体育祭(後編)
『いよいよ体育祭も最後の競技となりましたね勇人先生』
『いってて…んっ…あぁそうだな。ところで智代、実況のさくらはどうした?』
『芳乃先生ならチアガールになって応援するんだ!と言って出ていきました』
智代と頭に包帯を巻いている勇人は同時にため息を吐いて、おそらく二年A組に混じっている金髪ロリ教師の事を思い呆れていた。
自由奔放な彼女にしか出来ない芸当だろう。
『それでは最後の競技のピストルを鳴らすのはこの方。我が学園の生徒会長桂ヒナギク会長です』
凛とした表情でピストルを持ち台の上に立つと息を吐いて口を開く。
『長かった体育祭もこの男子リレーで終わりです。男子生徒の皆さん用意はいいです?』
『おぉぉぉ!!』
『それでは位置について……ヨーイ……』
パァン!!
ヒナギクがピストルを鳴らしたと同時に走り出した四人の男子生徒。
やはり先頭は野々原とハヤテの二人が争う形となっている。
『スタート。ついに男子生徒の決戦の幕が開きましたね』
(やはり速いな野々原さんは。けど僕も負けられないんだ!!)
先頭を走る野々原を抜こうとさらにダッシュするハヤテ。
しかしそんなハヤテに対して野々原は飄々した顔をしたまま先頭を走り、ハヤテが追い付いた時にはすでにバトンは第二走者に渡っていたのだった。
『先頭はA組だ!!続いてB組とC組がバトンを渡してA組を追うぞ!!D組は気合い入れて走れやぁ!!』
勇人の言葉にD組の第一走者は「ひぃぃぃぃ!!」と顔をひきつらせながらバトンを第二走者に渡した。
どうやら彼には勇人に対して、何かしらの恐怖があるようだ。
『さて第二走者はいまだにA組が一位……と思いきやB組の土見先輩が猛烈なダッシュで小玉先輩を抜き去った』
「なっ!?」
「おぉぉぉぉぉ!!」
二位だった稟が直樹を抜き去り順位が入れ替わる。
これも常にガーディアンズとの鬼ごっこで手に入れたダッシュであろう。
逆に稟に抜かれた直樹は「クッ…」と顔を歪めたまま稟の背中を見つめる事しか出来なかった。
「クロード!!」
「稟!あとは任せて」
先頭に躍り出た稟は第三走者のクロードにバトンを渡し、直樹も第三走者の杉並にバトンを渡してそれぞれ駆け出した。
お互い一歩も譲らず先頭はクロードと杉並の二人で争っている。
『クロードも杉並も速いな。けどあの杉並が本気で走ったらおそらく…』
腕を組んでレースを見ていた勇人の考え通り、杉並がクロードを一気に抜いて笑いながら距離を離していた。
恐るべし杉並ダッシュ―――
「はっ…速い!」
「フハハハハハハ!!まだまだだな同士ケニー!」
顔を歪めるクロードに対して杉並は余裕の笑みを浮かべたまま走っている。
そんな状況で第四走者でもあるクルスと勇は真剣な表情で話していた。
「クルス、その格好で走るのか?」
「どうして?」
「だって長袖に長ズボンだろ?」
そう――
この体育祭で長袖に長ズボンスタイルだったのは工藤叶とクルスの二人だけだった。
叶にも理由があったようにクルスにも理由がある。
あのタトゥーを見られる訳にはいかなかったクルスは周りが半袖だろうが長袖スタイルとして体育祭に参加するしかなかった。
「安心していい。僕はアンカーのショウの為にも全力で走る。そしてキミを本気で抜く」
「…ふ~ん。じゃあお手並み拝見といくか」
ニヤッと笑い勇は杉並が来るコースに並んで、クルスも「ふぅ~」と息を吐いてコースに並ぶ。
おそらく先頭は杉並のはず。
クロードも速い足を持っているから距離もそんなに開いていないなら本気で抜けるはずだ。
『さて先頭はA組の杉並で二位を走るのはクロードだ!!』
「受け取れ天道!!」
「んじゃ!先に行ってるぜ」
杉並からバトンを受け取り先に走り出した勇。
「クルス!すまない!」
「大丈夫だよクロード。よく杉並相手に頑張ったよ。あとは僕に任せて」
ニコッと笑ってクルスはバトンを握り締めると一気に駆け出した。
やはり長袖に長ズボンスタイルのためか少しだけ走りにくいがクルスは真剣な表情のまま勇を追っていく。
『やっぱり速いなクルスは。流石はファントムNo.1だ』
『何ですかそれ?』
『…んっ?あぁ、気にするな』
勇人が小さく呟いた言葉に智代が首を傾げていたが、勇人は何事もなかったようにフッと笑ってレースに集中する。
あの身体で走るとは―――
確かに身体に痛みはないようだがあの呪いは早く消さないとまずいだろうに。
「クッ!もう来たのか…」
「言ったはずだよ。本気でキミを抜くと」
『なんと、アサヅキ先輩が天道先輩と並んで抜いていく!』
