復讐者
~アースラ~
「クロノ!」
「「クロノ君!」」
「お義兄ちゃん!」
アースラのブリッジにショウやなのは達三人が制服姿のまま転移してきた。
ブリッジにはクロノを始めユーノにアルフにエイミィにルリがいる。
「今クルスは?」
「アースラで応急処置して今は極秘で本局の特別治療室にいる」
「極秘ってなんで?」
「彼女に頼まれてな。局員にあまり知られないで下さいって」
「彼女…?」
ショウ達四人の視線の先にはユーノとアルフに何やら頼み事をしているルリの姿が。
ルリはユーノとアルフに頭を下げてユーノは頬を赤らめてアルフと共にブリッジからいなくなった。
「クロノ君。あの子は?」
「彼女は…」
「初めまして。私は地球連合宇宙軍小佐ホシノ・ルリです」
「地球…」
「連合宇宙軍?」
ルリの言葉になのはとはやては首を傾げる中でフェイトは不安気な表情でクロノに聞いていた。
「クロノ、私今すぐ治療室に行ってもいい?」
「クルスが気になるんだろ?行ってこい」
フェイトはすぐにブリッジから消えて特別治療室に向かった。
そんな姿を見てクロノは一つの不安がよぎっていた。
(あんなフェイトは見たことがない。もしこの先クルスがこんな事になったら…)
「それでルリちゃんはクルス君とどんな関係なん?」
「クルスさんは大切なひ……共に戦った仲間です」
(大切な人って言いかけた)
(さすがフラグ体質やな~)
なのはとはやてが苦笑いを浮かべるが隣にいたショウもまたフラグ体質のため視線はそちらに向いていた。
「それでクルスの仲間がどうして極秘で治療を?」
いつもと違う雰囲気のショウ―――
親友の身を心配する者としては当然なのかもしれない――
「それをこれからお話しします。私が知る時空管理局の闇を…」
~特別治療室前~
「ハァ…ハァ…ハァ」
制服姿のまま本局を走ってたまにすれ違う局員からは、驚きや厭らしい眼差しで見られていたがフェイトは不安気な表情で走っていた為周りの目など気にもしなかった。
特別治療室前にはユリナを始め将輝に湊に勇の三人がいた。
「ユリナさん!クルスは!?」
「今眠ったところ。ただ今まで暴れてたから将輝達がボロボロよ」
ユリナの言う通り将輝達はボロボロで将輝に至っては鼻にバンソーコで頭に包帯をしていた。
「将輝、クルスに何があったの?どうして意識不明の重体なんかに…」
「それを今からアースラで話そうと思ってな。フェイトはどうする?」
「私は…」
フェイトは治療室に視線を向けて首を横に振った。
「私はクルスの傍にいる。もし目が覚めたらクルスの口から聞きたい」
「そっか…。そういえばレンは?」
「レンならマリーがメンテナンス中よ。クルス同様にボロボロだったから…」
レンもユリナの命令で極秘にメンテナンスを受けている。
技術部の中でも信頼している者達に頼んで―――
「フェイト…」
「何?」
「クルスの闇は俺達が想像していた以上だった。これから先クルスが憎しみに身を任せたらいずれ心が死んでしまうかもしれない」
「将輝…」
「今のクルスに一番必要なのは多分……いや絶対にフェイトだと思う。だから頼んだぞ」
「……うん!」
フェイトは真剣な表情で頷いて将輝達四人はアースラに向かっていった。
将輝の言葉を胸にフェイトはゆっくりと治療室のドアを開けていく。
その先にクルスが語る真実を知るよしもなく。
(私はこの世界にクルスが帰ってきてから今までクルスが何をしていたのか知らない。だから知らなくちゃいけないんだ。だって私は――――)
クルスが帰ってきてから一緒に過ごした日々。
一日一日が私にとって大事な思い出になった。
だから私は何が起こったとしてもクルスの全てを受け止めるんだ。
「クルス、入るよ」
だって私は誰よりもクルスが大切だから。
~アースラ~
「これが私の知っている真実です」
ルリから伝えられた話しにアースラ内が静寂に包まれた。
なのはとはやては信じられないような表情をしてショウとクロノは顔を歪めていた。
「本当なのか?生体実験やクローン生体というは?」
「はい。私はその現場を実際に見た訳ではありませんが」
「……………」
ショウとクロノはルリの言葉に黙り込んでしまう。
以前クルスにも言われた安藤の事やルリの言った事によって管理局を信じられなくなっているようだ。
「信じるか信じないかは皆さん次第です。ですが私はアキトさんやクルスさんの言葉を信じます」
凛とした表情のルリに誰もが反論する事が出来ずアースラ内に深刻な空気が漂っていたが、
