始まりし変化
神谷拓人は自分の日頃の行いが悪いことを自覚している。
町を散歩していたら不良に喧嘩を売られ、学校をサボって遊んでいれば警察と鬼ごっこなど日常茶飯事だ。
そんな神谷拓人は今、かなりめんどくさい事に直面していた。
「あっ?もう一度言ってみろ」
『一度と言わず何回も言ってやるよ。テメェに頼みたい事があるって言ってんだよ』
「冗談はその姿だけにしとけよチビ王」
『テメェこそ、口の聞き方には気を付けろよハーフのガキ』
そう拓人は今とある人物と通信をしながら話しているのだが、その相手は玉座に座り圧倒的な力とカリスマ性をヒシヒシ感じされるほどの雰囲気を放ち優雅にワインを飲んでいた。
(めんどくせぇ…)
拓人は通信相手の人物を見ながら小さく舌打ちをする。
通信相手人物はララの父親であり銀河を統一したデビルーク星の王『ギド』なのだ。
そもそも何故拓人がギドと話しているのかと言うと、拓人のマンションにザスティンがやって来てギドが拓人に用があると言ったらしくそれを伝えに来たらしい。
それを伝えに来たザスティンは拓人とギドの通信を緊張した表情で見つめていた。
「そんで頼みたい事ってなんだよ?テメェ一人でも大抵の事は出来んだろうが」
『否定はしねぇよ。けど今回は俺一人じゃめんどくさくてな。何せ相手が金さえ用意すればなんでもやるソルゲムって組織のやつらで、他にもソルゲムに協力しているマフィアがかなりいやがる』
「それで、そいつらを潰すために協力しろと?」
『その通りだ。俺の知る限り俺と同等の力を持ってんのはお前だけだからな』
ギドの言葉に拓人はピクリと眉を動かす。
拓人の脳裏に浮かぶのはギドと本気で戦ったあの記憶。
ギドがリトを正式にララの婚約者と認めたあの日にギドと拓人は本気でやりあった。
理由は複雑なものがあるが、あの時ギドとの戦いをリトやララや春菜が止めなかったらギドも拓人もただではすまなかっただろう。
「なぁ、チビ王」
『何だよガキ』
「本当にそれだけか?テメェが俺に頼むって事は俺にも何かしら関係があるんじゃねぇのか?」
拓人としては別に協力するのは嫌ではない。
退屈しのぎになるしストレス発散も出来るからだ。
『そいつらの狙いがララのいる地球らしくてな。目的までは知らねぇがお前だって無視できないだろ?』
「確かにな」
マフィア達が地球を狙っているとして目的は何だ?
ララを捕まえてこのチビ王を脅すつもりか?
それともララと親しい者達を捕まえララを無効化しチビ王を脅すか?
いずれにしろこれを無視したら春菜達にも魔の手が伸びるかもしれない。
だとしたら――
「わかった、テメェの頼み事ってやつ聞いてやるよ。ただし――」
『条件があんだろ?言ってみろ』
「ララがテメェと話したがってたぞ。久しぶりに話してやれよ」
『…チッ!余計なお世話だガキ!』
拓人の言葉にギドは顔を赤くし怒鳴るが拓人はそれを見て小さく笑っていた。
なんだかんだで素直じゃない王様だと思う拓人に対しギドは、
『ガキ!今からそっちに迎えに行ってやるから大人しく待ってろ。いいな!!』
「はいはい」
『このっ!可愛いげのねぇガ…』
いまだにムキになっているギドの通信を拓人は切り、小さく浮かべていた笑みを消し疲れたように溜め息を吐くと視線を今まで黙っていたザスティンに向けた。
「相変わらずあの王様は素直じゃねぇな」
「それが王の良いところですよ拓人さん。あの方は家族に対して素直になれない方なんです」
男のツンデレはトキメキがないと猿が言ってたがまさか本当だったなんてな。
まぁ、あの王がデレても喜ぶのは部下と嫁さんぐらいか。
「それよりザスティン。今回の事は誰にも話すなよ。リトはもちろんのことララにもだ」
「わかっています。拓人さんと王が今からやることをララ様やリト様が知ったらおそらく止めるでしょうから」
「わりぃな。無理言っちまって」
「構いませんよ。私にとって貴方は友人の一人なんですから」
ザスティンの言葉に拓人はフッと笑うと、身体をぐっと伸ばし息を吐いた。
(今日は春菜の顔でも見に行こうと思ったんだけどな…)
久しぶりに学校にでも行こうかと思っていた拓人だが、この出来事で拓人は一人の少女と出会うことなる。
その少女の存在で拓人が半強制的に学校に行くことになるのだが、この時誰一人そんな事になるなど予想出来るわけもなく、拓人包囲網が作り出される始まりは間違いなくこの一件である。
