始まりし変化
「おっ!そろそろやつらの星につくぞ。準備はいいかガキ?」
「誰に言ってる?準備なんざこれで充分だ」
首を動かし指を鳴らして拓人はポケットから一つのカプセルを取り出してそれを口にする。
「何だ今の?」
「ドクターミカドに作ってもらったリミッター解除の薬だよ。いちいち時間なんざかけてたまるか」
「用意周到なこって」
そう言いつつギドは拓人の纏う雰囲気が変わった事に気付き楽しそうに口笛を吹き始める。
これから楽しいパーティーかと子供のようにワクワクしているギドに対しモモはじっと拓人を見つめていた。
『あの、本当に行くのですか?』
「当たり前だろ。こいつらを無視したら地球に来るからな。地球にはララやリト達がいるんだ、あいつらを危険なめに合わせる訳にはいかねぇ。何より――」
拓人の脳裏に浮かぶのは春菜の姿。
まだ自分は春菜と向き合ってないしあのスキヤキパーティー以降話すらいない。
春菜に会うためにもこいつらを潰す。
「地球には守りてぇやつもいるしな」
どこか優し気に笑った拓人にモモは自分の胸がドキッと高鳴った事に気づく。
そのドキドキは止まらず頬も赤く染まり始める。
(さっきまで刺々しい人だったのに。あんな風に笑えるんだ)
これが昔お母様が言ってたギャップ萌えかとモモは動揺し、そんなモモを見ながらギドは何かを閃いたように手を叩いてニヤリと笑みを浮かべるのであった。
「モモ、通信を切るぞ。もう時間だ」
『は、はい。お父様、お気をつけて。タクトさんもお怪我がないように』
「おう」
「はいはい」
ギドと拓人がそう返してモニターを切ると二人は顔を見合せ真剣な表情になる。
「んじゃ行くぞタクト」
「くたばったら許さねぇからなギド」
「はっ、誰に言ってんだ?俺はギド・ルシオン・デビルークだぞ」
二人はフッと笑い自分達の目にソルゲム達がいる星が入ると、宇宙船の速度を急激に上げてそのまま勢いよく突っ込んでいきその星の地表に大穴を開けたのであった。
「さっさと終わらせるぞギド」
「どっちが先にボスを仕留めるか勝負だぜタクト」
宇宙船のハッチが開いたと同時に二人は一気に飛び出して、目の前に存在するマフィア達の群れをぶっ飛ばしていく。
「邪魔くせぇ!」
マフィアが持つ銃から光線のようなものが発射されるが、拓人はそこら辺に転がっている廃棄物でそれを受け止め光線が消えた瞬間、拓人はマフィアに接近してマフィアを蹴りあげてぶっ飛ばした。
マフィア達は銃がダメならと肉弾戦で拓人に襲い掛かってきたが、拓人はその拳や蹴りを全て受け流しカウンターを叩き込み全員を地に伏していく。
「タクト、そこを動くんじゃねぇぞ」
「あん?」
背後からギドの声が聞こえて振り返ろうとした拓人の横を、何かが通りすぎ拓人の前にいたマフィアの大群は屍に変わっていた。
「雑魚が多すぎてつい撃っちまったぜ」
「あぶねぇんだよ!…ったく」
ギドの尻尾から発射された光線は予想以上に威力があったらしく、他のマフィア達は腰を抜かしてしまい拓人とギドを見るなり怯えて逃げ出す者までいた。
「どうする?」
「雑魚に用はねぇよ。それよりさっさとボスを見つけるぞ」
逃げていくマフィア達を尻目に拓人とギドは先を進んでいく。
その途中で、
「ギド、何してんだ?」
「あっ?高そうな酒を見つけたからデビルーク星に送ってんだよ。あとで飲もうと思ってな」
「強奪してんじゃねぇよ」
「なに言ってんだ?俺は強奪してんじゃねぇぞ。ありがたく貰ってるだけだ」
それが強奪って言うんだよ。
拓人は小さくため息を吐きながらも先へ進み、ギドは他にも戦利品がないかと先を歩きながら探すのであった。
――――
「ここか」
「みてぇだな」
二人が進んだ先に一つの家のようなものがあり、ギドがその扉を蹴り飛ばし二人は中に入っていく。
二人が歩いていくと、その先には一人の男が椅子に座って足を組んだ状態で二人を見つめるように前を見ていた。
「まさかデビルークの王が直接殴り込みにくるとは。しかも人間まで一緒か」
椅子に座っている男はすでに戦いを諦めたかのように落胆した表情を浮かべていた。
