体育祭(中編)
~クルスSide~
結界の張られた場所に現れたクルスは張られた結界に手を伸ばした瞬間、指先に雷が触れて咄嗟に手を引っ込める。
待てよ――
この雷の結界はあの男が張っていた結界と似ていないか?
雷帝の真里が一対一の時によく使っていた結界と酷似している。
でも真里はセフィリアとの戦いで死んだはず。
じゃあ誰が?
「………!!」
少し離れた場所から雷の砲撃が放たれクルスは上空に飛び上がり砲撃を回避すると、仮面を被った人物が一瞬で目の前に現れて鎌を振り下ろすとクルスは風の結界でそれを防ぎ足に魔力を込めて仮面を被った人物に回し蹴りを喰らわせて距離を置く。
(雷の魔法に鎌使い。フェイトと似ているけど何か違う。フェイトと違って威力がない。いや…まだ本気をじゃないのかもしれないけど…)
距離を置いたクルスは冷静に相手を見つめていたがすぐに真剣な表情になり口を開く。
「キミは何者だ?この結界はキミの仕業か?」
クルスの問いに仮面を被った人物は鎌を待機状態に戻すと、仮面に手を伸ばしてゆっくり外していくと隠された素顔が露になる。
それを目にした途端クルスの顔がまるで信じられないものを見るような顔へと変わる。
何故――
何故彼女が!?
だって彼女はあの事件で消えた筈なのに!?
まさか――
アズールが昔言ってた事はこれだったのか!?
「初めましてクルス。私は――」
その名を聞いた瞬間、クルスは顔色が一気に青白くなり一歩一歩後退り始めた。
そんな馬鹿な―――
じゃああの事件から繋がっていたか―――
「フェザーライトニング」
「……しまっ……!」
クルスの周りにいつの間にか配置されていた羽から雷が降り注いでクルスは回避する前に雷を喰らって衝撃のあまり勢いよく木に衝突するのだった。
「……ッ!」
「クルス、私の目的を教えてあげる」
一瞬でクルスに接近して女性は耳元に口を寄せると、
「――だよ」
「…なっ!?」
「だからね――――を任せたよ」
「まっ、待て!」
女性は言いたい事だけを言って消えるとクルスは口から血を吐き出し顔を歪めていた。
~ショウSide~
第三者の突如の介入により先程まで動かなかったショウの身体も自由になり手を何度かニギニギして息を吐く。
「黒峰永久ですか。まさか貴方が現れるとは…」
「誰かさんが現れたせいでな。こっちはチョコレートの特売セールで忙しかったのによ」
ハァァァァっと溜め息を吐いて永久はポケットに手を突っ込む。
その行動に身構える明日香だが、永久がポケットから取り出したのはチョコレートが入った袋だった。
「ショウ・ヤナギ」
「なっ、何だ?」
「チョコレート食べるか?」
「へっ……?」
ポケットから取り出したチョコレートの一つをショウに渡して、ショウは間抜けな声を上げながらもチョコレートを口にする。
「さて、ジョーカーズの一人で幹部のお前がこいつに何の用だ?」
「答えなくても貴方なら知っているはず。貴方にはあの力があるのですから」
あの力――?
あの力って何だ?
「残念だけどそんな事で力は使わんのだ。何せあれは俺の神経や脳にダメージを与えてしまうからな。余計な事に使ってたまるか」
呆れたようにオーバーリアクションする永久だがショウは首を傾げながら口を開く。
「さっきから言ってる力って何だ?」
「んぁ?まだそれは秘密だ。今それを言っても理解出来ないだろうし、この力はおとぎ話に似てるからな」
今全てを話す訳にはいかない。
今はまだ真実も言えないし、たとえ言ったとしても普通の人間では理解出来ないだろう。
だからまだ伝えない。
時が来るまで口にしない。
「黒峰永久。貴方が来ては私でもただではすみませんね。今日のところは退かせてもらいます」
「待て!お前がジョーカーズの一人なら答えろ!お前達は一体誰のDNAで…」
『グォォォォォ!!』
ショウの言葉を遮るかのように雄叫びを上げる何か。
その雄叫びに鬼ごっこをしていた五人も足が止まっていた。
しかもその雄叫びにより大地が揺れて神獣達が騒ぎ始めている。
少しずつだが何かが此方に近づいている。
感じるのは狂気と殺気の二つだが一体何だ?
