たい焼き少女と幼馴染み

心地好い風と気持ちよく降り注ぐ朝日を身体に感じながら拓人は道を歩く。

この時間帯普通なら学生は学校に行っているのだがこの青年は学校をサボり彩南町を歩いているのだ。

すれ違う人が拓人の方を見ないように歩いているのだがこれには理由がある。

拓人は彩南高校の制服をちゃんと着ていない上にネックレスやピアスを身に付け真面目とは真逆の格好をしているのだ。

すれ違う人のなかには拓人の容姿に惹かれ興味本意で声を掛けようとする人もいるが、拓人の全くもって興味ありませんオーラによって誰も近づけないでいた。


「何か美味いもんねぇかな~」


家を出るときに何も食べていなかった拓人は次に自分の目に入った飲食店に入ろうと目を前に向けると拓人の目に入ったのはたい焼き屋だった。

たい焼きの甘いニオイが拓人の鼻に入り拓人の足は自然とたい焼き屋に向かっていた。


「いらっしゃい!って拓人じゃねぇか!またサボりか?」


たい焼き屋についた拓人の姿に店長はハッハッハッと笑いながら声を掛けると拓人は小さく頷いてメニューに目を向ける。


「学校なんざ行きたいときに行けばいいんだよ。それよりたい焼き五つ」

「相変わらずだな。どうせ昨日も遊んでたんだろ?」


店長が出来立てのたい焼きを袋に入れながら呆れたように口を開くと、拓人はお金を受け皿に置いて肩を竦めながら口を開いた。


「学校行くよりはダチと遊んでる方が楽しいからな。……って一つ多くね?」

「気のせいだ。それにそのたい焼きどうせあの女の子と食べるんだろ?」

「はっ?」


ニヤリと笑う店長に首を傾げながら拓人は視線を後ろに向けると、少し離れた場所に一人の少女がジーッと拓人を見つめていた。

金色の髪を伸ばし黒色のバトルドレスを着て可愛らしい顔をしている少女が拓人の後ろにいたのだ。

その少女の姿に拓人はめんどくさそうに頭を掻きながら近付くと少女は拓人を見つめたまま口を開いた。


「またサボりですか神谷拓人」

「まぁな。それにしても久しぶりだな金色」


金色の闇――

結城リトの命を狙う殺し屋であり拓人とガチバトルをした少女。

決着をつける事もなく二人はこうしてたまに彩南町でばったり会ったりするのである。



~彩南道~

「お前どんだけたい焼き好きなんだよ。四つも食いやがって」

「どんどん食べろと言ったのはアナタです。お忘れですか?」


不思議そうに首を傾げるヤミに拓人は渇いた笑みを浮かべる。

自分の糖分摂取の為に買ったたい焼きなのにこの少女は美味しそうに一つ一つ食べてしまったのだ。


(まぁ、こいつのこんな姿が見れただけでもラッキーだったし諦めるか)


ヤミがたい焼きを食べていた姿を脳内に保存し拓人はたい焼きを一つ手にしもう一つをヤミに渡した。


「ところで神谷拓人」

「ん~?」

「これからどこへ行くのですか?」


ヤミの言葉に拓人は足を止めて考える。

目的もなく歩いていたためどこに行くかなんて全く考えていなかった。

このまま彩南町をぶらつくのもいいが今朝の事もあるし学校に行くのもいいかな?


「特に目的はねぇな。どっか行きたい所でもあんのか?」

「そうですね。結城リトの監視も含めて学校に行きたいのですが…」

「そうか。じゃあ達者でな」

「斬ります」

「よしっ!学校へ行くか!」


目にも止まらぬ速さで髪をトランスし凶器を拓人の首に突きつけるヤミに拓人は身の危険を感じヤミと一緒に学校に行くことにした。

本人としては学校でもよかったのだがせめて知り合いに会わないようにしようと誓う。

しかしヤミの目的がリトなら絶対に知り合いと会う気がする。

どうしたものか。


「どうかしましたか神谷拓人」

「何でもねぇよ。あとたい焼きはもうないからな」

「安心してください。もうお腹はいっぱいなので」


あんだけ食えば満腹になるだろうな。

それにしてもヤミはたい焼きばかり食べているのだろうか?

もしそうならリト辺りに相談して他のもんでも食わせるか。


「私の顔を見つめてどうしました?」

「あっ?気にすんな。ただ相変わらず可愛い顔してるなって思っただけだから」

「…かっ…可愛い…」


何の恥じらいもなく言った拓人に対しヤミは微かに頬を染めて拓人の隣を歩き拓人は呑気にアクビをしながら彩南高校を目指すのであった。
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