体育祭(中編)

「これがベルトの力…」


クルスと同じ力。

今までにない強い力を感じ身体を見渡す。

アーマーデバイスは身体に負担が掛かるとクルスは話していた。

ゼロを長時間使った時に意識を失いかけたと、だから俺も必要な時しか使わない。

それが今なんだ。


『GAAAAAA!!』

「俺が相手だ」


ク達から離れて生き物はショウ目掛けて突っ込んでくる。

迫り来る刃を剣で受け止め空いた片手に魔力を込めると生き物を殴り飛ばす。


『GI!?』


怯んだ生き物にさらに追撃して剣に炎を纏わせながら振り下ろす。

生き物は自分の片腕を使って剣を受け止めたが、込められた炎に耐える事が出来ず片腕が切り裂かれてしまう。

切り裂かれた腕は地面に落ちて、切り裂かれた部分からは黒い血が大量に流れ生き物は苦しみ出す。


『GIII…MA…RI…』


すると生き物が何かを呟いた瞬間、突如胸が光り出して失った片腕が再生する。


「腕が再生しただって!?」


その光景に樹は驚きの声をあげて、純一と将輝も声まで出さないが驚いていた。


『GAAAAAA!!』


狂ったように雄叫びを上げ生き物は##NAME1##の身体を切り裂こうとしたが、


「ハァッ!!」


##NAME1##は蹴りを喰らわせて、さらに回し蹴りを喰らわせると生き物は勢いよく飛んでいった。


「今だ##NAME1##!」


将輝の声に##NAME1##は頷いて剣を消すと、足元に魔力を込めて飛び上がると炎に包まれていく。


『GI!?』


生き物は自身を守るように黒い結界を張り##NAME1##の攻撃に備える。


「ハァァァァァァ!!」


炎に包まれ右足を突き出した体勢で##NAME1##は生き物に突っ込んでいった。

赤き炎と黒き壁がぶつかり合う中で、微かに炎の威力が上がり生き物の張っていた結界がひび割れていく。


「うぉぉぉぉ!!」

『GAAAAAAA!!』


お互い声を上げてぶつかり合うが生き物が張っていた結界は粉々に砕け散り、生き物は##NAME1##の蹴りをもろに喰らって後方へと吹き飛ばされた。

『GIII…』


後方へと吹き飛ばされた生き物は燃え上がる身体のまま##NAME1##を指差して、


『A…RI…GA…!!』


何かを口にしていた生き物の身体は激しい爆発と共に消滅していった。


「……………」

『##NAME1##!!』


##NAME1##もまた身体に負担が掛かったのか、変身が解けて鎧もなくなり気を失ってしまった。

すぐに##NAME3##以外のメンバーは##NAME1##に駆け寄るが、##NAME3##だけは消滅した生き物の近くで膝を崩して何かを発見していた。


「これは…」


生き物が消滅した場所には宝石のような物が置かれて、それを手にした途端##NAME3##は目を細めていた。
まさか――

だとしたらさっきの生き物の正体はアイツだったのか!?

