神魔杯ダイジェストその二
ショウVS将輝
譲れない戦い
ユーノと湊の互いの全力をかけた戦いが終わり、ショウと将輝の戦いが始まる。
ショウは目の前で剣を肩にかけいつになく真剣な表情で対峙する将輝を見つめていた。
いつもはふざけた将輝とは違い今の将輝は一瞬でも気を抜けない表情をしている。
「ショウ、悪いな。本当ならお前とクルスを戦わせてやりたかったんだが」
「その言い方だと俺に勝って自分がクルスと戦うと聞こえるぞ将輝」
「アイツの戦い方もそうだが、昔俺と交わした約束をアイツは忘れていやがる。ハッキリ言うなら殴らねぇと気がすまねぇ」
拳を握りその顔にはハッキリと一つの感情が浮かんでいる。
喜怒哀楽で言うなら今の将輝は、ただ静かに怒の感情を浮かべていた。
「アイツは自分の言葉に責任を持ててない。それだけじゃなく、ダチも仲間も……惚れた女にすら本音を隠してやがる。アイツがどう生きるかなんてアイツに会った時から気づいていたが、誰かを泣かせてまであんな生き方するなら殴ってでも目を覚まさせてやるのが俺の役目だからな。だからショウ、悪いがこの勝負勝たせてもらうぞ」
バルベリウスの形態が片刃となり刀身は透き通るような水色へと変化していく。
左肩には羽がつか左腕にはガントレットが装着される。
本気の将輝の前にショウはフローラとユニゾンし、手に赤く光る剣を持ちバリアジャケットを身につけて静かに口を開く。
「クルスと戦うのは俺だ。俺にだってアイツと戦う理由があるんだ。このままアイツが闇に堕ちるのを黙って見ていられないからな将輝。アイツは――」
魔法陣を展開してショウは刀身に魔力を込めて刀身は燃え盛る炎に包まれていく。
「アイツは俺の一番の親友だからな!!」
「そうかよ!」
ショウが高速で将輝に接近し剣を降りおろす。
将輝は炎に包まれた剣をバルベリウスの刀身で受け止めそのまま片手で水の弾丸を放つ。
プロテクションを張り弾丸を防御しショウは将輝の腹部を蹴ると、将輝は「っ!」と腹を抑えショウから離れる。
一秒も休む暇は与えないとばかりにショウはマガジンを二発使い、燃え盛る剣を将輝目掛けて横に振り抜く。
振り抜かれた炎の閃光が将輝に押し寄せるが将輝はアクアシェルを使い己を中心としてゼリー状のドームを作り出して迫り来る閃光を防ぐ。
炎と水が衝突したことで、二人の間に蒸発が起こり辺り一面を煙が包み込みお互い視界を塞がれる。
「チッ、狙いはこれか!」
ショウの作戦に気付き舌打ちをしながら辺りを見回す将輝。
たった数秒でも気配を消されると厄介であり迷惑きわまりない。
普通に考えると背後から奇襲か、煙が消えたと同時に切りかかってくるだろう。
しかし、ショウならどうする?
一撃で仕留めるなら―――
「……まさか!!」
ショウの本当の狙いに気づいたが既にそれは遅かった。
一瞬だけショウの魔力が膨れ上がり煙が消えた時には、将輝の視界一面に広がる炎の球体。
その数は尋常なくこの光景だけ見ると将輝が炎の牢獄に閉じ込められたように見えるのだ。
「将輝、悪いとは思っている。けどアイツをクルスを止めるのは俺の役目なんだ。アイツが何を隠して何をしようとしているのかもわからない。正直……アイツ自身を疑っている自分がいる。親友なのにな。信じたい気持ちが強ければ余計に……」
かつてユリナに言われた事を思いだし悲しげな表情になるショウ。
将輝からは表情こそ見えないが言葉を聞くだけでショウの表情を予想できる。
ショウ自身本当なら将輝と普通に戦いたかった。
しかし今回だけは手段を選べないと感じ使った魔法。
「だからこそ今回は俺の勝ちだ将輝」
迫り来る何百という炎の球体。
それを見ながらやれやれと将輝は肩をすくめる。
クルスを殴るのは大会じゃなくても出来る。
将輝はこの大会が終わったら必ず一発殴ることを決意してバルベリウスに視線を向けた。
「悪いなバルベリウス。今回は負け戦だったみてぇだ」
そう呟いてどこか楽し気に笑いその身体に炎の球体を喰らい将輝は空を見つめながら倒れるのだった。
復讐者と旅人の出会い
目的と存在理由
ショウと将輝が自分を止めるために戦っているとは知らないクルスは一人薄暗い廊下を歩いていた。
クルスの脳裏によぎるのはフェイトと紅牙の組み合わせ。
決まった以上仕方ないがどうしようもくやり場のない感情を壁にぶつけることしか出来なかった。
その時―――
「お前がクルスだな?」
