銀世界の戦い(前編)

ベルエスを守る四柱の一つボルキアが作る銀世界で戦うショウ達突入組。

なのはとクロノの放った砲撃魔法をボルキアは薙刀を横に構えシールドを張り二人の砲撃はそのシールドに触れた瞬間、氷のように固まりパキンと音を立てて消滅した。

砲撃が消滅したと同時にショウと将輝の二人が左右から接近する。

ショウはフューチャーを1stの状態にしており剣に炎を纏わせ、将輝はバルベリウスを片刃の双剣へと変化させていた。


「将輝!」

「おぅ!!」


ショウと将輝が剣と刃を振るい炎舞斬とサイクロンがボルキアに迫るのだが、ボルキアは魔法陣を展開し薙刀に魔力を込める。


「無駄よ。フリーズリフレクション」


ボルキアの周りに氷の壁が出現して二人の炎と風を吸い込み、それはそのまま二人に跳ね返ると二人はチッと舌打ちして後方へと下がって避けていく。


「まだまだいくわよ!!」


薙刀を天に掲げ薙刀の刃に魔力が膨れ上がり、ボルキアはそれを勢いよく振り下ろしその魔力はかなりの数の刃となり四人に向かって放たれていく。


「なのは!クロノ!将輝!俺の後ろに来い!」


ショウは三人の前に立ち剣を振るう。

その剣から放たれた炎舞斬によりボルキアの放った刃は消滅していく。


「甘いわね」

「くっ!」


刃が消滅したと同時にボルキアが急接近して薙刀を思い切り振るうと、ショウは剣で薙刀を受け止めて顔を歪めた。


「もっと楽しませてよ。あの男のように。私をぞくぞくさせなさいよ」

「くっ!」


ボルキアの薙刀が勢いよく下から振り上げられショウは受け止めて踏ん張ったが、そのまま上から振り下ろしを喰らい剣が真っ二つに切られそのまま薙刀の刃がショウに迫ってくる。