「テメェがボスで間違いねぇな?」
「だとしたらどうする?殺すか、ギド・ルシオン・デビルーク?」
ギドは戦意喪失の男に対しつまらなそうに息を吐いて拓人に目を向ける。
どうやら拓人に任せるつもりらしい。
「お前に聞きたい事がある」
「何だ人間?」
「お前は地球に乗り込むつもりだったんだろ?目的は何だ」
拓人の問い掛けに男は顔を歪め拳を握り締め答えていく。
「我々はドクターミカドの力を手に入れるつもりだった。あの女の力は戦いにこそ必要なものだからな」
「……悪いがミカドの力をそんなものに使わせる訳にはいかねぇな」
ミカドはあの町にこそ必要でありあの学校にミカドを必要としている人達がいる。
マフィア達の戦いにミカドの力を使わせる訳にはいかない。
「他には?まだあんだろ?」
「人間風情が…っ!!」
椅子に座っていた男はまるで親の仇のような目で拓人を見つめ、感情を高ぶらせるように声を上げていく。
「貴様さえ、いやっ!貴様ら化け物さえいなければドクターミカドの力を手に入れる事も、地球にいる金色の闇を始末することも、地球にいる人間達で商売ができたはず…!!」
男がそう口にした瞬間、男はまるで首を締め付けられたかのように息がつまり身体がガタガタ震え始めた。
「ギド」
「わかってる、こいつはデビルーク星で永久地獄の刑にしてやる」
ギドの言葉に男は震えたまま怯えた表情になりその男の顔面を拓人は思い切り殴り、男の顔面は判別が出来ないほどに変わり果てるのであった。
「俺のダチに手を出してんじゃねぇぞ」
そう口にした拓人の顔は恐ろしいものだったとギドは後に語っていた。
――――
こうしてソルゲムとマフィア達の地球侵略作戦は終わりを告げる。
拓人とギドとの戦いで生き残った者達はデビルーク親衛隊により捕縛され二度と表舞台に出ることはなくなった。
「おい、ガキ」
「何だよチビ王」
「今回の報酬に関して俺が面白い事をしてやるから楽しみに待ってな」
「あん?何をするつもりだ」
この報酬という名のギドの行動が拓人を困らせる事になるのであった。
とらぶる六話
END
「誰に言ってる?準備なんざこれで充分だ」
首を動かし指を鳴らして拓人はポケットから一つのカプセルを取り出してそれを口にする。
「何だ今の?」
「ドクターミカドに作ってもらったリミッター解除の薬だよ。いちいち時間なんざかけてたまるか」
「用意周到なこって」
そう言いつつギドは拓人の纏う雰囲気が変わった事に気付き楽しそうに口笛を吹き始める。
これから楽しいパーティーかと子供のようにワクワクしているギドに対しモモはじっと拓人を見つめていた。
『あの、本当に行くのですか?』
「当たり前だろ。こいつらを無視したら地球に来るからな。地球にはララやリト達がいるんだ、あいつらを危険なめに合わせる訳にはいかねぇ。何より――」
拓人の脳裏に浮かぶのは春菜の姿。
まだ自分は春菜と向き合ってないしあのスキヤキパーティー以降話すらいない。
春菜に会うためにもこいつらを潰す。
「地球には守りてぇやつもいるしな」
どこか優し気に笑った拓人にモモは自分の胸がドキッと高鳴った事に気づく。
そのドキドキは止まらず頬も赤く染まり始める。
(さっきまで刺々しい人だったのに。あんな風に笑えるんだ)
これが昔お母様が言ってたギャップ萌えかとモモは動揺し、そんなモモを見ながらギドは何かを閃いたように手を叩いてニヤリと笑みを浮かべるのであった。
「モモ、通信を切るぞ。もう時間だ」
『は、はい。お父様、お気をつけて。タクトさんもお怪我がないように』
「おう」
「はいはい」
ギドと拓人がそう返してモニターを切ると二人は顔を見合せ真剣な表情になる。
「んじゃ行くぞタクト」
「くたばったら許さねぇからなギド」
「はっ、誰に言ってんだ?俺はギド・ルシオン・デビルークだぞ」
二人はフッと笑い自分達の目にソルゲム達がいる星が入ると、宇宙船の速度を急激に上げてそのまま勢いよく突っ込んでいきその星の地表に大穴を開けたのであった。
「さっさと終わらせるぞギド」
「どっちが先にボスを仕留めるか勝負だぜタクト」