「まさかこの歳で宇宙デビューとはね…」
「ありがたく思えよ。普通ならこんな体験出来ねぇんだからな」
「そりゃどうも」
ギドの迎えがすぐにやって来て拓人は迎えの宇宙船に乗り込みブリッジに来ると、ブリッジには偉そうに椅子に座ってワインを飲んでいたギドがいて拓人は露骨に嫌な顔をしたが、仕方ないと割りきり今は宇宙船から見える地球を眺めながらギドに話し掛けた。
「そんで、今から潰しに行くソルゲムとかマフィア共の居場所って知ってんのか?」
「それは娘に調べさせてる。もう少し待て」
「娘だ?ララ以外にもいたのかよ?」
「まぁな。ララと同じくらい可愛い娘達だよ。せいぜい惚れねぇこった」
「そこまで聞いちゃいねぇよ」
呆れて溜め息を吐く拓人にギドはぎゃはははと大笑いしながらワインを口にする。
これから戦いに行くのに酒なんて飲んでいるのかと呆れたまま肩を竦める。
(まさかコイツ、全て俺に任せる気じゃねぇだろうな)
本当に大丈夫なのかと頭を抱え溜め息を吐いていると、宇宙船に通信が入ってきてモニターに一人の少女が映った。
『お父様、ソルゲム達の居場所が判明しましたわ』
「よくやったぞモモ。すぐにデータをこっちに転送してくれ」
『はい』
モニターに映っている少女を見て拓人はそれが誰かだとすぐに気づいた。
(ララに似てて、このチビ王を父様って言ってるって事は娘の一人か。それにしても――)
拓人は視線をギドに向けて本当に似てねぇと思いながら小さく頷く。
この少女もララと同じように戦闘力が受け継がれたのかと考えていると、
「おい、ハーフのガキ」
「何だよチビ王?」
拓人の視線に気づいたギドが顔をニヤニヤさせながら拓人を呼び再び口を開いた。
「今モニターに映ってんのが俺の娘だ。名前は――」
『お父様、自分の名前ぐらいは自分で言いますわ』
「おっ、そうか。んじゃ任せるぞ」
『はい』
モニターに映る女の子は向日葵のように明るい笑顔で拓人の方を向きゆっくり口を開いた。
『初めましてタクトさん。私はデビルーク第3王女、モモ・ベリア・デビルークです。よろしくお願いします』
拓人とモモの出会い。
これが一つの始まりを告げるものになるのであった。
「あっ…あぁ。……んっ?何で俺の名前を知ってる?」
『アナタの事はお父様から聞きましたから。お父様と戦って引き分けた唯一の方ですから』
その言葉に拓人はピクリと眉を動かし、チラッとギドの方を向くとギドは顔をニヤニヤさせたまま拓人とモモのやり取りを眺めていた。
余計な事をしやがってと拓人は小さく舌打ちをする。
「んじゃ俺も自己紹介しとくか。俺の名前は神谷拓人ってんだ。改めてよろしくなモモ」
『はい』
どことなく楽しそうに笑うモモに拓人は本当にこの少女は、このチビ王の娘なのかと疑いを持ってしまう。
ララもだが何故こんな風に輝くように笑えるのだ?
『あの~タクトさん』
「んっ、何だよ?」
『タクトさんは地球出身の方と聞きましたが、地球の方は皆タクトさんのようにお強いのでしょうか?』
モモはどうしてもこのことを拓人本人に聞きたかったのだ。
父親であるギドは自分の知る限り銀河一の実力を持っている。
ギドと戦うぐらいなら自滅した方が得策とまで言われるほどギドは圧倒的な力がある。
そんなギドに唯一引き分けた人物、神谷拓人という男。
モモはその人物を前に内心興奮を抑えながら問いかけた。
「その言い方だとこのチビ王に聞かされてねぇようだな」
『えっ?』
拓人の言葉にモモは不思議そうな表情で首を傾げる。
(確かに父様はただの人間としか言わなかった。でもその言い方だと――)
「モモ」
『はっ、はい』
頭を悩ませているモモにワインを飲んでいたギドがワインを一口飲み静かに話しかける。
「このガキの事だがララも知らねぇ秘密がある。コイツの事が知りたかったら自分で調べてみな。きっと驚くだろうし納得も出来るだろうからな」
『お父様…』
あのギドが助け船を出すようにモモに伝えた事に拓人は内心驚きつつも、モモの目がキラリと光った事に気付き背中に嫌な汗をかいた。
(お姉様やリトさんと一度会った時タクトさんはいなかった。彼がどんな人なのかナナには秘密にしたまま調べてみようかしら)
モモはそう自分に言い聞かせタクトと他愛ない話を始めた。
後にこの事をモモはこう語っていた。
