神魔杯ダイジェストその一
一回戦の始まり
【ユーノVSシグナム】
予選開始からすぐに始まったユーノとシグナムの本気の戦い。
接近戦のシグナムに対して、ユーノは中距離・遠距離というユーノとしては戦いにくいものとなった。
シグナムの紫電一閃を己のデバイスである、メディのプロテクションで防ぎシグナムに対し至近距離からのディバインバスターを放ちダメージを与えるユーノ。
「僕は、僕の守りたい人の為に強くなったんだシグナム」
「そのようだなスクライア。ならば私も一人の騎士としてお前を倒す」
ユーノを一人の男として見据え本気で仕掛けるシグナム。
一つ一つの剣技をユーノは紙一重で避けながら確実にシグナムにダメージを与えチェーンバインドでシグナムを縛る。
「メディ、カートリッジロード!」
『イエス!マスター!』
カートリッジを三発消費してユーノは最大魔法
『ケルベロスブレイカー』をシグナムに対して放ち成長した自分に一息つきながらシグナムを下した。
土見稟VSエグザ
誰が為に戦うのか?
ユーノとシグナムの戦いが終わり続いて行われた稟とエグザの試合。
エグザとの戦いで稟は【王とは何か?】とエグザに問われ答えを口にできなかった。
王になるということを決心していたが正直自分はまだ何も考えていなかったからだ。
自分が命をかけて守りたい人達と共にいたいだけではダメなのか?
言葉をなくす稟にエグザは、
『お前はかつて共に戦った友と似ている』と懐かしむ表情で口にした。
だからこそエグザはかつて自分がその友にしたように稟を拳でねじ伏せていく。
サンドバッグのように殴られる稟をモニターで見ながら、シアやネリネ達は泣き出しそうな表情をして両王は声を荒げる。
しかし、エグザの拳は止まらず稟を叩きのめす。
エグザの拳に倒れた稟に『お前もあの男や友のように強くなれ土見稟』と言い残しエグザは去ろうとしたが、
「……待てよ!」
稟は立ち上がりふらふらの状態でエグザに近づき驚愕していたエグザに力のない拳をぶつけ一言だけ口にしていた。
「……シアやネリネ……皆は……俺が守るんだ…」
そう口にして稟は立ったまま気絶して敗北したのである。
紅牙VS悠太
消えゆく命
聖騎士団NO.5紅牙とジョーカーズの協力者悠太の試合。
クルスと戦っていた時のように紅牙は悠太の魔法攻撃をかき消し悠太の身体を切り裂いていた。
次第に身体が赤く染まる悠太の身体を無表情でただ見つめる紅牙。
協力関係でもある二人の戦いの為か、悠太は戦いながら内心死ぬ事はないだろうと己のデバイスを握り締め笑っていたのだが、
「悪いが、この戦いは俺にとって不要なのでな。消えてもらうぞ悠太」
「どういう意味……っ!」
悠太が眉を潜め声を発するがそれ以降悠太が口から声を発する事はなかった。
紅牙が右手を軽く縦にひと振りし悠太に背を向けた瞬間、悠太の身体が真っ二つに引き裂かれたのだ。
この一瞬の流れに誰もが理解できないでいたが、おそらく一番理解できなかったのは死んだ悠太であろう。
悠太の死で悲しむ者は協力者の中で一人しかいなく、モニターで見ていた雅は悠太の死に発狂したかのように頭を激しく振り、近くにいたファイが支えていたが他のメンバーは悠太の死に笑っていたり、呆れたように溜め息を吐く者しかその場にはいなかった。
勝ち上がっていく者達
敗北する者達
悠太の死がなかったかのように神魔杯は進んでいく。
クロードVSノヴァの戦いはクロードが終始圧倒していたのだがノヴァはクロードの力を見切ったようで全てカウンターで返した事でクロードは敗北。
なのはやフェイト、将輝や湊もそれぞれの対戦者に苦戦しながらも勝利を勝ち取ることができた。
勇や奏也・ハヤテやデニスは本気で戦いお互い引き分けてしまい一回戦は終わってしまい、淳と戦ったザフィーラは殴り合いの勝負で最後に重い一撃を喰らい気絶したのだった。
ショウVSディアス
友との約束の為に
マグマのフィールドで対峙するショウとディアスの二人。
ショウはクルスとの約束の為に負けるわけにはいかない。
相手がたとえ恭也と同格かそれ以上だとしても必ず勝つ。