「…ってあれ?」
この時――
先程までいた明日香と永久が姿を消していたのをようやく気付いたショウだが、それよりも近付いてくる何かが気になりそちらに集中する。
「何だ?」
『GAAAAAAAAAA!!』
雄叫びと同時に上空から何かが飛び降りてくる。
黒い鎧を身に纏い両手には刃のように鋭い武器を装備してその何かは金色の瞳をしている。
しかしショウはその生き物を見て驚く。
この競技は生徒がダメージを負ったら強制的にリタイアするシステムとなっているのに、その生き物の片手には血だらけで全身の骨を折られた生徒がいた。
その生徒を見て一瞬込み上げてくる何かを耐えるように口元を押さえてショウは目の前にいる生き物を見る。
この生き物はこの森にいる神獣と違う。
この生き物はまるで人体実験をされたような微かな施しを感じる。
『GAAAAAAAAA!!』
男子生徒を放り投げて生き物はゆっくり視野の元へと歩み寄ってくる。
片手からは血が滴り表情までは分からないが笑っているようにも見える。
「………来る!」
その言葉と同時に生き物はショウの目の前に現れて刃の矛先はショウの眼球を狙っていた。
「チッ!」
咄嗟に体勢を崩して刃を避けるが、生き物は腹部を殴りショウが「グッ!」と腹部を押さえた瞬間、生き物はショウの頭を掴んで大木に投げ飛ばした。
「この程度!」
くるくると回転して木に着地してゆっくり降りると再び生き物と対峙する。
たった数秒の攻防なのに生き物の実力が恐ろしく感じた。
フローラとユニゾンして戦ってギリギリかもしれない。
『GAAAAAA!!』
生き物が雄叫びを上げながら突っ込んでくるのをショウにはバックステップで交わして生き物が一瞬動きを止めるとすぐに蹴りなどで応戦するが、戦っている生き物はその攻撃に微動だにせずニヤリと笑ってショウの腕を掴むと地面に叩き付けて刃を振り下ろす。
「やばいっ!!」
「ショウ」
生き物が刃を振り下ろした瞬間、真横から光の砲撃が放たれて生き物を純一と樹が引っ張りながらその場から離れる。
危機一髪とはまさにこの事だが今は隠れる事にしよう。
「樹に純一」
「遅くなってすまないねショウ」
「あの生き物が気付かないようにを引っ張り口を開く。
生き物は辺りをキョロキョロと見渡し##NAME1##達を探し始める。
殺気を放ち金色の瞳からは憎しみが宿っていく。
何故ここまで狂気や憎しみに染まっているか分からないが、
『GAAAAAAA!!』
「あの生き物どうしてショウを?」
「さぁな。それよりさっきの砲撃は?」
「多分クルスだ。あの指輪は魔力を込めると、込めた分だけ魔法を使えるらしい」
そのアサヅキも先ほどの戦いで頭から血を流しており今は生き物に気付かれないように隠れている。
#アサヅキ#の傍には将輝とデニスがいるようだ。
「樹、お前から見てアイツを倒すにはどうしたらいいと思う?」
「そうだね。あの固い身体に傷さえつければ打開策はいくらでもあるんだけど、俺様や純一には武器がないし」
樹も純一もあの箱で自分の持ち物を取り出したのだが武器ではなくアイテムだったのだとデニスは確かに武器を取り出したが、あの生き物には全くダメージを与えられず隠れているようだ。
そうなると――
「ショウ、そのベルトを使ってみるんだ」
「ベルトをか?でも力がわからない以上使うのは…」
ショウの手に握られた銀色のベルト。
謎の力の為に使うかどうか迷っているのだ。
「湊も変なコウモリ持ってたけど、ショウのベルトと関係してんのか?」
「…多分…」
「「「…ん?」」」
ふと背後から聞こえてきた声に三人は首を傾げる。
この場には自分達しかいないのに何故新たに聞こえてきたのだろうか?
