体育祭(後編)

『にゃははは。それでは選手入場~!』

『うぉぉぉぉぉ!!』

『きたぁぁぁぁぁぁ!!』

『この目に焼き付けろ!!』

『己の脳に刻めぇぇぇぇ!!』


コスプレした女子が入場してくるとガーディアンズが狂ったように興奮している。

写真を撮る者――
鼻血を流す者――
涙を流す者――

とりあえず恐ろしいほどの形相をするガーディアンズにショウ達が動き出しす。


「フローラ…」

「レン…」

「「ユニゾン・イン!!」」


ショウとクルスがパートナーであるフローラとレンとユニゾンして、


「リオウSet UP!」

「フエンSet UP!」

「アルフィーSet UP!」


ショウとクルスがユニゾンすると稟と純一とハヤテも同じようにBJを纏い全員武器を手にしてガーディアンズに向かっていく。

ショウと稟と純一がガーディアンズを剣や斧で狩っていきクルスとハヤテが少し離れた場所で魔方陣を展開して援護魔法を放っている。

五人とも息の合った戦い方でガーディアンズを圧倒して屍の山が次々と増えていくと、


「遅れるなよ純一!」

「かったるいが任せろ」


稟と純一がカートリッジを二・三発ロードして魔方陣を展開すると、斧と剣に魔力を込めて突っ込んでいく。


『SSS!防御を!』

『ダメです!間に合いません!』


「うぉぉぉぉぉ!!」


SSSが固まっていた場所に稟が突っ込んで斧を勢いよく振り下ろし、SSSは迫り来る土によって埋もれていった。


『MMM!純一を狙い撃ちに…』

「遅い!」


純一の剣がMMMの持っていた巨大な大砲を切り裂いて、大砲は地面に落下すると同時に爆発を起こす。


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


MMMは黒焦げのまま飛んでいき屍の山に追加される。

しかしまだ終わらない。


「いくぞ。クルス、ハヤテ」

「うん」

「はい!」


ショウとクルスとハヤテが巨大な収束魔法の準備をしていた。


「インフェルノ~」

「アブソリュート」

「エンド・オブ」


その三人の収束魔法を見て無限書庫で働いているユーノはこう呟いていた。


「「「ブレイカーーーー!!」」」

『この学園は何かおかしいよ!?』


その言葉はごもっともだと思います。

体育祭が戦場になるのはおそらくこの学園だけだろう。

ショウ達五人によりガーディアンズは全て倒れてしまい、何故かその中に勇人先生がいたがこれはツッコマないでおこう。

そして残った女子生徒と普通の男子生徒は大人しくコスプレリレーに集中して、教師陣の方は紅女史が胃薬を飲んでいたが他の先生方は気絶している人達がいたようだ。


『何だか凄い事になっちゃったけど、早速コスプレリレーを始めよう!!出場者はスタートラインに並んでくださいね~!』


静まり返ったグラウンドにさくらの楽し気な声が響き渡ると咲夜や姫やヒナギク達といった女子生徒はそれぞれの場所に向かい第一走者である姫と咲夜と女子Aと女子Bがスタートラインに並ぶ。


「姫ちゃんはドレスなんか?」

「はい。渚ちゃんやことみちゃんから選んでもらってドレスにしたんです。それより咲夜ちゃんはバニーさんですか?」

「ホンマならもうちょい大人っぽい服になるんやったけどはやてに負けてもうたんや…」


恥ずかしさで顔を赤くさせ胸元を隠すように手で覆う咲夜。

自分の身体にピッタリで身体のラインがよく分かるため恥ずかしいのである。


「よく似合ってますよ」

「うぅ~。いっそメイドさんにしておくべきやった。はやてめ~覚えとき~」


今ごろクラステントで親指を立ててるであろう子狸に闘志を燃やしながら咲夜は気合いを入れていた。

たかがバニーがどうした?