『ナナに秘密にしておいてよかった』と。
町を散歩していたら不良に喧嘩を売られ、学校をサボって遊んでいれば警察と鬼ごっこなど日常茶飯事だ。
そんな神谷拓人は今、かなりめんどくさい事に直面していた。
「あっ?もう一度言ってみろ」
『一度と言わず何回も言ってやるよ。テメェに頼みたい事があるって言ってんだよ』
「冗談はその姿だけにしとけよチビ王」
『テメェこそ、口の聞き方には気を付けろよハーフのガキ』
そう拓人は今とある人物と通信をしながら話しているのだが、その相手は玉座に座り圧倒的な力とカリスマ性をヒシヒシ感じされるほどの雰囲気を放ち優雅にワインを飲んでいた。
(めんどくせぇ…)
拓人は通信相手の人物を見ながら小さく舌打ちをする。
通信相手人物はララの父親であり銀河を統一したデビルーク星の王『ギド』なのだ。
そもそも何故拓人がギドと話しているのかと言うと、拓人のマンションにザスティンがやって来てギドが拓人に用があると言ったらしくそれを伝えに来たらしい。
それを伝えに来たザスティンは拓人とギドの通信を緊張した表情で見つめていた。
「そんで頼みたい事ってなんだよ?テメェ一人でも大抵の事は出来んだろうが」
『否定はしねぇよ。けど今回は俺一人じゃめんどくさくてな。何せ相手が金さえ用意すればなんでもやるソルゲムって組織のやつらで、他にもソルゲムに協力しているマフィアがかなりいやがる』
「それで、そいつらを潰すために協力しろと?」
『その通りだ。俺の知る限り俺と同等の力を持ってんのはお前だけだからな』
ギドの言葉に拓人はピクリと眉を動かす。
拓人の脳裏に浮かぶのはギドと本気で戦ったあの記憶。
ギドがリトを正式にララの婚約者と認めたあの日にギドと拓人は本気でやりあった。
理由は複雑なものがあるが、あの時ギドとの戦いをリトやララや春菜が止めなかったらギドも拓人もただではすまなかっただろう。
「なぁ、チビ王」
『何だよガキ』
「本当にそれだけか?テメェが俺に頼むって事は俺にも何かしら関係があるんじゃねぇのか?」
拓人としては別に協力するのは嫌ではない。
退屈しのぎになるしストレス発散も出来るからだ。
『そいつらの狙いがララのいる地球らしくてな。目的までは知らねぇがお前だって無視できないだろ?』
「確かにな」
マフィア達が地球を狙っているとして目的は何だ?
ララを捕まえてこのチビ王を脅すつもりか?
それともララと親しい者達を捕まえララを無効化しチビ王を脅すか?
いずれにしろこれを無視したら春菜達にも魔の手が伸びるかもしれない。
だとしたら――
「わかった、テメェの頼み事ってやつ聞いてやるよ。ただし――」
『条件があんだろ?言ってみろ』
「ララがテメェと話したがってたぞ。久しぶりに話してやれよ」
『…チッ!余計なお世話だガキ!』
拓人の言葉にギドは顔を赤くし怒鳴るが拓人はそれを見て小さく笑っていた。
なんだかんだで素直じゃない王様だと思う拓人に対しギドは、
『ガキ!今からそっちに迎えに行ってやるから大人しく待ってろ。いいな!!』
「はいはい」
『このっ!可愛いげのねぇガ…』
いまだにムキになっているギドの通信を拓人は切り、小さく浮かべていた笑みを消し疲れたように溜め息を吐くと視線を今まで黙っていたザスティンに向けた。
「相変わらずあの王様は素直じゃねぇな」
「それが王の良いところですよ拓人さん。あの方は家族に対して素直になれない方なんです」
男のツンデレはトキメキがないと猿が言ってたがまさか本当だったなんてな。
まぁ、あの王がデレても喜ぶのは部下と嫁さんぐらいか。
「それよりザスティン。今回の事は誰にも話すなよ。リトはもちろんのことララにもだ」
「わかっています。拓人さんと王が今からやることをララ様やリト様が知ったらおそらく止めるでしょうから」
「わりぃな。無理言っちまって」
「構いませんよ。私にとって貴方は友人の一人なんですから」
ザスティンの言葉に拓人はフッと笑うと、身体をぐっと伸ばし息を吐いた。
(今日は春菜の顔でも見に行こうと思ったんだけどな…)
久しぶりに学校にでも行こうかと思っていた拓人だが、この出来事で拓人は一人の少女と出会うことなる。
その少女の存在で拓人が半強制的に学校に行くことになるのだが、この時誰一人そんな事になるなど予想出来るわけもなく、拓人包囲網が作り出される始まりは間違いなくこの一件である。