「あら?ルリちゃんじゃない」
「ユリナさん」
『元帥!』
ユリナの登場にアースラ内にいたルリ以外のメンバーが立ち上がって敬礼をすると、ユリナはニッコリ笑って敬礼をやめさせてルリの横に立った。
「久しぶりね。ユリカやアキトは元気?」
「はい。アキトさんは少しずつですがリハビリをして回復しています。艦長はアキトさんのサポートで日々頑張っているとメールがありました」
「やっと自由になれたもんね。それで何の話をしていたの?」
「以前お話しした裏の事です」
「…そう」
悲しげな顔をしたユリナにルリが申し訳ないと頭を下げたが、ユリナは「気にはしないで」と言ってニッコリ微笑んだ。
「クロノ達に言っておくわ。ルリちゃんが言った話しは本当よ」
「じゃあ本当に…」
「ごめんなさい。貴方達にこれ以上管理局の裏を知られたくなかったの。ただでさえジョーカーズで混乱していたのにこんな事まで知ったらって思って」
そう悲し気な表情で話すユリナをルリは横目で見つめていた。
私はクルスさんから真実に近い部分まで教えていただきましたから。
だからこそユリナさん。
アナタ自身も彼らに話していない事があるんじゃないですか?
「じゃあクルスを極秘で治療したのも…」
「嫌な予感がしたからよ」
ユリナは真剣な表情で答えるとショウは顔を歪めたまま拳を握り締めていた。
自分達が所属している組織が裏でこんな事をしているから――
もしかしたら――
今も誰かが苦しんでいる人達がいるかもしれないと――
「ルリちゃん。今から話を変えるけどいい?」
「はい。私もあの世界で何が起こったのか知りたいので…」
ユリナは話題を変えて扉の近くで待機していた将輝達を呼んで皆がいる場所に連れてきた。
「将輝!?どうしたその怪我は!?」
「う~んちょっとな…」
「大丈夫なのか?」
「おう!俺だからな」
「答えになってない…」
将輝の言葉を湊がボソリと否定して将輝はアースラの隅でいじけてしまうのだが、
「将輝。首輪をはめられたくなかったら早く話しなさい」
「イエッサー!」
ユリナの言葉に神速で敬礼して真剣な表情で口を開いた。
「早速だけどクルスが何であぁなったのか話すぞ」
「あぁ…」
「あれは…」
△▼△▼△▼
~管理局外第53世界【メルト】~
「シャインスフィア散れ!」
クルスの放った数百のスフィアが男に向かい一つ一つが小さな槍になり先程よりも数が増えて男に向かっていく。
しかし――
「フン」
「なっ…!?」
シャインスフィアは全て当たる前に消滅していつの間にかクルスの頬からは血が流れていた。
(いつの間に…)
困惑するクルスに男は退屈そうに息を吐いていた。
「この程度か?」
「クッ…!」
クルスは双剣を握り光を纏わせて高く飛び上がり刃を向けて落下したが、
「効かん!」
「…グアッ!」
刃は男に触れる前に綺麗に折られてクルスは目に見えない何かによって両手両足を切り裂かれてしまった。
「クルス!」
将輝が咄嗟に援護しようとしたが、
「動かないでくれ将輝。こいつは僕の敵だ」
クルスが頬から流れる血を拭いながら将輝を止めて男から離れた。
憎しみの相手――
大切な幼馴染みを殺した男を――
「誰にも邪魔はさせない」
この男だけは僕が殺さなくちゃいけないんだ。
双銃に変えて魔力弾を放ちながら再び接近しようとするが、魔力弾まで消えてクルスはまた見えない何かに右手を切り裂かれて大量の血が流れていく。
さらに――
「全て返してやる」
「…なにっ!?」
男が手を上空に掲げた瞬間、今までクルスが放ったシャインスフィアや魔力弾が数千という数で襲いかかってきた。
「(あの男どうやって僕のスフィアや魔力弾を?けど今はあれを避けないと)」
襲いかかるスフィアや魔力弾を避けたり、プロテクションで防ぎ全てを耐えていたが全てが終わった時はクルスの身体は血だらけになっていた。
「残念だったな…」
いつの間にか目の前にいた男がクルスの首を掴んで持ち上げた。
「俺にはどんな魔法も効かん。貴様がいくら俺を憎んでも所詮は勝てはしないのだ」
「……だからどうした?」
「何?」
「まだ終…わっちゃ…いない」
クルスは男を見下ろして口から血の塊を吐き出して男の目にかかると、男は一瞬だけクルスを離して自由にしてしまった。
その一瞬でクルスは、
「…ッ!」
拳を握り締めていた男を殴り飛ばした。
「おー…」
「やりぃ!」
湊と将輝がガッポーズをしていたが勇だけは何か嫌な予感を感じて倒れた男を見ていた。
(あの男笑わなかったか?)
