赤き扇と剣

~遊園地~

「皆さん!早く逃げてください!」


炎の棘から皆を守るように心宿がシールドを張った。


「おらおらおら!!」


上空からは巨大な炎の棘が稟達を狙っている。


「…クッ!セフィリアさん!」

「ハァァァァ~!!」


セフィリアは茶髪で真っ赤な鎧とマントを身に付けた青年に向かっていく。


「へぇーお前かセフィリア!?」


青年は一瞬で赤い扇を出してセフィリアの剣を受け流した。


「毎度毎度お前らはご苦労なこった!」


赤い扇をひと降りして高熱の風を巻き起こしてセフィリアを襲うと、セフィリアは咄嗟にシールドを張るが地上に落ちていく。


「全く、人が休日を楽しんでいたのに相変わらず邪魔するのが好きな奴だな……ノヴァ」

「トレインさん!あの人を知っているんですか!?」

「あぁ、アイツはナイトジョーカーズの一人……ノヴァ・ヒートヘイズ。炎を司る男だ」


なのはやクロノ達はトレインの言葉に驚愕と戸惑いの表情を浮かべながらその青年を見ていた。


ちなみにそこから離れた場所で―――


「ヒナギクさん!大丈夫ですか!?」

「亜沙先輩、怪我はないですか?」


ハヤテや稟が女性陣の心配していた。

あの炎の棘から避けてはいたが破片や棘が身体を掠めていた。


「大丈夫よ。伊達に鍛えてないから」


弱々しく答えるヒナギクにハヤテは悔しそうに顔を歪める。


「ボクも大丈夫だよ。それよりも稟ちゃんは大丈夫?」


亜沙の言葉にハヤテ同様に稟も同じように顔を歪めていた。


「こんな所まで来て仕事とは、やることないんだなお前は」


皮肉を込めたトレインの言葉にノヴァはニヤリと笑いながら返した。


「褒め言葉として受け止めてやる。それより仕事の邪魔だから消えてくれないか?」


扇でホイホイとあしらいながらノヴァはトレイン達に言うと、


「そう簡単に二人を殺らせると思っているのか?」


槍を構えながらベルゼーが戦闘体勢に入る。


「たっくよ!こんな大人数相手に俺が一人で来ると思うのか?」


ノヴァがパチッ!と指を鳴らすと地面が揺れて何かの呻き声が聞こえてきた。


「ゴァァァァァァ~!!」

「ガァァァァァ~!!」


トレイン達を囲むように魔獣が召喚された。

その数はかなりのようでセフィリアとトレインは目を細める。


「多いな…」

「五十は軽く越えていますね」


ジェノスとシャオも己の武器を構えながら魔獣を睨み付けていた。


「さぁ!ショーの始まりだ!」


再び指を鳴らすと魔獣達が一斉にトレイン達に飛び掛かってくる。

魔獣達を相手に幾つもの閃光が走り魔獣達は貫かれたり切り裂かれて爆発していく。

だが―――


「ゴァァァァァァ~!!」


魔獣は減るどころかその数は増える一方だった。


「こいつら、倒す度に数を増やしていくのか!?」


剣を貫いた瞬間、魔獣が分裂していく状態にクロードは目を見開く。


「…チッ!炎舞刃!」


ディアスが炎を剣に纏わせながら一回転して魔獣を切り裂くと、


「ブガッ…!」


魔獣は樹に衝突して灰になって消えていく。


「分裂しないだと?」


ディアスが倒した魔獣は分裂せず灰になって消えていった。


「ファイヤーボルト!」


セリーヌの攻撃魔法が魔獣に直撃した瞬間、


「ゴァァァァァァ~!」


魔獣は悲鳴を上げながら灰になって消えていった途端、メンバーはすぐに魔獣が灰になった理由に気が付いて顔を見合わせていた。


「まさかこいつら!」


再びディアスが炎舞刃で魔獣を縦に切り裂いていくと、


「ギョガァァァァ~!」


魔獣は灰になって消えていった。


「どうやら弱点は炎のようだな」


ジェノスは確信めいた口調で言いながら透明の糸で魔獣をバラバラにする。


すると次の瞬間、


「ガァァァァァ~!」


せっかく魔獣消滅したのにジェノスのエクセリオンが分裂させた事で数が増えてしまう。


「ジェノス~!!」


クロードの悲鳴に近い声にジェノスは渇いた笑みを浮かべ本気で後悔して、


「正直すまなかったと思っている」


ただ申し訳なさそうに謝るのであった。

そしてこちらでは――


「フレアニードル!」


扇をひと振りすると高熱の棘が10本出現してノヴァは稟達目掛けて発射した。


「クッ!デュオスクロイ、カートリッジロード!」


棘から守るように樹が現れてトンファーの強度を上げて棘を上空に弾いた。


「稟!ハヤテ!早く楓ちゃんやヒナギクちゃんを避難させるんだ!」


トンファーを回しながら樹は上空にジャンプして総也に殴りかかるが、


「おっと!雑魚はすっこんでな!」


ノヴァはトンファーを素手で受け止めて自分の方に引き寄せると扇を腹部に当てながらニヤリと笑う。


「弾けろ雑魚が!フレアスマッシュ!」


扇が真っ赤に光ると灼熱の温度を出しながら樹の腹部を貫いた。


「ぐはっ!」


樹は腹部に強い衝撃を喰らい地面に激しく倒れる。


「樹!」

「樹君!」

「緑葉君!」


稟達は樹に駆け寄ろうと走り出そうとしたのだが、


「とっとと消えてなくなれよ!」


ノヴァが扇を力任せにひと振りすると巨大な高熱の球体が出現した。


「フレアグラビト!」


ノヴァが高熱の球体を放とうとすると背後からイヴが現れてノヴァにアダムを向けた。