クルスが勇と並んで走っていたがそこからまたダッシュして勇を抜くとB組から「おぉぉぉぉぉ!!」と声が上がる。
言ったからには実行しないとね。
アンカーに必ず一番に渡すって約束までしたんだから。
「ショウ!」
「よしっ!あとは任せておけ!」
クルスからバトンを受け取り一度息を吐いて駆け出すショウ。
前へ前へと駆け抜けていく。
『アンカーのヤナギ先輩が走る中、A組がようやくアンカーにバトンを渡したようです』
「岡崎!気合い入れて走らなかったら『お前にレインボー!』だからな」
「へいへい。分かってるよ」
お前にレインボーって訳すと=お前を天国にご招待だろうが。
杏の鉄拳制裁から復活したばかりの俺に走らせるなんて鬼かアイツラは。
まぁ――
「本気出してみるか」
そう呟いたと同時に一気に駆け出してショウを追っていく朋也。
ショウとの差は広がっていたのだが普段本気を出さない朋也が本気で走っているとそれは皆を驚かせた。
何故なら―――
『あれだけ開いていた差を岡崎が縮めていきます。これはどうなるか分かりませんね』
『こりゃ、どっちが勝ってもおかしくないかもな』
実行の二人もヒートアップするショウと朋也の二人を真剣な表情で見つめている。
それだけではなく、
「岡崎ーーーーー!!」
「朋也ーーーーー!!」
「岡崎さん!!」
「岡崎君!!」
「朋也君!!」
Aクラスからは朋也に声援が送られ、
「「ショウ!」」
「「ショウ君!」」
「ショウちゃん!」
Bクラスからもショウに向かって声援が送られる。
互いに本気でゴールを目指してショウも朋也もただ本気で走っていく。
「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
二人の視界にゴールテープが入り二人はそれを確認するとラストスパートをかける。
勝つのは――
ショウか?朋也か?
勝利の女神が微笑んだのは!?
△▼△▼△▼
~その後~
「まさかな…」
「うん。まさかこうなっちゃうなんて」
「さすがに誰も予想出来ないって…」
「アハハハハ…」
屋上でフェンスの反対側に座りながらグラウンドを見つめるショウやクルス達。
実は先程の体育祭で優勝したのはA組でもなくB組でもなかったのだ。
そう優勝したのは――
「まさかC組が勝つとはな。あのアンカーにはびっくりだよ」
「ショウと朋也をゴール手前で抜くとはね。普通は予想出来ないよ」
最後の最後でC組のアンカーがショウと朋也を抜いて一位になったのだ。
つまり杉並のトトカルチョも皆が外して二つの意味で負けてしまうという結果になった。
「なぁクルス…」
「どうしたのショウ?」
「神魔杯の事なんだけど、お前は何を考えてるんだ?」
神魔杯か―――
そろそろ時期だったし話しても構わないだろう。
稟もいる事だし―――
「神魔杯は世界中に放送するつもりなんだ。つまりいろいろと決着をつけるにも都合がいい」
願うなら奴との決着もつけたいんだが―――
参加するかどうかは不明だ。
だから―――
「今は神魔杯より皆との打ち上げを楽しもうよ」
クルスがニッコリ笑って背後を向くと、ショウと稟とハヤテも背後を振り返り四人の背後にいたのは、なのはやフェイトやはやて達皆がいて四人を待っているようだ。
四人は互いに頷いてフェンスを飛び越えると皆の元に行き屋上には誰もいなくなるのだった。
第二章前半
END
次回予告
ショウ
「体育祭が終わってしばらくの休暇が始まる…」
クルス
「その休暇中に僕はロッサと共にある事件の真相に近づいていた」
なのは
「そして私達のお仕事中に出会った人達…」
フェイト
「知った事実と力と存在…」
はやて
「次回S.H.D.C.――
第22話――
【出会いと想い】に…」
なのは
「ドライブ…」
フェイト&はやて
「「イグニッション…」」
ショウ
「この次回予告は久々だよな~」
クルス
「まぁこのメンバーだからね…」
『いってて…んっ…あぁそうだな。ところで智代、実況のさくらはどうした?』
『芳乃先生ならチアガールになって応援するんだ!と言って出ていきました』
智代と頭に包帯を巻いている勇人は同時にため息を吐いて、おそらく二年A組に混じっている金髪ロリ教師の事を思い呆れていた。
自由奔放な彼女にしか出来ない芸当だろう。
『それでは最後の競技のピストルを鳴らすのはこの方。我が学園の生徒会長桂ヒナギク会長です』
凛とした表情でピストルを持ち台の上に立つと息を吐いて口を開く。
『長かった体育祭もこの男子リレーで終わりです。男子生徒の皆さん用意はいいです?』
『おぉぉぉ!!』
『それでは位置について……ヨーイ……』
パァン!!