いやあり得ない事じゃないがこの宝石が本物なら――


「まさかサザンクロス部隊の……」


その呟きは風と共に流されて誰にも聞こえる事はなかった。


彼以外は、


「あ~あ、修正したのに結局イレギュラーは起きてしまったか…」


上空で佇んでいた永久の手には一冊の本が握られてその本は白く光っていた。

自分が介入できる事はほとんどない。

さっきのように修正が必要時だけは介入しなければならない。

運命の基盤が大きく擦れ始めているから――

原因はいくつかあるが全てを修正するのに時間と労力が必要となる。


「楽じゃねぇのに…」


ボリボリと頭を掻いて永久が次に手にしたのは携帯電話。

誰かに連絡するようで耳に携帯を当てて相手が出て一言目に口にしたのは、


「チョコレート用意しといてくんない?…えっ?…うぇ!?へーいわっかりました」


相手までは分からないが永久の顔から笑顔は消えて、真剣な顔つきに変わっていた。

ゆっくりゆっくり動く時間――

彼もまたキーパーソンの一人だがまだ彼が表舞台に本格的に現れるのは先の話しである。


「………」


そして永久はクルスをジッと見つめポツリと呟く。


「早まるなよ復讐者。お前が選択肢をミスったら全てが終わりに近づくんだからな」






~グランド~

あの森での競技は全員がリタイアした為に中止となり、怪我をした者や気を失ったショウは保健室へと運ばれて無傷の者は先生達に事情を話していた。

ショウが気を失ったと聞いたラバーズは一斉に保健室に向かい、クルスは頭に包帯を巻いてクロノとユーノと話していた。


「クロノ、元帥直属の部隊【サザンクロス】の幸成はどこにいる?」

「どうしてお前が幸成を?」

「僕達ナイツは管理局に雇われてるからね、ユリナさんからその部隊の事も聞いている。それで彼は?」

「クルス、彼は今行方不明なんだよ。僕やクロノも探してるんだけどまだ見つからないんだ」


ユーノの言葉にクルスは予想していた問題が確信へと変わって納得したように成程なと呟く。

やっぱりあれは――

狂気に染まり憎しみを宿していたのも――

だとしたら本当の矛先は――


「クルス?」

「………クロノ。その男の事はもう探すな」

「なっ、何故だ!?幸成は聖騎士団と繋がっている可能性があるんだぞ」


クルスの言葉にクロノとユーノが驚くがクルスは真剣な表情になり真実を伝える。


「その男はもういないんだ…」

「いないって……まさか!?」


クロノの頭によぎった最悪の答え。

クロノだけじゃない。

ユーノも気付いたようで顔色を真っ青にしている。

言葉通りなら―

幸成はもう――


「多分、さっき僕達に襲い掛かってきた生き物は幸成だ。あんなに変わってしまったのはマルスかアズールが幸成の身体に何かをしたから。そして理性を失った幸成は見境なく襲い掛かってきて…」


「ショウが気付かない間に倒してしまったのか…」

ショウが倒した相手は間違いなく幸成だ。

どうして気付かなかったんだ――

どうして僕はいつも――


「クソッ!!」


拳を握り締めて壁を殴り付けるクロノ。

壁を殴り付けるクロノの瞳から微かに流れてくる涙。

【同じ時空管理局の仲間を救えなかった――】

その気持ちが胸に刻まれていく。


「クロノ…」


壁を殴り付けていたクロノの手を掴んでクルスはクロノにある物を渡す。

それを受け取ったクロノはハッとした表情になりユーノもまた驚いていた。

そうクルスが渡したのは、


「幸成のデバイスのコアか…」


あの生き物の動力源ともなっていたデバイス。

あの刃も魔法も全てこのデバイスを使っていたのだ。

「クロノに持っててもらいたい。いいかな?」

「……あぁ。アイツの分まで僕は戦う。デュランダルと共に…」


その言葉に僅かに光を放った幸成のデバイスコア。

主人の想いを受け継いだクロノに答えるように光ったのだろう。


「クルス、お願いがあるんだけどいいかい?」


ユーノもまた決意したようにクルスにある事を頼むのだった。

守りたい人の為にも自分が出来る事をしたいから―――






△▼△▼△▼

~土見稟Side~

あの競技から暫くして始まったフリーダム走に参加中なのだが俺は今ある者達と戦っていた。

それはまるで嫉妬に狂った人間のようで間違いなく俺を狙っています。


「土見ーーーーー!!」

「今日こそ滅べぇぇぇぇ!!」

「正義は我らのために!!」


RRR親衛隊がガスマスクを装着して先程から靴下を放っていた。

あんな物を喰らってたまるかぁぁぁぁ!!