ショウの燃え上がるような意思にディアスはフッと笑みを浮かべて剣を構える。
「俺はクルスと戦うんだ!たとえディアス、お前が相手でも負けない!」
「いい気迫だショウ。ならばこの勝負本気で俺を倒してみろ」
爆発するようなショウの気迫と静かに燃え上がるディアスの気迫。
フィールドも二人の想いに答えるかのようにマグマが燃え上がり、モニターでも確認するのが難しいぐらい炎が覆っていた。
「紅蓮一閃!」
「鳳凰炎舞!」
ショウの炎とディアスの炎がぶつかり合いフィールドに発生する炎の渦。
ショウの剣がディアスの腕を掠めディアス剣がショウの頬を掠めていく。
楽しそうに戦う二人の姿に実況していた勇人は苦笑して、モニターで見ていたなのは達や客室で見ていたラバーズは『頑張れーー!!』と応援している。
ただ純粋に戦う二人を見てクルスは羨ましく儚げな表情を浮かべて笑っていた。
「……本当に僕とは正反対だな」と小さく呟きながら。
「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」
激しくぶつかる剣と剣。
生傷が身体に刻まれながらも二人は本気でぶつかりあい再び剣に炎を纏わせる。
「いくぞディアァァァス!!」
「はぁぁぁぁぁ!」
地を蹴り剣と剣が振り下ろされて交差する二人の身体。
一つの剣が手から離れて一人の男が地面に膝をつける。
「…見事だショウ」
頬から血を流し満足気に笑いディアスは膝をついていた。
ショウも満足したのかディアス同様に笑みを浮かべ手を上げるのだった。
これにより一回戦はショウが勝利して男と男の戦いに観客や実況者や出場者を含め皆が拍手していく。
熱い戦いに会場は興奮で包まれていく。
クルスVSエルド
隠された感情
ショウとディアスの戦いから興奮が冷めないまま始まるクルスとエルドの戦い。
クルスの事が気にくわないエルドは最初から全力でクルスを殺す気で向かっていた。
相棒でもある短剣型のデバイスでクルスの右腕を切り裂く。
殺傷設定で切った短剣にはクルスの血が付着してクルスはただ切られた箇所を見つめる。
「ハラオウン執務官の前から消えやがれ人殺しがぁぁぁ!!」
フェイトを個人的に慕っていたエルドにとってクルスは邪魔であり殺したい存在だった。
短剣に魔力を込めて再びクルスに切りかかるエルドだったが、
「僕は何回も同じことを言うつもりはない。だからこれが最後だよ……お前が消えろ」
「……なっ!!」
氷のように冷たいクルスの瞳にエルドの背筋がゾクリと震え、クルスはエルドのデバイスの刃を手で受け止めて逃がさないようにバインドで拘束した。
「なっ!?バインドだと!?」
必死にバインドを破壊しようとするエルドだったが、ふと自分の身体が徐々に凍りついていくのを感じて顔色が真っ青に変わる。
エルドは気づいたのだ、クルスが本気で殺そうとしているのを。
「ききき、貴様正気か!?お前はあの人のハラオウン執務官やショウさん達がいる場所で人殺しをしようとしているんだぞ!」
「だから何だ?僕はとっくに……人殺しなんだよ。今さら躊躇するものか……」
それはほんの一瞬、わずかな瞬間にクルスの瞳が揺らいだことに気づいた者がいただろうか?
ただ一人――
「……クルス」
フェイト・T・ハラオウンだけは気づいたようだ。
「ひっ!やっ、やめ…っ!」
エルドの悲鳴も虚しく氷の棺に邪魔されエルドは完璧に氷付けにされてしまう。
氷付けにされたエルドをクルスは光氷一閃で切り裂き、エルドを絶命させると冷たい目付きのままフィールドを去っていく。
これによりエルドは悠太と同じく一回戦で死んだものとなり、先程のショウとディアスの戦いの興奮は消え失せて会場は静まり返るのだった。
「あのバカはっ!」
クルスの戦いに静かに怒りの感情を浮かべる者達もいるのだった。
フェイトの想い
復讐者と雷光の縮まる距離
エルドの戦いが終わりクルスは一人フィールドの近くを歩いていた。
初めて皆の前で人を殺した自分―――
人形のように戦った自分の姿に皆はどう思っただろう?
