ベルエスを攻略せよ!

管理世界に突如現れた巨大な物体。

それはかつて古代ベルカ時代に使用された兵器でありその物体は高エネルギー反応を感知させたと同時に、全てを呑み込む程の閃光を放ちその閃光は次元船を呑み込み星の表面すらも変えたのであった。


「何やのあれ?」


モニターに映った光景にはやては唖然とし口を開けたままモニターを食い入るように見つめている。

それははやてだけでなくショウやなのは達も同じなのか表情は唖然とし固まっていた。

ヴォルケンリッター達は自分達が知っていた兵器がさらに強化されている事実に唇を噛み、ヴェロッサとユーノはある程度予想していたのか会議室にいるメンバー達の中では比較的冷静にその光景を見つめていた。


「今の一撃どう思う?」

「試し撃ち、もしくは次元船の破壊が目的の一発かな」


ヴェロッサの言葉にユーノは答えながら先程の兵器の姿を脳裏に思い返す。

高エネルギー反応が感知され収束から発射まで一分もかかってはいなかった。

まだ第二射目が放たれてないがこの分だと第二射までそう時間はかからない気がする。


「エイミィ!すぐに本局に通信を入れるんだ!」


この事態にクロノはハッとわれに返りアースラにいるエイミィを呼び本局に連絡するように伝えるが、エイミィはクロノの言葉に焦った表情で返した。


『それがさっきから本局に連絡してるんだけど全く応答がないの。まるで通信事態を拒否しているみたいに』

「なにっ…!」


このような事態になっているのに何故本局はそんな事をしているんだ?

あれの威力は本物だ。

もしあれが次元など関係なく使われたらどの世界も壊滅する可能性が高いというのに。


クロノは拳を握り悔しそうに顔を歪めると、ヴェロッサがフッと息を吐き何やら手元を操作し始めた。


「クロノ君、これからの事を一度話し合うつもりならいい場所があるよ」

「どういう事だヴェロッサ?」


あの人なら力になってくれるよ、と含んだように笑みを浮かべヴェロッサはとある人物に通信を入れた。

ヴェロッサが通信を入れたであろう人物に心当たりがあるユーノはクスッと笑みを浮かべると同時に通信相手の声が聞こえてきた。


『やはり通信を入れてきおったなアコース査察官』

「お久しぶりですねゲイズ中将。以前お会いした時は僕が娘さんにデートを申し込んだ時でしたね。あの時の中将の拳は今も忘れません」

「ちょっ!レジアス・ゲイズ中将やん!?」


ヴェロッサが通信を入れた相手は本局を嫌い聖王教会を嫌い地上を愛する男レジアス・ゲイズ中将だったのだ。

通信の相手にユーノ以外のメンバーは目玉が飛び出すのではないかと言わんばかりに目を見開き、ユーノはその反応に笑みを浮かべたがすぐに真剣な表情に変わり口を開く。


「お久しぶりですゲイズ中将。オーリスさんはお元気ですか?」

『スクライア司書長もいたか。娘なら相変わらずだ。それよりも世間話をする為に通信を入れた訳ではないのだろう?本題に入りたまえ』

「了解しました。つい先程管理世界にて次元震が起こりそのあとすぐに巨大な物体が出現しました」

ユーノはレジアスの方に先程の映像データを送り、レジアスはその映像を目にし息を呑んでいた。


「あの物体から放たれた閃光は次元船を呑み込みさらに星の表面すら変えてます。もしあれがピンポイントでミッドを狙ったら間違いなくミッドは滅びます」


撃たれた星は今もなお黒く染まったままでその染まり具合が拡大しているようだった。

徐々に黒くなっている光景を見ながらユーノは考えていた。

星の表面が全て黒くなった時おそらく光が当たることは一生ないだろと。


『あれの恐ろしさはわかった。それでワシに通信を入れた理由は何だアコース査察官?』

「あの兵器が二射目をいつ放つかわかりません。対策を練るためにも場所が必要なので中将のお力を貸していただきたく通信を入れました」

「ちょっ!?ロッサ!?」


レジアス・ゲイズ中将とまるで親しいかのように話す二人にもはやはやて達はついていけなくなる。

本当にこの通信相手はレジアス・ゲイズ中将なのか?

