveる
第十五話
END
2/2ページ
スキ