「誰だ?」
前方からコツコツと足音を立てながら近づいてくる一つの影。
その人物の容姿は髪の色は真紅で髪型はショートカットで瞳は左が真紅で右は漆黒の色をしている。
「こうして会うのは初めてだな。俺は旅人の仁平淳だ」
「貴方があの旅人の」
クルスに近付いてきた人物はクルスが探していた仁平淳でありクルスの次の対戦相手だった。
「まさか大会に出てたなんて、どうしてこんな大会に?」
「ダチに頼まれてな。それよりいくつか聞きたいことがある」
「なに?」
「この大会、表向きは願いを叶えるという名目で開いたようだ、実際は何が目的で開いたんだ?他の出場者の実力を知るためか?それとも他の組織や勢力に対しての―――牽制か?」
淳の言葉に目を細めるクルス。
目的の一つは確かにそれだったからだ。
反神魔連合の者や反時空管理局の者やテロリストといった犯罪者がこの大会に参加するだろうと予想していたからだ。
未来の神魔王や現管理局員がいるこの大会で、反勢力がどうするかを確認したかったのも大会を開いた理由の一つである。
「大会についてはだいたいわかるが、俺が聞きたいことはまだある。クルス、お前は――――あのマッドサイエンティストとどうして手を組んでいる?」
「流石は旅人であの黒峰永久の友人なだけはあるか。それを聞くという事は知ってるんじゃない?僕があの日何をして何を見たのか」
クルスは何でも知ってるのか、と悲し気に笑い淳はその表情に首を横に振るだけ。
「全て知ってる訳じゃない。だから言わせてくれ。お前にとって何が大切なんだ」
「そんなこと決まってるよ。僕にとって大切なのは――――だけだから。それ以外は同じ価値であり、平等なんだ。けど――――だけは特別なんだ。だからその為なら黒にだってなるさ」
「お前は他にも好意を持たれているのにその子だけが特別なんだな?」
「僕にとって彼女は光だから。眩しくて触れるのが怖いよ」
悲し気に笑いゆっくり淳の方に歩いていくクルス。
ただクルスの気持ちを聞きたかった淳はどこか納得したように笑いすれ違うクルスに対して口を開く。
「クルス、俺はこの大会に興味はなかった。俺はただ目的を知りたかっただけだからな。次の対戦相手はお前だったが俺はこの舞台から降りることにするよ。だからこれだけは言わせてもらう。
『その光を見失うな』……」
淳が口にした言葉にクルスは何も答えず廊下から去っていく。
コツコツとクルスの足音だけが響く廊下で淳は頭をガシガシと掻きながら口を開く。
「これで良かったのか――永久?」
静かに呟かれた言葉に誰も答えることはないだろう。
目を閉じてその場を去ろうとした淳だが背後から感じた気配に足を止めて口元を緩ませる。
「いいとか悪いとかわかるわけないじゃん。ただ俺はあの男に何を優先すべきか自覚させたかっただけだし」
背後から感じた気配はソフトクリームをペロペロ舐めながら、壁に寄り掛かっていた黒峰永久だった。
手にはイチゴ味とチョコレート味とバニラ味のソフトクリームを一つずつ器用に持っている。
どう?と淳に一つ渡そうとするが、淳はいらないとジェスチャーしてソフトクリームを受け取らない。
「目的の為なら手段を選ばないあの男の生き方は嫌いじゃない。けど沼地に全身突っ込みすぎなんだよなー。それも合間って基盤にまで歪みがでた。だからちょっと修正する必要があっただけ」
ペロリとソフトクリームを完食して指についたアイスを舐める永久に淳は軽くため息を吐く。
どの世界に来ても永久は変わらないなと呆れているようだ。
「なぁに、これで分岐点は増えたわけだ。俺達は俺達に出来ることをやろうぜ淳」
「きっちり報酬はもらうからな永久」
「ソフトクリームじゃダメ?」
「あったりまえだ!」
「へ~い」
バカみたいなやり取りをしながら消えていく二つの影。
その場には沈黙だけが残り静寂が包み込むのであった。
なのはVSノヴァ
なのはの想いとノヴァの力
淳の棄権によりすぐに始まったなのはとノヴァの試合。
一度夏休みの日にノヴァに敗北しているなのは。
今回は前のように負けない為にもなのはは修行して強くなっている。
ノヴァと対峙しながら真剣な顔付きになるなのは。
「レイジングハートいくよ」
『イエスマスター。マスターとならどこまでも』
信頼できる相棒に嬉しそうに微笑み気持ちに余裕が生まれる。
ショウの隣に立つためにも絶対に負けられない。
「ふ~ん」
