体育祭(前編)

「にゃははは。はやてちゃんに咲夜ちゃんにキキョウちゃん」


ニコッと笑うなのはだが名前を呼ばれた三人は肩をビクッ!と震わせている。

なのはの纏うオーラが三人の恐怖を増大させている。

「ちょっといいかな?答えは聞いてないけど…」

「ショウ君!ヘルプ!ヘルプや!」


はやての助けにショウは目を閉じて合掌していた。

今のなのはに逆らえずただ無事を祈っている。

しかもショウだけでなくナギや歩やネリネまでも合掌して、フェイトとヴィータは顔色を真っ青にさせて震えていた。




△▼△▼△▼

しばらくして体育館からなのはの説教とピンク色の砲撃がチラチラ見えていた。
しかも―――


『ディバイーンバスター!!』

『まだ終わらないの!全力全開スターライトブレイカーーー!!』

『閻魔様によろしくなの。インフェルノブレイカーーー!!』


体育館裏でおこなっていたなのはの説教はグランドに響き渡り、フェイトはガクガク震えてショウは顔色を真っ青にさせて固まり稟やハヤテは遠い目をして現実逃避をしていた。

ちなみになのはの放った砲撃により地面は抉れていくつものクレーターが出来るほどのレベルで、グランドが再起不能になったのは本日で二回目となってしまうのだった。


△▼△▼△▼

『今回の体育祭は危険だな。これじゃ二人三脚も中止だ』


実行委員会のメンバーでもある勇人がそう口にするとグランドから驚きの声が上がっていた。

美希や杏に至っては「何でだ(でよ)!?」と反論している。


『その…嫉妬した女子生徒達のお陰で女神が怒ってグランドが使い物にならなくなったからだ。直す時間を使っている間に次の競技をやりたいと思う。出場者は入場門に集まれ。あと高町なのはと八神はやて達は後で撫子の所に来るように』


勇人の言葉に二年二組の代表であるショウとクルスと将輝と樹が立ち上がった。


「んじゃ行くか」

「将輝、リアルサバイバル走は四人でやる競技だからって休まないように」

「分かってるって。クルスもへばんなよ」


出場者でもある将輝とクルスは拳をぶつけ合い入場門へと向かう。

ショウは頭を抱えて入場門に向かっていたらしいがすぐに気持ちを切り替えて入場門に向かうのだった。



△▼△▼△▼

『それではルールの説明をします』


ヒナギクが壇上に上がり手に持っていた紙を見ながら説明を始めた。


【リアルサバイバル走とは】
この学園から離れた第二グランドで争う競技なのだが、第二グランドはまるでNA○○TOに出てきた死の森とよく似ていて入り口も鎖で封鎖されている。

出場者は四人で一つのチームを作り中央にある、理事長の一人桂丸のコレクションを取ってくるのが目的である。

チームの潰しあいは勿論OKだが魔法で戦うのは禁止で、戦う前にもらうアイテムを使って戦わなければならない。


『以上です』


ヒナギクの説明に誰かがツッコミを入れていたが実行委員会はそれを無視して出場者をとっとと第二グランドに移動させた。










△▼△▼△▼

~第二グランド~

『………』


第二グランドを見て出場者は思考がフリーズする。

何をどうしたらこんなに死臭が漂うのか?

鎖が錆びていますけど!?


「純一…」

「どうした湊?」

「あれ?」


湊の視線の先には木にぶら下がっている何か。

純一は目を凝らしてそれを確認すると、


「猿だな」

「顔は可愛いのにあの猿の身体の筋肉凄くない?」

「きっとあれだ。プロテイン飲んでんだよ」

「猿が?」

「猿が」


視線の先にいた猿……いや筋肉猿は「ウギャ!ウギャ!」と鳴きながら手を叩いている。

歓迎しているのかと思いたいが、猿の口から涎が垂れているため危険な感じしかしなかった湊と純一の二人。


「それじゃあ説明するぞ」


入り口にいた勇人が眼鏡をクイッ!と上げて口を開く。


「この森の中央エリアにあるコレクションを取ってくるのがこの競技の戦いだ。この森には理事長が世界で捕まえた生き物がいるらしく俺も何がいるか知らない」


珍しく歯切れが悪い勇人に全員が危険だと感じて真剣な表情になっていた。

純一と湊だけは眠たそうにアクビをしているが、


「まぁ、もし出会ってもダメージを負った奴は本校のグランドに戻れるようになってるから安心しな。そんで最初にアイテムだがまずは三年生からとりにこい」


勇人の言葉に三年生はホッと息を吐く。

自分達が先にいいのを選べば有利になると思っているようだが現実はそんなに甘くない。

何故なら―――


「水鉄砲?」

「フライパン?」

「スポンジ…」

「チョコバット!?しかも一ヶ月分!?」


たいしたアイテムじゃねぇぇぇーーーー!!

