地獄のペーパーテスト

~こうして迎えたテストの日~


「おーい!今すぐその悪あがきはやめてHRを始めるぞ」


紅女史が教室に入って来てそれぞれが自分の席に戻って教科書等をしまう。


赤点候補者組の数名は余裕なのか表情がいつもと違った。


「何だか気味が悪いな…」

「紅女史よ!今回の我々は一味違うところをみせてやろう!」

「生まれ変わった力を…」

「見せつけてあげるよ~」

三人娘の気迫に紅女史は苦笑しながら出席をとり始めた。








△▼△▼△▼

HRが終わってすぐに担当の先生が来てテストが始まった。


~英語~

【問1】
『HEAVEN←は何と発音するでしょう?』


(ヘヴンでいいだろ…)


ショウはスラスラと答えを書いていたが、


(へ…ヘ…ヘベン!)


稟君ヘベンって何でしょうか!?


(ヘアベン…っと。ハヤベンの仲間でしょうか?)


ハヤテ君、ヘアベンってヘベンより意味が分かりませんが。


~英語終了~


~現代文~

【問1】
『犬も歩けば…?に続くように言葉を加えよ』


(棒に当たる…)


クルスは当然答えを書いている。


しかし――

(犬も歩けば……疲れるッス!)

シアさん。

それでは諺になりませんが、


(犬も歩けば…メスに声をかける)


樹ーーー!!

くだらない答えを書くなーー!!


(犬も歩けば…歩けば…歩けば…拾われて育ててもらえるのですよ!)


もう…何も言えません…


~現代文終了~

~歴史開始~

【問1】
『日本の魔王とは誰でしょう?』


(信長…)

(信長かな?)

(信長です…)

(信長に決まってるじゃないか!)

(これは信長…)


ショウやクルス達正解者組は良かったのだが、

(ヒナ…)

(ヒナっと…)

(ヒナちゃんに決まっているよ!)


いやいやいや!!この三人は何を書いている!?


(マリア)

(マリアさん…)

(そりゃあ、マリアさんやろ?)

(マリアさんっと…)


おいおいおい!!こっちも間違ってるぞ!!


(…なのは)

(なのはちゃん…)


(何だろう?この不愉快な気分は…)


フェイトとはやてはおもいっきり地雷を踏んで、なのはは真っ黒なオーラを放出していた。

そのオーラにいち早く気付いたフェイトとはやては背筋が凍り付いたそうだ。


(おじさんだろ?)

(お父様…)

(リンちゃんのお父さんッス!)

(こんなの朝飯前なのですよ!)


稟達はどこか違う。

それは魔界の魔王なのですが?

~歴史終了~





~オマケ開始~


【問1】
『アナタの最も怖いものはなんですか?』


(なのはのSLBしかない!)

ショウは震えながら書いている。

余程怖かったのだろう。


((親衛隊…))


稟とハヤテは正直に書いている程怖いのだろう。


そしてクルスは――


(真っ黒いオーラのフェイト達…)


