四柱突入!
ベルエス攻略が始動してすぐに動き出したショウ達管理局メンバーと将輝や、稟達協力者メンバーはベルエスに向かう為にアースラとナデシコに乗り込んでいた。
クロノが艦長をしているアースラにはショウ達管理局メンバー+将輝がいて、ルリが艦長をしているナデシコCには悠季や稟達協力者メンバーが乗って話し合いをしていた。
「それで、ヴィータやシグナム達に聞きたいんだがベルエスって結局のところ何なんだ?」
アースラのブリッジで話し合いをしているショウ達の話し合いの内容はベルエスについてだ。
ブリッジのモニターにもベルエスの映像が映し出され、ショウがヴォルケンズの方に目を向けて話を切り出す。
「あれは私らがベルカ時代に生きていた時に使われていた兵器だ」
ベルエスを見つめながらポツリと呟いたヴィータに自然と視線が集まっていく。
「かつてベルカ時代に一人の王がいた。そいつは自分の事を凶王と名乗ってあらゆる破壊を楽しんでた」
それこそ魔法を使って人を襲ったり、兵器を使って国を滅茶苦茶にしたり、モンスターを生み出して人々や世界そのものを混沌という二文字に表すほどだ。
凶王には仲間もいてその仲間達も強かったのをヴィータやシグナムは微かに覚えている。
「凶王を倒す為にいろんな国や人が協力しあって動いていた。私達ヴォルケンリッターもその中にいて凶王のいる場所に向かっていた。しかし――」
ヴィータに続くようにシグナムが神妙な顔をしながら口を開き、己の拳をギュッと握り締めながら自分が覚えている事をショウ達に告げていく。
「ヤツはベルエスを使い全てを焼き払った。そして今のベルエスと私達が知るベルエスの違うところはおそらくエネルギーだろう」
「エネルギー?」
シグナムの言葉になのはが首を傾げて聞き返す。
今のベルエスはマテリアルコアを使っているが、凶王がベルエスを撃つときに使っていたエネルギーは全く違った。
あのエネルギーは―――
「凶王が使っていた時に使用されていたエネルギーは、生きた人間の生命力だった。凶王は襲った国の人間達をその場で殺さず生け捕りにしてベルエスのエネルギーにしていた」
そうシグナムが口にした途端アースラ内は一気に静まり返りショウ達の表情が困惑や戸惑いに変わっていく。
しかしショウ達の反応は当然だろう。
何故なら今のベルエスはマテリアルコアを使っているのに対し、ベルカ時代では生きた人間を使っていたのだ。
そんなこと誰だって予想なんか出来やしない。
「んっ?でもよそのベルエスは一度破壊されたんだよな?それにその凶王ってヤツも倒したんだろ?一体どうやったんだ?」
話を聞いてメンバーの中でいち早く我に返った将輝が腕を組んで己の頭に浮かんだ疑問を口にした。
その疑問は将輝だけでなく、ショウ達も知りたかったようでその目は答えを知りたがっているようにヴォルケンズを見つめていた。
ユーノが調べた資料には確かにベルエスが破壊されたと書いてあったし、凶王も倒されたとハッキリ記されていた。
だとしたらどのように破壊して凶王を倒したのかと気になるだろう。
『……』
将輝の問いにヴォルケンズはお互いに顔を見合せその顔は次第に歪められていく。
それはまるでその方法が存在しないと言わんばかりの顔であり誰一人口を開こうとしない。
「どうしたん皆?何で答えてくれへんの?」
自分の家族が答えない事にはやては不思議そうな顔をするが、その横にいたショウはまさかと小さく呟いてとある仮説を口にした。
「もしかして俺が使っているフューチャーデバイスが関係しているのか?」
『……ッ!!』
その言葉とヴォルケンズの反応でショウは顔を歪め納得したかのように唇を噛む。
何故ヴィータやシグナム達がそれを言わなかったか―――
答えは簡単だ、その方法が今では使えないからだろう。
何故なら今フューチャーを使っているのはショウ一人しかいないのだから。
「その通りだショウ」
「アインス」
目を閉じ腕を組んでいたアインスがゆっくり目を開けヴォルケンズに変わって話をし始めた。
あの兵器を破壊して凶王を倒す時に使用されたのはフューチャーであり、フューチャーだけが唯一凶王にダメージを与えていたのをアインは覚えている。
凶王の身体を貫いて倒したのは間違いなくフューチャーであり、フューチャーに選ばれた者達だった。
「でもそれならショウのフューチャーでも出来るんじゃないのか?」
