激突

「ザフィーラが倒れた瞬間から僕の隙をうかがい砲撃の影響や落ちてくる岩の影響が最も少ない背後に身を隠していた。ショウ達の援護を諦め僕の動きを止めるという事を優先した。その判断は流石だね」

「クルス君の動きを止めるならこうするしかないと思ったの。下手に援護するよりクルス君ならどうするかを考えたらこの答えにたどり着いた」


なのはとしてはあの岩の落下の時から皆の援護をしたかった。

しかしクルスの狙いにいち早く気づいたなのははクルスを止めるならこうするしかないと決断し援護を諦め今まで身を隠していたのだ。

全てはこの瞬間の為にだ。


「クルス君これで終わりにしよう。今ならまだ間に合うよ」

「間に合う……か」


なのはの言葉にクルスはフッと笑う。

なのはの言葉や行動は普通なら諦めがつく言い方として捉える事が出来る。

だが自分には通用しない。

悪いがなのは―――

僕は止まるつもりはない。


「さすがはあの計画に選ばれただけはある」

「計画?何の話かなクルス君?」


クルスがフッと笑いポツリと呟いた一言になのはは目を細めその呟きに反応するように口を開く。


「感心しているのさ。『ジョーカーズを生み出した原因』の一人が僕にそんな事を言うなんてね」

「……えっ?」


クルスの言葉になのはは耳を疑う。

今クルスはなんと口にした?

誰がジョーカーズを生み出した原因だと口にした?


「少し面白い話をしてあげるよなのは。ジョーカーズが一人のDNAから生み出されたと前に言った事があったよね?けど実際は一人のDNAではなく一つのDNAを媒体としその媒体と他のDNAを混ぜ合わせて作られたのさ。時空管理局の全ての局員の中からとある三人が選ばれた。何故その三人が選ばれたのかはわからないが、安藤誠にとってキミ達は素晴らしい素材だったのかもね」

「なっ、何を言ってるの…?」


レイジングハートを握るなのはは顔色を次第に変えていく。

なのはの頭に浮かぶ嫌な予感。

それだけは絶対に聞きたくない。

ありえないと口にしたいのになのはの口は全く動かなかった。


「…その計画でかなりのクローンが生み出されたが成功体はなかなか生まれなかった。しばらくして一人の成功体が生まれ名前がつけられた。その者はナイトジョーカーズ光帝の明日香。――高町なのは。キミのDNAが彼女に使われているのさ」


ただ静かに告げられた真実になのはは目を丸くしながら固まる。

ジョーカーズを生み出す時に自分のDNAが使われた?

そんな事信じられるはずがない。


「……嘘だよね?ジョーカーズが…私のDNAで…」

「ジョーカーズ全員がキミのDNAで生まれた訳じゃないさ。詳しく知りたいなら調べればいい。管理局の裏データベースには当時の記録が残っている」

「そんな嘘信じれない!そうやって私を動揺させようたって……!」


レイジングハートを持つなのはの手は震え目はギュッと閉じられ否定する。

絶対に嘘だと。

口からでまかせを言ってるに違いない。


「……あっ!」


なのはが目を閉じた隙にクルスは動きなのはから離れていく。

離れていくクルスになのははディバインバスターを放とうとするが、それよりも早くクルスがなのはに向かって砲撃魔法を放つ。


(彼女の為なら――僕は戦える。たとえそれが友であろうと!)

「終わりだ!シャイニングバスター!」


二つの銃口から放たれた白い閃光になのはは動けずにいた。

間違いなくそれはなのはの意識を奪う威力である。

白い閃光が迫りなのはを呑み込む瞬間、


「なのはぁぁぁぁ!!」

「……なっ!」


なのはを守るようにショウが現れショウはなのはを抱えその閃光の斜線上から離れる。

それと同時にクルスも体勢を整える為に後退しなのはを庇ったショウを見ながら双剣を構える。


「――やっぱり最後はキミかショウ」


クルスの目にうつるショウは剣を持ちなのはを守るようになのはの前に立つ。

ショウの目に宿るのは怒りという感情。

クルスが放った一撃をもしなのはが受けたら倒れているはやて達同様に気を失っていたはずだ。

これ以上友を傷つけられたくないショウはクルスと対峙しながらゆっくり口を開く。


「…なのは立てるか?」

「ショウ君…」


なのははいまだに動揺しているのか身体は震え表情も真っ青になっていた。

なのはの反応は当たり前の事だろう。

今まで戦っていたジョーカーズの中に自分のDNAが使われた者がいたかもしれないからだ。

しかもクルスは三人と口にしていた。

おそらく残りの二人はフェイトとはやての可能性が高い。

だとしたらこの状況で話したのは――


「なのは聞いてくれ。クルスが言った事は多分本当だ。こんな状況でアイツが嘘をつくとは思えない。今まで隠していたのにクルスは決心したように口にしたんだ」


ショウの言葉になのはは顔を上げ目にうっすらと涙を溜めながらゆっくりと疑問を口にする。


「……どうしてそんな事が分かるの?」


なのはの問いにショウは真っ直ぐクルスを見つめ自分なりに思った事をそのまま口にしていく。


「俺はクルスと親友だからだ。だからこそ俺は考えた。ロスト・ロギアを奪ったのもここで俺達を倒そうとするのも何か目的があるんだろうってな。今ここでジョーカーズの秘密を口にしてなのはの気持ちをかき乱してまでクルスにはやらなきゃいけない事があるんだ。そうだろ――クルス?」

「……ショウ」


ショウの言葉にクルスは冷たい目付きになり殺気を込めた口調でショウの名を呼ぶ。

目の前の男は全てが分かったかのように口にした。

僕の決意を僕の思いを理解したようにだ。


「そうやって……」


双剣を持つクルスがショウに向かって駆け出す。

二本の刃がショウを捉え振り抜かれるがショウは二本の刃は剣で受け止める。


「何でも分かったように口にするな!」

「お前の決意や気持ちなんてわかんねぇよ!今の俺に分かるのは、お前が俺達の友だって事だけだ!お前が俺達と戦う道を選んでもまたお前と一緒に戦えるって信じてるんだ!」

「……ッ!今さらキミ達と馴れ合うつもりはない!」


刃を振るい後退するショウから離れクルスはただ真っ直ぐにショウを見つめる。

クルスは自分が決断したこの道に迷いなどなかった。

今まで一緒に戦ってきた友や仲間ですらも捨てて戦うと決めたのだ。


「僕は自分が選んだこの選択に後悔はない!この戦いでキミ達とのキズナを全て断ち切る!」

「なら俺はお前を連れ戻しそのキズナを守ってみせる!」


キズナを捨てようとするクルスとそれを守ろうとするショウ。

避けられない二人の戦いが始まろうとしていた。

そこに待ち受ける運命は?

決着の刻は近い。








次回予告

ユーノ
「互いの思いをぶつけ合うショウとクルス」

ヴェロッサ
「友を連れ戻す為にショウは全力で戦う」

なのは
「そして終わる戦いと始まる物語」

はやて
「次回S.H.D.C第三十四話。
【託されし光】に…」

リンディ
「ドライブイグニッション」


HEAVEN-33
END
2/2ページ
スキ