接触と疑念
「ショウ君もユーノ君もどうして?」
ユーノの張った結界内で呟くなのはにショウが真剣な表情で答えた。
「実は喫茶店で稟達と話していたんだが、急にクロノから呼び出されてなユーノと一緒に駆け付けたんだよ。それとフェイト達の方にも援軍は向かってるはずだぜ」
ショウやユーノがここに来たとなるとフェイト達の援軍に向かったのは間違いなくあの二人である。
「ショウ…」
「あぁ…。分かってる」
ユーノとショウが立ち上がり険しい表情で前方を見つめる。
あの砲撃で倒したとは思えないが爆発の煙のせいで男の姿が確認出来ない。
警戒しているが動きがないため二人はただ見つめるだけ。
「手応えは?」
「なかったとは言えないけど直撃したから少しはダメージがあるはずだけど…」
煙がだんだん晴れていき二人の視界に入ったのは、服装が焼き焦げてはいるが余裕の表情で笑みを浮かべポケットに手を突っ込んでいる状態でエグザである。
なのはやヴィータやユーノの魔法攻撃を喰らっていたのにエグザは気にしている様子もなくショウやユーノと対峙しているのだ。
耐久力があるとか言うレベルじゃない。
この男もまた何か力があるのかもしれない。
「お前はあのノヴァやケルベラと違って落ち着いているんだな」
「あの二人の精神は普通とは違うからな。私とあの二人は他人と思ってくれてもいい」
向かってくる気配は感じられない。
もしかしたら何か聞けるかもしれないと思ったユーノが一歩前に出て口を開く。
「貴方に聞きたい事があります」
「…………」
「貴方達の狙っているロストロギアは【ジェネシスやラクールホープ】と何か関係があるんですか?」
ユーノの言葉に眉をピクリとわずかに動かして反応するエグザ。
やっぱりと内心思いながらもユーノは言葉を続ける。
「その二つについて少し調べたら一つの共通点に気付きました。ジェネシスとラクールホープは対象を一瞬で消滅させる事の出来る質量兵器。もし僕の考えが正しいならロストロギアの役目は…」
「……成る程。あの方や闇帝がマークする訳だ。なかなかの考えだユーノ・スクライア」
ユーノの言葉にフッと笑みを浮かべて呟くエグザ。
おそらくユーノが答えにたどり着くのも時間の問題だろう。
(このまま奴を倒した方がいいのかもしれないが…)
正直エグザの身体はまだ戦える状態だがデバイスは破損していた。
なのは達の魔法攻撃を回避するときや受け止めた時に無茶をしたのが原因である。
「聞きたい事はそれだけか?」
「もう一つあります。貴方はディアゴという名前を聞いたことがありますか?」
ユーノの発した名前に反応したのはエグザではなくショウだった。
何故ディアゴの名が出てくるのか?
今回の事件にディアゴが関係しているのか?と疑問が浮かんだのである。
「知らんな」
「そうですか…(やはり関係ないのかな)」
エグザの言葉にいささか納得出来なかったが関係している証拠もないためそれ以上ディアゴについて何かを聞くことは出来ない。
やはりこの組織の闇を聞くには彼に聞くしかないのだとユーノは一人頷く。
「質問はないようだ」
「えぇ。あとはこの場から退いてくれるとありがたいんですが」
「それは無理だな。それにもう一人の男はやる気があるようだぞ」
「……………」
エグザはチラリとショウに視線を向けるとショウは剣を握り締めて真剣な表情で立っていた。
ショウ自身もあまり戦いたくないがエグザを許せない部分もある。
なのはをヴィータをザフィーラを傷つけたこの男を許すわけにはいかない。
「しかし残念だったな」
「えっ…」
「気付かないのか?」
ユーノはその言葉に目を細めた。
気付かない?
この状況で戦えなく理由の事だろうが……
「ユーノ!そこから離れろ!」
「……!!」
ショウの言葉にハッとして下がったユーノは理解する。
地面から光が溢れ出してその場が激しく揺れ始めるのだった。
「「これは!?」」
「……始まったか」
~フェイトSide~
暗闇が広がる。
私は今夢を見ているのかな?
『フェイト…』
誰かが私を呼んでいる。
誰?
『フェイト…』
暗闇が一瞬光に包まれて再び暗闇に戻るとそこには、狂気に染まっていない優しかった時の母親の姿をしたプレシアがいた。
どうして?母さんが?
闇の書事件の時と同じなのだろうか?