勇の嫌な予感は当たってしまう。
何故なら――
「どうやら甘く見ていたようだ」
男はムクリと起き上がり血を吐くとデバイスを起動させて手にナックルのような物を装備すると足元には魔方陣を展開させていた。
「シヴァ…」
『…………』
「シャインス……ガッ!」
「「「!?」」」
それは一瞬の出来事だった。
クルスがシャインスフィアを形成する前に男は接近してクルスの腹部を殴ったのだ。
「ソニックフィスト」
男がそう口にするとクルスは吹き飛び岩にぶつかり顔を歪めて前を見ていたが、
「ハアッ!」
「……ッ!」
男がおもいっきり腹部を殴ってクルスは岩を粉々にして倒れてしまった。
「クルス…」
湊の呟きが将輝と勇にも聞こえて二人は信じられない表情でクルスを見ていた。
およそ数分の出来事なのにすでにクルスはボロボロで双銃は使い物にならない。
「クロノ!」
「「クロノ君!」」
「お義兄ちゃん!」
アースラのブリッジにショウやなのは達三人が制服姿のまま転移してきた。
ブリッジにはクロノを始めユーノにアルフにエイミィにルリがいる。
「今クルスは?」
「アースラで応急処置して今は極秘で本局の特別治療室にいる」
「極秘ってなんで?」
「彼女に頼まれてな。局員にあまり知られないで下さいって」
「彼女…?」
ショウ達四人の視線の先にはユーノとアルフに何やら頼み事をしているルリの姿が。
ルリはユーノとアルフに頭を下げてユーノは頬を赤らめてアルフと共にブリッジからいなくなった。
「クロノ君。あの子は?」
「彼女は…」
「初めまして。私は地球連合宇宙軍小佐ホシノ・ルリです」
「地球…」
「連合宇宙軍?」
ルリの言葉になのはとはやては首を傾げる中でフェイトは不安気な表情でクロノに聞いていた。
「クロノ、私今すぐ治療室に行ってもいい?」
「クルスが気になるんだろ?行ってこい」
フェイトはすぐにブリッジから消えて特別治療室に向かった。
そんな姿を見てクロノは一つの不安がよぎっていた。
(あんなフェイトは見たことがない。もしこの先クルスがこんな事になったら…)
「それでルリちゃんはクルス君とどんな関係なん?」
「クルスさんは大切なひ……共に戦った仲間です」
(大切な人って言いかけた)
(さすがフラグ体質やな~)
なのはとはやてが苦笑いを浮かべるが隣にいたショウもまたフラグ体質のため視線はそちらに向いていた。
「それでクルスの仲間がどうして極秘で治療を?」
いつもと違う雰囲気のショウ―――
親友の身を心配する者としては当然なのかもしれない――
「それをこれからお話しします。私が知る時空管理局の闇を…」
~特別治療室前~
「ハァ…ハァ…ハァ」
制服姿のまま本局を走ってたまにすれ違う局員からは、驚きや厭らしい眼差しで見られていたがフェイトは不安気な表情で走っていた為周りの目など気にもしなかった。
特別治療室前にはユリナを始め将輝に湊に勇の三人がいた。
「ユリナさん!クルスは!?」
「今眠ったところ。ただ今まで暴れてたから将輝達がボロボロよ」
ユリナの言う通り将輝達はボロボロで将輝に至っては鼻にバンソーコで頭に包帯をしていた。
「将輝、クルスに何があったの?どうして意識不明の重体なんかに…」
「それを今からアースラで話そうと思ってな。フェイトはどうする?」