アインスの言葉を聞いて艦長席に座っていたクロノがそう疑問を投げ掛けると、アインスは首を小さく横に振りそれが不可能だとクロノだけでなくショウ達にも伝えるように口を開いた。
「その時使用されていたフューチャーデバイスは三つだった。だが私達の知る限り今フューチャーは一つしかない。せめて二つあれば可能性はあったんだが……」
だがその可能性は潰されてしまった。
クルスが死んだことでフューチャーはもう一つしか存在しないからだ。
「本当にそれしか方法はないのか?」
真剣な表情でそう問い掛けるクロノにアインスはしばらく考えてハッキリと口にした。
「私達が知る限りそれしかないだろう」
その言葉にブリッジは静まり返りアースラはそのままベルエスに向かっていく。
今は四柱に集中しようとクロノが皆に伝えるが、皆の心中は落ち着きなど存在しない。
どうしたらいいのかと皆が思っているに違いない。
それを証拠にはやては難しい顔をして何かを考えておりショウは顔を俯かせ拳を握り締めていた。
その中でクロノもまた一人考える。
(それを見越してクルスを裏切らせたのか。しかし仮にユリナさんが黒幕だとしてもいくつか疑問が浮かぶ。何故ベルエスの事を知っていたんだ?それにベルエスを知っていたとしたら凶王の事も知っていたはず。あの人はどうやってそれを知った?)
クロノは思考の海にダイブするが結局その謎は解決することなく、クロノは何か気持ちの悪い感覚を感じながらベルエスの映像を見つめていたのである。
―――――
全てが白で統一された場所。
ここだけが世界と切り離されたように何も感じさせない場所で一人の女性が横たわっていた。
その女性は起きる気配がなく起きる事を拒否しているように目を閉じている。
そんな女性の傍には仮面をはめた人物が腰をおろして仮面越しに女性を見つめていた。
仮面のせいで表情こそ見えないが、仮面をはめた人物は横たわっている女性をまるで大切なものを扱うように優しく頭を撫でて柔らかな雰囲気を感じさせている。
「……フェイト」
ポツリと呟き仮面をはめた人物は次に小さく『……ごめんね』と頭を撫でながら何回も口にする。
まるで懺悔するように呟き、仮面の内側からポロポロと涙が落ちていきその涙はフェイトの頬に当たっていた。
「私の目的の為とはいえ、私はアナタの大切な人を死なせてしまった。フェイト、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
フェイトを守るために彼は死を選んで消えていった。
彼をそこまで追いつめた原因の一つに自分も関わっている。
あの時彼の屋敷を襲撃してあの人の力の前に傷だらけになってしまった彼の前にフェイトを人質として見せたとき、彼は全てを悟って全てを捨ててあの人の命令通り動いた。
彼はその時、私にだけ聞こえるように『…フェイトを頼む』と口にしてロンド・ラグナで仲間達と戦って死んだ。
だから私は彼の最期の頼みを守るためにフェイトをここに連れてきた。
ここは自分しか知らない場所であり、パートナーである恭介やあの人ですら知らない場所。
「でもいつまでもフェイトをここに置いておくわけにはいかない」
もうすぐベルエスの所に管理局がやって来るはずだ。
その中にはフェイトの友や今の家族がいるだろう。
やり方は強引な上に下手したら傷つけられるかもしれないが、あの方法でフェイトを渡せば怪しまれないはずだ。
「フェイト、私の可愛い可愛い妹。本当はアナタとたくさんお話したかったよ。アナタと一緒にいたかったよ。……だけど私にはやらなきゃいけない事があるの。だから最期にお姉ちゃんからのプレゼントをフェイトにあげる」
そう口にして仮面を外しアリシアはフェイトの額に手を当てて何かを呟くと、フェイトの身体に暖かい何かが流れ込んでいく。
アリシアはそれを確認して最期にこう呟いてこの場所からフェイトを転移させる。
「大好きだよフェイト。……さようなら」
白で統一された場所からフェイトが消えアリシアはしばらくその場に立ち、嗚咽を漏らしながら泣いて全てを終わらせる為に仮面に手を伸ばし装着して己のデバイスを起動させ動き出した。
(母さん、私頑張るからね。母さんを傷つけたあの人を私は絶対に許さない。だから力を貸して母さん)
果たしてアリシアの目的とは?
母親を傷つけた人物とは誰なのだろうか?
そして、眠ったままのフェイトはどうなったのか?