これは私が望んだ夢?
『フェイト、貴方は私を恨んでる?』
『えっ……』
プレシアの言葉に小さく声を上げる。
自分は確かに母親に虐待されて苦しんだりしたが恨んではいない。
自分を生んでくれてアリシアとしか見てなかったが笑ってくれた時もあった。
『恨んでいません』
『やっぱり貴方は優しいわねフェイト。でも時には優しさは捨てなさい。その優しさはいつか貴方を殺すかもしれない』
『心配してくれるんですか?』
信じられない表情で口を開くフェイト。
本当に目の前にいるのはあのプレシアなのだろうか?
自分が作り出した幻なのかもしれないが何かが違って見える。
もしかしたら本当にプレシアが言ってくれているのだろうか?
『心配するわよ。かつて私はアリシアとの未来しか考えてなくて貴方を傷つけた。だけど本当は気付かなきゃいけなかった。貴方はフェイトでありアリシアの代わりじゃなくもう一人の娘だったと。ごめんなさいねフェイト』
『母さん…』
頬をつたう滴。
涙が溢れて止まらない。
母親からこんな風に思われていたとは知らなかった。
私をフェイトとして見てくれてもう一人の娘だったと思ってくれたなんて。
やはり自分はプレシアを嫌う事は出来ない。
『フェイト、よく聞きなさい。私は貴女に間違った選択をしてほしくない。今貴女がいる場所が本当に正しいか考えてちょうだい。そしてあの子を止めて……………』
『母さん!』
ユラリとプレシアが揺れてその場からいなくなってしまった。
プレシアがフェイトに何かを伝えようとしていたが聞くことは出来ない。
だけど一つだけ分かった事がある。
あのプレシアは本物だったにちがいない。
どうして現れたかは分からないが心配してくれていた。
『母さん…』
もうすぐこの暗闇から目を覚ますかもしれない。
だけど起きた時に貴方の顔が見たいよ。
私が今大好きなあの人の顔を――
『…クルス』
~はやてSide~
「石化の槍!ミストルティン!」
「烈風障壁」
石化の槍を見えない壁が防ぎ跡形もなく消えていく。
これで何度目だろう?
ブラッディダガーもミストルティンもあの障壁のせいでスパーダに届かない。
おそらくスパーダの持つ笛が関係しているに違いないが接近するにもスパーダは物凄いスピードで逃げるため接近出来ない。
本当にやりにくい相手である。
「フェイトちゃんが気になるのに…」
ボルキアの言葉で震えていたフェイトを思い出す。
フェイトは精神的ダメージに対して本当に弱い。
特に大切な人が関係すると情緒不安定になる時だってあるのだ。
「シグナムとシャマルも無理そうやし」
シグナムは最初の体当たりがまだ治りきれておらず思うように戦えていない。
技のキレがイマイチ。
シャマルはシャマルでにらみ合いを続けている。
「しゃあない!こうなったら奥の手や!」
シュベルトクロイツを器用に回しはやては再びブラッディダガーをスパーダに放つ。
「またか?烈風障壁!」
「それが狙いや!」
スパーダが再び障壁を張った瞬間、はやてはニヤリと笑って続けざまにブラッディダガーを放つ。
ブラッディダガーを防ぎながらだんだんスパーダの視界が煙で見えなくなる。
はやての狙いはスパーダの視界を塞ぐ事と、
「リイン!」
『了解です!いつでもどうぞ!』
「いくで!白夜の槍!インフィニティレイン!」
はやての背後に現れた複数の真っ白な槍や刃。
それぞれが属性を持ちスパーダの姿が確認出来ないままはやては全てを放つ。
おそらくこれが効かなかったら打つ手はない。
「…………」
煙が晴れていきスパーダの姿を確認する。
「この狸女め~」
「半々やったか…」
スパーダの腕や足には槍や刃が突き刺さっており、刺さっている部分は火傷していたり凍結している。
「その魔法はオリジナルか…」
「そうや。インフィニティレインは修行で作り出した魔法。本当なら複数の敵に使うんやけど今はアンタに使わせてもろた。こっちにも事情があるから…」
「あのFの生き残りのこと?人形が気になるのかな~?」
ニヤニヤ笑うスパーダにはやては怒りの表情でブラッディダガーを放つ。
許せないのだ。
自分の友を親友を人形と言った目の前の男を――
「フェイトちゃんは人形やない!人間や!」
「それはお前の考えだろ?でも実際は違うよな~。フェイト・T・ハラオウンは俺達と同じ人形だぜ、生まれ方が違うとしてもな」
「……………」
「否定するのは結構だ。だが否定したところで変わらない。お前の家族の守護騎士が一人の人間の人生を台無しにしてしまった過去もな…」
スパーダの言葉にはやてはシュベルトクロイツをギュッと握り締めて顔を俯かせる。
確かにスパーダの言う通りだ。
過去はどう足掻いても変えられないものだ。
本当にシグナム達のせいで人生を台無しにしてしまった人がいるのかもしれない。
否定したところで事実なら何も言えなくなる。
「確かに罪は消えへんやろ。やってしまった事実があるならそれを受け止めなきゃいけない。目を背けるのは逃げるのと同じや」
「…………」
「私らは弱い人間や。せやけど仲間がいれば闇に囚われる事はない。スパーダ、アンタらはどうや?」
はやての言葉にスパーダは頭をボリボリ掻きながら溜め息を吐く。
目の前の少女に脅しや精神的ダメージを与えるのは不可能だ。
決意や想いがあれほど強い少女の心をへし折るのは自分ではなくボルキアじゃないと無理である。
「めんどくさい」
腕を組んで考える。
自分の分身達が消えるのも時間の問題だろう。
もしこの場にイレギュラーが現れたらどうする?
