癒しの時間

~温泉~

海から帰ってきたメンバーは服を脱いで腰にタオルを巻きながら脱衣場にいた。


「へぇ~なかなか広いじゃん!」


ドアを開けて温泉の広さにショウが驚きの声を上げる。


「広いと言うよりもう凄いのレベルだぞ」

「しかも色んな種類のお風呂もありますしね」


稟とハヤテの視線の先には、

【普通風呂・水風呂・電気風呂・氷河風呂・灼熱風呂・不幸風呂・ギトギト風呂・危険風呂・地獄風呂】


「最後の方なんて誰も入らないだろ普通…」

「不幸風呂なんて聞いただけで背筋が凍りますね」


顔を真っ青にしながらハヤテは不幸風呂を見ていた。


「とりあえず他の風呂は後にして今は普通のに入るぞ」


ショウに言われて二人は普通の風呂に入った。


「はぁ~気持ちがいいなぁ~」

「はい~」

「ここの温泉は人気ランキングに載るぐらい凄いらしいからな…」


三人は日頃の疲れが吹っ飛ぶぐらい身体が癒されていた。




すると―――


「あぁぁぁ…熱い!!」


サウナ室から物凄い汗を流しながら樹が出てきた。

その後ろからはクロノやベルゼー達が同じように出てくる。


「お前の負けだ樹。約束通り罰ゲームだぞ」


「待ってくれ!俺様は今から水風呂に…「逃がすか!」」


逃げようと走り出した樹をジェノスがエクセリオンで捕まえて、


「そら!溶けろ!」


ジェノスは樹を灼熱風呂にぶちこんだ。


「ぎゃぁぁぁ~!燃える…もえ……………」


灼熱風呂から樹の悲鳴が聞こえたが、すぐに止んで樹だった物体がヘドロになっていた。











「そういえばクルスは?」


ショウがここにはいない親友の事を二人に聞くと、


「そういえば…」

「温泉にはいませんね…」

稟とハヤテもクルスの姿を捜していたが見つからなかった。


「クロノ、この地獄風呂に入ってみなよ?そのシスコンは罪だし」

「ならキミは不幸風呂に入るといい。最近無限書庫での仕事をサボってるそうじゃないか」


ユーノとクロノがバチバチと火花を散らしながら睨み合う。

今にもぶつかり合いそうな二人をザフィーラが、


「どっちもどっちだな」


「「うるさいぞ犬!!」」

「我は守護獣だ!!」


結局三人はベルゼーによりまとめて灼熱風呂にぶちこまれるのであった。






~浜辺~

その頃クルスは一人浜辺を歩いていた。

クルスの歩くその先には灰色の髪でポニーテールをして海を眺めている青年がいた。

その青年はクルスに気付いてニッコリ笑い視線を星空に向けながら口を開いた。


「なぁ、この星空の下で俺達を祝福してくれる場所はあると思うか?」


クルスは足を止めてその青年を見つめながら答えた。


「あるよ。少なくとも親友や大切な人がいるこの場所が僕にとって祝福だ…」

