真実と決意

「じゃあ改めて!私はユリナ・ミドカルド。クルスの言った通り元帥をやってるわ」

「魔力ランクはSSS+で管理局最強と呼ばれているんだ」


魔力ランクSSS+!?

そんなランクの持ち主がいたなんて!


「ユリナさん、俺はリンディ・ハラオウンの息子「クロノでしょ?」…はい。どうしてそれを?」


クロノの疑問にユリナはニコニコしながら答えた。


「さっきも言ったけど私はリンディと親友なのよ。つまりクライド君とも仲が良かったわ」

「本当ですか!?」

「本当よクロノ?」


リンディが溜め息を吐きクロノの問い掛けに答える。

最近姿を見せないと思ったら急に現れるなんて。

本当に昔から変わらないわねユリナ。


「それよりいつの間に元帥になったのよ?」

「ちょっと前からよ!それよりも義娘のフェイトちゃんとクルスの結婚式はいつにする?」

「今はその話じゃないと思いますが…」

「「ツッコムところはそこじゃないだろ!」」


クルスの言葉にショウと稟がツッコムと周りの空気が明るくなった。


「話を変えるけどクルス、アンタ今は管理局と両王の依頼中なのよね?」

「そうですが?」

「アンタがノヴァと戦ってように今日ある島で局員がジョーカーズと戦って重症に追い込まれたのよ」

「島……まさか!?」


確信めいたクルスの口調にユリナは小さく頷くと再び口を開いた。


「アナタの考えている通り初音島よ。しかも局員を重症にしたのは……毒帝の恭介よ」

「…ッ!」


クルスが顔を歪めて腕を押さえていたがハッと我に返った瞬間脳裏にある人物達が浮かんだ。


(純一達が危ない!!)


それに気付いたのかユリナが溜め息を吐いて言った。


「安心なさい。民間人に被害はないから。アンタが心配している人達もその時は学園にいたみたいだから…」

「よかった…」


安心したのかクルスは柔らかな笑みになって息を吐いた。


「それでね、アンタに初音島に行ってほしいのよ。恭介の件もあるし………何よりあの島には【あれ】があるでしょ?」

「僕は依頼中ですが?」


クルスが困っている時タイミングよく襖が開いて両王が現れた。


「クルス殿!話は聞かせてもらったぞ!」

「依頼の事なら気にしなくていいよ。クルスちゃんがいない間はセフィリアちゃんやシャオちゃんに任せるからね。それに…クルスちゃんにはカリもあるから」

「あらま!よかったわね!許可をもらったわよ!」


両王の言葉に嬉しそうに笑うユリナにクルスは一瞬目を細めるがそれに気づいたのはユリナ本人だけ。

まるでこのタイミングを狙ったかのような物言い。

何を考えている?