人の気持ちはわかるわけない。
だがこれだけは確実かもしれない。
時空管理局として僕の人殺しを認める訳にはいかない。
必ず止めさせるにちがいない。
今さら止まるわけないのに。
フッと笑みを浮かべ歩いていたクルスだが、ふと前方から誰かがやって来るのに気づいて足を止めた。
「えっ?……フェイト?」
前方からやって来たのは息を切らせながら走ってくるフェイトだったのだ。
今自分が一番会いたくなかった存在フェイトの姿にクルスは顔を歪める。
そんなクルスにフェイトは息を整えクルスの目の前に立つ。
「どうしてランコットを殺したの?」
「理由なんかないよ。僕はレンに非殺傷設定を解除するようにいつも言ってるからね。人を殺す事に躊躇いなんてない」
冷たく突き放す様に話すクルスにフェイトは小さく首を横に振る。
「私は知ってるよクルス。本当はクルスが優しい人だって。だからランコットを殺した時も悲しそうにしてたんだよね?」
「何を言ってるんだフェイト、僕はアイツを殺した時何の感情もなかった。それなのに悲しそうだなんて……」
「嘘だよねクルス。前からクルスは本当のことを話してくれない。どうして…どうして…一人で何でも抱え込もうとするの……?」
「一人で?僕は皆の力を頼っ「うそっ!だってクルスは私やショウやなのは達に隠してることがあるもん…!」…っ!」
感情的で今にも真っ赤な瞳から溢れそうな涙を見せるフェイトにクルスの表情が変わっていく。
先程まで能面のような表情だったクルスが今ではショウやイヴ達にすら見せた事のない苦痛の表情に変わっていく。
「このままじゃ、クルスがどこかに行っちゃいそうなのに、もう離れたくないのに……」
「違うんだフェイト、僕は……っ!」
話すわけにはいかない。
唇を噛み締め拳を握り締めるクルスにフェイトは、
「……いやだよ…クルスがいなくなるなんて…やだぁ……」
そう口にしてクルスに抱きつくフェイト。
【ユーノVSシグナム】
予選開始からすぐに始まったユーノとシグナムの本気の戦い。
接近戦のシグナムに対して、ユーノは中距離・遠距離というユーノとしては戦いにくいものとなった。
シグナムの紫電一閃を己のデバイスである、メディのプロテクションで防ぎシグナムに対し至近距離からのディバインバスターを放ちダメージを与えるユーノ。
「僕は、僕の守りたい人の為に強くなったんだシグナム」
「そのようだなスクライア。ならば私も一人の騎士としてお前を倒す」
ユーノを一人の男として見据え本気で仕掛けるシグナム。
一つ一つの剣技をユーノは紙一重で避けながら確実にシグナムにダメージを与えチェーンバインドでシグナムを縛る。
「メディ、カートリッジロード!」
『イエス!マスター!』
カートリッジを三発消費してユーノは最大魔法
『ケルベロスブレイカー』をシグナムに対して放ち成長した自分に一息つきながらシグナムを下した。
土見稟VSエグザ
誰が為に戦うのか?
ユーノとシグナムの戦いが終わり続いて行われた稟とエグザの試合。
エグザとの戦いで稟は【王とは何か?】とエグザに問われ答えを口にできなかった。
王になるということを決心していたが正直自分はまだ何も考えていなかったからだ。
自分が命をかけて守りたい人達と共にいたいだけではダメなのか?