「私は…」
フェイトは治療室に視線を向けて首を横に振った。
「私はクルスの傍にいる。もし目が覚めたらクルスの口から聞きたい」
「そっか…。そういえばレンは?」
「レンならマリーがメンテナンス中よ。クルス同様にボロボロだったから…」
レンもユリナの命令で極秘にメンテナンスを受けている。
技術部の中でも信頼している者達に頼んで―――
「フェイト…」
「何?」
「クルスの闇は俺達が想像していた以上だった。これから先クルスが憎しみに身を任せたらいずれ心が死んでしまうかもしれない」
「将輝…」
「今のクルスに一番必要なのは多分……いや絶対にフェイトだと思う。だから頼んだぞ」
「……うん!」
フェイトは真剣な表情で頷いて将輝達四人はアースラに向かっていった。
将輝の言葉を胸にフェイトはゆっくりと治療室のドアを開けていく。
その先にクルスが語る真実を知るよしもなく。
(私はこの世界にクルスが帰ってきてから今までクルスが何をしていたのか知らない。だから知らなくちゃいけないんだ。だって私は――――)
クルスが帰ってきてから一緒に過ごした日々。
一日一日が私にとって大事な思い出になった。
だから私は何が起こったとしてもクルスの全てを受け止めるんだ。
「クルス、入るよ」
だって私は誰よりもクルスが大切だから。
~アースラ~
「これが私の知っている真実です」
ルリから伝えられた話しにアースラ内が静寂に包まれた。
なのはとはやては信じられないような表情をしてショウとクロノは顔を歪めていた。
「本当なのか?生体実験やクローン生体というは?」
「はい。私はその現場を実際に見た訳ではありませんが」
「……………」
ショウとクロノはルリの言葉に黙り込んでしまう。
以前クルスにも言われた安藤の事やルリの言った事によって管理局を信じられなくなっているようだ。
「信じるか信じないかは皆さん次第です。ですが私はアキトさんやクルスさんの言葉を信じます」
凛とした表情のルリに誰もが反論する事が出来ずアースラ内に深刻な空気が漂っていたが、
「あら?ルリちゃんじゃない」
「ユリナさん」
『元帥!』
ユリナの登場にアースラ内にいたルリ以外のメンバーが立ち上がって敬礼をすると、ユリナはニッコリ笑って敬礼をやめさせてルリの横に立った。
「久しぶりね。ユリカやアキトは元気?」
「はい。アキトさんは少しずつですがリハビリをして回復しています。艦長はアキトさんのサポートで日々頑張っているとメールがありました」
「やっと自由になれたもんね。それで何の話をしていたの?」
「以前お話しした裏の事です」
「…そう」
悲しげな顔をしたユリナにルリが申し訳ないと頭を下げたが、ユリナは「気にはしないで」と言ってニッコリ微笑んだ。
「クロノ達に言っておくわ。ルリちゃんが言った話しは本当よ」
「じゃあ本当に…」
「ごめんなさい。貴方達にこれ以上管理局の裏を知られたくなかったの。ただでさえジョーカーズで混乱していたのにこんな事まで知ったらって思って」
そう悲し気な表情で話すユリナをルリは横目で見つめていた。
私はクルスさんから真実に近い部分まで教えていただきましたから。
だからこそユリナさん。
アナタ自身も彼らに話していない事があるんじゃないですか?