誰もがツッコミたがっていたがチョコバットを当てた生徒を見て哀れみの表情しか浮かばなかった。

しかも早速一本食べてるし。


「俺は針か…」


デニスが当てたのは複数の針が入ったケースで、デニス自身それを当てて口元が笑っていた。

針はデニスの許容範囲の武器でもあるためデニスにとってはラッキーだったのだ。


「次は二年生だな」


二年生であるショウやクルス達が立ち上がりアイテムの入った箱に近付いていく。

まずはかったるい星人こと朝倉純一は、


「バナナ(あの猿にか!?嫌だな…会いたくねぇよ…)」


大量のバナナで別会場にいた美春が目を輝かせて、近くの木でぶら下がっている猿は手を叩いて喜んでいた。


「んじゃ俺は…」


次に手にしたのは将輝で将輝は口笛を吹きながらアイテムを取り出したが手にしたアイテムを見て表情が凍りついたのだった。


「ダークボトル…」


テイルズファンなら知っているだろう。

このアイテムを使うと一定時間敵と遭遇しやすくなるアイテムなのだ。


これはもはや―――


「先生!このアイテムには悪意しか感じられません!」

「気のせいだ。それに一回分しかないからラッキーじゃないか」

「ラッキーをダークボトルに使わないで下さい!せめて白いのが良かった…」

「次は有里か…」

「無視した!?」


トボトボとダークボトルを持ちながら下がる将輝。

まだ使ってもいないのにすでに身も心も真っ黒である。


「これは…」


(あれ?あんなの入れた覚えは…)


湊が当てたアイテムを見て勇人の表情が困惑に変わる。

何故ならそれは用意していたアイテムの資料には書かれていないアイテムだったからだ。


「ベルト…ベルト…」


湊が当てたアイテムはコウモリの形をした機械のようで湊が手にした瞬間微かに光を出していた。

それをモニターで見ていた直樹は笑みを浮かべていたが、勇人はその機械を見て何故か嫌な予感を感じていたが気のせいと言い聞かせて黙っていた。


(あのベルトを置くように杉並に頼んだのは間違いなく直樹だ。

湊が手にした瞬間、あのコウモリが光ったのはマスターとして登録したから。

けどまさかベルトが完成していたなんて…)


湊がベルトを当てた瞬間、クルスもまた驚きの表情を浮かべていた。

その間にも氷室がチェーンソーで野々原がしゃもじを手にしてショウもまた湊と同じようにベルトを引き当てていた。


(僕も徹夜で作ったからなんとか間に合ったけどショウが使うかどうか)


ショウの持つベルトは見た目はシンプルに出来ているが実際は使い方によっては危険なベルトなのだ。


「次はクルスだが……と言っても余り物だから投げるぞ」


勇人がクルスに投げたのは二つの指輪。

もはやアイテムとして使えるか謎である。


「さすがはクルス。残念賞を手にするとは…」


哀れみの表情で勇人がクルスの肩を掴み、将輝と樹は腹を抱えて爆笑していたのでクルスはニッコリ笑って二人に近付いて殴っていた。


「それじゃ始めるぞ。各自スタンバイしろ」


入り口は三ヶ所あり純一達はAの入り口に集まりショウ達はBの入り口集まりデニス達はCの入り口に集まっていた。

それぞれが入り口に到着したのを確認して勇人はマイクを手にして口を開く。


『ガキ共!準備はいいか?』

「おぉぉぉぉーーーー!!」

『いい返事だ。じゃあ行くぞ!レディーゴー!!』


笛を吹いたと同時に入り口の鎖が消滅して、A・B・Cにいた生徒はすぐに森の中に入っていった。


(この森の中にはおそらく神獣もいるはず。果たして全員無事に帰ってこれるか)


体育祭の中で唯一監視者がいないリアルサバイバル走。

教師がいないため危険な競技だが何故か実行委員会はそれをOKしたのだ。


(何も起きなきゃいいが)


勇人の嫌な予感は次第に膨れ上がり入り口が再び静かに閉じて鎖が巻かれたのだった。


このリアルサバイバル走で果たして何が起きるのか――?

それはまだ誰も知らない。








彼以外は、


「チョコレート~。チョコレート~。チョコレートは手作り~!!」


死の森の遥か上空でチョコレートを口にして笑いながら歌っている黒髪の彼以外は……………




次回予告


「ベルト~。ベルト~」

デニス
「この死の森は危険な香りが漂っている」

将輝
「ぎゃぁぁぁぁぁーーー!!転がるブタァァァァーーー!!」

純一
「次回S.H.D.C.――
第20話――
【体育祭中編】」

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「ちょっと修正すんぞ」
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