それに対してなのはと対峙するノヴァは不敵な笑みを浮かべて扇でポンポンと肩を叩いていた。
「お前を倒せばようやくあの男にたどり着くようだな」
「ショウ君と戦うことしか頭にないんですね」
「当たり前だろ女。俺はアイツとの戦いで屈辱を味わったんだからな。片腕も仮初めの腕を使わなきゃいけなくなったからな」
夏休みのあの日、ノヴァは悠季によって片腕を切られ片腕を失ったまま今の今まで任務を行っていたが、つい先日同じ組織の闇帝によって仮初めの腕を失った箇所につけられたのだ。
「お前は管理局の中でも強いらしいが俺には関係ねぇ。あの男と戦う前の準備運動でしかねぇからな」
扇を広げ軽く横に振るうとノヴァの横に炎の棘が出現して狙いをなのはに定めていた。
「すぐに終わらせてやるよ。フレアニードル!」
ノヴァの言葉と共に放たれる炎の棘。
しかしその棘はなのはに直撃する前にピンク色の球体とぶつかり相殺されていく。
何十発という棘と球体が上空でぶつかり合い本人達に一発も当たることなく消滅する。
「成る程な、少しはやるようだな白い悪魔さんよ」
「悪魔は私じゃなくアナタ達だと思いますよ。あと、女だからってなめないでください」
その声と同時にレイジングハートから放たれるピンク色の砲撃。
『ディバインバスター』
その砲撃をノヴァはフレアグラビトを出現させて砲撃を防ぐと赤い球体はドロドロと溶けていき地面に流れていく。
「いきなり砲撃かますなんざ恐ろしい女だ。だがその程度痛くも痒くもねぇんだよ!!」
瞬時に出現するフレアニードルとフレアグラビト。
炎の棘はバラバラに動いてフレアグラビトはただ一直線になのはに向かっていく。
「レイジングハートくるよ!」
『マスターを導くのが私の役目です』
譲れない戦い
ユーノと湊の互いの全力をかけた戦いが終わり、ショウと将輝の戦いが始まる。
ショウは目の前で剣を肩にかけいつになく真剣な表情で対峙する将輝を見つめていた。
いつもはふざけた将輝とは違い今の将輝は一瞬でも気を抜けない表情をしている。
「ショウ、悪いな。本当ならお前とクルスを戦わせてやりたかったんだが」
「その言い方だと俺に勝って自分がクルスと戦うと聞こえるぞ将輝」
「アイツの戦い方もそうだが、昔俺と交わした約束をアイツは忘れていやがる。ハッキリ言うなら殴らねぇと気がすまねぇ」
拳を握りその顔にはハッキリと一つの感情が浮かんでいる。
喜怒哀楽で言うなら今の将輝は、ただ静かに怒の感情を浮かべていた。
「アイツは自分の言葉に責任を持ててない。それだけじゃなく、ダチも仲間も……惚れた女にすら本音を隠してやがる。アイツがどう生きるかなんてアイツに会った時から気づいていたが、誰かを泣かせてまであんな生き方するなら殴ってでも目を覚まさせてやるのが俺の役目だからな。だからショウ、悪いがこの勝負勝たせてもらうぞ」
バルベリウスの形態が片刃となり刀身は透き通るような水色へと変化していく。
左肩には羽がつか左腕にはガントレットが装着される。
本気の将輝の前にショウはフローラとユニゾンし、手に赤く光る剣を持ちバリアジャケットを身につけて静かに口を開く。
「クルスと戦うのは俺だ。俺にだってアイツと戦う理由があるんだ。このままアイツが闇に堕ちるのを黙って見ていられないからな将輝。アイツは――」
魔法陣を展開してショウは刀身に魔力を込めて刀身は燃え盛る炎に包まれていく。
「アイツは俺の一番の親友だからな!!」
「そうかよ!」
ショウが高速で将輝に接近し剣を降りおろす。
将輝は炎に包まれた剣をバルベリウスの刀身で受け止めそのまま片手で水の弾丸を放つ。
プロテクションを張り弾丸を防御しショウは将輝の腹部を蹴ると、将輝は「っ!」と腹を抑えショウから離れる。
一秒も休む暇は与えないとばかりにショウはマガジンを二発使い、燃え盛る剣を将輝目掛けて横に振り抜く。
振り抜かれた炎の閃光が将輝に押し寄せるが将輝はアクアシェルを使い己を中心としてゼリー状のドームを作り出して迫り来る閃光を防ぐ。
炎と水が衝突したことで、二人の間に蒸発が起こり辺り一面を煙が包み込みお互い視界を塞がれる。
「チッ、狙いはこれか!」
ショウの作戦に気付き舌打ちをしながら辺りを見回す将輝。
たった数秒でも気配を消されると厄介であり迷惑きわまりない。
普通に考えると背後から奇襲か、煙が消えたと同時に切りかかってくるだろう。
しかし、ショウならどうする?