何やら暴露しているが、









そして―――


「時間だ。一番後ろの人はプリントを回収しろ」


テストの最後の教科も終わり、「終わったー」等と声を出している者達もいる。


「ショウ君!テストどうやった!?」


「いつも通りだよ。お前はどうなんだよ?」


「バッチグーやで!」


可愛らしく笑って言ったはやてにショウもつられて笑った。



「クルスはどうだった?」

「やっぱりブランクもあったしイマイチだったよ。イヴはどうだった?」

「私は大丈夫だよ。クルスのプリントのお陰だね」


満面の笑みでイヴが言うとクルスは視線をそらして口を開いた。


「大丈夫なら安心したよ」

「ブツブツブツ…」


そんな光景の近くで麻弓が真っ白になってなにやら呟いていた。






~テスト結果発表~


待ちに待ったテストの結果発表――

紅女史が勢いよく扉を開いて教卓をバンッと叩くとゆっくり口を開いた。


「今回のテストで夏休み………私とデートをするのは」


ドキドキとワクワクが渦巻くなかで赤点者の名前が伝えられた。


「ワタルと麻弓の二人だ!!」

「「えぇぇぇ~!!」」


二人は次の瞬間声を出して立ち上がる。


「実に惜しかったぞ…」


紅女史の言葉に二人は真っ白になってしまった。


「…さてと!テストが終わって三日後から夏休みに入るが羽目を外しすぎるなよ……特に緑葉!!」

「大丈夫ですよ紅女史!ちゃんと証拠は残しませんから」


紅女史は呆れて溜め息を吐いたが樹は眼鏡を光らせていた。


「あと、クッチーにシッチーの二人は放課後残っておいてくれないか?」


いきなりの事に二人は顔を見合わせて首を傾げる。


「実は一人に備品運びを、もう一人に書類整理をしてほしいんだが…」


紅女史の頼みに二人は断る理由もなかったので、


「俺はいいですよ」

「僕も時間はありますので構いませんよ」


二人はあっさりと了承した。


「助かる。じゃあ役割は二人で話し合ってくれ。それじゃあ頼んだぞ」


それだけ言って紅女史が教室から去っていくと、二人はすぐに話し合いショウが備品運び担当となりクルスが書類整理担当となった。

そんな二人から少し離れた場所では――


「あれは彗星かしら?見てみて楓ー!綺麗な星がいっぱいなのですよ!」

「まっ、麻弓ちゃん!まだ朝ですよ!帰ってきてくださーい!」


真っ白に燃え尽き幻覚を呟く麻弓に楓が必死に呼び掛けていたり、


「あ~地球滅びないかな~」


ワタルはワタルで現実逃避をかまし遠い目をしていた。

そんなワタルを咲夜が励まそうとしたが、


「ワタル君」

「いいい、伊澄!?どうしたんだ?」

「地球が滅びるという予言は今まで当たった事がないので今すぐ滅びる事はないですよ」

「知ってるよーーー!」


鷺ノ宮伊澄がトドメをさしてワタルは泣きながら教室から飛び出してしまう。


「…伊澄さん。それはさすがのウチもワタルを同情してまうわ」


咲夜の呟きにナギとハヤテは小さく頷くのである。





~ショウside~

「ダルいな…」


箱を運びながらショウは愚痴っていた。


「まぁ、書類整理よりは運ぶだけだしすぐに終わらせるか」


物置小屋のような部屋に備品を入れていると、


「ショウ君差し入れやで~!」


はやてがジュースを持ってきてショウに投げながら渡す。

バタコさんも真っ青な見事なフォームで投げたはやてが渡したジュースには【極みイチゴオレ】と書いてあった。


「甘っ…!」

「ん~やっぱりショウ君には甘過ぎたかな?」


はやては苦笑しながら見つめていると備品に目を向けた。


「まだ結構あるんやな…」

「けど運ぶだけだろ?クルスの作業と比べたら余裕だぞ」


顎に手を当てて何かを考えていたはやては、何を閃いたのか備品に手を伸ばして持ち上げていた。


「私も手伝ったる!一人より二人の方がええやろ?」

「無理だって、はやては女の子だろ?大人しく座ってろ」


ショウはジュースをゴミ箱に入れてはやての備品を取ったが、


「大丈夫やって!私だってショウ君の手伝いしたいもん」


はやては強引に備品を奪った瞬間、


グラッ!!


備品の重さに足がふらついて転びそうになったが、ショウに抱き止められて備品だけが下に落ちていた。


「だから言っただろ?無茶すんなって…」


ショウは呆れながらはやてに言うのだが、はやてはそれどころではなかった。

それもそのはず――


(ショウ君に抱き締められとる…!あかん…嬉しすぎるわ!)


はやては嬉しさのあまり顔を真っ赤にしてショウの胸に顔を埋めていたのだから。


「はやて?」


「もうちょっとだけこうさせてくれへん?」

「……あっ、あぁ」


はやてが抱きついている事にショウも恥ずかしくなったのか頬を赤く染める。


「…ショウ君」

「何だよ?」

「顔真っ赤やで?」

「それははやてもだろうが!」


こうしてショウとはやてはしばらく抱き合い、様子を見に来ていた紅女史が来るまでそのままだったらしい。






~クルスside~


「ちょっと休憩するか」


クルスは書類をひとまず片付けて休憩をとり仮眠をする事にした。

しかし――クルスは誰にも言えない事がある。

クルスはよく悪夢を見る事がありしっかりとした睡眠がとれないのだ。

目を閉じて少しだけ休憩していると、

「クルス、作業手伝いにきたんだけど大丈夫?」


フェイトがやって来てクルスは目を開けてフェイトに視線を向ける。


「…フェイト?今日は確か管理局の仕事じゃなかった?」

「クロノから今日は大丈夫だから休めって言われて、それでクルスのお手伝いでもしようかなって」

「それは嬉しいけど、休まなくてもいいの?せっかくだし楓やイヴ達と買い物でも…」

「私はクルスと一緒にいたいの。……ダメかな?」


まるで捨てられた子犬のように涙目で見つめるフェイトにクルスは苦笑して手招きをすると、フェイトは嬉しそうに顔を綻ばせクルスの隣に座る。

まるで本当の犬のようにフェイトが尻尾を振っている幻覚がクルスには見えてしまう。


「書類はあとこれだけ?」

「あぁ。ほとんど終わらせたからね。後は数年前の書類をファイルにまとめるだけだよ」


そう口にしながらクルスはアクビをしてしまう。


「眠いの?」

「少しね。最近徹夜ばっかりだったから」


本当は眠れてないが正解なのだがそれをフェイトに話す訳にはいかない。

そんなクルスにフェイトは近くにあるソファーに目を向けると、何かを閃いたようでソファーに座り膝をポンポンと叩く。


「少しだけ眠っていいよクルス」

「フェイト?」

「今のクルス、無理をしているように見えるから。目元に隈もあるし」


本当によく見てるんだねフェイト。

敵わないな――


「……じゃあ少しだけ眠るよ」


フェイトの膝に頭を乗せゆっくりと目を閉じる。

何故だろうな。

今だけは悪夢を見ない気がする。

久しぶりにちゃんと眠れるかもしれない。


「お休みなさいクルス」


安心したように眠るクルスにフェイトは優しく微笑むのだった。








次回予告

イヴ
「こうして迎えた夏休み」

伊澄
「貸し切りの島で皆さんとの楽しい日々が始まります」

マリア
「次回S.H.D.C.――
第五話――
ビバッ!夏休み」
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