新たなメンバー

【二年一組】

「…………」


先程の光景に誰一人口が空かず黙っていた。

あの不良の大群を五分もかからず沈めた二人に誰もが驚いているのだ。


(あれが元聖皇バーベナの守護者と言われた二人の実力)


夏休みに修行をしてもらった純一ですらも額から汗が流れていた。

そんな緊迫した空気の中で――


「へぇ~凄いねあの二人は。だけどさ!ピンク色の髪の女や銀髪の女が勝てたのはきっと裏があるね!今のは絶対や・ら・せだよ!」


先程まで教室にいなかった筈の春原が髪をかきあげてバカにしたように言ったが、本人は少し…いやかなり勘違いをしている。


「春原、この学園には男より強い女は結構いるぞ」


「へっ!それは女じゃないね。れっきとした男だよ!」

(さらば春原…)

(お前の事は忘れない)

「だいたい水越や杏がいい例だよね。あれは女というよりゴリ「何ですって?」へっ…」


そう言い終える前に春原は両肩を掴まれて肩の骨が砕けるかのように強く握り締められていた。


「す~の~は~ら~」

「よ~う~へ~い~」

「ひぃぃぃぃぃぃ~~~~!!」


眞子と杏のドスの低い声に春原はガクガク震えながらゆっくり振り返った。


「「覚悟は出来てる(わ)よね?」」


「ひぃぃぃぃ~~!!」


まず眞子が春原の顔面を殴り廊下に吹き飛ばすと杏が廊下に移動して回し蹴りを喰らわせると春原は、再び教室に戻り眞子が拳に炎のオーラを纏わせ目を光らせると、渾身の一撃を春原に喰らわせて春原は床に叩きつけられて頭から煙を発しながら気絶した。


「春原陽平、ここに眠る」

「縁起でもない事言うなよ!」


湊の発言に工藤がツッコミ、結局転入生が教室に入ってきたのはそれから十分後だった。


「にしても強かったなあの二人」

「あれでもかなり手加減していたようだがな」

「マジかよ!」


純一もまたクルスと同じ強さを求めて修行している。

杉並の言葉にまだまだ壁は高すぎるだろと純一はため息を吐いてしまう。






【二年二組】

変わってこちらは不良を片付けたショウとクルスは何故か紅女史の前に正座をさせられていた。


「なぁ、シッチーにクッチー」

「「はいっ!!」」


紅女史のオーラに二人は声が裏返り身を震わせた。


「不良達の事は本当に感謝している。しかし遅刻したのは何故だ?」

(言えねぇ…)

(まさかフェイトと一緒に寝てましたとか言ったら…)


二人の脳裏には地獄絵図が浮かび顔色が一気に真っ青になる。


「言えないのか?だったら………タイヤ引き100周と学園を三周ほふく前進はどっちがいい?」


満面の笑みで罰を言う紅女史に二人は滝のように汗を流してなんとか稟達に助けを求めるが、誰一人目を合わさず外の景色や教科書を見たりして二人を見ようとしなかった。


「はっ…!そういえば紅女史!今日は転入生が来る日でしたよね!?」

「そういえばそうだったな」

「僕達の罰よりも廊下で待っている転入生を先にした方が…」


二人の言葉に紅女史は納得いかない顔をしていたが、先程から待っていた転入生を優先して声を掛けた。


「お前達!入ってこい!(二人には後でゆっくり私とデートをしてもらうか)」

「「!?」」


二人は背筋が凍り紅女史を見ると紅女史はニッコリ笑って二人を見ていた。

終わった。

罰からは逃げられない。

二人が絶望から頭を抱えている間に、教室の扉が開いて転入生が入ってきた。


「うひょぉぉーーー!!」

「我が世の春がきたぁぁぁぁーーーー!!」

「ハァ…ハァ…ハァ」

「生きてて良かったぁぁぁぁーーー!!」


変態集団は鼻息を荒くしながら転入生を見ていた。


(あっ…紅薔薇先生が青筋浮かべてる)


