神魔杯ダイジェストその二

不規則に迫るフレアニードルを上空に飛び上がりギリギリまで引き付けて、アクセルシューターで相殺していく。

四方八方から迫るフレアニードルになのはは触れる直前に下降し、フレアニードルどうしをぶつける。

放っていたフレアグラビトがいつの間にかなのはの眼前に迫っていたが、至近距離からディバインバスターを喰らわせて消滅させる。


「けっ!めんどくせぇな女。こっちは楽に終わらせてやろうと思ったのにな」


扇を閉じてトントンと肩を叩き不機嫌丸出しな表情を浮かべるノヴァに対してなのはは顔色を変えず真っ直ぐな瞳でノヴァを見つめていた。

負けられない――

負けない!

なのはのレイジングハートを握る力が強くなる。


「チッ、仕方ねぇな。起きろバーニャ」

『ようやく俺様の出番かノヴァ』

「あの男との戦いまでお前を使うつまりはなかったが。まぁいいか、モードグラビテーション!!」

「えっ、なにっ!?」


扇を上空に放り投げた瞬間、辺り一面に輝く赤い光。

その光に目を塞ぎ目を瞑るなのは。

モニターを見ていた者達全員までも視界を奪われたようで目を瞑りモニターから視界を外す。


「一体何が……」


光が収まりゆっくり目を開けたなのはの目に入ったのは、全身を機械のようなアーマーで身を包んだノヴァの姿だった。

赤いアーマーを纏ったノヴァは手を閉じたり開いたりと感覚を確かめているようだ。


「久々の姿だが、違和感ねぇなバーニャ」

『当たり前だろノヴァ。俺様を誰だと思っていやがる』

「減らず口は相変わらずか」


これが本当にあのノヴァなのだろうか?

夏休みの時は狂ったように戦っていたのに今はどうだ?

落ち着きがありその雰囲気にのまれそうになるなのは。


「さてと、悪いが女。お前の勝ちはこれでなくなったぜ」

「私を甘く見ないでよ。アナタがどんな姿になったって私は負けない!」

「だったら死にな!」


ノヴァの背後が爆発したかのような音が鳴ると物凄い勢いでなのはに突っ込んでくる。

迫り来るノヴァにアクセルシューターを放つがノヴァはそれを殴り飛ばしていく。


「ならっ!」

上空に飛び上がりノヴァが接近する前にディバインバスターを放つが、

「だから無駄なんだよ!」と声を上げノヴァはディバインバスターをアッパーで弾き飛ばしなのはの表情を驚愕に染める。

いや、なのはだけでなくモニターを見ていた者達の殆どが目を見開いている。

あのなのはのディバインバスターを拳一つで弾き飛ばしたのだ――


「……げろ」

「ヴィータ?」

「逃げろなのはーー!!」


モニターを見ていた中でヴィータだけが声を荒げ叫びショウが首を傾げている。

正気の沙汰とは思えないノヴァの動きにヴィータは戦慄していたのだ。

このままではなのはが危ない。


「レイジングハート、エクセリオンモード……ドライブ!!」

『イグニッション!』


レイジングハートの形態が杖から槍のような姿へと変わる。

このままでは勝てないと感じたなのはは、たとえ身体に負担がきたとしても負けられないと想いとショウの隣に立つためにエクセリオンモードを使用した。


「なのは……」


その行動にショウは拳を握りしめる。

かつてなのはがこれを酷使していたせいで倒れたのをショウは知っているからだ。


「なんだその槍は?そんなんで俺のアーマーを壊せると思ってんのかよ!!」

右腕のアーマーから二発マガジンを消費されて右腕のアーマーが激しく燃え上がる。

右腕から燃え上がる熱気に額から汗をわずかに流すなのは。


「バーニングナックル!」

『プロテクション』


総也の拳をプロテクションで防ぐがプロテクションを張ったなのはは目を丸くしていた。

威力は塞いだのに熱は確実に自分にダメージを与えていたからだ。

(暑い、熱は防げないなんて……っ!)

熱から逃げるためにもなのははアクセルシューターをノヴァめがけて放つが、ノヴァはニヤリと笑ってアクセルシューターを回し蹴りで破壊した。


「この俺を……ってあん?」

「これならどう?カートリッジロード!」

『ディバインバスターエクステンション!』


先程の砲撃よりもさらに強力なピンク色の砲撃が一直線に放たれてピンク色の砲撃は確実にノヴァを捉えていた。

その光景にそれを見ていたヴィータがホッと安心したように息を吐く。


しかし――

「成る程な少しはやるようだな女」

アーマーにヒビも入らずノヴァはピンピンと立ち腕を組ながら笑っていたのだ。

その姿になのはは顔を歪め苦痛の表情を浮かべる。

「そんな……」


エクセリオンモードのディバインバスターを喰らって並みの魔導師なら撃墜できるのに、目の前で腕を組んでいるノヴァは何事もなく立ち笑っていたのだ。


「さっさと落ちろよ女!」

「まだ!!」


突っ込んでくる拳をフラッシュムーヴで回避し背中を見せているノヴァ目掛けて至近距離からディバインバスターを放つ。

無防備な背中に叩き込まれノヴァは勢いよく地面に叩きつけられていくが、なのはは一瞬だけ見えたノヴァの表情に顔を強張らせる。


(笑っていた?……どうして)