地上本部を出発し十数時間がすぎて、アースラとナデシコCはベルエスが出現した異次元空間にたどり着いた。
禍々しく浮くベルエスを見つめ誰もが息を呑む。
あれがジョーカーズの本拠地であり世界を破壊しようとしている兵器。
「これがベルエスか…」
アースラのブリッジでベルエスを目にしたショウが小さく呟く。
まるで一つの要塞のような兵器。
ベルエスを守るように浮く四柱だけでもかなり巨大だと言えるだろう。
だがショウが気になったのはベルエスの下部につけられている剣の形をした物体である。
あれから黒い閃光が放たれて次元船を全て呑み込み星の表面を変えてしまった。
あれをまた撃たせる訳にはいかない。
「こちらアースラ、ナデシコ聞こえるか?」
艦長席に座るクロノがナデシコに通信を入れると、ナデシコからはルリがすぐに通信に出てきてルリは金色の瞳でクロノを見つめていた。
『こちらナデシコ。こちらもベルエスを確認しました。それにしても予想より大きいですね』
「あぁ。まるで要塞のようだ。それより…」
『わかっています。すぐにでも四柱にグラビティブラストを…』
ルリがハーリーに指示を出そうとした瞬間、アースラとナデシコのブリッジ内に警報とアラーム音が鳴り響き二人はすぐにオペレーターに指示を飛ばしてその原因を確認する。
アースラとナデシコのモニターに映ったのは、確認するだけでもかなりの数の魔獣と大量の機械兵器が離れた場所に出現していた。
「やはり仕掛けてきたか」
『機械兵器の方は私達の方に任せてください。リョーコさん』
『おっしゃ!任せなルリ!』
ナデシコの格納庫ハッチが開きそこからエステバリスが出撃して、エステバリスは機械兵器を破壊していく。
しかし破壊できるのは機械兵器だけであり、魔獣の方はやはり魔法でないと倒せないのか、エステバリスの放つレールガンをシールドで弾きそこから先は行かせないように壁となっていた。
その魔獣の壁を見つめリョーコは露骨に舌打ちをしながらも機械兵器を次々と破壊していく。
「クロノ!」
モニターを見ていたショウがクロノに向けて声を出すが、クロノはショウを出撃させようとしなかった。
ここで魔獣と戦えば確実に体力も魔力も消費してしまう。
自分達には四柱を破壊する役目がある今出撃は出来ない。
クロノが艦長をしているアースラにはショウ達管理局メンバー+将輝がいて、ルリが艦長をしているナデシコCには悠季や稟達協力者メンバーが乗って話し合いをしていた。
「それで、ヴィータやシグナム達に聞きたいんだがベルエスって結局のところ何なんだ?」
アースラのブリッジで話し合いをしているショウ達の話し合いの内容はベルエスについてだ。
ブリッジのモニターにもベルエスの映像が映し出され、ショウがヴォルケンズの方に目を向けて話を切り出す。
「あれは私らがベルカ時代に生きていた時に使われていた兵器だ」
ベルエスを見つめながらポツリと呟いたヴィータに自然と視線が集まっていく。
「かつてベルカ時代に一人の王がいた。そいつは自分の事を凶王と名乗ってあらゆる破壊を楽しんでた」
それこそ魔法を使って人を襲ったり、兵器を使って国を滅茶苦茶にしたり、モンスターを生み出して人々や世界そのものを混沌という二文字に表すほどだ。
凶王には仲間もいてその仲間達も強かったのをヴィータやシグナムは微かに覚えている。
「凶王を倒す為にいろんな国や人が協力しあって動いていた。私達ヴォルケンリッターもその中にいて凶王のいる場所に向かっていた。しかし――」
ヴィータに続くようにシグナムが神妙な顔をしながら口を開き、己の拳をギュッと握り締めながら自分が覚えている事をショウ達に告げていく。
「ヤツはベルエスを使い全てを焼き払った。そして今のベルエスと私達が知るベルエスの違うところはおそらくエネルギーだろう」
「エネルギー?」
シグナムの言葉になのはが首を傾げて聞き返す。
