『泣いてんじゃねぇよ』

『たくとくん…』

『気にしなくていいから。幼馴染みじゃん俺達…』


赤色の髪をした少年は自分の後ろで泣きそうな顔をしている少女を安心させるようにニカッと笑う。

群青色のショートヘアーにヘアピンをしている少女は少年の背中を泣きそうな顔で見つめたまま口を開く。


『ケガ…してるのに…』

『そんなもん後でやっときゃいいから。それよりもこっちが大事だし』


少年はそう言って少女を守るために複数の少年達に向かっていく。

この日の出来事を少年も少女も決して忘れる事はないだろう。

少年はこの日を境に強くなろうと鍛練をして、少女はもっと強くなろうと決意するのであった。


『…ってか泣きすぎだからはるな』

『うぅ…』












――――


「……んっ」


とある部屋のベッドの上で寝転がっていた物体が動く。

ボーッとする意識の中物体は起き上がり髪を掻いて枕元に置いていた携帯を手にして時間を確認すると、すでに授業が始まっている事に気づきながらも青年は呑気にアクビをしながらベッドから離れる。


（今から行っても遅刻だしサボるか）


今日で何日サボっただろうなと呑気に思いながら青年は洗面所に向かうと、最初に顔を洗い次に歯を磨き最後に髪をセットしとりあえず彩南高校の制服に着替えようとした時テーブルに置いていた携帯からメロディーが流れる。


（こんな時間帯に誰だ？）


携帯を手にし電話の相手を確認し目を細める。

今は休み時間だから電話をしてきたのだろう。

相変わらず真面目なやつだとため息を吐いて青年は電話に出ることにした。


「なんだよ？」

『あっ！拓人！お前またサボっただろ！』

「今起きたからな。おはようリト」

『おはよう。……じゃねぇ！今日で五日目だぞ拓人』


電話の相手は中学の時からの友人でもある結城リトであり、リトは今日も学校に来ていない拓人の事が気になって電話をしたらしくその声は友達を本当に心配しているようだった。


「今から行ったら確実にゴリ山に説教されるしサボるわ」

『お前らしいけど今日で五日目だぞ。さすがにヤバイって…』

「出席日数ならちゃんと細工してるから大丈夫だぞ。それにお前の嫁に捕まったら面倒くさいしな」

『嫁じゃねぇよ！…って違う！お前が学校来ないと心配なんだよ。また喧嘩してるんじゃないかって』


電話越しからもわかるリトの不安そうな声を聞いて拓人はフッと笑う。

結城リトという人物は本当に優しい人間だ。

自分のような人間を本気で心配してくれる上にこうして電話をしてくるのだから。


「とりあえず気が向いたら学校に行くから心配すんな。あと心配かけて悪かったな」

『拓人…』

「じゃあな」


青年は電話を切り携帯をテーブルに置いて制服に着替えると携帯をズボンのポケットに入れて家の鍵を手にし所持品を確認したあと家から出ていく。

照りつける太陽の光に目を細め青年はただ一言口にする。


「どうすっかな～」


背伸びをし青年は目的もなく彩南町を歩くのであった。

非日常の中で起こる出来事を頭に思い浮かべながら青年の一日は始まっていく。

プロローグEND