ショウならもっと凄い服を選ぶはずだ。

だからバニーで恥ずかしがってる訳にはいかない。


「関西人なら気合いで乗り切るんや!!さぁ!レースの合図を!」

『咲夜ちゃんがヤル気満々だねぇ~。じゃあそれにお答えして早速始めよう!今回はコスプレリレーという事で二年生の氷室将輝君にもコスプレをしてもらいました~』


楽し気に言うさくらだが、グラウンドやクラステントや応援席では笑いを耐えていた。

名前を呼ばれた将輝だけは恐ろしい程の笑みを浮かべているが、やはり彼の格好のせいでどうしても他の人達には笑いを耐えるしかない。

そう彼の格好は――


「こっ、この屈辱は許さん」

「ロイドが見たらきっと倒れちゃうね~」


将輝の格好は巨大なトマトの被り物で顔だけ出しているため全身トマト男とも言える。

そしてショウやクルス達は口元に手を当ててプルプル震えている様子から笑いを耐えるのに必死なようだ。


「クッ!とりあえず始めるぞ。用意はいいな?」

『は~い!!』

「じゃあ、位置について用意ドンッ!!」


将輝が競技用のピストルを鳴らすと姫や咲夜達が一斉に走り出した。


『おぉっと!!姫ちゃんはドレスのせいで走りにくいのか、先頭集団から離れています。この光景をどう思いますかワタル君?』

『名門ですからね。アクシデントもあります』


いつの間にか実況席に座っているワタルがさくらと共にリレーを実況しており、ワタルはキリッとした表情でリレーを眺めていた。


『ところでワタル君は身近にメイドさんがいると聞きましたが、ワタル君のメイド魂を聞かせてくれるかな?』


おい運営委員、リレーの実況をしないと分からないだろ。

何でワタルのメイド魂を聞かないといけないんだ。


『こんな大勢の前でそんな事は言えません』

『じゃあこっそり教えて……ねっ?』


可愛らしく首を傾げるさくらにワタルは顔を少し赤くして咳払いすると何やら真剣な表情になって口を開いた。

どうやら語るようです。

彼のメイド魂を皆さん聞いてください。


『そうですね。メイド魂ってやつは、クルッとターンした時のブワッと広がるスカートが大事なんだ。他につま先立ちで高い物を取るときに「クッ!」て上がるあの感じや背筋がピンと伸びていたら最高ですね』


やりきった感覚で誇らしげに笑うワタルだが、さくらはニヤニヤ笑いながらワタルを見ていた。

あの顔はよく知っている。

イタズラを成功させた時の悪戯っ子の顔である。

一体何をした?


『ほぅほぅ。とても勉強になりましたね伊澄ちゃん』

『はい…』

『はっ?なっ…ななな…何で?』


伊澄の出現に表情が真っ赤に染まり実況席から転げ落ちた。


『ワタル君って…メイドさんに詳しくて…マニアックなのね…』

『うぉぉぉぉ!!さくらのバカヤローーーーーー!!』


実況そっちのけでメイドについて語っていたワタルに、伊澄が巨大な槍のような一撃を喰らわせてワタルは顔を赤くさせたまま実況席から逃げていき、伊澄は首を傾げたままちょこんと実況席に座ってさくらは『にゃははは』と笑っていた。