自分達は夢でも見ているんじゃないのか?


戸惑うメンバーを尻目に通信相手のレジアスは一度息を吐いて口を開く。


『ならばすぐにでも地上本部へ来てもらおう。お前達二人が話すべき事はいろいろあるのではないか?』

「ここまできたら隠せませんよ。彼の為にも」

『そうか。他にワシがやることはあるか?』


ヴェロッサは顎に手を置き考え始める。

彼がこうなる事を予想していたならどうする?

矛先を自分に向けて仲間に矛先を向けないようにするなら。


「彼のことです、すでにアナタの直属部下として彼らを配属させているんじゃないんですか?協力者は多い方が助かります。彼らと他の協力者の方々も地上本部にお呼びしていただけると助かります」


ヴォロッサが口にした彼らという単語にレジアスが一瞬目を細めていたが、それに対しヴェロッサも聞いていたユーノも何も口にしなかった。

だが二人は同じことをこの時思っていた図星かと。


『よかろう。ただしアコース査察官にスクライア司書長に言っておく』


デスクに手を置きキリッとした表情といつになく真剣な雰囲気を出しながらレジアスは二人に告げる。


『ワシが力を貸すのはアヤツとの約束だからだ。そこを間違えるな』

「わかっていますよ中将」

「ありがとうございます」


そうヴェロッサとユーノが口にすると通信は切れていった。

二人とも疲れたように椅子に寄り掛かり息を吐き二人は顔を見合せ苦笑する。

彼が自分達に残してくれたものは大きなものばかりだ。

こうなる事まで予想していたとしたらもはや尊敬してしまう。


「あの~ロッサ」

「どうしたんだいはやて?」


どこか挙動がおかしいはやてにヴェロッサは不思議そうな顔をして問い掛ける。

はやてはいろいろとヴェロッサやユーノに聞きたい事があるようだが、どれを聞けばいいのかと迷いとりあえず皆が思っているであろう疑問を口にした。


「アンタやユーノ君は一体何者なん?」

「僕とユーノ君が何者……か」


自分達はただの査察官である司書長にすぎない。

ただショウ達よりも知っているだけであり、ショウ達よりも彼と一緒にいた時間が長いだけである。


「僕もユーノ君もただの好奇心旺盛な人間なだけだよはやて」


この言葉が一番しっくりくると小さく笑いヴェロッサは再び思考の渦に入り込む。

地上本部に着いたらベルエスの事も話すがジョーカーズについても話せばならないだろう。

だが自分もユーノもジョーカーズの出生を知っているだけだ。

ジョーカーズ出生を実行したのは死んだ安藤誠で間違いないが指示した人物がいるはず。

それが誰なのかとヴェロッサは地上本部に着くまで考えていたのである。






~地上本部・会議室~

しばらくナデシコに乗りクルスの事がだいぶ落ち着いてきたショウ達はヴェロッサやユーノに先程のレジアスとのやり取りをしつこく聞いていた。

あのレジアスが陸の人間ではないヴェロッサやユーノと話していたのだ、レジアスを知っている人達からしたら現実とは思えなかった。

そんなやり取りをしつつ地上本部に到着したヴェロッサ達はハーリー達にお礼を言ってナデシコを降りると、ナデシコからハーリーとサブロウタも降りてきて二人もこのまま帰る訳にはいかないらしく話を聞くことにしたらしい。