必死の形相でゴールを目指す稟だが、実は稟が戦っている相手は他にもいる。

どちらかと言うとRRR親衛隊よりも厄介な敵だろう。

それは――


「稟様…」


うっとりとした表情で稟に抱き着いているネリネである。

フリーダム走はお姫様抱っこで行う競技なのでネリネが密着しているせいで稟は自分の理性と戦っていた。


(もう理性なんか捨ててしまうか…)


彼は悪魔の誘惑に負けそう顔をしている為か、稟の顔は下品な狼のようになっている。










『誰でもいいので彼を猟銃で撃ってください。

本当に狼になったら大変なので麻酔弾でも構わないので撃ってください。

それだけが私の願いです。












by稟の中の天使』


「って俺の天使だったのか!?」

天使からも狙われている土見稟でした。






~保健室~

「んっ…」

「##NAME1##君!!」


目をうっすらと開けて##NAME1##が最初に目にしたのは、目に微かな涙を溜めながら抱き着いてきたなのはだった。

勢いよく抱き着いてきたせいで再び意識がブラックアウトしそうになったのは秘密だが、ショウはなのはの頭を撫でながら辺りを見回す。

保健室には同じようにショウを心配して駆け付けたはやてやキキョウや咲夜や亜沙の姿が。

四人もショウが起きた事に気が付くと駆け寄って抱き着いてくる。

不安だったのだろう。

気を失ったと聞いて心配していた気持ちがショウが起きた事により爆発したにちがいない。


「俺は…」

「ショウ君、あの競技で倒れたんやで。身体に結構な負担が掛かってしもたのが原因って緑葉君が言っとった」

「…そうだ!俺はあの生き物と戦って…」


そう呟いて何かに気付いて身体をバッ!と起き上がらせて自分の手のひらを見つめる。

倒した時にちょっとだけ感じたある違和感。

倒すまではただのモンスターだと思っていたが、あれはモンスターと言うより何か別の生き物に感じた。

そう――

一度戦った事があるような感覚である。


「あの生き物はどうなった?」

「クルス君が消滅したって言ってたよ。何も分からなかったって」


それはクルスがついた嘘である。

証拠となるコアが出てきた事であれが人間だったと気付いたクルスが咄嗟についた嘘。

バレる可能性だってあるのに嘘で誤魔化したのだ。


「ホンマに心配したんやで…」

「そうよ!ショウが倒れたって聞いたから心配したんだからねっ!」

「ショウちゃん。こんな乙女に涙を流させるなんて罪な男だよ~」


咲夜もキキョウも亜沙も本気で心配していた。

だからこそ今ショウが目を開けたことが本当に嬉しかったようで笑っている。

そんな五人を見つめながらショウは申し訳なさそうに口を開く。


「悪かったな心配かけちまって。もうお前らを不安にさせないからな」


その言葉を引き金に五人が一斉に抱き着いてくると、ショウは頭をぶつけて再び気を失ってしまった。

やっぱりショウはショウだったと改めて認識した日である。

哀れショウ・ヤナギ―――





~グランド~

「どうしてこうなった?」

ただいまの状況を簡単に説明すると包帯を頭に巻いているクルスを心配してフェイトと楓の二人が隣に座っており、その近くでイヴが頬を膨らませながらジッと見つめてレナとことりが武器を持って笑っていた。

とりあえずカオスだと言いたいが周りの人達が怖いです。

もう殺気と憎しみで殺られそうです。


「さて次は大告白大会か…」

「となるとクルスの出番だな」


嬉しそうに笑う理沙と美希には悪いけど実は僕は先手を打っていたのさ。

勇人先生が僕を選ぶのは予想していた!

だから僕は知らないフリをして実はこう書いていた。


『えーっと…次の大告白大会に出場する湊君と稟君はグランドに来てくださーい』

「えっ?」

「はっ?」

「なっ……!!」

『なぁにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』


出場者の名前を土見稟とね。


「………危なかった」












次回予告

シア
「次のお話しは大告白大会からッス!」

ネリネ
「稟様の告白とは何なのでしょうか?楽しみです」

カレハ
「稟さんの告白……。まぁまぁまぁ…」

麻弓
「次回S.H.D.C.――
第21話――
【体育祭後編】なのですよ~」


「俺は!!」


3/3ページ
スキ