言葉をなくす稟にエグザは、
『お前はかつて共に戦った友と似ている』と懐かしむ表情で口にした。
だからこそエグザはかつて自分がその友にしたように稟を拳でねじ伏せていく。
サンドバッグのように殴られる稟をモニターで見ながら、シアやネリネ達は泣き出しそうな表情をして両王は声を荒げる。
しかし、エグザの拳は止まらず稟を叩きのめす。
エグザの拳に倒れた稟に『お前もあの男や友のように強くなれ土見稟』と言い残しエグザは去ろうとしたが、
「……待てよ!」
稟は立ち上がりふらふらの状態でエグザに近づき驚愕していたエグザに力のない拳をぶつけ一言だけ口にしていた。
「……シアやネリネ……皆は……俺が守るんだ…」
そう口にして稟は立ったまま気絶して敗北したのである。
紅牙VS悠太
消えゆく命
聖騎士団NO.5紅牙とジョーカーズの協力者悠太の試合。
クルスと戦っていた時のように紅牙は悠太の魔法攻撃をかき消し悠太の身体を切り裂いていた。
次第に身体が赤く染まる悠太の身体を無表情でただ見つめる紅牙。
協力関係でもある二人の戦いの為か、悠太は戦いながら内心死ぬ事はないだろうと己のデバイスを握り締め笑っていたのだが、
「悪いが、この戦いは俺にとって不要なのでな。消えてもらうぞ悠太」
「どういう意味……っ!」
悠太が眉を潜め声を発するがそれ以降悠太が口から声を発する事はなかった。
紅牙が右手を軽く縦にひと振りし悠太に背を向けた瞬間、悠太の身体が真っ二つに引き裂かれたのだ。
この一瞬の流れに誰もが理解できないでいたが、おそらく一番理解できなかったのは死んだ悠太であろう。
悠太の死で悲しむ者は協力者の中で一人しかいなく、モニターで見ていた雅は悠太の死に発狂したかのように頭を激しく振り、近くにいたファイが支えていたが他のメンバーは悠太の死に笑っていたり、呆れたように溜め息を吐く者しかその場にはいなかった。
勝ち上がっていく者達
敗北する者達
悠太の死がなかったかのように神魔杯は進んでいく。
クロードVSノヴァの戦いはクロードが終始圧倒していたのだがノヴァはクロードの力を見切ったようで全てカウンターで返した事でクロードは敗北。
なのはやフェイト、将輝や湊もそれぞれの対戦者に苦戦しながらも勝利を勝ち取ることができた。
勇や奏也・ハヤテやデニスは本気で戦いお互い引き分けてしまい一回戦は終わってしまい、淳と戦ったザフィーラは殴り合いの勝負で最後に重い一撃を喰らい気絶したのだった。
ショウVSディアス
友との約束の為に
マグマのフィールドで対峙するショウとディアスの二人。
ショウはクルスとの約束の為に負けるわけにはいかない。
相手がたとえ恭也と同格かそれ以上だとしても必ず勝つ。
ショウの燃え上がるような意思にディアスはフッと笑みを浮かべて剣を構える。
「俺はクルスと戦うんだ!たとえディアス、お前が相手でも負けない!」
「いい気迫だショウ。ならばこの勝負本気で俺を倒してみろ」
爆発するようなショウの気迫と静かに燃え上がるディアスの気迫。
フィールドも二人の想いに答えるかのようにマグマが燃え上がり、モニターでも確認するのが難しいぐらい炎が覆っていた。
「紅蓮一閃!」
「鳳凰炎舞!」
ショウの炎とディアスの炎がぶつかり合いフィールドに発生する炎の渦。
ショウの剣がディアスの腕を掠めディアス剣がショウの頬を掠めていく。
楽しそうに戦う二人の姿に実況していた勇人は苦笑して、モニターで見ていたなのは達や客室で見ていたラバーズは『頑張れーー!!』と応援している。
ただ純粋に戦う二人を見てクルスは羨ましく儚げな表情を浮かべて笑っていた。
「……本当に僕とは正反対だな」と小さく呟きながら。
「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」
激しくぶつかる剣と剣。
生傷が身体に刻まれながらも二人は本気でぶつかりあい再び剣に炎を纏わせる。
「いくぞディアァァァス!!」
「はぁぁぁぁぁ!」
地を蹴り剣と剣が振り下ろされて交差する二人の身体。
一つの剣が手から離れて一人の男が地面に膝をつける。
「…見事だショウ」
頬から血を流し満足気に笑いディアスは膝をついていた。
ショウも満足したのかディアス同様に笑みを浮かべ手を上げるのだった。
これにより一回戦はショウが勝利して男と男の戦いに観客や実況者や出場者を含め皆が拍手していく。