「まさかこの歳で宇宙デビューとはね…」
「ありがたく思えよ。普通ならこんな体験出来ねぇんだからな」
「そりゃどうも」
ギドの迎えがすぐにやって来て拓人は迎えの宇宙船に乗り込みブリッジに来ると、ブリッジには偉そうに椅子に座ってワインを飲んでいたギドがいて拓人は露骨に嫌な顔をしたが、仕方ないと割りきり今は宇宙船から見える地球を眺めながらギドに話し掛けた。
「そんで、今から潰しに行くソルゲムとかマフィア共の居場所って知ってんのか?」
「それは娘に調べさせてる。もう少し待て」
「娘だ?ララ以外にもいたのかよ?」
「まぁな。ララと同じくらい可愛い娘達だよ。せいぜい惚れねぇこった」
「そこまで聞いちゃいねぇよ」
呆れて溜め息を吐く拓人にギドはぎゃはははと大笑いしながらワインを口にする。
これから戦いに行くのに酒なんて飲んでいるのかと呆れたまま肩を竦める。
(まさかコイツ、全て俺に任せる気じゃねぇだろうな)
本当に大丈夫なのかと頭を抱え溜め息を吐いていると、宇宙船に通信が入ってきてモニターに一人の少女が映った。
『お父様、ソルゲム達の居場所が判明しましたわ』
「よくやったぞモモ。すぐにデータをこっちに転送してくれ」
『はい』
モニターに映っている少女を見て拓人はそれが誰かだとすぐに気づいた。
(ララに似てて、このチビ王を父様って言ってるって事は娘の一人か。それにしても――)
拓人は視線をギドに向けて本当に似てねぇと思いながら小さく頷く。
この少女もララと同じように戦闘力が受け継がれたのかと考えていると、
「おい、ハーフのガキ」
「何だよチビ王?」
拓人の視線に気づいたギドが顔をニヤニヤさせながら拓人を呼び再び口を開いた。
「今モニターに映ってんのが俺の娘だ。名前は――」
『お父様、自分の名前ぐらいは自分で言いますわ』
「おっ、そうか。んじゃ任せるぞ」
『はい』
モニターに映る女の子は向日葵のように明るい笑顔で拓人の方を向きゆっくり口を開いた。
『初めましてタクトさん。私はデビルーク第3王女、モモ・ベリア・デビルークです。よろしくお願いします』
拓人とモモの出会い。
これが一つの始まりを告げるものになるのであった。
「あっ…あぁ。……んっ?何で俺の名前を知ってる?」
『アナタの事はお父様から聞きましたから。お父様と戦って引き分けた唯一の方ですから』
その言葉に拓人はピクリと眉を動かし、チラッとギドの方を向くとギドは顔をニヤニヤさせたまま拓人とモモのやり取りを眺めていた。
余計な事をしやがってと拓人は小さく舌打ちをする。
「んじゃ俺も自己紹介しとくか。俺の名前は神谷拓人ってんだ。改めてよろしくなモモ」
『はい』
どことなく楽しそうに笑うモモに拓人は本当にこの少女は、このチビ王の娘なのかと疑いを持ってしまう。
ララもだが何故こんな風に輝くように笑えるのだ?
『あの~タクトさん』
「んっ、何だよ?」
『タクトさんは地球出身の方と聞きましたが、地球の方は皆タクトさんのようにお強いのでしょうか?』
モモはどうしてもこのことを拓人本人に聞きたかったのだ。
父親であるギドは自分の知る限り銀河一の実力を持っている。
ギドと戦うぐらいなら自滅した方が得策とまで言われるほどギドは圧倒的な力がある。
そんなギドに唯一引き分けた人物、神谷拓人という男。
モモはその人物を前に内心興奮を抑えながら問いかけた。
「その言い方だとこのチビ王に聞かされてねぇようだな」
『えっ?』
拓人の言葉にモモは不思議そうな表情で首を傾げる。
(確かに父様はただの人間としか言わなかった。でもその言い方だと――)
「モモ」
『はっ、はい』
頭を悩ませているモモにワインを飲んでいたギドがワインを一口飲み静かに話しかける。
「このガキの事だがララも知らねぇ秘密がある。コイツの事が知りたかったら自分で調べてみな。きっと驚くだろうし納得も出来るだろうからな」
『お父様…』
あのギドが助け船を出すようにモモに伝えた事に拓人は内心驚きつつも、モモの目がキラリと光った事に気付き背中に嫌な汗をかいた。
(お姉様やリトさんと一度会った時タクトさんはいなかった。彼がどんな人なのかナナには秘密にしたまま調べてみようかしら)
モモはそう自分に言い聞かせタクトと他愛ない話を始めた。
後にこの事をモモはこう語っていた。
『ナナに秘密にしておいてよかった』と。