過去の罪

~大会議室~

皆が席に座りクルスがそれを確認するとゆっくり話を始めた。


「……あれは闇の書事件が終わって僕が元の世界に帰った直後から始まった」








△▼△▼△▼


「つまり僕らとアナタの世界が繋がったという訳ですか?」


クルスの部屋にトレイン達やクロノナンバースが集まり話をしている。


「おそらく僕と親友が命をかけて倒した男【ディアゴ】の力だと思います。その男は次元の狭間の力を使って色んな世界を渡ってきていた。しかし、ディアゴが死んだ事によってその力はバラバラになった事により次元の狭間の力が暴走したんです」


クルスの言葉に皆が首を傾げている。

多分彼らとは世界が違うから理解できないのだろう。


「つまり……世界を戻すためにはその狭間の力を戻さないといけないんですね」

その中でシャオだけが理解できたのか##NAME2##に聞いた。


「それが一番の方法だと僕も思う……」


こうして狭間の力を戻すための物語が始まった。








△▼△▼△▼

~大会議室~

「それから僕は彼らと一緒に旅を始めたんだ」


静まり返った大会議室でクルスの声だけが響いている。


「話の途中だけど、一ついいか?」

そんな静まり返った状況でショウが手を上げて口を開く。


「クルス、お前今まで何回死にかけた?」

『!?』


ショウの言葉にクルス以外のメンバーは目を丸くした。


「俺が気付かないと思ったのか?」


「……ショウには敵わないね。僕は三回ぐらい死にかけたよ」

「一番酷かったのは楽園大戦だったけどな」


思い出したようにトレインがクルスに言うと、クルスの表情が一瞬悲しげになったのを両王とフェイトだけが気付いた。



「楽園大戦ってのはねゼロナンバーズと聖騎士団のメンバーが起こした戦いなんだ」

「聖騎士団ってマルスやアズール達の事だろ?アイツら何でお前のところに?」


ショウの問いにクルスは溜め息を吐いて答えた。

「許せなかったんだと思うよ。闇の書事件の時に自分達が本気を出したのに殺せなかった事がね…」


皮肉めいてクルスは言ったが稟達には理解が出来なかったようだ。


「けど何で今もそいつらはお前をしつこく追っているんだ?」


稟がポツリと呟きながらクルスに問いかけるとクルスは真剣な表情で答えた。











「僕が楽園大戦で聖騎士団のNo.7~No.10を殺したから…」

「………えっ?」


クルスの言葉に皆が言葉をなくしている。

その中でもフェイトが誰よりも動揺していたがフェイトはこの時気づいてしまう。

クルスの表情が僅かに苦し気に歪んでいた事に。


「クルス、お前…」


クロノもさすがの事に驚いたのか目を丸くし気持ちが落ち着かない様子だ。

いやクロノだけじゃない、ファントム・ナイツのメンバーと両王以外は皆が同じ表情や気持ちをしているのだ。


「しかし……そうしなければイヴは救えず世界は破滅の道を辿っていたでしょう」


セフィリアがクルスのフォローするように言うと、


「じゃあ何か!お前は世界を守るために手を血に染めたってのか!?」


ショウがテーブルを叩いてクルスに向けて怒声を言ったが、


「……あぁ」


冷静な表情と口調で答えるクルスにショウは軽く舌打ちをする。


「それから楽園大戦が終わった後も色んな事があったんだ。シンとかいう魔族と戦ったり、ローレライの解放を手伝った「ちょっとまてー!!」…んっ?」


クルスが言い終えようとした直後にショウがびっくりしながら声を出した。


「お前の言った世界って俺がよく知ってる気がするんだが」


そりゃ知ってるだろうね。

シンはSO〇に出てきたし――

ローレライはTO〇に重要な事だったし――


「何でもありだな」


そうだよね。


「あれ?じゃあ何でクルスは叔父さん達の事を知っているんだ?こっちに帰ってきたのはつい最近なんだろ?」


首を傾げて稟が尋ねると、クルスではなく両王が答え出した。


「それは簡単な事だ!」

「クルスちゃん達には私達の護衛をしてもらった事が数回あってね。神界や魔界には何回も来てくれた事があったんだよ」


ようやく出番が来たのが嬉しかったのか両王はちょっとだけ泣いていた。


「でも私やリンちゃんはクルス君と会った覚えないよ」

「お父様の護衛をしてくださったなら一度ぐらいはお顔を見せてくださってもよかったのでは?」


シアやネリネの言葉に両王は小さく笑い出した。

何がそんなに面白いのかは不明だが。


「シアとネリネが覚えていないのは多分あっちの姿じゃなかったからだよ」


あっちの姿とは何の事か分からないメンバーは首を傾げている。


「クルス殿見せてやったらいいじゃねぇか!」

「そうだよ!あっちの姿の方が僕は好きだよ」


両王がもの凄い勢いで詰め寄って来たがシャオが羽衣で縛った。


「シャオ殿!?何をする!?」

「クルスが困っていると思ったのでつい」


悪びれた様子もなくシャオは両王に言いながら羽衣を引っ張っている。


「あっ…マズイよシャオちゃん!」


「言わなくても分かりますよ魔王様」

「魔王様だなんて!?僕や君達はある意味家族なんだし…パパって…ぁぁぁぁぁ~」


言い終える前にシャオは力を込めて引っ張り魔王は気絶した。

神王もいつの間にか気絶している。


「ななな…なんと!?私と同じ役目の人がいるのですよ!」


麻弓は何が嬉しかったのかシャオの写真と気絶した両王の写真を撮っている。













