体育祭(前編)

体育祭までにいろんな事がありなんとか練習して身体と精神がボロボロになりながらも、どこのクラスも力がみなぎっているようでグランドは戦場となっていた。
全クラスの目標はあくまでも優勝。

しかし他にも賭け事に夢中になっている者もいるようで、


「杉並、僕も一口買っていい?」

「うむ。同士アサヅキはまだ買っていなかったな」


グランドで堂々と取り引きをしているクルスと杉並の二人。

一年生や三年生が見ていても二人は気にする事なく取り引きしている。


「杉並的にどのクラスが優勝すると思う?」

「そうだな。狙い目はやはり二年一組と二組だが、ダークホース的存在は三年の時雨嬢のクラスだ」


真剣に話している二人の周りにはいつの間にか生徒がいなく、そこにいたのは取り引きを止めよう駆け付けた生徒会と風紀委員のメンバー。


「そこの二人!!学校の行事で賭博なんて許しません!美春!行くわよ!」

「ラジャー!」


物凄い数で追ってくる生徒会と風紀委員。

二人はそれを気にせずグランドを走り互いに頷くとポケットから煙り玉を出して地に投げながら逃げていく。


「待ちなさーい!!」

「待てと言われて…」

「誰が待つかな?」


まだ始まってもいないのにかけっこをするクルス達を見ながら、ショウや稟達は呆れてフェイトや楓達は病み上がりのクルスを見ながら心配していた。


「元気だなアイツら」

「クルスに至っては怪我が治ったばっかりだろ?」


少し前まで包帯を巻いていたクルスだったが今では完治して風紀委員や生徒会を引き離すまでの元気な姿を見せていた。

しかし――


「あっ、紅女史に捕まった」

「アホだ」

「しかも勇人先生に引き摺られてますよ」


クルスと杉並はジタバタして抵抗しているが勇人の鉄拳制裁により沈黙して引き摺られたのだった。

やはり二年二組の中で勇人は恐怖の存在となったようで、他のメンバーは静かに合掌して体育祭が始まる前に心が一致団結したのだった。


~開会式~

ざわつく生徒達を紅女史と暦と勇人が一喝して、グランドは一気に静まり返って生徒達の視線は壇上にいた校長に向けられた。


(校長いたんだ…)

(確か始業式以来行方不明って聞いたが…)

(アフリカでターザンの真似してたって花菱が言ってたぞ)

(いやいや!俺は秋葉原で◯ー◯ギ◯スのキャラの抱き枕を買っていたと朝風が話していたのを聞いたぞ)

(でも杉並は校長が本屋でゼロ◯使い◯とかのラノベを買いに行ったと聞いたが…)


校長を見ながら困惑や驚きで固まっている生徒達だが、校長がそれに気付くはずもなく手を空に掲げて口を開いた。


『全校生徒の諸君!今日という日をその目に焼き付け、その身でライバルを蹴落として勝利をその手に掴むのだぁぁぁぁーーーー!!』


何て事を言いやがる。

校長自ら蹴落とし宣言をするとは。

そう言えば校長のここ最近のマイブームはガ◯ダ◯だった気がする。

つまり――


「ハヤテ、あの校長をエ◯◯アで駆逐していいか?」

「駄目ですよお嬢様。せめてジ◯◯スにしてください」

『今日の私はこの日の為に阿修羅……』


ポチッ!


校長が言い終える前に誰かがボタンを押して校長の頭上から大量の水が降ってきて校長のカツラがずり落ちてしまった。


『……………』


目の前に落ちたカツラを見つめしばらく固まっていた校長だったが、ハッと我に返りカツラを手にしてすぐに壇上から走り去っていった。

開始早々から悲劇が起こりグランドを静寂した空気が包み込んでしまう。

しかしそこで――


「いいアンタ達!!この体育祭はいわば弱肉強食とも言える戦いよ!!目指すはオンリーワンよりナンバーワン!!特に私のクラスの子達は私の為に優勝しなさーーーい!!オール・ハイル・ユキジーーー!!」