今のベルエスはマテリアルコアを使っているが、凶王がベルエスを撃つときに使っていたエネルギーは全く違った。
あのエネルギーは―――
「凶王が使っていた時に使用されていたエネルギーは、生きた人間の生命力だった。凶王は襲った国の人間達をその場で殺さず生け捕りにしてベルエスのエネルギーにしていた」
そうシグナムが口にした途端アースラ内は一気に静まり返りショウ達の表情が困惑や戸惑いに変わっていく。
しかしショウ達の反応は当然だろう。
何故なら今のベルエスはマテリアルコアを使っているのに対し、ベルカ時代では生きた人間を使っていたのだ。
そんなこと誰だって予想なんか出来やしない。
「んっ?でもよそのベルエスは一度破壊されたんだよな?それにその凶王ってヤツも倒したんだろ?一体どうやったんだ?」
話を聞いてメンバーの中でいち早く我に返った将輝が腕を組んで己の頭に浮かんだ疑問を口にした。
その疑問は将輝だけでなく、ショウ達も知りたかったようでその目は答えを知りたがっているようにヴォルケンズを見つめていた。
ユーノが調べた資料には確かにベルエスが破壊されたと書いてあったし、凶王も倒されたとハッキリ記されていた。
だとしたらどのように破壊して凶王を倒したのかと気になるだろう。
『……』
将輝の問いにヴォルケンズはお互いに顔を見合せその顔は次第に歪められていく。
それはまるでその方法が存在しないと言わんばかりの顔であり誰一人口を開こうとしない。
「どうしたん皆?何で答えてくれへんの?」
自分の家族が答えない事にはやては不思議そうな顔をするが、その横にいたショウはまさかと小さく呟いてとある仮説を口にした。
「もしかして俺が使っているフューチャーデバイスが関係しているのか?」
『……ッ!!』
その言葉とヴォルケンズの反応でショウは顔を歪め納得したかのように唇を噛む。
何故ヴィータやシグナム達がそれを言わなかったか―――
答えは簡単だ、その方法が今では使えないからだろう。
何故なら今フューチャーを使っているのはショウ一人しかいないのだから。
「その通りだショウ」
「アインス」
目を閉じ腕を組んでいたアインスがゆっくり目を開けヴォルケンズに変わって話をし始めた。
あの兵器を破壊して凶王を倒す時に使用されたのはフューチャーであり、フューチャーだけが唯一凶王にダメージを与えていたのをアインは覚えている。
凶王の身体を貫いて倒したのは間違いなくフューチャーであり、フューチャーに選ばれた者達だった。
「でもそれならショウのフューチャーでも出来るんじゃないのか?」
アインスの言葉を聞いて艦長席に座っていたクロノがそう疑問を投げ掛けると、アインスは首を小さく横に振りそれが不可能だとクロノだけでなくショウ達にも伝えるように口を開いた。
「その時使用されていたフューチャーデバイスは三つだった。だが私達の知る限り今フューチャーは一つしかない。せめて二つあれば可能性はあったんだが……」
だがその可能性は潰されてしまった。
クルスが死んだことでフューチャーはもう一つしか存在しないからだ。
「本当にそれしか方法はないのか?」
真剣な表情でそう問い掛けるクロノにアインスはしばらく考えてハッキリと口にした。
「私達が知る限りそれしかないだろう」
その言葉にブリッジは静まり返りアースラはそのままベルエスに向かっていく。
今は四柱に集中しようとクロノが皆に伝えるが、皆の心中は落ち着きなど存在しない。
どうしたらいいのかと皆が思っているに違いない。
それを証拠にはやては難しい顔をして何かを考えておりショウは顔を俯かせ拳を握り締めていた。
その中でクロノもまた一人考える。
(それを見越してクルスを裏切らせたのか。しかし仮にユリナさんが黒幕だとしてもいくつか疑問が浮かぶ。何故ベルエスの事を知っていたんだ?それにベルエスを知っていたとしたら凶王の事も知っていたはず。あの人はどうやってそれを知った?)