両王の許可にクルスはどうしようかと迷っていた。

やはり稟とハヤテをこのまま残すのは危険な気もする。

それだけじゃない。

ここにはショウ達もいる。

どうするべきかとクルスが考えていると、


「クルス、俺やハヤテの事は気にするな」

「僕達はクルス君が初音島に行ってる間に皆さんに修行してもらいますから!」


二人の言葉に周りのメンバーは目を丸くしていた。


「今日の事で俺やハヤテがどれだけ無力か知ってしまった」

「お嬢様やヒナギクさん達を守ると言ったのに逆に守られてしまいました。僕はそれが情けなくて執事として………いえ男として悔しかったんです!」


二人は血が流れるほど拳を握り締めて悔しそうな表情をしていた。


「このままじゃ俺は神魔界の王になる資格はない!誰かに守られて生き続けるなんて………俺にはできないんだよ!」

「守られるんじゃなく守っていきたいんです!一人の男として………いえ!綾崎ハヤテとして!!だから……」


二人が頭を下げて言うとクルスはチラッと悠季と将輝に視線を向けた。

二人はそれに気付いたのか小さく頷いて稟とハヤテに近づいた。


「一ついいか二人とも?」


将輝の声に二人は顔を上げて将輝を見た。


「お前らにとって力って何だ?」

「「えっ?」」

「大切な物を守りたいのは誰だって同じだろ?そうじゃなくて具体的な事だよ」

「例えば……クルスのように命をかけるほどのものとか。ショウのように………想いの強さとかな」


悠季の言葉に稟とハヤテは顔を見合わせて考え始めた。

それを見ながら将輝が懐かしむような表情で話し始めた。


「俺の知ってる奴でな、バカで無鉄砲で人の話を聞かないくせに自分の想いをぶつける男が一人いたんだ。そんでいつも言ってた事がある」


将輝の言葉にコレットは心当たりがあったのか笑みを浮かべていた。


「そいつはな…『力とは…仲間の為にあるんだ!ただ闇雲に使うんじゃなくて仲間の為に使うなら俺はどんな敵とでも戦える』ってな」

「「仲間のため…」」

「…あぁ。そんでお前達二人はどうなんだ?」


稟とハヤテは真剣な眼差しになり将輝を見つめながら口を開いた。


「俺にとって……命より大切だ!皆を守るために俺は力を使う!」

「僕もです!もうお嬢様達のあんな辛い顔はみたくないです」


二人の決意した言葉に将輝は苦笑しながら拍手をした。


「合格だ。クルスに代わって俺やコレットに…」

「俺とシリアがお前達を修行してやるから覚悟しな」


将輝と悠季はそう言ってクルスに歩み寄った。


「クルス、お前は行ってきな」

「アイツらは俺や将輝達や「私も手伝ってあげるわよ!」って元帥さんも言ってるしな」


クルスは柔らかな笑みを浮かべて優しげな口調で言った。


「分かった。僕は初音島に行ってくる。稟やハヤテの事は頼んだよ」


クルスは最後にショウの元に歩み真剣な表情になって口を開いた。


「ショウ、今以上の力を得たいならキミもユリナさんに修行してもらうべきだよ。まぁ…キミだけじゃなくなのはにフェイトにクロノにユーノもだけどね」


そう言ってクルスは一枚のカードを出してショウに渡した。


「何かあった時は連絡して。それは連絡用だから…」

「あぁ!気を付けろよ」


クルスは一度だけユリナに視線を向けたが何も言わないまま魔法陣を出して転移魔法を唱え始めた。


「クルス!初音島に着いたらまずあれの様子を見るのよ!」

「分かってますよ」

「クルス!俺もハヤテも強くなってお前を驚かせてやるからな!」

「楽しみにしているよ。じゃあまた会おうね!」


クルスはそれだけ言って消えてていくとその場には光の粒子だけがキラキラと漂っている。


「そういえば………クルスの奴フェイト達に言ってなかった気が」

「「あっ…!?」」

「それじゃあ早速だけど土見に綾崎。アンタ達はこの中じゃ一番戦いを知らないわ」

「まぁ…」

「そうですが…」


まぁ当たり前の事だがユリナは何やら扉のようなネックレスを取り出した。


「アンタ達二人には将輝って子と悠季って子と二人のパートナーに頼むからこれを使って訓練所に行きなさい」


そのネックレスのデザインを見て不気味に思いながらも稟が受け取った。


「それは修羅の門。まぁ…一言で言うなら地獄のような所だから……甘く見ない事ね」


ユリナの言葉に楽し気に笑いながら歩いていく将輝。


「じゃあ行くか!」

「楽しみだね~」

「遠足じゃないからなコレット。あとシリアも…」

「わ、分かってるわよ!」

稟とハヤテに将輝達は大広間から去っていき広い場所に向かった。


「さて残った管理局組には私直々に相手をしてあげるから……覚悟しなさい」

「覚悟って…?」

「勿論死ぬ覚悟よ」


ニコッと笑って言ったユリナにクロノとユーノが顔を真っ青にしていたは余談である。










こうして――戦士達の修行が始まった。

世界の運命はどうなってしまうのかはまだ誰も知らない事である。










そして初音島では―――


「クルス君…」

「…さくら」


枯れない桜の下で再会したクルスとさくらの二人。

再会は何をもたらすのか?









次回予告

ユリナ
「ついに始まった地獄の修行…」

リンディ
「戦いを知らない二人にとって前途多難…」

エイミィ
「だけど二人の瞳には諦めの色はない…」

アルフ
「次回S.H.D.C.――
第9話――
【修行編(前編)】に…」


ユリナ&リンディ
「「ドライブ・イグニッション!」」
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