捕まるのだけは嫌だから、
「もうちょい粘る「事が出来ると思ったかい?」なっ!?」
突如自分を縛るバインドに驚くスパーダ。
まさか本当にイレギュラー!?
でも気配を全く感じられなかったのに。
一体誰だ?
「初めましてかな?ジョーカーズの一人スパーダ」
「お前はヴェロッサ・アコース!?」
「ロッサ?」
「やぁはやて。さっき本局で会ったばっかりだね」
この場に現れたのは先程まで本局にいたロッサだった。
「どうしてここに?」
「クロノ君からの頼みでね、君達がなかなか戻ってこないから様子を見てこいって」
やれやれと溜め息を吐きロッサははやての方を向くとすぐに指示を出す。
「はやて、早くこの星から出た方がいい。シグナムさん達と一緒にクロノ君のところに戻るんだ」
「急にそんなん言われても…」
「理由は後で話すから。僕の考えが正しいならおそらく…」
ユーノの張った結界内で呟くなのはにショウが真剣な表情で答えた。
「実は喫茶店で稟達と話していたんだが、急にクロノから呼び出されてなユーノと一緒に駆け付けたんだよ。それとフェイト達の方にも援軍は向かってるはずだぜ」
ショウやユーノがここに来たとなるとフェイト達の援軍に向かったのは間違いなくあの二人である。
「ショウ…」
「あぁ…。分かってる」
ユーノとショウが立ち上がり険しい表情で前方を見つめる。
あの砲撃で倒したとは思えないが爆発の煙のせいで男の姿が確認出来ない。
警戒しているが動きがないため二人はただ見つめるだけ。
「手応えは?」
「なかったとは言えないけど直撃したから少しはダメージがあるはずだけど…」
煙がだんだん晴れていき二人の視界に入ったのは、服装が焼き焦げてはいるが余裕の表情で笑みを浮かべポケットに手を突っ込んでいる状態でエグザである。
なのはやヴィータやユーノの魔法攻撃を喰らっていたのにエグザは気にしている様子もなくショウやユーノと対峙しているのだ。
耐久力があるとか言うレベルじゃない。
この男もまた何か力があるのかもしれない。
「お前はあのノヴァやケルベラと違って落ち着いているんだな」
「あの二人の精神は普通とは違うからな。私とあの二人は他人と思ってくれてもいい」
向かってくる気配は感じられない。
もしかしたら何か聞けるかもしれないと思ったユーノが一歩前に出て口を開く。
「貴方に聞きたい事があります」
「…………」
「貴方達の狙っているロストロギアは【ジェネシスやラクールホープ】と何か関係があるんですか?」
ユーノの言葉に眉をピクリとわずかに動かして反応するエグザ。
やっぱりと内心思いながらもユーノは言葉を続ける。
「その二つについて少し調べたら一つの共通点に気付きました。ジェネシスとラクールホープは対象を一瞬で消滅させる事の出来る質量兵器。もし僕の考えが正しいならロストロギアの役目は…」
「……成る程。あの方や闇帝がマークする訳だ。なかなかの考えだユーノ・スクライア」
ユーノの言葉にフッと笑みを浮かべて呟くエグザ。
おそらくユーノが答えにたどり着くのも時間の問題だろう。
(このまま奴を倒した方がいいのかもしれないが…)
正直エグザの身体はまだ戦える状態だがデバイスは破損していた。
なのは達の魔法攻撃を回避するときや受け止めた時に無茶をしたのが原因である。
「聞きたい事はそれだけか?」
「もう一つあります。貴方はディアゴという名前を聞いたことがありますか?」
ユーノの発した名前に反応したのはエグザではなくショウだった。
何故ディアゴの名が出てくるのか?