「それはなこういう事だよ!」

「えっ!?」

「バスターナックル!」

「きゃっ!」


地面に叩きつけられた筈のノヴァが背後から現れて強化された腕でなのはを殴り付けて地面に叩きつけたのだ。

咄嗟にプロテクションを張り身体に若干のタイムラグで当たったのだが、それでもなのはに対してのダメージはでかく倒れたまま動けないでいた。


「お前の疑問に答えてやる。さっきの砲撃は確かに俺に直撃したぜ。だがな俺はそのまま地面に潜ってテメェの背後に来たんだよ。俺とテメェとじゃ最初から勝負にすらならねぇって事がわかったか?」

(負けたくない……)


脇腹を抑え立ち上がり口元から流れる血を手で拭いノヴァを見つめるなのは。

骨の一、二本は確実に折れただろうなと苦痛の表情を浮かべながら確認していく。


「アナタには負けない!私は大好きなあの人の隣に立つの!」

「ならテメェの全力でこいよ!全て受け止めてやるよ女ァ!」

「私は高町なのは!女って名前じゃない!」


レイジングハートをノヴァに構え一度息を吐くと、キッとした表情で口を開く。


「レイジングハート!」

『A・C・Sスタンバイ!』

「アクセルチャージャー発動!ストライクフレーム!」

『オープン』


レイジングハートの形態が再び変わっていく。

かつて闇の書の意思と戦った時に使ったあのモードを再び使うのだ。


「エクセリオンバスターA・C・S!ドライブ!」

その言葉と同時にノヴァに向かって突っ込んでいくなのは。

右腕のアーマーを突き出してレイジングハートの先端を受け止めるノヴァ。

バチバチと火花が散る状況でもなのはは怯むことなく突き進む。


「届いてぇぇぇぇ!!」

「そんなちゃちな魔法で……なっ!?」


エクセリオンの実体剣が拳のアーマーを破壊し、なのはは更にカートリッジを三発使い先端に膨大な魔力が集まり六枚の翼が出現する。


「この程度で!!」

「バスターーー!!」


零距離からのエクセリオンバスターがノヴァに炸裂してノヴァは膨大な魔力攻撃を喰らい吹き飛んでいく。

その光景になのはは脇腹を抑えたまま見つめる。

自分の今の状況で使える最大魔法。

もしこれで倒れなかったら自分の敗けであり倒れたならば自分の勝ちとなる。


「レイジングハート無理させちゃってごめんね」

『私なら大丈夫です。マスターこそ大丈夫ですか?』

「にゃははは、ちょっと無理しちゃったかな~」


ペロリと舌を出しながらノヴァが吹き飛ばされた方に視線を向ける。

吹き飛ばされたノヴァは爆煙に呑み込まれて姿を確認出来ないが、なのはやモニターで見ている者達は緊張したように強張っていた。


『ノヴァ選手、果たして無事なのか~!!』


ユキナの実況と同時にゆっくり煙が晴れていき皆の目に入ったのは、


「……かはっ!!流石にこいつはやばかったか」


頭部のヘッドギアは壊れ、両足のアーマーは粉々に砕け散り額からは血を流しながらもニヤリと笑みを浮かべて立っていたノヴァの姿だった。

荒い息を吐きながらも身体に力を込めて立つノヴァになのははショックを隠しきれず膝をつく。


「……そんな」

『マスター』

零距離から受けた砲撃を喰らったのにノヴァは倒れなかったら。

もう自分に魔力は殆どなくバリアジャケットを展開するだけで精一杯だ。

あと少しで倒せるのに力が入らない。


「どうやら俺の勝ちのようだな。とっととギブアップしろ!」

「……どうして」

「あん?」

「私を殺さないんですか?私とアナタは敵ですよ」

「殺してやりたいのもやまやまだがな――」


軽く舌打ちをしながらゆっくりなのはに近づいていくノヴァ。

膝をつくなのはの胸ぐらを掴みノヴァは無関心という表情でなのはに向かって口を開く。


「テメェは殺す価値もない。俺は最初からあの男にしか興味はないからな。(何よりあの方にこの女を殺すなと言われたからな)……それにお迎えも来てるみたいだしな」

「えっ……?」


なのはの胸ぐらから手を離してノヴァは視線をなのはから少し離れた方に向けて、なのはもゆっくりとそちらの方を向くとそこにいたのは、


「なのは!!」

「ショウ……君」


フィールドにはバリアジャケットを展開したショウが現れて、ショウがなのはに近付くとノヴァはなのはに背を向けて歩き出した。


「大丈夫かなのは!?」

「にゃははは、心配しすぎだよショウ君」

「仕方ないだろ心配だったんだから。なのは、よく頑張ったな」


なのはの頭を優しくポンポンと撫でて優しく微笑むショウになのはは、目頭に熱いものが込み上げてきたがそれを我慢してショウに寄り掛かるように倒れ込む。

泣くのを我慢して震えるなのはをショウはただ優しく頭を撫でるのだった。

そんな光景にノヴァは去る前に口を開く。


「聞けショウ!次はテメェがそうなる番だ、せいぜい無様な姿を見せないようにするんだな」

「それはこっちのセリフだノヴァ!」


こうしてなのはの全力に勝利したノヴァがこまを進めショウとノヴァの戦いが決まったのだった。
2/3ページ
スキ