「話がそれておるぞクルスよ」


ベルゼーが低い声でクルスを見ながら言って、クルスは溜め息を吐きながら口を開いた。


「さっき両王が言ってたけどあっちの姿を見たい人なんかいる?」


次の瞬間全員が手を上げた。

いや手だけじゃなく普通にカメラやビデオカメラを持っている人もいるが気にしないでおこう。


「イヴとシャオと樹に頼みがある。この会議室を覆うように結界を張って」


「うん」

「分かりました」

「やっと出番だぁぁぁぁぁぁ~!」


樹が煩かったが気にしないで結界を張ってもらった。



「レン、いけるか?」


『はい!いつでもいいですよマスター!』


クルスは目を閉じて胸に手を当てて口を開くと、


「『ユニゾン…イン!』」


次の瞬間にはクルスの姿が変わっていた。


(あれレンのやつどこにいた?)

レンの声が聞こえたが姿が見えないことに魔導師組が首を傾げた。


「綺麗…」


フェイトが小さく呟く。

クルスの姿は黒いスーツから雪のように白いバリアジャケットへと変わって、瞳もいつもより深い蒼色になっており背中からは薄い青色の翼が生えていた。


「この姿なら見たことあるんじゃないかな?」


シアやネリネに声を掛けたが何故か固まっていた。


(もしかしてよく一緒に料理をしてくれた)

(よく私に外の世界を教えてくれた)


何やら考えているようだが聞かないでおこう。


「きゅ~」


こちらはこちらで楓が顔を赤くして気絶して稟や女性群が慌てている。


「クルス、お前のバリアジャケットの服装変わってないか?」


ショウも驚いた様子でクルスを見ている。


「まぁ…動きやすくって。便利だしね」


クルスはすぐにBJを解除して元の黒いスーツ姿へと戻った。


「学園の僕は魔力があまりない状態なんであまり戦えないんだよね」


クルスはそう言いながらため息を吐いて話を変えといく。


「僕はショウやフェイト達には悪いことをした」

「…えっ?」


意味が分からないショウやフェイト達はクルスをジッと見つめる。


「僕は管理局に何回も出入りしててロストロギアの回収の依頼を受けていたんだ。その時にショウがなのはを庇って重症を負ったのも知った」


「まてよ…!じゃあお前は会えたはずなのに会わなかったのか!?」


図星を言われたクルスは視線をそらした。


「じゃあ…私やなのは達がショウ抜きで任務をしていた時に助けてくれたのも」

「……僕だ」


一瞬辛そうに顔を歪めてクルスは表情を暗くする。


「私知らなかった。クルスが守ってくれたのに」


涙ぐむフェイトにクルスは優しい口調で言った。


「フェイトが悪いんじゃない。悪いのは…言えなかった僕にあるから」


クルスがそう言った瞬間、

PiPiPi――

突如会議室に通信が入ってきた。


「ジェノス、通信の相手は?」

「待ってくれ…」


ジェノスは何やら操作を始めたて通信を皆に聞こえるようにした。


「よしっ!繋がった!」


ジェノスがボタンを押してモニターに誰かが映った。


そこには――


『クルス!応答してくれ!僕だ…クロードだ!』

「クロード」

「おいおいマジかよ」


いきなりの展開にショウは渇いた笑みを浮かべている。


「クロード急にどうしたの?今は…『レナとアシュトンがいなくなったんだ!』…」

「レナとアシュトンが…」


イヴもそれには驚いたのかクロードに呼び掛けた。


「クロード、二人がいなくなったってどうして?」

『実は僕達四人で魔石を見つけたんだけど、途中で変な転送装置にレナとアシュトンが触れて気づいたら…』

「消えたってこと…」


通信越しにクロードは小さく頷いた。


「クロード、その魔石があった場所は?」

『確か…『魔界ですわ…クルス…』』


「「うひょ~我が女神よ~!」」


セリーヌが現れた瞬間に、樹とジェノスが目をハートにした。


「ジェノス…」

「緑葉君…」


すると――

背後から羽衣を持ったシャオとロープを持った麻弓が現れて、


「「ぎゃぁぁぁぁぁ~」」

きつく縛られて天井に吊るされてしまう。


「魔界の転送装置……か」


クルスは小さく呟きチラリと魔王を見た。

それに気付いたのか魔王は立ち上がり冷汗をかいている。


「魔王様、転送装置って何でしょうね?」

「アハハ!嫌だなクルスちゃん。侵入者用の装置だよ。どこに飛ばされるかはその人次第の…」

「それじゃ助けに行けませんが」

「大丈夫だよ。いい事をした人ならいい転送場所についてくれるから」


自信満々に言う魔王にクルスは呆れながらもクロードにそう伝えた。


『いい転送場所か。…レナやアシュトンが今行きたい場所になると分かるんだけど…』

「とりあえず、そっちに二人ほど仲間を送る。だからクロードとセリーヌは魔界探索をそのまま続行してて…」

『分かりましたわ…』


通信を終えてクルスはモニターを消すとジェノスとベルゼーに視線を向けた。


「ベルゼーとジェノスはクロード達と合流して一緒に二人を探してきてほしいんだ頼めるかな?」

「私ならかまわない。暇だったしな…」

「レナちゃんと会えるならたとえ火の中だろうと水の中だろうと行くでやんすよ!」


二人は了承して己の武器を装備した。


「クロードとセリーヌの場所は転送装置があるところから離れていないはずだから後は任せた…」


こうしてベルゼーとジェノスは魔界に旅立った。
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