しかし――


「ディバインバスター!!」

「…っと!」


ボルキアの前方からピンク色の砲撃が迫り来ると、ボルキアはふわりと後方へと下がり薙刀を横に構えてディバインバスターを受け止めた。


「ショウ、大丈夫か?」

「なんとかな」


剣をリカバリーしてショウは体勢を整えると、ショウの横に将輝が並び双剣を手に持ったまま視線はボルキアに向けられていた。


「流石はジョーカーズってところか。強いな」

「あぁ。しかもまだ本気じゃない」


将輝とショウは警戒したままボルキアと対峙する。

なのはとクロノの砲撃を凍らせ、自分や将輝の剣技を跳ね返した。

流石は氷帝だと二人は息を呑むが、ボルキアは心底つまらなさそうにアクビをして薙刀をくるくる回す。

ボルキアは退屈なのだ。

自分を満足させるほどの力を持った人間がいないから。


「管理局が誇る戦力がこの程度なんてね。本当に残念」


薙刀をショウ達の方に向けボルキアは冷たい目付きに変わる。

このまま四人を相手にしてもつまらないだけだ。

さっさと終わらせようかとボルキアは目を閉じ魔法陣を展開する。


「死になさい。弱虫さん」


ボルキアの展開した魔法陣を囲うように出現した凍りつく無数の薙刀。

全ての薙刀の向きが四人に向けられボルキアは薙刀を天に掲げ、フッと笑みを浮かべて薙刀を振り下ろした。


「氷牙演舞!!」


その声と同時に薙刀が一斉に四人に向けて放たれた。

四人は咄嗟にプロテクションを張り薙刀を全て受け止める。


「鳳凰守護陣!!」


ショウが剣を地に刺して炎の結界を展開し、薙刀を全て受け止めていくが徐々にショウの膝が崩れていく。

あまりにも数が多すぎるのだ。

ショウの顔が苦痛に歪みついに膝が地につこうとした瞬間、


「オーロラエクスキューション!!」

「クロノ!?」


ショウの後方にいたはずのクロノが上空に上がりボルキアに向けて氷結魔法を発動していた。

その一撃はボルキアに直撃しボルキアは咄嗟に薙刀で受け止めると、ボルキアの魔法陣は消滅した。


「不意討ちなんてやってくれるわね。お人形のお兄さん」

「その言葉を訂正しろ。フェイトは僕達と同じ人間だ」


ショウ達の前に立ちクロノは鋭い目付きでボルキアと対峙した。

このまま自分達がやられてしまえばおそらくボルキアはフェイトを傷つけるはずだ。

それだけはさせる訳にはいかない。


「僕はお前達ジョーカーズを許さない。お前達のせいで……」


クロノは唇を噛みデュランダルを持つ力をさらに強める。

ジョーカーズのせいで一人の友が命をおとした。

絶対に連れて帰ると決めたのに、命をおとした友は自分の命を犠牲にして逆に助けたのだ。


「フェイトを人質にしてアイツをクルスを利用し死なせたお前達を僕は許さない!!」


クロノの殺気を込めた叫びにボルキアはフッと笑みを浮かべ、クロノを嘲笑いやれやれと肩を竦めて口を開いた。


「許してもらおうだなんて最初から思ってないわ。それに私だってアンタ達を許さないわよ。私の獲物を殺したくせに。だから――」


ボルキアの姿がクロノの視界から消えクロノが怪訝な表情を浮かべたと同時に、クロノの身体に衝撃が走りクロノのBJが何かに切り裂かれていた。


「アンタ達を殺して私の鬱憤を晴らす事にするわ。このお人形も一緒に殺してあげるから安心して死になさい。アリエス、カートリッジロード」

『はいはい』

「氷牙十二斬!」


ボルキアの薙刀が蒼く輝きボルキアの目が冷たい目付きに変わり、クロノの目では捉えられないほどのスピードでクロノの身体を切り裂いていた。


「デュ…ラン…ダル…」

『不味いぜボス!このままじゃボスの身体が』


クロノの身体が次第に血に染まりクロノの顔が苦痛に歪む。

ボルキアのスピードはおそらくフェイトと同じか最悪それ以上だ。

しかし負ける訳にはいかなかった。

フェイトを助ける為にも、何よりクルスの想いを無駄にしない為にも。

絶対にここで死ぬわけにはいかない。


「クロノ!」


切り裂かれているクロノにショウが駆け寄ろうとしたが、クロノは目だけをショウに向けて『来るな!』という意味を込めてアイコンタクトを送っていた。

クロノは一人でボルキアを倒そうとしているのだ。

苦痛に変わる表情の中でクロノは諦めという感情を一切出してはいなかった。


「デュ…ランダ…ル」

『いつでもOKだ!ボス!』


クロノはゆっくりを目を閉じデュランダルを握り締めたまま精神を高める。

ボルキアの十二斬によりクロノの出血は酷くなり徐々に体温も失われていく。


「僕は…決めたんだ…」

『クロノ、約束を守れなくてすまない』