今回の事件にディアゴが関係しているのか?と疑問が浮かんだのである。
「知らんな」
「そうですか…(やはり関係ないのかな)」
エグザの言葉にいささか納得出来なかったが関係している証拠もないためそれ以上ディアゴについて何かを聞くことは出来ない。
やはりこの組織の闇を聞くには彼に聞くしかないのだとユーノは一人頷く。
「質問はないようだ」
「えぇ。あとはこの場から退いてくれるとありがたいんですが」
「それは無理だな。それにもう一人の男はやる気があるようだぞ」
「……………」
エグザはチラリとショウに視線を向けるとショウは剣を握り締めて真剣な表情で立っていた。
ショウ自身もあまり戦いたくないがエグザを許せない部分もある。
なのはをヴィータをザフィーラを傷つけたこの男を許すわけにはいかない。
「しかし残念だったな」
「えっ…」
「気付かないのか?」
ユーノはその言葉に目を細めた。
気付かない?
この状況で戦えなく理由の事だろうが……
「ユーノ!そこから離れろ!」
「……!!」
ショウの言葉にハッとして下がったユーノは理解する。
地面から光が溢れ出してその場が激しく揺れ始めるのだった。
「「これは!?」」
「……始まったか」
~フェイトSide~
暗闇が広がる。
私は今夢を見ているのかな?
『フェイト…』
誰かが私を呼んでいる。
誰?
『フェイト…』
暗闇が一瞬光に包まれて再び暗闇に戻るとそこには、狂気に染まっていない優しかった時の母親の姿をしたプレシアがいた。
どうして?母さんが?
闇の書事件の時と同じなのだろうか?
これは私が望んだ夢?
『フェイト、貴方は私を恨んでる?』
『えっ……』
プレシアの言葉に小さく声を上げる。
自分は確かに母親に虐待されて苦しんだりしたが恨んではいない。
自分を生んでくれてアリシアとしか見てなかったが笑ってくれた時もあった。
『恨んでいません』
『やっぱり貴方は優しいわねフェイト。でも時には優しさは捨てなさい。その優しさはいつか貴方を殺すかもしれない』
『心配してくれるんですか?』
信じられない表情で口を開くフェイト。
本当に目の前にいるのはあのプレシアなのだろうか?
自分が作り出した幻なのかもしれないが何かが違って見える。
もしかしたら本当にプレシアが言ってくれているのだろうか?
『心配するわよ。かつて私はアリシアとの未来しか考えてなくて貴方を傷つけた。だけど本当は気付かなきゃいけなかった。貴方はフェイトでありアリシアの代わりじゃなくもう一人の娘だったと。ごめんなさいねフェイト』
『母さん…』
頬をつたう滴。
涙が溢れて止まらない。
母親からこんな風に思われていたとは知らなかった。
私をフェイトとして見てくれてもう一人の娘だったと思ってくれたなんて。
やはり自分はプレシアを嫌う事は出来ない。
『フェイト、よく聞きなさい。私は貴女に間違った選択をしてほしくない。今貴女がいる場所が本当に正しいか考えてちょうだい。そしてあの子を止めて……………』
『母さん!』
ユラリとプレシアが揺れてその場からいなくなってしまった。
プレシアがフェイトに何かを伝えようとしていたが聞くことは出来ない。
だけど一つだけ分かった事がある。
あのプレシアは本物だったにちがいない。
どうして現れたかは分からないが心配してくれていた。
『母さん…』
もうすぐこの暗闇から目を覚ますかもしれない。
だけど起きた時に貴方の顔が見たいよ。
私が今大好きなあの人の顔を――
『…クルス』
~はやてSide~
「石化の槍!ミストルティン!」
「烈風障壁」
石化の槍を見えない壁が防ぎ跡形もなく消えていく。
これで何度目だろう?