まさか――
三人が振り返り後ろにいたのは、
「純一…置いていくなんて………酷いよ」
「湊!?」
湊は頭に蜘蛛の巣をつけて体操服もボロボロの状態で三人の背後にいた。
湊の肩にはあのコウモリが乗っており目は光っている。
「湊、お前ならあれをどう思う」
「んっ…?」
ショウに言われて少し離れた所で暴れまわる生き物を見つめる湊。
何かを感じ取ったのか、湊の顔は段々悲しげな表情に変わり生き物を見つめている。
「どうした?」
「…あの生き物何だろう?悲しみや憎しみを感じる…」
この場にいる中でおそらく湊にしか感じ取れない感情。
何故湊だけなのだろうか?と三人が疑問浮かべた表情をしていると、
(ショウ…)
クルスから念話が届きショウはそれに集中するように耳を傾ける。
(ショウよく聞くんだ。そのベルトはショウの魔力を感じて変身出来るようになっている。だからそのベルトをまず腰につけて炎の魔力をイメージして。そうすれば…)
(クルス!?どうした!?)
突如念話が途切れて再び呼び掛けるが、クルスから返答はなくその変わりに反対側から爆音や何かを切り裂くような音が聞こえてくる。
戦っているのだ。
クルスや将輝やデニス先輩が――
あの生き物を倒せる可能性は今のところショウしかいない状態で――
迷っている暇なんてない。
このベルトの力を信じるんだ。
「ショウ?」
「樹達はここにいてくれ」
ベルトを腰につけてショウはゆっくり歩いていく。
信じるんだ――
おそらくこのベルトはアサヅキ#が作ってくれたベルトなんだから。
『GIIIIIII!!』
生き物がショウに気付いて奇声を上げるがショウの心はひどく落ち着いている。
恐怖も感じない。
頭がスッキリしてベルトの力が分かってくる。
戦えるんだ俺なら!!
「はぁぁぁぁぁぁ~」
足元に魔方陣を展開させて炎の魔力をイメージする。
右手を伸ばしベルトの中心が光った瞬間、ショウが両手をベルトに当てると身体全体が光り、樹や純一や湊が次に目にしたのは全身に赤い鎧を装着して手には赤い剣を持ったショウの姿だった。
結界の張られた場所に現れたクルスは張られた結界に手を伸ばした瞬間、指先に雷が触れて咄嗟に手を引っ込める。
待てよ――
この雷の結界はあの男が張っていた結界と似ていないか?
雷帝の真里が一対一の時によく使っていた結界と酷似している。
でも真里はセフィリアとの戦いで死んだはず。
じゃあ誰が?
「………!!」
少し離れた場所から雷の砲撃が放たれクルスは上空に飛び上がり砲撃を回避すると、仮面を被った人物が一瞬で目の前に現れて鎌を振り下ろすとクルスは風の結界でそれを防ぎ足に魔力を込めて仮面を被った人物に回し蹴りを喰らわせて距離を置く。
(雷の魔法に鎌使い。フェイトと似ているけど何か違う。フェイトと違って威力がない。いや…まだ本気をじゃないのかもしれないけど…)
距離を置いたクルスは冷静に相手を見つめていたがすぐに真剣な表情になり口を開く。
「キミは何者だ?この結界はキミの仕業か?」
クルスの問いに仮面を被った人物は鎌を待機状態に戻すと、仮面に手を伸ばしてゆっくり外していくと隠された素顔が露になる。
それを目にした途端クルスの顔がまるで信じられないものを見るような顔へと変わる。
何故――
何故彼女が!?
だって彼女はあの事件で消えた筈なのに!?
まさか――
アズールが昔言ってた事はこれだったのか!?
