体育祭(後編)

~岡崎Side~

何やら騒がしいが春原と親衛隊が揉めてるんだろうな。

親衛隊のやつらもいい加減諦めればいいのに。


「岡崎さん…」


いっそのこと稟とか純一達が親衛隊と決闘でもしてやっつければいいのに。

そうすれば平和になるな。


「岡崎君…」


いや待てよ!

戦いよりもさっきの大告白大会みたいに他のハーレム男子がかっこよく言えば解決するかも。

おい!今お前もその一人だろと思った奴は出てこい。

今なら春原爆弾で許してやる。


「朋也君…」


そう言えばフリーダム走で男子生徒がパンを食べたまま気絶してたけどまさか早苗さんのパンじゃないよな?

でも七色に光ってたし――


「岡崎さん!!」


前に純一が『お前にレインボー!』とか言って早苗さんのパンを食べたことがあったな。

食べてからすぐにお花畑に旅立ってしまって急いで水越が引き戻したけどやっぱり凄いんだな早苗さんのパン。

純一以外にもショウや八神やリシアンサスや芳乃や奏也もしばらく意識不明になったって杉並が話してたっけ。

それだけ凄いなら今度春原に食わせてやるか。


「岡崎朋也ぁぁぁぁぁぁ!!」

「…何だよ……きょ……ゴハッ!!」


杏に呼ばれて顔を上げた瞬間、辞書が飛んできて顔面に直撃した。

一体俺が何をしたと言うのだ?


「いってぇな!!いきなり何すんだ!?」


立ち上がる朋也に杏はニッコリ笑って胸ぐらを掴み、物凄い恐ろしいオーラを放出しながら口を開く。


「さっきから私達が呼んでたのに聞こえなかったのかしら?アンタの耳を矯正してあげましょうか」


何て事を言いやがる!

お前に矯正されたらもう俺の耳は再起不能になり、神界か魔界の技術でサイボーグになるしかないじゃないか。

そんな事をさせてたまるか!


「落ち着いて聞いてくれ杏」


胸ぐらから手を離させ真剣な顔をする朋也に不覚にも顔を赤くする杏。


「実は俺は春原をどうやって地獄に落とすか考えていたんだ」

「こらぁぁぁ!!何の罪もない僕を地獄に落とすとはどういうつもりだ!?」

「なんだこっちに戻ってきたのか?てっきり親衛隊にぶっ飛ばされてると思ってたのに…」

「アンタが【喰らえ!春原爆弾!!】とか言いながら投げたんでしょうが!」


すまんすまん。

すっかり忘れてた。


「それで、その地獄に落とす方法は何よ?」

「とりあえずこいつの口にいろんな物をぶちこんでみようかと考えている」

「成る程ね…」

「アンタら何普通に話してんの!?僕の生命の危機なのに何当たり前のように話してるの!?」

「岡崎さん、実はお母さんから新発売のパンを貰いました。皆さんで食べてください」


ナイスだ古河!

やはりお前はいい奴だ。


「全部くれ」

「全部ですか?」

「そうだ。安心してくれ。ちゃんと食べてみせる」

「はっ、はい!」


古河からパンの入った袋を受け取り杏に一瞬でアイコンタクトすると、杏はそれに小さく頷いて春原を足蹴りして地面に倒すと朋也に親指を立てた。


「あれ?どうして僕は倒れてるのかな?」

「今からお前の腹を満腹にする為の儀式だ」

「風子もお手伝いします!」


朋也が春原の両手を押さえて杏が両足を手錠で拘束して身動きできなくなった春原にまず風子が動き出す。

なんとも恐ろしいヒトデパンを手にしてこれまた恐ろしい笑みを浮かべた風子は春原の口にヒトデパンをぶちこんだ。

あぁ…

あのパンも早苗さんが作ったパンなんだろうなぁ。


「まだまだあります!」

「うご…きょ…!」


さらに春原の口に入っていく紫色のヒトデパン。

春原の顔色がさらに青くなっていくようだが気にしないでおくとするか。


「春原、お前の屍を俺はラグビー部に渡してやるからな」

「余計な……うきゃゃゃゃゃゃ!!」


反論する前に古河パン新発売の金色パンを食べて春原は気絶してしまった。

手には土偶を持ち口からは白い何かが出てきて半分以上が天に昇っていったがラグビー部に渡した時に蘇ったからまぁいいか。


「岡崎の薄情者がぁぁぁぁぁ!!」

「…なにっ!?このクソラグビー部めぇぇぇぇっとお前が言った事を秘密にしたのにか!?」

「今暴露しませんでしたか!?」

『春原ーーー!!』

「いやぁぁぁぁ!!」

この後春原がラグビー部に追い掛けられてたけど俺のせいじゃないよな?






~ショウSide~

昼休みが終わってクラス別のテントに戻るがどうにも腹の調子が悪い。

咲夜やキキョウやはやてが一気にオカズを口に入れたせいで、まだ消化しきれていないオカズがあるのかとにかく腹が痛い。

「…って何してんだお前ら?」

「いやっ、これは…」


ショウの目に入ったのはフェイトと楓とイヴとレナに抱きつかれているクルスの姿が。

何故かフェイト達は嬉しそうに抱きついてクルスは恥ずかしいのか顔が赤くなっている。

昼休みに何かがあったようだが何があった?

後で杉並にでも聞いて、


「どうやら昼休みに何かあったようだなmy同士アサヅキ」

「ちょうどお前を探していたところだ杉並。それよりどっから現れた?」


いつの間にかショウの真横に杉並が意味深な顔をして立っていた。

先程まで気配すら感じなかったのに一体どこから現れた?


