体育祭その三

「ユリナさんは幸成軍曹を信じているんですか?」


静まり返った部屋でルリが口にするとユリナは真剣な表情で口を開いた。


「私は自分の部隊の人間を信じている。それはあの日から変わらない」


あの日とはかつてユリナが大切な人と交わした約束。

それは自分が変わる切っ掛けとなった過去だと言うのはユリナ以外誰も知らないこと。


「では幸成軍曹の件は?」

「とりあえず幸成は捜索中よ。サザンクロス部隊全員がね。ただ…」

「ただ…?」

「いえっ!何もないわ!それより次は直樹の情報を教えて」


話題を切り替えるようにユリナはニッコリ笑って直樹に視線を向ける。

直樹は立ち上がりメモ帳片手にゆっくり読み始めた。


「実はクルスに頼まれてある人物を探していたんです」


モニターにはフードを被った青年が映し出された。


「彼の名は仁平淳。旅人なんですがここ数年で魔獣と戦い反神魔連の組織を壊滅させた男です」

「何故クルスは彼を?」


ユーノの問いに直樹はゆっくり答えた。


「仁平淳はクルス同様にジョーカーズを追っていて、ジョーカーズが探している物は分かりませんが彼もおそらく同じ物を探しているという情報があります」

「ある物?」

「過去、世界を我が物にしようとした者達が使用していた兵器と言えばいいかな?」


直樹の言葉にクロノとユーノが顔色を真っ青にして直樹を見ていた。


「まさか」

「それって…」

「過去の遺物。しいて言うならロストロギア」


ロストロギア――

暴走すれば星一つは軽く破壊できる代物。

そんな物を探す理由は――


「ジョーカーズの目的は分かるとして何故仁平淳は?」

「それは分かりません。しかし仁平淳が探している物は他にもあります」

直樹の言葉に五人は真剣な眼差しで言葉を待っている。

「彼は自分の友である、黒峰永久という人物を探しているようです」

「「黒峰?」」

「「永久?」」

直樹の言葉に五人は首を傾げている。

「あぁ。けど彼を調べていく内に可笑しな事がわかった」

「可笑しな事?」

「彼は数年前から消息不明で最後に見た者はこう言ってました。
『時を司る者を初めてみた』と」


時を司る者という単語に反応したのはユリナとユーノの二人。

ユリナはカリムから伝えられた予言で聞いてユーノが知る理由は無限書庫でたまたま開いた本に載っていたからだ。


「その件を含めて引き続き直樹はこれからも情報をお願い」

「分かりました」

「あと極秘で調べてもらいたいことが」


ユリナは一枚の写真を取り出して直樹に渡すと直樹は目を見開き驚愕の表情でユリナに視線を向ける。


「どうして!?」

「彼は私や仲間に伝えていない事があるの。おそらくジョーカーズの出生を一番知っているのは彼よ」


冷静な表情で伝えるユリナに直樹は凍りつくように固まり他の四人は首を傾げていた。

そうユリナが直樹に極秘で調査を頼んだ人物は――

(どうしてクルスを…)











△▼△▼△▼

~学園~

真夜中の校舎内で一つだけ明かりのついた教室があった。

そこにいるのは――


「同士花菱よ細工の方はどうだ?」

「OK!」

「よし。では同士朝風の方はどうだ?ちゃんと分かりやすいようにしているか?」

「当然だ!」


美希と理沙は親指を立ててOKサインをとり杉並は視線を樹と東宮へと向けた。


「同士緑葉に東宮の方は大丈夫か?」

「問題ないね。ちゃんと体育祭がカオスになるように俺様が仕掛けたから」

「そうだ!特にサバイバルとフリー走に力を入れて」


おそらくサバイバルのリハーサルのせいだろう。

二人の頭に棘が刺さり服がボロボロなのは。


「フッ!僕らの罠に引っ掛かり悲鳴を上げる豚共を見れるなんて最高だ!野々原もそう思わないか!?」


東宮は誇らしげに笑みを浮かべて後ろにいた野々原に同意を求めたが、


「その前に一ついいですかお坊っちゃま」

「どうした?」

「いえ…ただ!誰がそんな汚い言葉を教えた!?男はいつも紳士らしくしろって言ってるだろうが!!」

「ぎゃぁぁぁぁーーーー!!」


野々原の制裁により東宮はリタイアとなった。

木刀で制裁されている東宮の悲鳴が聞こえる状況で杉並は、


「フム、残りは大告白大会!だがどうしたものか?」

「ウチのクラスはクルスが出るぞ」

「ほぅ。ならばお題は決まったな。アサヅキにはあのお題にしよう」


あのお題とは!?

不敵に笑う杉並に美希と理沙はおそらくお互い考えている事は一緒だろうと頷いていた。


「我がクラスからは同士有里にしている」

「あぁ。彼は確か今日工藤叶と一緒に帰っていたようだな」

「噂では工藤叶から呼び出したと」


何処から出したか分からないメモ帳を手にしながら理沙は口を開く。


「あの二人は昔から怪しい関係だったからな。この辺りで告白してもらわねば」

「杉並も悪だな。わざわざ場をカオスにするとは」

「それが俺の役目だからな」


呆れた表情で呟くと杉並はプログラムを手に持ち決心したように口を開いた。


「さて今回の体育祭で鈍感軍団にも覚悟を決めてもらうか」


そう言った杉並に美希や理沙や樹が小さく頷いて東宮だけは、


「野々原~!もう許し「ませんよ」ですよね~」


いまだに制裁を受けていた。









予告

ショウ
「ついに始まった体育祭!」

「盛り上がってるかぁぁぁぁーーーー!!」

クルス
「前半から白熱する戦い」

「ぎゃぁぁぁぁーーーー!!」

なのは
「にゃはは。今までにないぐらいの迫力の体育祭」

「負けるかぁぁーーーー!」

フェイト
「次回S.H.D.C.――
第19話――
【体育祭始動!前編】」

はやて
「皆いいスタイルやな~」

咲夜
「何でやねん!?」
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