「初めましてクルス。私は――」
その名を聞いた瞬間、クルスは顔色が一気に青白くなり一歩一歩後退り始めた。
そんな馬鹿な―――
じゃああの事件から繋がっていたか―――
「フェザーライトニング」
「……しまっ……!」
クルスの周りにいつの間にか配置されていた羽から雷が降り注いでクルスは回避する前に雷を喰らって衝撃のあまり勢いよく木に衝突するのだった。
「……ッ!」
「クルス、私の目的を教えてあげる」
一瞬でクルスに接近して女性は耳元に口を寄せると、
「――だよ」
「…なっ!?」
「だからね――――を任せたよ」
「まっ、待て!」
女性は言いたい事だけを言って消えるとクルスは口から血を吐き出し顔を歪めていた。
~ショウSide~
第三者の突如の介入により先程まで動かなかったショウの身体も自由になり手を何度かニギニギして息を吐く。
「黒峰永久ですか。まさか貴方が現れるとは…」
「誰かさんが現れたせいでな。こっちはチョコレートの特売セールで忙しかったのによ」
ハァァァァっと溜め息を吐いて永久はポケットに手を突っ込む。
その行動に身構える明日香だが、永久がポケットから取り出したのはチョコレートが入った袋だった。
「ショウ・ヤナギ」
「なっ、何だ?」
「チョコレート食べるか?」
「へっ……?」
ポケットから取り出したチョコレートの一つをショウに渡して、ショウは間抜けな声を上げながらもチョコレートを口にする。
「さて、ジョーカーズの一人で幹部のお前がこいつに何の用だ?」
「答えなくても貴方なら知っているはず。貴方にはあの力があるのですから」
あの力――?
あの力って何だ?
「残念だけどそんな事で力は使わんのだ。何せあれは俺の神経や脳にダメージを与えてしまうからな。余計な事に使ってたまるか」
呆れたようにオーバーリアクションする永久だがショウは首を傾げながら口を開く。
「さっきから言ってる力って何だ?」
「んぁ?まだそれは秘密だ。今それを言っても理解出来ないだろうし、この力はおとぎ話に似てるからな」
今全てを話す訳にはいかない。
今はまだ真実も言えないし、たとえ言ったとしても普通の人間では理解出来ないだろう。
だからまだ伝えない。
時が来るまで口にしない。
「黒峰永久。貴方が来ては私でもただではすみませんね。今日のところは退かせてもらいます」
「待て!お前がジョーカーズの一人なら答えろ!お前達は一体誰のDNAで…」
『グォォォォォ!!』
ショウの言葉を遮るかのように雄叫びを上げる何か。
その雄叫びに鬼ごっこをしていた五人も足が止まっていた。
しかもその雄叫びにより大地が揺れて神獣達が騒ぎ始めている。
少しずつだが何かが此方に近づいている。
感じるのは狂気と殺気の二つだが一体何だ?
「…ってあれ?」
この時――
先程までいた明日香と永久が姿を消していたのをようやく気付いたショウだが、それよりも近付いてくる何かが気になりそちらに集中する。
「何だ?」
『GAAAAAAAAAA!!』
雄叫びと同時に上空から何かが飛び降りてくる。
黒い鎧を身に纏い両手には刃のように鋭い武器を装備してその何かは金色の瞳をしている。
しかしショウはその生き物を見て驚く。
この競技は生徒がダメージを負ったら強制的にリタイアするシステムとなっているのに、その生き物の片手には血だらけで全身の骨を折られた生徒がいた。
その生徒を見て一瞬込み上げてくる何かを耐えるように口元を押さえてショウは目の前にいる生き物を見る。
この生き物はこの森にいる神獣と違う。
この生き物はまるで人体実験をされたような微かな施しを感じる。
『GAAAAAAAAA!!』
男子生徒を放り投げて生き物はゆっくり視野の元へと歩み寄ってくる。
片手からは血が滴り表情までは分からないが笑っているようにも見える。
「………来る!」
その言葉と同時に生き物はショウの目の前に現れて刃の矛先はショウの眼球を狙っていた。
「チッ!」
咄嗟に体勢を崩して刃を避けるが、生き物は腹部を殴りショウが「グッ!」と腹部を押さえた瞬間、生き物はショウの頭を掴んで大木に投げ飛ばした。
「この程度!」
くるくると回転して木に着地してゆっくり降りると再び生き物と対峙する。
たった数秒の攻防なのに生き物の実力が恐ろしく感じた。