クロノは思考の海にダイブするが結局その謎は解決することなく、クロノは何か気持ちの悪い感覚を感じながらベルエスの映像を見つめていたのである。
―――――
全てが白で統一された場所。
ここだけが世界と切り離されたように何も感じさせない場所で一人の女性が横たわっていた。
その女性は起きる気配がなく起きる事を拒否しているように目を閉じている。
そんな女性の傍には仮面をはめた人物が腰をおろして仮面越しに女性を見つめていた。
仮面のせいで表情こそ見えないが、仮面をはめた人物は横たわっている女性をまるで大切なものを扱うように優しく頭を撫でて柔らかな雰囲気を感じさせている。
「……フェイト」
ポツリと呟き仮面をはめた人物は次に小さく『……ごめんね』と頭を撫でながら何回も口にする。
まるで懺悔するように呟き、仮面の内側からポロポロと涙が落ちていきその涙はフェイトの頬に当たっていた。
「私の目的の為とはいえ、私はアナタの大切な人を死なせてしまった。フェイト、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
フェイトを守るために彼は死を選んで消えていった。
彼をそこまで追いつめた原因の一つに自分も関わっている。
あの時彼の屋敷を襲撃してあの人の力の前に傷だらけになってしまった彼の前にフェイトを人質として見せたとき、彼は全てを悟って全てを捨ててあの人の命令通り動いた。
彼はその時、私にだけ聞こえるように『…フェイトを頼む』と口にしてロンド・ラグナで仲間達と戦って死んだ。
だから私は彼の最期の頼みを守るためにフェイトをここに連れてきた。
ここは自分しか知らない場所であり、パートナーである恭介やあの人ですら知らない場所。
「でもいつまでもフェイトをここに置いておくわけにはいかない」
もうすぐベルエスの所に管理局がやって来るはずだ。
その中にはフェイトの友や今の家族がいるだろう。
やり方は強引な上に下手したら傷つけられるかもしれないが、あの方法でフェイトを渡せば怪しまれないはずだ。
「フェイト、私の可愛い可愛い妹。本当はアナタとたくさんお話したかったよ。アナタと一緒にいたかったよ。……だけど私にはやらなきゃいけない事があるの。だから最期にお姉ちゃんからのプレゼントをフェイトにあげる」
そう口にして仮面を外しアリシアはフェイトの額に手を当てて何かを呟くと、フェイトの身体に暖かい何かが流れ込んでいく。
アリシアはそれを確認して最期にこう呟いてこの場所からフェイトを転移させる。
「大好きだよフェイト。……さようなら」
白で統一された場所からフェイトが消えアリシアはしばらくその場に立ち、嗚咽を漏らしながら泣いて全てを終わらせる為に仮面に手を伸ばし装着して己のデバイスを起動させ動き出した。
(母さん、私頑張るからね。母さんを傷つけたあの人を私は絶対に許さない。だから力を貸して母さん)
果たしてアリシアの目的とは?
母親を傷つけた人物とは誰なのだろうか?
そして、眠ったままのフェイトはどうなったのか?
地上本部を出発し十数時間がすぎて、アースラとナデシコCはベルエスが出現した異次元空間にたどり着いた。
禍々しく浮くベルエスを見つめ誰もが息を呑む。
あれがジョーカーズの本拠地であり世界を破壊しようとしている兵器。
「これがベルエスか…」
アースラのブリッジでベルエスを目にしたショウが小さく呟く。
まるで一つの要塞のような兵器。
ベルエスを守るように浮く四柱だけでもかなり巨大だと言えるだろう。
だがショウが気になったのはベルエスの下部につけられている剣の形をした物体である。
あれから黒い閃光が放たれて次元船を全て呑み込み星の表面を変えてしまった。
あれをまた撃たせる訳にはいかない。
「こちらアースラ、ナデシコ聞こえるか?」
艦長席に座るクロノがナデシコに通信を入れると、ナデシコからはルリがすぐに通信に出てきてルリは金色の瞳でクロノを見つめていた。
『こちらナデシコ。こちらもベルエスを確認しました。それにしても予想より大きいですね』
「あぁ。まるで要塞のようだ。それより…」
『わかっています。すぐにでも四柱にグラビティブラストを…』
ルリがハーリーに指示を出そうとした瞬間、アースラとナデシコのブリッジ内に警報とアラーム音が鳴り響き二人はすぐにオペレーターに指示を飛ばしてその原因を確認する。
アースラとナデシコのモニターに映ったのは、確認するだけでもかなりの数の魔獣と大量の機械兵器が離れた場所に出現していた。
「やはり仕掛けてきたか」
『機械兵器の方は私達の方に任せてください。リョーコさん』
『おっしゃ!任せなルリ!』
ナデシコの格納庫ハッチが開きそこからエステバリスが出撃して、エステバリスは機械兵器を破壊していく。
しかし破壊できるのは機械兵器だけであり、魔獣の方はやはり魔法でないと倒せないのか、エステバリスの放つレールガンをシールドで弾きそこから先は行かせないように壁となっていた。
その魔獣の壁を見つめリョーコは露骨に舌打ちをしながらも機械兵器を次々と破壊していく。
「クロノ!」
モニターを見ていたショウがクロノに向けて声を出すが、クロノはショウを出撃させようとしなかった。
ここで魔獣と戦えば確実に体力も魔力も消費してしまう。
自分達には四柱を破壊する役目がある今出撃は出来ない。