「じゃあクルスを極秘で治療したのも…」
「嫌な予感がしたからよ」
ユリナは真剣な表情で答えるとショウは顔を歪めたまま拳を握り締めていた。
自分達が所属している組織が裏でこんな事をしているから――
もしかしたら――
今も誰かが苦しんでいる人達がいるかもしれないと――
「ルリちゃん。今から話を変えるけどいい?」
「はい。私もあの世界で何が起こったのか知りたいので…」
ユリナは話題を変えて扉の近くで待機していた将輝達を呼んで皆がいる場所に連れてきた。
「将輝!?どうしたその怪我は!?」
「う~んちょっとな…」
「大丈夫なのか?」
「おう!俺だからな」
「答えになってない…」
将輝の言葉を湊がボソリと否定して将輝はアースラの隅でいじけてしまうのだが、
「将輝。首輪をはめられたくなかったら早く話しなさい」
「イエッサー!」
ユリナの言葉に神速で敬礼して真剣な表情で口を開いた。
「早速だけどクルスが何であぁなったのか話すぞ」
「あぁ…」
「あれは…」
△▼△▼△▼
~管理局外第53世界【メルト】~
「シャインスフィア散れ!」
クルスの放った数百のスフィアが男に向かい一つ一つが小さな槍になり先程よりも数が増えて男に向かっていく。
しかし――
「フン」
「なっ…!?」
シャインスフィアは全て当たる前に消滅していつの間にかクルスの頬からは血が流れていた。
(いつの間に…)
困惑するクルスに男は退屈そうに息を吐いていた。
「この程度か?」
「クッ…!」
クルスは双剣を握り光を纏わせて高く飛び上がり刃を向けて落下したが、
「効かん!」
「…グアッ!」
刃は男に触れる前に綺麗に折られてクルスは目に見えない何かによって両手両足を切り裂かれてしまった。
「クルス!」
将輝が咄嗟に援護しようとしたが、
「動かないでくれ将輝。こいつは僕の敵だ」
クルスが頬から流れる血を拭いながら将輝を止めて男から離れた。
憎しみの相手――
大切な幼馴染みを殺した男を――
「誰にも邪魔はさせない」
この男だけは僕が殺さなくちゃいけないんだ。
双銃に変えて魔力弾を放ちながら再び接近しようとするが、魔力弾まで消えてクルスはまた見えない何かに右手を切り裂かれて大量の血が流れていく。
さらに――
「全て返してやる」
「…なにっ!?」
男が手を上空に掲げた瞬間、今までクルスが放ったシャインスフィアや魔力弾が数千という数で襲いかかってきた。
「(あの男どうやって僕のスフィアや魔力弾を?けど今はあれを避けないと)」
襲いかかるスフィアや魔力弾を避けたり、プロテクションで防ぎ全てを耐えていたが全てが終わった時はクルスの身体は血だらけになっていた。
「残念だったな…」
いつの間にか目の前にいた男がクルスの首を掴んで持ち上げた。
「俺にはどんな魔法も効かん。貴様がいくら俺を憎んでも所詮は勝てはしないのだ」
「……だからどうした?」
「何?」
「まだ終…わっちゃ…いない」
クルスは男を見下ろして口から血の塊を吐き出して男の目にかかると、男は一瞬だけクルスを離して自由にしてしまった。
その一瞬でクルスは、
「…ッ!」
拳を握り締めていた男を殴り飛ばした。
「おー…」
「やりぃ!」
湊と将輝がガッポーズをしていたが勇だけは何か嫌な予感を感じて倒れた男を見ていた。
(あの男笑わなかったか?)
勇の嫌な予感は当たってしまう。
何故なら――
「どうやら甘く見ていたようだ」
男はムクリと起き上がり血を吐くとデバイスを起動させて手にナックルのような物を装備すると足元には魔方陣を展開させていた。
「シヴァ…」
『…………』
「シャインス……ガッ!」
「「「!?」」」
それは一瞬の出来事だった。
クルスがシャインスフィアを形成する前に男は接近してクルスの腹部を殴ったのだ。
「ソニックフィスト」
男がそう口にするとクルスは吹き飛び岩にぶつかり顔を歪めて前を見ていたが、
「ハアッ!」
「……ッ!」
男がおもいっきり腹部を殴ってクルスは岩を粉々にして倒れてしまった。
「クルス…」
湊の呟きが将輝と勇にも聞こえて二人は信じられない表情でクルスを見ていた。
およそ数分の出来事なのにすでにクルスはボロボロで双銃は使い物にならない。