降り注ぐ閃光

ヴェロッサの言葉にクロノは目を細め考え始めた。

何故ここでフェイトの名前が出てくる?

確かにフェイトがいない事は疑問に思ったがフェイトは今日別の任務でいないはずだ。

それなのに何故フェイトが関係している?


「…まさか」


ヴェロッサの言葉の意味に誰よりも早く気づいたはやては顔色を真っ青にし震える口調で自分が導きだした答えをそのまま口にした。


「フェイトちゃんを人質にされたんか?」

「なっ!」


はやての言葉はクロノだけでなくショウ達も驚く。

もしはやての言葉通りならここにフェイトがいないのも納得できる。

クルスがロスト・ロギアを奪った理由や自分達と戦った理由にも結び付く。

しかしフェイトは今日任務だとユリナさんが言ってたはずだ。


「はやての言葉通りだよ。クルスはハラオウン執務官を守るためにロスト・ロギアを奪いキミ達と戦ったんだ。僕はそれをレンに聞かされてクルスを止めようとしたのに止められなかったんだ。全てを捨ててまで彼女を守りたいと口にしたクルスを止める事なんて出来るわけがない」

「……そんな」


だとしたらクルスはフェイトの為に全てを捨てて戦ったという事になる。

仲間を友を捨ててまでフェイトを守りたかったんだ。

他にも道はあったかもしれないのにフェイトを守る事だけを考えて動いていた。

それだけクルスにとってフェイトは大切な存在だったのだろう。


「待てヴェロッサ、お前やユーノはレンに聞かされて知ったと言ったな。レンは何をお前達に言ったんだ」


クロノはヴェロッサの胸ぐらから手を離しヴェロッサの発した言葉に疑問が浮かびそれを問い掛ける。

レンは何を話した?

頼むと言ったなら何かを知っていたはずだ。

レンやクルスは何を二人に託し頼んだのだ?


「僕らが知っているのはクルスがロスト・ロギアを奪った本当の理由とキミ達と戦うこと。それとジョーカーズのデータの場所やこれから起こる事ぐらいかな。ジョーカーズの秘密は後で話すとして問題はこれからだよクロノ君」


どういう意味だと眉を寄せるクロノに今まで黙っていたユーノがゆっくり立ち上がり皆を見つめながらその疑問に答え始める。


「ヴェロッサの言葉の意味の前に僕の方から話がある。それを皆に教えてから問題について話そうと思う」

「どういう事ユーノ君?」

「なのは、おかしいと思わなかったかい?どうしてフェイトが人質になったのか?僕はレンに聞かされてフェイトは任務があった事を思い出したんだ。でも一つ疑問が浮かんだ。本当にフェイトは今日任務があったのかって。そして調べてそれがハッキリわかった」


メガネを光らせユーノは衝撃的事実を口にした。


「フェイトは今日任務なんかなかったしなのは達同様休みだったんだ。だから僕は考えた、誰かがフェイトを呼び出したんだってね。それで僕はフェイトの補佐をしているシャーリーにフェイトの事を尋ねたんだけどびっくりする人がフェイトを呼び出してたんだ」


誰だと思う?と全員に問い掛けるように視線を向けるユーノにショウ達は考える。

ユーノの顔を見る限り自分達が知っている人物になる。

本局の上層部か?

それとも地上部隊の人間か?

答えが出ない皆をユーノは仕方ないかと呟きその答えを伝える。


「教えてあげるよ。フェイトを呼び出したのはキミ達にクルスを追うように命令したユリナさんだよ」


ユーノの言葉に会議室は一気に静まり返った。

皆が信じられないという顔をして、クロノに至っては後ずさっている。

ユリナは自分達にフェイトは任務があると言った人物だ。

ユリナが言ったから信じていたがそれは嘘だと言うことになる。

しかし何故嘘をついた?


「そして今本局は大変な事になっているんだ」

「何やのユーノ君?」

「ユリナさんが姿を消した」

『!?』


ユーノの口から追い討ちに近い言葉が発せられた。

嘘までついて姿を消したとしたらこの一連の流れはどう考えてもユリナさんが関係しているとしか言えない。

もしユリナさんがフェイトを拐いクルスを脅したとしたら全て納得が出来る。

ユリナさんの実力ならクルスを脅せるし弱点だって知っているはずだ。


「そして問題はここからだ。レンが僕達にベルエスの事を教えてくれて調べたんだけど、もし僕の考えている通りならあれはかなり厄介な兵器だよ。ヴィータ達も知っていると思うけどあれが使われたらどの世界も壊滅してしまう」


ベルエスの事をヴェロッサと調べ二人は絶句していた。

あれはアルカンシェルよりも危険な代物だ。

下手すれば今まで見てきたロスト・ロギアが赤子に近いぐらいベルエスは凶悪な兵器なのだ。


「待てユーノ、ベルエスとユリナさんが何故関係している?」

「それは……」


クロノの問いにユーノが答えようとした時だった、


『皆大変!』


ナデシコの会議室に通信が入りその通信はアースラにいるエイミィからで、その通信に応答しクロノが見たのは目を腫らしたエイミィの顔だった。

しかし今はそれどころではないのかクロノが慌てているエイミィの通信に返した。


「どうしたエイミィ?」

『さっきとある管理世界で局地的次元震が起きたてその場所に巨大な物体まで出現したって報告が入ったの』

「ユーノ君……」

「ヴェロッサの考えている通りだよ。おそらくベルエスだ」


エイミィの通信に二人はすぐにその正体がわかり口にする。

やはりクルスの言った通りすぐに出現させたようだ。


「エイミィ、その映像こっちに映してくれ」

『お任せだよクロノ君』


クロノに指示されエイミィはすぐさま操作を開始し会議室の壁にはアースラに映し出されているものと同じ映像が写し出された。

その巨大な物体を見たヴォルケンリッター達は唇を噛む。

自分達の記憶通り巨大な物体はベルエスで間違いない。

禍々しく浮かぶそれの中心部分にある剣のようなものはエネルギー砲を放つ場所だ。


「まさかまたあれを見ることになるとは……」

「最悪ね」


ザフィーラとシャマルはベルエスを見て顔を歪める。

古代ベルカ時代であれほど凶悪な兵器は見たことがなかった。

まさか再びあれに関わることになるとは悪夢だと顔はものがったっていた。


『あれが出現して動きはまだないみたいだけどって……嘘!』

「どうしたエイミィ?」

『あの物体から強大なエネルギーを感知。まさか――』


モニターに映っている物体の中心部分が黒く光だし、剣の色が白から黒に変わったと同時にその剣から全てを呑み込むような閃光が放たれその閃光は本局から派遣され様子を見に来ていたいくつもの次元船を呑み込み、さらに巨大な物体の下にある星に降り注ぎ星の表面は黒く染まり果てていくのであった。


「おいシグナム……」

「あぁ。あれは私達が知っているベルエスではない。あの時よりも威力が上がっている」




ついに放たれた終焉を呼ぶ閃光。

世界の命運をかけた戦いが今始まろうとしていた。

果たしてショウ達は世界を守れるか?

ショウ達の最後の戦いはこうして始まりを告げるのであった。


次回予告

悠季
「クルスの死と共に始まる本当の戦い」

将輝
「敵は強大な力を持つ者達」


「それでも俺達は諦めるわけにはいかない」

勇人
「次回S.H.D.C第三十六話。
【ベルエスを攻略せよ!】に…」

勇&奏也
「「ドライブイグニッション!」」


HEAVEN-35
END
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