フローラとユニゾンして戦ってギリギリかもしれない。
『GAAAAAA!!』
生き物が雄叫びを上げながら突っ込んでくるのをショウにはバックステップで交わして生き物が一瞬動きを止めるとすぐに蹴りなどで応戦するが、戦っている生き物はその攻撃に微動だにせずニヤリと笑ってショウの腕を掴むと地面に叩き付けて刃を振り下ろす。
「やばいっ!!」
「ショウ」
生き物が刃を振り下ろした瞬間、真横から光の砲撃が放たれて生き物を純一と樹が引っ張りながらその場から離れる。
危機一髪とはまさにこの事だが今は隠れる事にしよう。
「樹に純一」
「遅くなってすまないねショウ」
「あの生き物が気付かないようにを引っ張り口を開く。
生き物は辺りをキョロキョロと見渡し##NAME1##達を探し始める。
殺気を放ち金色の瞳からは憎しみが宿っていく。
何故ここまで狂気や憎しみに染まっているか分からないが、
『GAAAAAAA!!』
「あの生き物どうしてショウを?」
「さぁな。それよりさっきの砲撃は?」
「多分クルスだ。あの指輪は魔力を込めると、込めた分だけ魔法を使えるらしい」
そのアサヅキも先ほどの戦いで頭から血を流しており今は生き物に気付かれないように隠れている。
#アサヅキ#の傍には将輝とデニスがいるようだ。
「樹、お前から見てアイツを倒すにはどうしたらいいと思う?」
「そうだね。あの固い身体に傷さえつければ打開策はいくらでもあるんだけど、俺様や純一には武器がないし」
樹も純一もあの箱で自分の持ち物を取り出したのだが武器ではなくアイテムだったのだとデニスは確かに武器を取り出したが、あの生き物には全くダメージを与えられず隠れているようだ。
そうなると――
「ショウ、そのベルトを使ってみるんだ」
「ベルトをか?でも力がわからない以上使うのは…」
ショウの手に握られた銀色のベルト。
謎の力の為に使うかどうか迷っているのだ。
「湊も変なコウモリ持ってたけど、ショウのベルトと関係してんのか?」
「…多分…」
「「「…ん?」」」
ふと背後から聞こえてきた声に三人は首を傾げる。
この場には自分達しかいないのに何故新たに聞こえてきたのだろうか?
まさか――
三人が振り返り後ろにいたのは、
「純一…置いていくなんて………酷いよ」
「湊!?」
湊は頭に蜘蛛の巣をつけて体操服もボロボロの状態で三人の背後にいた。
湊の肩にはあのコウモリが乗っており目は光っている。
「湊、お前ならあれをどう思う」
「んっ…?」
ショウに言われて少し離れた所で暴れまわる生き物を見つめる湊。
何かを感じ取ったのか、湊の顔は段々悲しげな表情に変わり生き物を見つめている。
「どうした?」
「…あの生き物何だろう?悲しみや憎しみを感じる…」
この場にいる中でおそらく湊にしか感じ取れない感情。
何故湊だけなのだろうか?と三人が疑問浮かべた表情をしていると、
(ショウ…)
クルスから念話が届きショウはそれに集中するように耳を傾ける。
(ショウよく聞くんだ。そのベルトはショウの魔力を感じて変身出来るようになっている。だからそのベルトをまず腰につけて炎の魔力をイメージして。そうすれば…)
(クルス!?どうした!?)
突如念話が途切れて再び呼び掛けるが、クルスから返答はなくその変わりに反対側から爆音や何かを切り裂くような音が聞こえてくる。
戦っているのだ。
クルスや将輝やデニス先輩が――
あの生き物を倒せる可能性は今のところショウしかいない状態で――
迷っている暇なんてない。
このベルトの力を信じるんだ。
「ショウ?」
「樹達はここにいてくれ」
ベルトを腰につけてショウはゆっくり歩いていく。
信じるんだ――
おそらくこのベルトはアサヅキ#が作ってくれたベルトなんだから。
『GIIIIIII!!』
生き物がショウに気付いて奇声を上げるがショウの心はひどく落ち着いている。
恐怖も感じない。
頭がスッキリしてベルトの力が分かってくる。
戦えるんだ俺なら!!
「はぁぁぁぁぁぁ~」
足元に魔方陣を展開させて炎の魔力をイメージする。
右手を伸ばしベルトの中心が光った瞬間、ショウが両手をベルトに当てると身体全体が光り、樹や純一や湊が次に目にしたのは全身に赤い鎧を装着して手には赤い剣を持ったショウの姿だった。