静寂したグランドにヒナギクの姉でもある雪路が壇上に上がり演説を始めて、雪路は決まった!と輝いていたが数秒後に顔を赤くしたヒナギクによって制裁されるのだった。

哀れ桂雪路――


「アホだな…」

「オール・ハイル・ユキジー!!」

「いやいや真似するなよ」


美希と理沙は呆れて泉は一人ニコニコして雪路の真似をしていた。


~玉入れ~

プログラム一番の競技でもあり会場を盛り上げるための玉入れなのだが、


「うぉぉぉぉーーー!!」

「やっちまぇぇーーー!!」


二年のクラスでは早速乱闘並の騒ぎを起こし、玉入れそっちのけでいろんな玉が飛び交っていた。

もはや戦争とも言えるが――


「我ら嫉妬団の力を受けてみろ!」


ガスマスクを着けて臭いつきの靴下を投げる嫉妬団。

その靴下は直樹とクロードに直撃して二人は鼻を押さえて悶え苦しむ。

それだけでなく各親衛隊のメンバーがショウを始めとするクルスや稟達を集中的に狙っているようにも見える。


「うわっ!」

「おいおい!これは玉入れだろうが?ちゃんと競技を………いてっ!」


クルスが避けた瞬間ショウの頭にトマトが直撃してショウの頭は赤く染まった。


「てめぇら…」


顔まで赤く染まったショウは鬼のような顔をして玉を握ると、


「倍返しだぁぁぁぁーーーー!!(避けたクルスも纏めてなぁぁぁーー!!)」


何処かの隊長みたいな叫び声を上げながら各親衛隊とクルスに玉をぶつけるショウだった。


「何で!?」


見に覚えのないショウの怒りにクルスは必死で避けていたが、最後は顔面に硬球ボールが当たり倒れてしまった。


視点は代わり稟達は、


「ぎゃぁぁぁーーー!!」

「かったるい……ごはっ!」

「誰だ早苗さんのパンを投げた愚か者は!?」


稟と純一は親衛隊とショウの戦いに巻き添えをくらって気絶して、岡崎は誰かが投げた早苗のパンにより保健室行きが決まったのだった。

ちなみに食べたパンが、【風子特製ヒトデパン】だったと岡崎は本人から聞くとは知るよしもなかった。


「体育祭というのはこんなにも凄いんですね」

「学園が合併してから初めての体育祭ですからね。盛り上がりも凄いみたいですよ」


この惨状をお茶を飲みながら見ていたルリは微かに驚きそんなルリに苦笑しながら返すのである。


「こちら嫉妬砲発射準備OKです緑葉隊長!」

「よくやった東宮副隊長!ならば狙いは勿論…」


歯を光らせて二人は親指を立てると、狙いをゆっくりある人物に向けている。


「「将輝ーーー!!」」

「何でだよ!?グハッ!」


親衛隊のカボチャやスイカから逃げていた将輝が立ち止まりツッコムと、頭上からトマトが降ってきて頭が赤く染まるのだった。



「嫉妬砲発射ーーーー!!」


二人が構えた嫉妬砲から玉が発射され―――


「あれ?」


カチッ!カチッ!


「どうした東宮副隊長?」

発射されない嫉妬砲に汗をかきながら焦る東宮。

そんな東宮から告げられた一言で樹は顔が真っ青に変わるのだった。


「誰かが細工して中身が火薬の塊になっています」

「それはつまり…」

『………………』


先程まで争っていたショウや親衛隊まで動きが止まり皆の視線が嫉妬砲に向けられる。


「落ち着け東宮!それを離したら…「野々原~!」バッ!」


赤く染まった将輝が止める前に東宮が先に動いてしまい、嫉妬砲の中からゆっくり火薬の塊が地面に落ちてその場に静寂が包み込む。


『ぎゃぁぁぁーーーー!!』


数秒後に火薬が爆発してグランドにいた男子全員が巻き添えを喰らって黒焦げになったのだった。




△▼△▼△▼

~百メートル走女子~


『出場者はすぐに入場門に集まってくださーい!!』


さくらの声に各学年の代表が入場門に集まっていく。

二年一組の代表は、


「頑張ろうね。ことみちゃん」

「うん。姫ちゃんとマリオンちゃんも頑張ってなの」

「えぇ」


姫とことみとマリオンは互いに握手を交わしヤル気満々である。

しかし気のせいだろうか?

ことみの手にはバイオリンが握られている。


「ことみちゃん。それどうするの?」

「杉並君がスタート前に弾けって言ってたの」


ほんわかムードで話している二人に対して、マリオンだけは冷や汗をかいて固まっていた。


(杉並君が鬼に見える)


ことみのバイオリンが破壊兵器だと知っているマリオンだからこそ杉並が鬼に見えたらしい。

もはや何でもありである。


代わってこちらは二年二組代表。


「誰や、誰が伊澄ちゃんをこれに立候補したんや?」

「落ち着くのだはやて。鷺ノ宮嬢がいなくなるのは予想済み!なので今回は入場門に来るときから私がずっと手を……」


自信満々に話す理沙だったが、自分の手を確認して固まるのだった。

確かに先程までいたはずの伊澄の姿はなく理沙の手にはネギが握られていた。


「おぅ…」

「…って何でネギやねん!?ネギと伊澄ちゃんの関連性がわからへん!」

「ドウドウ」

「ウチは馬やないわ!!」


ネギをはやてに渡して落ち着かせるつもりが、はやてはネギをおもいっきり上空に投げてネギは観客席にいたザフィーラに当たりザフィーラはネギに向かって吠えていた。


『第一走者の人はスタートラインに進んでくださーい!!』

【第一走者】
・唯崎姫
・朝風理沙
・生徒A
・生徒B


「いい勝負をしようじゃないか三人とも」


珍しくヤル気満々の理沙。

目を光らせて自信満々な表情の理沙に姫や他の二名は何故か嫌な予感を感じていた。

それもそのはず日頃の理沙を見ていれば何をするか分からないからだ。


「安心したまえ。私は何もしない」

「そうなんですか?」

「うむ。本気で戦いたいと思って私は何もしていない」


ニヤニヤ笑う理沙に他の三人は一応警戒して、スタートラインに並ぶとスタートの合図を待つのだった。


「じゃあ始めるよ」


競技用の銃を持った亜沙がニッコリ笑って銃を掲げると、


「よーい!ドンッ!」


亜沙の持っていた銃が鳴ったと同時に四人が一斉に駆け出した。

いや四人ではないようだ。

理沙だけは三人より遅れて走っており三人を見ながらニヤニヤしていた。


(杉並!やるぞ!)

(OK!)


そんな状況で互いに目で合図する美希と杉並。

二人が同時にボタンを押すと、


「「「…えっ?」」」


三人の足元に突如穴が空いて三人は穴の中に消えていった。

すると次の瞬間、


「フハハハハハ!!もらったぁぁぁぁーーーー!!」


敵がいなくなったのを確認した理沙は高笑いしながら駆け出した。

勝ちを確信して今までにないダッシュを見せる理沙。

しかし――

ガシッ!!


「んっ?」


何かに足を掴まれた。
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