「何気にすることはない。さてmy同士アサヅキよ。昼休みに何があったんだ?」

「えっと…」

「我がクラスの白河一等兵や芳乃嬢やまで様子がおかしいとなるともはやミステリーとしか言えない。そして原因はおそらく同士アサヅキだと思うのだが…」


杉並がそう言うなら間違いなくクルスが原因だろう。

しかし片想い中の女子全員が同じようにトリップしてるとなるとクルスが何か言ったに違いない。

一体何を言ったんだ?


「クルス殴っていいかい?キミの顔が丸く腫れ上がるまで」

「アサヅキ、蹴っていいよな?この気持ちを銀河に轟かせるまで」


そんな状況で樹と東宮の二人がクルスに近付いて顔をヒクヒクさせながら口を開くとクルスは首をブンブンと横に振って拒否する。


「それで同士アサヅキは何をしたんだ?」

「そんなに顔を近づけるな杉並。それと僕は別に…」

「では芙蓉嬢、同士アサヅキが昼休みに何をしたのか教えてくれまいか?」


杉並の奴クルスが言わないと分かって楓に聞くとは。

だけど大丈夫だろうか?

楓は多分言わないと思うがもし言ったら学園中に広まるな。

クルスもなんとか言わないように楓にアイコンタクトしてるし、まぁ楓がそれを別の意味で捉えたら言うんだろうな。



「私はクルス君に身も心も捧げたんです!!」


本当に言っちゃったぁぁぁ!!

これがお約束と言うやつなのか。


『………』


楓の言葉にその場は一気に静まり返りクルスは滝のように汗を流していき、フェイト達から離れると靴紐を強く結び一気に駆け出した。


『KKKよ奴を生け捕りにしろ!!』

『了解です緑葉総帥!』

『FFFは武器を手にしろ!捕まえたら好きにして構わん!』

『流石東宮大将!貴方についてきてよかったぁぁぁぁ!!』

『他の親衛隊は僕に続け!』

『調子に乗るなよ春原陽平!!』

『だから何で僕だけ!?』


クルスが駆け出したと同時にガーディアンズも動き出す。

爆音や砲撃魔法や斬撃や悲鳴がよく聞こえてくる状況で、杉並や新聞部のお騒がせ四人娘がフェイトや楓達に興奮した様子でインタビューしているようだった。


「これはスクープだ!理沙よ分かっているな?」

「OKだとも。明日までには纏めて明後日には新聞を貼るのだろ?」

「そうとも!」


特に美希と理沙の二人がかなり盛り上がっておりずいずいとマイクを向けていた。

まぁこっちに飛び火してこないからいいかな。


「じゃあついでに裏面はショウとキキョウの同棲特集を書くとしよう」

「まさかの追加!?」

「最近同棲したそうだから書いておこうと思って…」


いや待て待て待て!!

何故お前らがそれを知っている!?


「私達に不可能はないのさ!」

「言ったろ?私達は不可能を可能にしたのだ…」

「新聞部の力なのだよ~」


えっへん!と胸を張る理沙に美希に泉を見ながら、どうにかそれを書かせまいと試行錯誤するが時すでに遅しだった。


『NNNよ奴も捕まえるんだ!!裏切りは?』

『罪です!!奴には絶望を!』

『そして僕達には!?』

『永遠の祝福と希望を!!』


クルスと鬼ごっこをしていたガーディアンズがこちらにまで現れて同じように鬼ごっこをするはめになったのだった。


覚えていろあの三人――

この鬼ごっこのカリは必ず利子をつけて返してやる!!



「あれ?ショウも鬼ごっこかい?」

「お前の二次被害でな」


親衛隊が必死に追い掛けてるのに二人は息一つ乱してはいない。

相変わらず化け物レベルの二人である。






~グラウンド~

あの鬼ごっこから数分後に借り物競走が開始されて、出場者でもあるショウや純一達がいた。

ガーディアンズ?

そんな人達は最初からいませんよ。


「だるい…」

「左に同じ…」

「二人に同じ…」

「三人とも少しはやる気をだせよ」


直樹・奏也・勇の四人に悠季が呆れたように溜め息を吐いて呟く。

この三名は先程の昼休みで体力と精神力を使ったようであまりやる気が出ないのだ。

奏也に至ってはデニスとの共同作業で綺麗なお花畑に旅立ってしまったのだ。

なんとかデニスや勇が奏也を助けて帰ってきたが、果たして彼らに何があったのかは本人達しか知らない事である。


『それでは出場者の人達は入場してください』


体育委員の虎鉄がアナウンスをして出場者でもある#ショウや純一達は決められた場所に向かう。

ガーディアンズは先程の鬼ごっこで屍になっているため邪魔が入らず平和的に競走を行う事が出来る。

実に良いことだ。


『では第一走者の人達は並んでください』


「眠いな」

「俺もそう思う…」

「ショウ・ヤナギを倒す」

「ならば我は直樹を倒す」


直樹やショウの横で秘かに闘志を燃え上がらせるガーディアンズの一般兵である二人。

名前など分からないがどうやらガーディアンズの中でも生粋の変態らしい。


「時にお前のその首に巻かれている物は何だ?」

「これは貧乳同盟の証さ!それにお前だって似たような物をつけてんだろ?」

「へっ!お前とは親友になれそうだぜ」


アホ二人が固い握手をしているようだがこの二人は忘れているようだ。

勝負はすでに始まっている事を―――

この二人が倒そうとしたショウと直樹はすでに走っており、二人は封筒の置かれたテーブルに辿り着いていた。


『お二人とも早く行かないと…』

「「しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


勝負はもう決まったようなものである。
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