それに唯一気付いたヒナギクは頭を抱えていた。


「それじゃあ自己紹介をしてもらおうか!」

「シアの妹のキキョウよ!よろしく!」

「リンちゃんの姉のリコリスです」

「レナ・ランフォードです。よろしくね」

「えっと…小高神楽と申します。よ…よろしくお願いします」

「クロード・C・ケニーです。よろしくお願いします」


男女共に興奮して叫ぶか彼は忘れている。

紅女史が青筋を浮かべて眉をピクピクとさせている事を。


「静まれ!!次に喋った者は強制的に私とデートに暦先生の実験に付き合わせるぞ!!」

『………………』


その言葉に教室にいた者達の心がシンクロした。

皆の心が初めて一緒になったようだ。

しかしある二人の勇者がここにはいた。

そうこの二人が――


「キキョウちゃん!前世から愛してました!」

「リコリスさん!僕と!僕と一緒のお墓に入ってください!」


緑葉樹と東宮康太郎の二人だ。

しかしキキョウとリコリスは視線をショウと稟に向けて口を開いた。


「もう私はショウのものよ!」

「ごめんね。私は稟君が好きなの」

『なぁにぃぃぃぃぃーーーーー!?』


二人の言葉に男子は立ち上がり殺気を込めてショウと稟に死線を向ける。


「ショウ!殴っていいかい!?キミの魂が浄化するほど激しく!」

「土見!殴らせろ!お前の身体が血に染まるまで!」

「やり返すぞ」

「却下する!」


ショウはやる気満々だったが稟は激しく断っている。

しかしこれだけではなかった――


「じゃあレナちゃんは!?」

「ハァ…ハァ…ハァ神楽ちゃん」


変態集団のメンバーがレナと神楽を見ながら言うと、二人は頬を赤く染めながら答えた。


「私にはクルスがいるから…」

「私は…樹さんが…」

「へぇ~……って!!」

「はっ……?」

「なっ…」

『何だとぉぉぉぉぉーーーーー!!』


まさかの衝撃的発言に教室にいた者達が学園に聞こえるのではないかと思う程の叫び声を上げていた。

紅女史ですらも目を見開いて固まっている。


しかしその叫びを気にせず樹は動いて神楽の前に止まってジッと顔を見つめて思い出したように手を叩いた。


「ムッ…!キミは以前俺様が街中で助けた女の子だね」

「はい…!覚えていて下さったんですか?」

「勿論だよ!キミ程の美少女を忘れるはずがないよ」

「びっ、美少女だなんてそんな!」


樹の言葉に神楽は顔を赤くして俯いて、余程樹に会えて嬉しかったのかプルプル震えていた。

そして、そんな雰囲気でお約束とも言える変態集団が動き出した。


「ヤナギ!土見!アサヅキ!緑葉!…おまけに綾崎!」

「僕はおまけですか!?」


名前を呼ばれた五人はいつの間にか逃げる準備をしている中で樹はまさかの事態に珍しく焦っていた。


「東宮様!我らにご命令を!!」

「決まっている!皆の者………今こそ出陣だぁぁぁーーーーー!!」


東宮の命令に変態集団が動き出して五人に襲い掛かった。

五人は互いに顔を見合わせて急いで教室から逃げ出した。


「あいつら…」


紅女史はポケットから胃薬を取り出してそれを飲むと、戻ってきたメンバーにどんな罰を与えるか考えていた。












△▼△▼△▼

~昼休み~

【二年一組】


「さてと岡崎!今から智代って一年に勝負を挑みに行くぞ!」

「本気か?」

「さっきのはきっと人気稼ぎの為のやらせに決まっている」

「何の為に?」

「さぁ?」

「バカだろお前」


朋也の言葉に春原はカチンときたのかムキになって朋也に詰め寄った。


「黙らっしゃい!今から智代って女の所に行って僕が本当の強さを教えてやるんだ!」

「鼻にティッシュを突っ込んでいるお前がか?」

「関係ありません!これは男の勲章なんだ!」


かっこよくポーズをとる春原だが両鼻に突っ込んでいるティッシュのせいで、かっこよく見えるはずもなく笑いの的になっていた。

そして朋也と春原が智代のいる教室に向かう途中で、


「あっ…はるはらだ!何してんだ?」

「すのはらだ!間違えないでくれませんか!」

「どっちでもいいだろ?ヘタレに代わりはないから」

「笑顔でよく言えますね!」


紅女史の罰から帰ってきたショウとバッタリ会って三人で行く事になった。






【一年一組】

「ここだな…」

「よし!行くぞ!」

「「お前一人で行け」」


一年一組の扉の前に堂々と立っている春原と廊下の壁に寄り掛かっているショウと朋也。


「一緒に来てくれませんか!!」

「あぁ?」

「何言ってんだお前?」

「僕ら友達ですよね!?」


ショウと朋也は互いに顔を見合わせて首を傾げている。


「あんたら酷すぎませんか!?」

「「いやっ、これっぽっちも」」


春原が泣きながら詰め寄り二人があっさり答えると、不意にショウは背後から誰かに背中を突っつかれた。


「ショウお兄ちゃん?」

「プリムラか」


ショウの背中を突っついていたのは可愛らしいお弁当箱を持ったプリムラだった。


「プリムラ丁度よかった。坂上智代って女子生徒いるか?」

「智代…?ちょっと待ってて」


プリムラはトコトコと教室に入り確認してすぐに戻ってきた。


「智代、今はいないみたい」

「そっか。これはほんの気持ちだ受け取ってくれ」


ショウはポケットから一枚の写真を取り出してプリムラに渡す。

その写真に写っていたのは、


「クルスお兄ちゃんの………寝顔」


いつ撮った!?とこの場にクルスがいたら言っていただろうが、プリムラは写真を受け取って大事そうにポケットに入れてその場からいなくなった。


「良かったな春原、命拾いしたぞ」

「どういう意味だよ!?」

「そういう意味だよ」


ショウの言葉に春原が逆ギレして詰め寄るが朋也が呟いた言葉にふてくされた表情になり口を開いた。


「二人して失礼だよね。まるでこの僕が負けるみたいな言い方してさ」

「えっ…!」

「勝つつもりでいたのか?」

「あんたら人の皮を被った鬼だよ!!」


ショウと朋也は智代がいない為帰ろうとしたが、春原が泣きながら頼んできたので仕方なく待つことにして智代を待っている間に春原が腕立て伏せをしていると、


「邪魔だ」

「ごはっ…!」


春原を踏みつけて一人の女子生徒が教室に入っていった。

春原は小さく悲鳴を上げながら床で倒れている。
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