「実況はどうした?」

「それよりワタル君のダメージを回復させた方がいいんじゃないでしょうか…」

『おっ!どうやらメイドさんについて話していたらいつの間にか第三走者になっていました。一位はC組、二位はA組、三位はD組、四位はB組のようですね~』


第二走者だったことりが三位から二位になり、リコリスが四位へと下がってしまい今は杏とヒナギクが走っている。

杏は魔法少女のような格好で走っているが、彼女の着ている服には返り血がついていた。

どうやらその血の原因は、A組でモザイクがかけられる程メチャメチャになっている岡崎の血だろう。

きっと岡崎は笑ったんだな。

杏の魔法少女の格好を見て腹を抱えて笑ったとしか思えない。


『なんと!四位のヒナギクちゃんがミニスカポリスの格好でどんどん追い上げています。三位を抜いて二位の杏ちゃんに迫っています!!』

「「ヒナ~!!」」

「二人とも落ち着け。ヒナギクが顔を真っ赤にしてんだろ」


興奮する理沙と美希を落ち着かせるようにショウが席に座らせる。

ビデオカメラは気にしないでおこう。


『さぁ!魔法少女の杏ちゃんとミニスカポリスのヒナギクちゃんがバトンを同時にアンカーに渡しました!勝つのは果たしてどちらなのか!?』


杏からバトンを受け取ったチャイナ姿の眞子と、ヒナギクからバトンを受け取った巫女姿のフェイトが走り出した。


「眞子せんぱーーーーい!!」

「眞子ちゃん!!」

「フェイトちゃん!!」

「テスタロッサ!!」


アンカーでもある眞子とフェイトに向かって周りの者達が大声で声援を送る。

まばたきをしたら勝敗が分からなくなるほど二人の走りは凄いものだった。


「どうだ朝倉?水越も女なのだぞ」

「バッ!何当たり前の事言ってんだよ!?」


杉並の言葉に顔を赤くして頭をガシガシ掻いて口を開く純一。


「顔が赤いよクルス。巫女姿のフェイトちゃんにときめいたのかい?」


半分凍り付けになっている樹がニヤニヤしながらクルスの肩を掴むと、クルスは樹を完璧に凍らせて微かに頬を赤くしながらフェイトを見ていた。


(マスター?)


レンだけは知っている。

今のマスターは本気でフェイトさんに見惚れている。

こんな風に赤くなるマスターは本当に久しぶりに私は見た気がします。


『速い!眞子ちゃんもフェイトちゃんも速いぞ~!!C組もD組も負けるな~!!』


先頭を並んで走る眞子とフェイトの後を追うように走るC組の生徒とD組の生徒に対して、ゴールも近くなりラストスパートをかける眞子とフェイト。

もはやコスプレリレーとは思えないほどのレースをする四人に会場の声援も熱くなっていく。

ただ純粋にクラスの為に勝とうとしている四人――

ラストスパートをかけた二人は一歩も引くことはなく、そのまま同時にゴールテープを切る形でゴールしたのだった。


『ゴール!!眞子ちゃんとフェイトちゃんの同着です!!審判さん、一位はどちらでしたか?』


さくらの言葉に審判達は集まって話し合いを始める。

同時にゴールした二人だが果たしてどちらが一位なのだろうか?

眞子か?フェイトか?

緊迫して静まり返るグラウンドに次に聞こえてきた声は、








『一位は二年A組の水越眞子ちゃんでしたーー!!』


僅差で勝利したのはチャイナ姿の眞子だったようで、一位はA組となり二位はB組で三位はD組で四位はC組という結果になったのだった。

眞子はガッツポーズをしてゴールで待っていた姫やことり達と笑い合いながら退場して、フェイトは申し訳なさそうに皆の元に帰るとリコリスやヒナギク達はニッコリ笑ってフェイトの手を取り退場したのだった。

そしてこの結果によりクラスの得点はこうなった。

A組【310】・B組【300】・C組【280】・D組【290】

おそらく本当の勝負は最後の男子リレーで決まるだろう。

それぞれのクラスの選手はすでにアップを始めて、ショウやクルス達はいつになく真剣な表情で話していた。

勝負はこれにかかっている。


「アンカーはショウでいいよね?」

「あぁ、第一走者はハヤテで第二走者は稟にして第三走者がクロードで第四走者をクルスにする」


B組の代表でもある五人がそれぞれの順番を決めてA組の代表でもある朋也達もそれぞれの順番を決めていた。


「ふむ。おそらくB組のアンカーはショウで間違いない。ならばこちらは第一走者を野々原、第二走者を直樹、第三走者はこの俺で第四走者を勇にしてアンカーは岡崎でいいな」

「勝手にしてくれ」








さぁ――

泣いても笑ってもこれが最後――

勝利の女神はどちらに微笑むのか!?
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