「アイツの分もフェイトを守ると!!」


目を開きデュランダルを思い切り横に振るった。

次の瞬間、デュランダルの刃部分にボルキアの薙刀の刃が触れてボルキアの姿がクロノの視界に入り込む。


「へぇ~。やるじゃないお人形のお兄さん」

「まだだ!デュランダル!」


クロノはデュランダルのカートリッジを三発使用して、デュランダルの形状を変化させた。

デュランダルの形状が杖から一本の日本刀へと変わりクロノはその刀をそのままボルキアに向けて振り抜いていた。


「これが僕とクルスの力だ!!光氷一閃!!」

「なっ!?」


それはクルスがいつも使っていた魔法。

その魔法にボルキアは初めて表情を驚愕に染めて、それを見ていたショウ達も目を見開いて驚いていた。


「ボルキアーー!!」


その刀はボルキアの身体を切り裂いてボルキアの薙刀を真っ二つにし、さらにボルキアの身体を切り裂きボルキアの身体を吹き飛ばすほどの威力を持っていたのだった。


「ハァ、ハァ、ハァ」


地に膝をつけ刀を支えにクロノはゆっくりと息を吐く。

額からは汗が流れ身体はガクガクと震えていた。

力を使いすぎた事と血を流しすぎた事によるものであり、クロノの顔色は真っ青に変わっている。


「やったか…」


クロノの視界に映るボルキアは倒れたままピクリとも動かない。

まともにあれを喰らったとなれば動けないだろう。


「クロノ、大丈夫か?」

「……なんとかな」


クロノの傍にショウ達三人がやって来て、将輝がクロノに手を差しのべクロノはそれを掴みゆっくり立ち上がった。


「クロノ君、さっきのはクルス君の…」


あの瞬間を全員が目にしていた。

クロノがクルスの光氷一閃を使用していた姿を。

いつからそんな事が出来たのだろうかと三人が思っていた。

クロノは自分に聞いてきたなのはに対し拳を握りしめ悔しげな表情を浮かべて答える。


「僕はアイツを救えなかった。ずっと一緒に戦ったのに。アイツの苦しみも痛みも何一つ分かってやれなかった」


あの洞窟でのクルスの最期の姿がクロノの脳裏に浮かぶ。

全てを託し何かが吹っ切れたように笑っていたクルス。

闇の書事件の時自然と笑っていたあの笑顔と似ていた。

あれがクルスの本当の笑顔だったんだろう。


「何が友だ…っ!何がフェイトを頼むだ!!僕はアイツに何もしてやれなかった!!」

「クロノ…」


おそらくあの場にいた中でショウよりも苦しんでいたクロノ。

誰よりも助けたかった。

親友と言える存在を。


「ひとまずフェイトを助けよう。動力部はそのあとでいい」


三人に背を向けてクロノはフェイトに近付いて、フェイトを拘束していた氷を一つ一つ砕いていく。

フェイトが目を覚ましてもクルスの事はすぐには言えない。

もし話してしまったらフェイトの心は確実に壊れる。

時がたつまで話すわけにはいかない。


「フェイト、今そこから助けてやるからな」


最後の一つとなった拘束を砕いて笑みを浮かべたクロノがフェイトに手を伸ばした瞬間、


「クロノ君!!」

「んっ?どうし……」


なのはの悲鳴に近い声にクロノは不思議そうな顔をして、ふと腹部に衝撃が走った事に気付き視線をそちらに向けて目を丸くしていた。

己の腹部に薙刀が貫通していたのだ。

それは紛れもなくボルキアの薙刀でありクロノは口から血を吐いて視線を後方へ向けると、


「この管理局の犬が!」


先程まで倒れていたボルキアが頭と身体から血を流しながら起き上がり、薙刀を投げた姿で息を吐きながら叫んでいた。

薙刀が腹部に貫通しクロノは血を吐いたまま倒れそうになるが、クッと踏みとどまりフェイトを受け止めゆっくりフェイトを地面に寝かせ笑みを浮かべる。

フェイトに怪我はなかった。

それだけでいい。


「全く…こんな時まで…気持ち良さそうに…眠るなんてね…」


まるで幸せそうな夢を見ているような表情をするフェイトにクロノは手を伸ばし、フェイトの頭を優しく撫でるとクロノの身体はそのままゆっくり倒れていく。

クロノの身体から血が流れクロノの身体はピクリとも動かなくなる。


「おいっ…!嘘だろ?クロノ…」

「クロノくーーん!!」












次回予告

ショウ
「ボルキアの刃によって倒れたクロノ」

なのは
「クロノ君が倒れたと同時に目覚めたフェイトちゃん」

将輝
「ボルキアとフェイトの戦いが始まる中で目覚める新たな力」

ショウ
「次回S.H.D.C.第三十九話
『銀世界の戦い後編』に…』

なのは
「ドライブイグニッション!」
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