どうやらルリからの命令のようで、ルリは自分の世界の上司に連絡しその上司からも許可されたらしく二人をヴェロッサ達に任せたようだ。

アースラにいたリンディはいまだクルスの死に立ち直れず、エイミィはそんなリンディに付き添っているため話には参加できないようだ。

会議室に案内されたヴェロッサ達が中に入ると、そこにはレジアス・ゲイズ中将はもちろんのことセフィリア達や悠季達協力者や稟や純一やハヤテ達も会議室にいた。

会議室にいるメンバーを見てヴェロッサとユーノ以外のメンバーはもう考えることをやめることにしただただ視線をヴェロッサとユーノに向けていた。


「はやてやクロノ君達が何も知らないのは仕方ないよ」


そんなはやて達の視線をヴェロッサは苦笑しながら返し会議室の椅子に座らせる。

これだけ揃うのはもうないだろうなと思いながらヴェロッサは笑みを浮かべたままレジアスの方に目を向けた。


「アコース査察官、まさか何も言っておらんのか?」

「話すなら全員いる時がいいと思いましたからね。まさかこんな反応をするとは僕も思いませんでしたが」


どこまでも楽観的に話すヴェロッサにレジアスは頭を抱えため息を吐く。

やはりレジアスの中では何回話してもこの楽観的なヴェロッサのノリについていけないようだ。

胃薬を手にし傍に置いてある水でそれをレジアスが飲んでいる間にクロノが口を開く。


「ヴェロッサ、僕はキミに聞きたい事がある」

「わかってるよクロノ君。ここにいるセフィリアさん達の事だよね?」

「それもだがここに将輝達や稟達かいる事もだ。全て話してもらうぞ」


おそらくこの中で事情を知らないのはショウ達だけである。

セフィリア達も将輝達も稟達も大体の事情をレジアスから聞かされておりこの場にいるのだ。

レジアスが話したのはクルスが起こした一連の事件とその理由と結末と兵器の事だが、それを聞いた者達は様々な感情を露にしていた。

それこそ悲しむ者や唇を噛み締める者や怒りを露にしていた者が多かったが、ここにいない勇人だけはどこか遠くを見て黄昏ていたようだが。


「まずセフィリアさん達だけどクロノ君は今のセフィリアさん達の状態を知っているかい?」

「知っているって彼らは管理局と契約しているんじゃないのか?」

「確かに契約はしていた、けどクルスが神魔杯が開催される前に動いていたらしく彼らをゲイズ中将直属の部下にしていたんだよ」


ヴェロッサの言葉にクロノがはっ?とした顔になりそれを知っていたユーノとセフィリアとベルゼーを除くメンバー全員が驚愕の表情を浮かべていた。

クルスがそれをしたのには理由がある。

その理由を知っているセフィリアが驚愕しているメンバーに話すために口を開いた。


「この事は私もベルゼーも納得して決めた事です。クルスはいつか自分達が契約を切られると思っていたのでしょう。もしそうなった時私達は管理局と敵対する可能性だってある。そうなる前にクルスは気付かれないように私達をレジアス中将の部下にしたのです」


そもそも何故レジアスの直属部下なのかと言うと、レジアスはセフィリア達がどれだけ優秀なのかを知っている人間だ。

自分から後ろ盾になるとクルスに言ってきており、クルスも後ろ盾を得られればセフィリア達を守れるだろうと考えてレジアス直属の部下にしたのだ。


「話しているところ悪いがちょっといいか?」


ヴェロッサとクロノが話している時に将輝が不意に口を開き将輝の目はショウに向けられていた。

いつになく真剣な目をしている将輝にショウは目を細めるなか、将輝はショウ達が会議室に来てからどうしても聞きたい事があったらしく静まり返った会議室の中で口を開いた。


「なぁショウ。クルスは本当に死んじまったのか?」

『……ッ!』


将輝の問いにショウだけでなくクルスと戦った者達は顔を俯かせる。

たったそれだけの行動で答えているようなものだ。

その事実を目にし今まで泣くのを我慢していたイヴの肩が震え始める。
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