ヒナギクがピストルを鳴らしたと同時に走り出した四人の男子生徒。
やはり先頭は野々原とハヤテの二人が争う形となっている。
『スタート。ついに男子生徒の決戦の幕が開きましたね』
(やはり速いな野々原さんは。けど僕も負けられないんだ!!)
先頭を走る野々原を抜こうとさらにダッシュするハヤテ。
しかしそんなハヤテに対して野々原は飄々した顔をしたまま先頭を走り、ハヤテが追い付いた時にはすでにバトンは第二走者に渡っていたのだった。
『先頭はA組だ!!続いてB組とC組がバトンを渡してA組を追うぞ!!D組は気合い入れて走れやぁ!!』
勇人の言葉にD組の第一走者は「ひぃぃぃぃ!!」と顔をひきつらせながらバトンを第二走者に渡した。
どうやら彼には勇人に対して、何かしらの恐怖があるようだ。
『さて第二走者はいまだにA組が一位……と思いきやB組の土見先輩が猛烈なダッシュで小玉先輩を抜き去った』
「なっ!?」
「おぉぉぉぉぉ!!」
二位だった稟が直樹を抜き去り順位が入れ替わる。
これも常にガーディアンズとの鬼ごっこで手に入れたダッシュであろう。
逆に稟に抜かれた直樹は「クッ…」と顔を歪めたまま稟の背中を見つめる事しか出来なかった。
「クロード!!」
「稟!あとは任せて」
先頭に躍り出た稟は第三走者のクロードにバトンを渡し、直樹も第三走者の杉並にバトンを渡してそれぞれ駆け出した。
お互い一歩も譲らず先頭はクロードと杉並の二人で争っている。
『クロードも杉並も速いな。けどあの杉並が本気で走ったらおそらく…』
腕を組んでレースを見ていた勇人の考え通り、杉並がクロードを一気に抜いて笑いながら距離を離していた。
恐るべし杉並ダッシュ―――
「はっ…速い!」
「フハハハハハハ!!まだまだだな同士ケニー!」
顔を歪めるクロードに対して杉並は余裕の笑みを浮かべたまま走っている。
そんな状況で第四走者でもあるクルスと勇は真剣な表情で話していた。
「クルス、その格好で走るのか?」
「どうして?」
「だって長袖に長ズボンだろ?」
そう――
この体育祭で長袖に長ズボンスタイルだったのは工藤叶とクルスの二人だけだった。
叶にも理由があったようにクルスにも理由がある。
あのタトゥーを見られる訳にはいかなかったクルスは周りが半袖だろうが長袖スタイルとして体育祭に参加するしかなかった。
「安心していい。僕はアンカーのショウの為にも全力で走る。そしてキミを本気で抜く」
「…ふ~ん。じゃあお手並み拝見といくか」
ニヤッと笑い勇は杉並が来るコースに並んで、クルスも「ふぅ~」と息を吐いてコースに並ぶ。
おそらく先頭は杉並のはず。
クロードも速い足を持っているから距離もそんなに開いていないなら本気で抜けるはずだ。
『さて先頭はA組の杉並で二位を走るのはクロードだ!!』
「受け取れ天道!!」
「んじゃ!先に行ってるぜ」
杉並からバトンを受け取り先に走り出した勇。
「クルス!すまない!」
「大丈夫だよクロード。よく杉並相手に頑張ったよ。あとは僕に任せて」
ニコッと笑ってクルスはバトンを握り締めると一気に駆け出した。
やはり長袖に長ズボンスタイルのためか少しだけ走りにくいがクルスは真剣な表情のまま勇を追っていく。
『やっぱり速いなクルスは。流石はファントムNo.1だ』
『何ですかそれ?』
『…んっ?あぁ、気にするな』
勇人が小さく呟いた言葉に智代が首を傾げていたが、勇人は何事もなかったようにフッと笑ってレースに集中する。
あの身体で走るとは―――
確かに身体に痛みはないようだがあの呪いは早く消さないとまずいだろうに。
「クッ!もう来たのか…」
「言ったはずだよ。本気でキミを抜くと」
『なんと、アサヅキ先輩が天道先輩と並んで抜いていく!』
クルスが勇と並んで走っていたがそこからまたダッシュして勇を抜くとB組から「おぉぉぉぉぉ!!」と声が上がる。