宇宙船のハッチが開いたと同時に二人は一気に飛び出して、目の前に存在するマフィア達の群れをぶっ飛ばしていく。
「邪魔くせぇ!」
マフィアが持つ銃から光線のようなものが発射されるが、拓人はそこら辺に転がっている廃棄物でそれを受け止め光線が消えた瞬間、拓人はマフィアに接近してマフィアを蹴りあげてぶっ飛ばした。
マフィア達は銃がダメならと肉弾戦で拓人に襲い掛かってきたが、拓人はその拳や蹴りを全て受け流しカウンターを叩き込み全員を地に伏していく。
「タクト、そこを動くんじゃねぇぞ」
「あん?」
背後からギドの声が聞こえて振り返ろうとした拓人の横を、何かが通りすぎ拓人の前にいたマフィアの大群は屍に変わっていた。
「雑魚が多すぎてつい撃っちまったぜ」
「あぶねぇんだよ!…ったく」
ギドの尻尾から発射された光線は予想以上に威力があったらしく、他のマフィア達は腰を抜かしてしまい拓人とギドを見るなり怯えて逃げ出す者までいた。
「どうする?」
「雑魚に用はねぇよ。それよりさっさとボスを見つけるぞ」
逃げていくマフィア達を尻目に拓人とギドは先を進んでいく。
その途中で、
「ギド、何してんだ?」
「あっ?高そうな酒を見つけたからデビルーク星に送ってんだよ。あとで飲もうと思ってな」
「強奪してんじゃねぇよ」
「なに言ってんだ?俺は強奪してんじゃねぇぞ。ありがたく貰ってるだけだ」
それが強奪って言うんだよ。
拓人は小さくため息を吐きながらも先へ進み、ギドは他にも戦利品がないかと先を歩きながら探すのであった。
――――
「ここか」
「みてぇだな」
二人が進んだ先に一つの家のようなものがあり、ギドがその扉を蹴り飛ばし二人は中に入っていく。
二人が歩いていくと、その先には一人の男が椅子に座って足を組んだ状態で二人を見つめるように前を見ていた。
「まさかデビルークの王が直接殴り込みにくるとは。しかも人間まで一緒か」
椅子に座っている男はすでに戦いを諦めたかのように落胆した表情を浮かべていた。
「テメェがボスで間違いねぇな?」
「だとしたらどうする?殺すか、ギド・ルシオン・デビルーク?」
ギドは戦意喪失の男に対しつまらなそうに息を吐いて拓人に目を向ける。
どうやら拓人に任せるつもりらしい。
「お前に聞きたい事がある」
「何だ人間?」
「お前は地球に乗り込むつもりだったんだろ?目的は何だ」
拓人の問い掛けに男は顔を歪め拳を握り締め答えていく。
「我々はドクターミカドの力を手に入れるつもりだった。あの女の力は戦いにこそ必要なものだからな」
「……悪いがミカドの力をそんなものに使わせる訳にはいかねぇな」
ミカドはあの町にこそ必要でありあの学校にミカドを必要としている人達がいる。
マフィア達の戦いにミカドの力を使わせる訳にはいかない。
「他には?まだあんだろ?」
「人間風情が…っ!!」
椅子に座っていた男はまるで親の仇のような目で拓人を見つめ、感情を高ぶらせるように声を上げていく。
「貴様さえ、いやっ!貴様ら化け物さえいなければドクターミカドの力を手に入れる事も、地球にいる金色の闇を始末することも、地球にいる人間達で商売ができたはず…!!」
男がそう口にした瞬間、男はまるで首を締め付けられたかのように息がつまり身体がガタガタ震え始めた。
「ギド」
「わかってる、こいつはデビルーク星で永久地獄の刑にしてやる」
ギドの言葉に男は震えたまま怯えた表情になりその男の顔面を拓人は思い切り殴り、男の顔面は判別が出来ないほどに変わり果てるのであった。
「俺のダチに手を出してんじゃねぇぞ」
そう口にした拓人の顔は恐ろしいものだったとギドは後に語っていた。
――――
こうしてソルゲムとマフィア達の地球侵略作戦は終わりを告げる。
拓人とギドとの戦いで生き残った者達はデビルーク親衛隊により捕縛され二度と表舞台に出ることはなくなった。
「おい、ガキ」
「何だよチビ王」
「今回の報酬に関して俺が面白い事をしてやるから楽しみに待ってな」
「あん?何をするつもりだ」
この報酬という名のギドの行動が拓人を困らせる事になるのであった。
とらぶる六話
END