「ふーん、せやけどそれが幻想にならなきゃいいんやけどな」

「ならないさ。少なくともお前達の組織より生きているって実感できるよ。毒帝………いや恭介」

「へぇ~そりゃおもろいな氷帝…」


二人は殺気を放ちながら睨み合いを始めた。













△▼△▼△▼

身体や髪を洗い終えてショウ達は再び湯の中に入っている。


「なぁ、ハヤテ。ギトギト風呂って何だろうな?」

「さぁ?ただユーノさんの身体が輝いている時点で怪しすぎますね」


二人の視線の先には身体がキラキラと光って輝いているユーノの姿が映り何故かユーノは生き生きとしていた。


「樹君もいまだにヘドロですし」

「あれはもう恐ろしい風呂だぞ」

「ショウ君はサウナにいますし、僕らはそろそろ上がりませんか?」


二人はヘドロ樹を見ながら互いに頷いていた。


その時――


『きゃぁぁ!フェイトちゃんの胸大きい!』

『リンちゃんも凄いッス!』

『ヒナチャンは…………』

『ちょっと!何で溜め息なのよ!?』


隣の女湯から大きな声が聞こえてきた。

聞こえてきた声は、なのは・シア・泉・ヒナギクの声である。

その声に男湯にいた稟やハヤテやサウナにいるショウやそそくさと出ていくトレインとシャオ以外の男性陣の耳がピクリと動いた。

トレインとシャオはさすがである。

すでに命の危機を感じたのか目にも止まらぬ速さで温泉から姿を消していた。

女性陣の声がさらに聞こえてきて男性陣は突然顔を赤くしている。

樹はヘドロから復活してジェノスやクロノ達と何かを企んでいるような表情でコソコソ話していた。


『はやて!こうなったら…ウチラの嫉妬をぶつけるんや!』

『そやな咲夜ちゃん!』


何やらテンションの高い二人の声が聞こえてくると、


『シグナムやリインフォースは巨乳やな……』

『あっ…主!?やっ、やめてください!』

『主…ん…やめて…もらえま…せんか…』

『リ~ンちゃん覚悟しいや!』

『咲夜様…あの…やめっ…!?』


なんと乳揉みコンビが動き出して被害者が続出している。

男性陣の稟とハヤテは必死に鼻を押さえているようだ。


((煩悩!煩悩!煩悩!煩悩!))


『かーえちゃん!』

『ふぇ!シアちゃん!』

『マリア…』

『ナギ…アナタまで何しているんですか!?』

『まぁまぁまぁ!』


被害者は増えていく一方で約一名妄想している人がいる。


((煩悩!煩悩!煩悩!煩悩!煩悩!))


稟とハヤテは顔を赤くして必死に耐えていた。


『私、フェイトお姉ちゃんやなのはお姉ちゃんみたいに大きくない…』

『私も…』

『大丈夫だよプリムラ。プリムラはまだ成長期だからきっと大きくなるよ』

『イヴちゃんもだよ…』


((煩悩!煩悩!煩悩!煩悩!煩悩!煩悩!))