「アダム!カートリッジロード」


アダムの形状が杖からハンマーに変わるとイヴはそのまま降り下ろした。


「チッ……!」


背後からの攻撃だったためノヴァは焦りの表情を見せていたのだが、


「そんなもん効くわけないだろ!」


ノヴァの鎧が真っ赤に光だして杖が触れる寸前のところでアダムが溶け始めのだ。


「えっ…!?」


驚くイヴを尻目にノヴァは回し蹴りをかました。


「……ッ!」


イヴは咄嗟にガードしたのだが重い蹴りだったのでふらついてしまう。


「本当に弱いなお前らは。セフィリアやトレインやアイツの方がまだ面白いってのによ」


ここにはいない男。

自分達組織と幾度となく戦っている氷と光を操る魔導師。

アイツがいればまだ楽しめたのにどこにいやがる?

こいつらファントムナイツがいてアイツがいない訳がない。

ノヴァの蹴りでバランスを崩しているイヴに、ノヴァはさらに追撃するかのように扇を広げて攻撃魔法の準備をする。


「そらよ!フレアニードル!」


扇をひと振りして五本の棘を出すと一気にイヴに襲いかかっていった。


すると―――


「ディバイーーンバスター!!」


イヴに直撃しようとした瞬間に真横からピンクの閃光が放たれてフレアニードルを塵にした。


「隙だらけだ!ブレイズキャノン!」


さらにノヴァに向かって前方から青き閃光が放たれた。


「雑魚が!その程度が効くと思ったか!」


ブレイズキャノンがノヴァに直撃したが鎧がそれを弾いてしまった。


「なにっ!?」


その光景にクロノは驚いて目を見開くとノヴァはフレアグラビトを手に掴み、


「まずはお前らからだ!管理局の犬が!」


フレアグラビトが巨大な砲撃魔法となり形を竜に変えてクロノを飲み込んでいく。


「クロノ君!」

「義兄ちゃん!」


飲み込まれる寸前になのはとフェイトがプロテクションを張るが、二人のプロテクションはまるでアメ細工のように簡単に破壊されフレアグラビトによって三人は飲み込まれてしまった。


「なのはちゃん!フェイトちゃん!クロノ君!」


魔獣と戦っていたはやてが悲痛の声で三人の名前を呼び飲み込まれた三人は、


「「うっ…」」

「まさか…これ程とは…」

なのはとフェイトとクロノはボロボロになって倒れていた。

あのなのはとフェイトとクロノがこうも簡単にボロボロになる姿に三人の強さを知る者達を目を見開く。

なのはは誰もが知るエース・オブ・エース。

フェイトは執務官で様々な事件を解決し、クロノはかなりの戦闘経験をつんでいる男。

その三人を圧倒させたノヴァは地上に降りると稟達に近付いていくとノヴァが近付いていく度に女性陣は怯える。

稟とハヤテは女性陣の前に立ち塞がりノヴァを睨みながら口を開いた。


「カレハ先輩も亜沙先輩も関係ない!俺やハヤテが目的なら俺達だけやれ!」

「その通りです!もしヒナギクさんや西沢さんに触れたら!」


二人の微かな殺気を込めた睨みにノヴァは、


「安心しろ。お前達を殺したらこの女達もすぐに………死ぬからよ!」


扇を広げてひと振りすると三十本の棘が出現して狙いが稟達に向けられた。


「フレアニードル!」


三十本本の棘が一斉に放たれて稟やハヤテや女性陣は目を閉じてしまう。

このままこの棘で死んでしまうのかと覚悟していると、


(あれ?)

(痛くない。どうして?)


もう当たってもおかしくないのに全く痛みがこない事に稟達は違和感を感じてゆっくり目を開けると、


「大丈夫だったかお前ら?」

「ギリギリ間に合ったようだね」


そこにはプロテクションを張ってフレアニードルを防いでいたショウと、ノヴァを一瞬で氷像にして冷たく言い放つクルスがいた。


「「ショウ君!」」

「ショウ!」

「ショウちゃん!」


ショウの出現にラバーズ達は歓喜の声を上げ、


「「「クルス!」」」

「クルス君!」


こちらも同様に歓喜の声を上げていた。


「稟にハヤテ、二人ともよく頑張ったな」

「全く…」

「待っていました…」


二人は身体の力が抜けたように座り込んでショウを見上げていた。


「魔獣の動きが止まった?」


トレイン達は急に魔獣の動きが止まった事に首を傾げて視線をノヴァに向けると、


「どうやらクルスがノヴァを凍り付けにしたことで魔獣達も動かなくなったのだろう」


トレイン達の視線の先には凍り付けにされているノヴァの姿が。


「ならこの隙に!」

「あぁ!」


アシュトン・ディアス・セリーヌ・ベルゼー・シグナムの炎の攻撃が魔獣に炸裂して魔獣達は次々と灰になっていく。


「全くタイミングよすぎるだろアイツら」

「ですが本当助かりましたね。これで私達もちゃんと戦えます」


トレインとセフィリアは苦笑しつつも魔獣を灰にしていく。

稟やハヤテや女性陣を守りながらノヴァや魔獣と戦うのはいつもの戦闘よりも苦戦する。

本当に二人が現れたのはありがたいことだった。


「バーストレールガン!」

「アークス流剣術!第十五手【雷刃】」


トレインのレールガンとセフィリアの雷刃が魔獣をあっという間に消滅させていく。
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