言ったからには実行しないとね。
アンカーに必ず一番に渡すって約束までしたんだから。
「ショウ!」
「よしっ!あとは任せておけ!」
クルスからバトンを受け取り一度息を吐いて駆け出すショウ。
前へ前へと駆け抜けていく。
『アンカーのヤナギ先輩が走る中、A組がようやくアンカーにバトンを渡したようです』
「岡崎!気合い入れて走らなかったら『お前にレインボー!』だからな」
「へいへい。分かってるよ」
お前にレインボーって訳すと=お前を天国にご招待だろうが。
杏の鉄拳制裁から復活したばかりの俺に走らせるなんて鬼かアイツラは。
まぁ――
「本気出してみるか」
そう呟いたと同時に一気に駆け出してショウを追っていく朋也。
ショウとの差は広がっていたのだが普段本気を出さない朋也が本気で走っているとそれは皆を驚かせた。
何故なら―――
『あれだけ開いていた差を岡崎が縮めていきます。これはどうなるか分かりませんね』
『こりゃ、どっちが勝ってもおかしくないかもな』
実行の二人もヒートアップするショウと朋也の二人を真剣な表情で見つめている。
それだけではなく、
「岡崎ーーーーー!!」
「朋也ーーーーー!!」
「岡崎さん!!」
「岡崎君!!」
「朋也君!!」
Aクラスからは朋也に声援が送られ、
「「ショウ!」」
「「ショウ君!」」
「ショウちゃん!」
Bクラスからもショウに向かって声援が送られる。
互いに本気でゴールを目指してショウも朋也もただ本気で走っていく。
「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
二人の視界にゴールテープが入り二人はそれを確認するとラストスパートをかける。
勝つのは――
ショウか?朋也か?
勝利の女神が微笑んだのは!?
△▼△▼△▼
~その後~
「まさかな…」
「うん。まさかこうなっちゃうなんて」
「さすがに誰も予想出来ないって…」
「アハハハハ…」
屋上でフェンスの反対側に座りながらグラウンドを見つめるショウやクルス達。
実は先程の体育祭で優勝したのはA組でもなくB組でもなかったのだ。
そう優勝したのは――
「まさかC組が勝つとはな。あのアンカーにはびっくりだよ」
「ショウと朋也をゴール手前で抜くとはね。普通は予想出来ないよ」
最後の最後でC組のアンカーがショウと朋也を抜いて一位になったのだ。
つまり杉並のトトカルチョも皆が外して二つの意味で負けてしまうという結果になった。
「なぁクルス…」
「どうしたのショウ?」
「神魔杯の事なんだけど、お前は何を考えてるんだ?」
神魔杯か―――
そろそろ時期だったし話しても構わないだろう。
稟もいる事だし―――
「神魔杯は世界中に放送するつもりなんだ。つまりいろいろと決着をつけるにも都合がいい」
願うなら奴との決着もつけたいんだが―――
参加するかどうかは不明だ。
だから―――
「今は神魔杯より皆との打ち上げを楽しもうよ」
クルスがニッコリ笑って背後を向くと、ショウと稟とハヤテも背後を振り返り四人の背後にいたのは、なのはやフェイトやはやて達皆がいて四人を待っているようだ。
四人は互いに頷いてフェンスを飛び越えると皆の元に行き屋上には誰もいなくなるのだった。
第二章前半
END
次回予告
ショウ
「体育祭が終わってしばらくの休暇が始まる…」
クルス
「その休暇中に僕はロッサと共にある事件の真相に近づいていた」
なのは
「そして私達のお仕事中に出会った人達…」
フェイト
「知った事実と力と存在…」
はやて
「次回S.H.D.C.――
第22話――
【出会いと想い】に…」
なのは
「ドライブ…」
フェイト&はやて
「「イグニッション…」」
ショウ
「この次回予告は久々だよな~」
クルス
「まぁこのメンバーだからね…」