一撃で仕留めるなら―――
「……まさか!!」
ショウの本当の狙いに気づいたが既にそれは遅かった。
一瞬だけショウの魔力が膨れ上がり煙が消えた時には、将輝の視界一面に広がる炎の球体。
その数は尋常なくこの光景だけ見ると将輝が炎の牢獄に閉じ込められたように見えるのだ。
「将輝、悪いとは思っている。けどアイツをクルスを止めるのは俺の役目なんだ。アイツが何を隠して何をしようとしているのかもわからない。正直……アイツ自身を疑っている自分がいる。親友なのにな。信じたい気持ちが強ければ余計に……」
かつてユリナに言われた事を思いだし悲しげな表情になるショウ。
将輝からは表情こそ見えないが言葉を聞くだけでショウの表情を予想できる。
ショウ自身本当なら将輝と普通に戦いたかった。
しかし今回だけは手段を選べないと感じ使った魔法。
「だからこそ今回は俺の勝ちだ将輝」
迫り来る何百という炎の球体。
それを見ながらやれやれと将輝は肩をすくめる。
クルスを殴るのは大会じゃなくても出来る。
将輝はこの大会が終わったら必ず一発殴ることを決意してバルベリウスに視線を向けた。
「悪いなバルベリウス。今回は負け戦だったみてぇだ」
そう呟いてどこか楽し気に笑いその身体に炎の球体を喰らい将輝は空を見つめながら倒れるのだった。
復讐者と旅人の出会い
目的と存在理由
ショウと将輝が自分を止めるために戦っているとは知らないクルスは一人薄暗い廊下を歩いていた。
クルスの脳裏によぎるのはフェイトと紅牙の組み合わせ。
決まった以上仕方ないがどうしようもくやり場のない感情を壁にぶつけることしか出来なかった。
その時―――
「お前がクルスだな?」
「誰だ?」
前方からコツコツと足音を立てながら近づいてくる一つの影。
その人物の容姿は髪の色は真紅で髪型はショートカットで瞳は左が真紅で右は漆黒の色をしている。
「こうして会うのは初めてだな。俺は旅人の仁平淳だ」
「貴方があの旅人の」
クルスに近付いてきた人物はクルスが探していた仁平淳でありクルスの次の対戦相手だった。
「まさか大会に出てたなんて、どうしてこんな大会に?」
「ダチに頼まれてな。それよりいくつか聞きたいことがある」
「なに?」
「この大会、表向きは願いを叶えるという名目で開いたようだ、実際は何が目的で開いたんだ?他の出場者の実力を知るためか?それとも他の組織や勢力に対しての―――牽制か?」
淳の言葉に目を細めるクルス。
目的の一つは確かにそれだったからだ。
反神魔連合の者や反時空管理局の者やテロリストといった犯罪者がこの大会に参加するだろうと予想していたからだ。
未来の神魔王や現管理局員がいるこの大会で、反勢力がどうするかを確認したかったのも大会を開いた理由の一つである。
「大会についてはだいたいわかるが、俺が聞きたいことはまだある。クルス、お前は――――あのマッドサイエンティストとどうして手を組んでいる?」
「流石は旅人であの黒峰永久の友人なだけはあるか。それを聞くという事は知ってるんじゃない?僕があの日何をして何を見たのか」
クルスは何でも知ってるのか、と悲し気に笑い淳はその表情に首を横に振るだけ。
「全て知ってる訳じゃない。だから言わせてくれ。お前にとって何が大切なんだ」
「そんなこと決まってるよ。僕にとって大切なのは――――だけだから。それ以外は同じ価値であり、平等なんだ。けど――――だけは特別なんだ。だからその為なら黒にだってなるさ」
「お前は他にも好意を持たれているのにその子だけが特別なんだな?」
「僕にとって彼女は光だから。眩しくて触れるのが怖いよ」
悲し気に笑いゆっくり淳の方に歩いていくクルス。
ただクルスの気持ちを聞きたかった淳はどこか納得したように笑いすれ違うクルスに対して口を開く。
「クルス、俺はこの大会に興味はなかった。俺はただ目的を知りたかっただけだからな。次の対戦相手はお前だったが俺はこの舞台から降りることにするよ。だからこれだけは言わせてもらう。