耐え続ける二人だがそろそろ限界が近づいていたのだが、


「ふぅ…熱かったな…」


サウナ室からショウが出てきて稟やハヤテを見て首を傾げていた。


「何で二人とも鼻なんかおさえ……」

『この巨乳か!この巨乳でクルス君を誘惑する気か!?』

『はっ、はやて?顔が怖いよ』


女子の方から聞こえてきた声に納得したのかショウはため息をこぼす。


「はやてのやつまた暴走してんのか?しかも咲夜も便乗しているようだし」


かつてなのはが被害を受けて二人まとめてSLBを喰らわせてたっけ。


「懲りないなはやても」


これはまたお仕置きコースだろうなと呑気に考えていたショウだが、稟とハヤテは平然としているショウに目を丸くしてた。


「ショウ…」

「なんだよ?」

「よく平然とできるな?」


稟の問い掛けにショウはキョトンとして一言だけ返す。


「……はやてで耐性ついたわ」


「よし!これなら完璧だ!」


ショウが平然としていて返した時に樹がガッツポーズをしながら声を上げた。


「あぁ…この計画なら俺達が勝つ!」


先程から何かを企んでいたメンバー達が握手をしている。


「お前ら、鼻血出しながら何言ってんだよ?」


呆れた表情でショウが握手しているメンバーに言うと、


「フッ!これは男の勲章さ!」


鼻血を勲章とか言いながら樹は髪を靡かせる。

正直カッコ悪いしそんな男の勲章なら捨ててしまえ。


「お前らもしかして女湯を覗くつもりか?」

「そうさ!俺様達はこの先にあるパラダイスを目指しているのさ!」


樹の後ろにいるジェノスやクロノ達が力強く頷いていると、電気風呂にいたザフィーラが立ち上がった。


「貴様ら!主の裸体姿を見ることは許さんぞ!」


盾の守護獣として主を守ろうとするザフィーラと、


「ジェノスに樹よ。お前達にセフィリアの裸体を見せる訳にはいかん」


セフィリアを絶対守る盾ことベルゼーが不幸風呂から立ち上がった。


「何を言ってるんだ!?このエロ狼!僕達と同じように鼻血出してるくせに説得力ないんだよ!」


金ぴかユーノに言われてショウ達はザフィーラに視線を向けると、確かにザフィーラの鼻からは大量に鼻血が出ていた。


「ベルゼーの旦那だって見たいくせに」

「そうそう!男なら正直になるべきだよ!」


ザフィーラとベルゼーは顔を歪めている。

天国と地獄――

どちらを選ぶのだろうか?

三人が唾を飲んでザフィーラとベルゼーを見つめていると、


「二人とも!何を迷っているんだ!?一緒に戦おう!」


煮え切らない二人にクロノが真剣な表情で手を差し伸べた。

クロノよ鼻血を出しながら手を伸ばすなよ。

あと俺達と同じようなセリフを言うな。

台無しになるだろうが。







そして―――


「「よかろう…」」


「「「!?」」」


ザフィーラとベルゼーはついに心に正直になってクロノ達の元に向かった。


「やはり二人も男だね!」


嬉しそうに樹は言うと標的を三人に向ける。


「二人とも僕達は信じていたよ!」

「俺達は一生同士だぜベルゼー!」


ユーノとジェノスの言葉にザフィーラとベルゼーはただ笑みを浮かべていた。


「さぁ、三人とも!君達も心に正直になるんだ!」

「俺は遠慮しとく」

「まだ死にたくないからお前達だけで逝け」

「僕も生きたいですから」


ショウと稟とハヤテの言葉に樹は軽く舌打ちしたがすぐに壁に向かっていく。


「見ていなよ!俺様達の勇姿を!!」


男六人が壁を登る姿は非常に気持ちが悪かった。

そこまでして動く執念に三人は呆れている。


「さぁ!あと少しだ野郎共!!天国が俺様達を待ってるぞ!」

『オォ~!』


変態軍団が壁をよじ登っていき女湯と繋がっている頂きに六人が手を伸ばすと、


「緑葉君は何をしてるのかな?」

「クロノ君もそんな生き生きした顔で何やってるの?」

「「………」」


その先にはシアとエイミィが仁王立ちして構えていた。


「ジェノスにベルゼーまで………何をしているかお分かりですか?」


その後ろには剣を構えているセフィリアもいる。

六人は一瞬で状況を把握したのか顔色が真っ青になっていく。


「エエエ、エイミィ!?」

「セフィ姐!これは…!?」

「「ようこそ。コキュートスへ…!!」」


その言葉と共に男性陣と女性陣側の壁が物凄い爆発音を鳴らしながら破壊された。

六人は勢いよく壁から落ちて腰を抜かしている。

しかも――六人の目の前には悪魔達が佇んでいた。

ショウと稟とハヤテの三人は目で合図を送ると一瞬で温泉から逃げ出した。


『全員頭冷やそうか』


悪魔達から邪悪なオーラが吹き出して六人は死刑宣告を受けてしまう。

ショウ達が扉を閉めて耳を塞ぐと、


『ぎゃぁぁぁぁぁ~!!』

『ごばぁぁぁぁぁぁ~!!』


温泉に六人の断末魔が響き渡り温泉の壁やドアに血が大量についていく。


「修理…大変だろうな…」

「「そうだな…(ですね)」」


三人は断末魔が聞こえなくなるまで脱衣場で遠い目をしていた。


「あいつらアホだろ?」

「僕達は逃げて正解でしたね」

「普通は出ていくからな」


六人の断末魔を耳にしながらトレインとシャオは呆れたようにミルクを飲んでいた。

あのセフィリアが気づかない訳ないだろうが。

それにしてもあのベルゼーまで参加するなんてな。
1/3ページ
スキ