再会

「僕だってお嬢様のパートナーとして一緒に学園に行きたいんですよ」


ニコリと笑ってハヤテが行った瞬間、ナギの顔が茹で蛸のように真っ赤になった。


「パートナーって…バカ者め…皆の前で…堂々と言う奴がおるか」


身体をもじもじさせナギはハヤテの服を掴みながら顔を赤くする。

しかも頭から煙が出ている気がするが気のせいだろうか?


「あれ?伊澄はいないのか?」


ひょっこり現れた少年橘ワタルは辺りをキョロキョロして伊澄がいない事に気付いて口を開く。


「伊澄ちゃんでしたらここに…」


楓が視線を横に向けたが、伊澄はいつの間にかいなくなっていた。


「伊澄ちゃん…まさか…」

「迷子だな…また」


稟が呆れたように溜め息を吐いた途端にワタルがダッシュで教室から消えていった。


「さすがIII親衛隊隊長だ!自分の立場よりも伊澄探しを優先したか…」


ショウが冷ややかな目で消えていったワタルを見ていたのは余談である。


「それにしてもこの学園には転校生がよく来るよな」

「ある意味運命っす!」

「しかも今回は美少女が一人いるからね。本当に楽しみだよ」


いつの間にか樹が参戦して眼鏡を光らせていた。


「おい、どこから沸いて出た樹?」

「酷いな稟。俺様は美少女がいる所に必ず現れる男だぞ。これぐらいで驚くなよ」

「流石は学園の中で一番変態と言われてる男だ。説得力があるな」


ショウが呆れながら樹を回し蹴りを食らわせて壁に叩きつけた。


「さて…麻弓達が戻ってきたら転校生の事でも「スクープなのですよ!」」


ショウの言葉を遮って、麻弓達メンバーが教室に戻ってきた。


「転校生を見てきたけど、美少年と美少女だったのですよ!」

「しかもあの様子からしてその二人は仲が良い」

「つまりは恋人と言うわけだ!」


麻弓と美希と理沙は興奮しながらショウ達に説明する。


「あのさ……俺はどんな容姿かを聞きたいんだが」

「容姿か?それはな「お前等~席につけーー!!さもなくばグランドを兎飛びで100周!!」」


次の瞬間、皆の心が一つになって教室が静まりかえった。


「なっちゃん!転校生はどこなのですか!?」


席に着いたばかりの麻弓が撫子に質問する。


「やはり麻弓は知っていたか。転校生よ…入ってこい!!」


撫子の声でドアが開いた。

皆が胸をドキドキさせながら待っていると――


「稟殿ーー!!」

「稟ちゃーん!!」

「「「えぇ~!?」」


なんと入ってきたのは神王と魔王だった。

その光景に一部の男子と女子を除く全ての者が石化した。


「何だ何だ?辛気くせーな!」

「まぁまぁ…神ちゃん。彼らも人見知りをするんだよ。脅したら可哀想だよ」


二人の姿を見てシアとネリネが動こうとしたが、


「プリズム・シュート」


廊下から氷の閃光が放たれて神王と魔王を氷付けにした。


「イヴ」

「うん…」


しかも廊下から金髪の美少女が現れて二人を窓から遥か彼方に弾き飛ばすと、二人は光輝く星となり皆の表情がポカンと口を開いて唖然とした表情に変わる。


「すまん!助かった!」


撫子が廊下の方を見ながら礼を言うと一人の青年が入ってきた。


「いいですよ礼なんて。あの二人はいつもあぁでしたから…」

「この声って…」


入ってきた青年の声にフェイトがいち早く気付いて視線を前に向けた。


「しかし、あの二人を一撃で凍らせるとはな。これからは緑葉も凍らせてもらおうかな」

「任せてください」


撫子と親しげに話していたのは――


「クルス…」

「「「えっ…」」」


フェイトの呟きが聞こえたショウとなのはとはやても前に視線を向けた。


「……お前等注目!!こっちが転校生だ!」


皆が前に視線を向けると一部の男子と女子以外は何やら悲鳴を上げているが見知ったメンバーは目を丸くしていた。

クルスはその悲鳴を聞きつつも一息吐いて生徒全員を見渡す。

ショウやフェイトやなのはやはやてや稟や楓にあと転がっている樹がいるようだね。


「今日からこの学園に通う事になりました、クルス・アサヅキです。少し前までここに住んでいましたがある事情でいなくなりまた戻ってきました。どうぞよろしく」


何気ない挨拶だったがクラス中の皆が拍手をしてくれた。


「それでこっちの子が…」


クルスの言葉に金髪美少女は一歩前に出てペコリと頭を下げた。


「…イヴ・アサヅキです」


ビキッ!!

イヴの自己紹介に教室が緊迫した空気に包まれた。


「…イヴ?さっきまでアサヅキって言わなかったのに何で今言うかな?」

「だって紅女史が言えって…」


クルスはチラリと紅女史を見ると親指を立てていた。


(絶対わざとだ…)


そんな緊迫した状況でこの男が動いた。


「お久しぶりイヴちゃん。まさか俺様のためにバーベナに来てくれたのかい?」

「もしかして樹?」

「あぁ!よく覚えていてくれた!もう俺様死んだっていい!」


そう言った瞬間樹の肩に手が置かれて樹はゆっくりと振り返って確認すると――


「樹、遺言はそれでいいんだね」


樹の肩に手を置いたのはクルスであり樹の身体が一瞬で氷った。


「緑葉樹、ここに眠る」


ゴミのように樹を窓から捨ててクルスは息を吐いた。


(ここって二階だよな?)

(樹君、僕はキミの事を忘れません)


稟とハヤテは苦笑しながら樹の亡骸を見ていた。


「ゴホン!……緑葉はいいとして」

((いいのかよ!!))

「クッチー、お前の席はツッチーの後で、イヴはフェイトの隣でいいな?」

「僕はいいですよ」

「私も…」


二人は頷くと鞄を持って席に向かった。





そして、クルスとイヴが席に着いた瞬間――


「クッチー、今から質問の時間になるだろうから後は麻弓に任せるぞ」

「えっ?一時間目は?」

「雪路だが気にするな。焼酎持っていなくなったんだ………どうせ帰ってこん」


本当に先生なんだよねあの人?

何で学校で焼酎飲むんだ?

しかも皆納得したように頷いているし。


「はいはーい!了解なのですよ~」


そんなクルスを無視するように麻弓が勢いよく動き出した。









次回予告


「帰ってきたクルス…」

ショウ
「今まで何をしていたか聞きたかったが、麻弓によって邪魔された」

ハヤテ
「そして屋上での出来事…」

クルス
「次回S.H.D.C.―
第二話―
【質問とラバーズ結成】」



「私の事覚えてますか?」
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