ブラッディダガーもミストルティンもあの障壁のせいでスパーダに届かない。
おそらくスパーダの持つ笛が関係しているに違いないが接近するにもスパーダは物凄いスピードで逃げるため接近出来ない。
本当にやりにくい相手である。
「フェイトちゃんが気になるのに…」
ボルキアの言葉で震えていたフェイトを思い出す。
フェイトは精神的ダメージに対して本当に弱い。
特に大切な人が関係すると情緒不安定になる時だってあるのだ。
「シグナムとシャマルも無理そうやし」
シグナムは最初の体当たりがまだ治りきれておらず思うように戦えていない。
技のキレがイマイチ。
シャマルはシャマルでにらみ合いを続けている。
「しゃあない!こうなったら奥の手や!」
シュベルトクロイツを器用に回しはやては再びブラッディダガーをスパーダに放つ。
「またか?烈風障壁!」
「それが狙いや!」
スパーダが再び障壁を張った瞬間、はやてはニヤリと笑って続けざまにブラッディダガーを放つ。
ブラッディダガーを防ぎながらだんだんスパーダの視界が煙で見えなくなる。
はやての狙いはスパーダの視界を塞ぐ事と、
「リイン!」
『了解です!いつでもどうぞ!』
「いくで!白夜の槍!インフィニティレイン!」
はやての背後に現れた複数の真っ白な槍や刃。
それぞれが属性を持ちスパーダの姿が確認出来ないままはやては全てを放つ。
おそらくこれが効かなかったら打つ手はない。
「…………」
煙が晴れていきスパーダの姿を確認する。
「この狸女め~」
「半々やったか…」
スパーダの腕や足には槍や刃が突き刺さっており、刺さっている部分は火傷していたり凍結している。
「その魔法はオリジナルか…」
「そうや。インフィニティレインは修行で作り出した魔法。本当なら複数の敵に使うんやけど今はアンタに使わせてもろた。こっちにも事情があるから…」
「あのFの生き残りのこと?人形が気になるのかな~?」
ニヤニヤ笑うスパーダにはやては怒りの表情でブラッディダガーを放つ。
許せないのだ。
自分の友を親友を人形と言った目の前の男を――
「フェイトちゃんは人形やない!人間や!」
「それはお前の考えだろ?でも実際は違うよな~。フェイト・T・ハラオウンは俺達と同じ人形だぜ、生まれ方が違うとしてもな」
「……………」
「否定するのは結構だ。だが否定したところで変わらない。お前の家族の守護騎士が一人の人間の人生を台無しにしてしまった過去もな…」
スパーダの言葉にはやてはシュベルトクロイツをギュッと握り締めて顔を俯かせる。
確かにスパーダの言う通りだ。
過去はどう足掻いても変えられないものだ。
本当にシグナム達のせいで人生を台無しにしてしまった人がいるのかもしれない。
否定したところで事実なら何も言えなくなる。
「確かに罪は消えへんやろ。やってしまった事実があるならそれを受け止めなきゃいけない。目を背けるのは逃げるのと同じや」
「…………」
「私らは弱い人間や。せやけど仲間がいれば闇に囚われる事はない。スパーダ、アンタらはどうや?」
はやての言葉にスパーダは頭をボリボリ掻きながら溜め息を吐く。
目の前の少女に脅しや精神的ダメージを与えるのは不可能だ。
決意や想いがあれほど強い少女の心をへし折るのは自分ではなくボルキアじゃないと無理である。
「めんどくさい」
腕を組んで考える。
自分の分身達が消えるのも時間の問題だろう。
もしこの場にイレギュラーが現れたらどうする?
捕まるのだけは嫌だから、
「もうちょい粘る「事が出来ると思ったかい?」なっ!?」
突如自分を縛るバインドに驚くスパーダ。
まさか本当にイレギュラー!?
でも気配を全く感じられなかったのに。
一体誰だ?
「初めましてかな?ジョーカーズの一人スパーダ」
「お前はヴェロッサ・アコース!?」
「ロッサ?」
「やぁはやて。さっき本局で会ったばっかりだね」
この場に現れたのは先程まで本局にいたロッサだった。
「どうしてここに?」
「クロノ君からの頼みでね、君達がなかなか戻ってこないから様子を見てこいって」
やれやれと溜め息を吐きロッサははやての方を向くとすぐに指示を出す。
「はやて、早くこの星から出た方がいい。シグナムさん達と一緒にクロノ君のところに戻るんだ」
「急にそんなん言われても…」
「理由は後で話すから。僕の考えが正しいならおそらく…」