熱い戦いに会場は興奮で包まれていく。
クルスVSエルド
隠された感情
ショウとディアスの戦いから興奮が冷めないまま始まるクルスとエルドの戦い。
クルスの事が気にくわないエルドは最初から全力でクルスを殺す気で向かっていた。
相棒でもある短剣型のデバイスでクルスの右腕を切り裂く。
殺傷設定で切った短剣にはクルスの血が付着してクルスはただ切られた箇所を見つめる。
「ハラオウン執務官の前から消えやがれ人殺しがぁぁぁ!!」
フェイトを個人的に慕っていたエルドにとってクルスは邪魔であり殺したい存在だった。
短剣に魔力を込めて再びクルスに切りかかるエルドだったが、
「僕は何回も同じことを言うつもりはない。だからこれが最後だよ……お前が消えろ」
「……なっ!!」
氷のように冷たいクルスの瞳にエルドの背筋がゾクリと震え、クルスはエルドのデバイスの刃を手で受け止めて逃がさないようにバインドで拘束した。
「なっ!?バインドだと!?」
必死にバインドを破壊しようとするエルドだったが、ふと自分の身体が徐々に凍りついていくのを感じて顔色が真っ青に変わる。
エルドは気づいたのだ、クルスが本気で殺そうとしているのを。
「ききき、貴様正気か!?お前はあの人のハラオウン執務官やショウさん達がいる場所で人殺しをしようとしているんだぞ!」
「だから何だ?僕はとっくに……人殺しなんだよ。今さら躊躇するものか……」
それはほんの一瞬、わずかな瞬間にクルスの瞳が揺らいだことに気づいた者がいただろうか?
ただ一人――
「……クルス」
フェイト・T・ハラオウンだけは気づいたようだ。
「ひっ!やっ、やめ…っ!」
エルドの悲鳴も虚しく氷の棺に邪魔されエルドは完璧に氷付けにされてしまう。
氷付けにされたエルドをクルスは光氷一閃で切り裂き、エルドを絶命させると冷たい目付きのままフィールドを去っていく。
これによりエルドは悠太と同じく一回戦で死んだものとなり、先程のショウとディアスの戦いの興奮は消え失せて会場は静まり返るのだった。
「あのバカはっ!」
クルスの戦いに静かに怒りの感情を浮かべる者達もいるのだった。
フェイトの想い
復讐者と雷光の縮まる距離
エルドの戦いが終わりクルスは一人フィールドの近くを歩いていた。
初めて皆の前で人を殺した自分―――
人形のように戦った自分の姿に皆はどう思っただろう?
人の気持ちはわかるわけない。
だがこれだけは確実かもしれない。
時空管理局として僕の人殺しを認める訳にはいかない。
必ず止めさせるにちがいない。
今さら止まるわけないのに。
フッと笑みを浮かべ歩いていたクルスだが、ふと前方から誰かがやって来るのに気づいて足を止めた。
「えっ?……フェイト?」
前方からやって来たのは息を切らせながら走ってくるフェイトだったのだ。
今自分が一番会いたくなかった存在フェイトの姿にクルスは顔を歪める。
そんなクルスにフェイトは息を整えクルスの目の前に立つ。
「どうしてランコットを殺したの?」
「理由なんかないよ。僕はレンに非殺傷設定を解除するようにいつも言ってるからね。人を殺す事に躊躇いなんてない」
冷たく突き放す様に話すクルスにフェイトは小さく首を横に振る。
「私は知ってるよクルス。本当はクルスが優しい人だって。だからランコットを殺した時も悲しそうにしてたんだよね?」
「何を言ってるんだフェイト、僕はアイツを殺した時何の感情もなかった。それなのに悲しそうだなんて……」
「嘘だよねクルス。前からクルスは本当のことを話してくれない。どうして…どうして…一人で何でも抱え込もうとするの……?」
「一人で?僕は皆の力を頼っ「うそっ!だってクルスは私やショウやなのは達に隠してることがあるもん…!」…っ!」
感情的で今にも真っ赤な瞳から溢れそうな涙を見せるフェイトにクルスの表情が変わっていく。
先程まで能面のような表情だったクルスが今ではショウやイヴ達にすら見せた事のない苦痛の表情に変わっていく。
「このままじゃ、クルスがどこかに行っちゃいそうなのに、もう離れたくないのに……」
「違うんだフェイト、僕は……っ!」
話すわけにはいかない。
唇を噛み締め拳を握り締めるクルスにフェイトは、
「……いやだよ…クルスがいなくなるなんて…やだぁ……」
そう口にしてクルスに抱きつくフェイト。