『その光を見失うな』……」
淳が口にした言葉にクルスは何も答えず廊下から去っていく。
コツコツとクルスの足音だけが響く廊下で淳は頭をガシガシと掻きながら口を開く。
「これで良かったのか――永久?」
静かに呟かれた言葉に誰も答えることはないだろう。
目を閉じてその場を去ろうとした淳だが背後から感じた気配に足を止めて口元を緩ませる。
「いいとか悪いとかわかるわけないじゃん。ただ俺はあの男に何を優先すべきか自覚させたかっただけだし」
背後から感じた気配はソフトクリームをペロペロ舐めながら、壁に寄り掛かっていた黒峰永久だった。
手にはイチゴ味とチョコレート味とバニラ味のソフトクリームを一つずつ器用に持っている。
どう?と淳に一つ渡そうとするが、淳はいらないとジェスチャーしてソフトクリームを受け取らない。
「目的の為なら手段を選ばないあの男の生き方は嫌いじゃない。けど沼地に全身突っ込みすぎなんだよなー。それも合間って基盤にまで歪みがでた。だからちょっと修正する必要があっただけ」
ペロリとソフトクリームを完食して指についたアイスを舐める永久に淳は軽くため息を吐く。
どの世界に来ても永久は変わらないなと呆れているようだ。
「なぁに、これで分岐点は増えたわけだ。俺達は俺達に出来ることをやろうぜ淳」
「きっちり報酬はもらうからな永久」
「ソフトクリームじゃダメ?」
「あったりまえだ!」
「へ~い」
バカみたいなやり取りをしながら消えていく二つの影。
その場には沈黙だけが残り静寂が包み込むのであった。
なのはVSノヴァ
なのはの想いとノヴァの力
淳の棄権によりすぐに始まったなのはとノヴァの試合。
一度夏休みの日にノヴァに敗北しているなのは。
今回は前のように負けない為にもなのはは修行して強くなっている。
ノヴァと対峙しながら真剣な顔付きになるなのは。
「レイジングハートいくよ」
『イエスマスター。マスターとならどこまでも』
信頼できる相棒に嬉しそうに微笑み気持ちに余裕が生まれる。
ショウの隣に立つためにも絶対に負けられない。
「ふ~ん」
それに対してなのはと対峙するノヴァは不敵な笑みを浮かべて扇でポンポンと肩を叩いていた。
「お前を倒せばようやくあの男にたどり着くようだな」
「ショウ君と戦うことしか頭にないんですね」
「当たり前だろ女。俺はアイツとの戦いで屈辱を味わったんだからな。片腕も仮初めの腕を使わなきゃいけなくなったからな」
夏休みのあの日、ノヴァは悠季によって片腕を切られ片腕を失ったまま今の今まで任務を行っていたが、つい先日同じ組織の闇帝によって仮初めの腕を失った箇所につけられたのだ。
「お前は管理局の中でも強いらしいが俺には関係ねぇ。あの男と戦う前の準備運動でしかねぇからな」
扇を広げ軽く横に振るうとノヴァの横に炎の棘が出現して狙いをなのはに定めていた。
「すぐに終わらせてやるよ。フレアニードル!」
ノヴァの言葉と共に放たれる炎の棘。
しかしその棘はなのはに直撃する前にピンク色の球体とぶつかり相殺されていく。
何十発という棘と球体が上空でぶつかり合い本人達に一発も当たることなく消滅する。
「成る程な、少しはやるようだな白い悪魔さんよ」
「悪魔は私じゃなくアナタ達だと思いますよ。あと、女だからってなめないでください」
その声と同時にレイジングハートから放たれるピンク色の砲撃。
『ディバインバスター』
その砲撃をノヴァはフレアグラビトを出現させて砲撃を防ぐと赤い球体はドロドロと溶けていき地面に流れていく。
「いきなり砲撃かますなんざ恐ろしい女だ。だがその程度痛くも痒くもねぇんだよ!!」
瞬時に出現するフレアニードルとフレアグラビト。
炎の棘はバラバラに動いてフレアグラビトはただ一直線になのはに向かっていく。
「レイジングハートくるよ!」
『マスターを導くのが私の役目です』