戦い、残された時間

ラファスが用意した戦いの星【ロストワールド】ではすでに激しい戦いが始まりショウとクルスはラファスの元に向かっていたのだが、二人の行く手を聖騎士団のマルスとアズールとセレーナとノイン達四人が阻み進めずにいた。


「……クッ!予想よりも数が多い!まずいぞクルス!このままじゃラファスの所にたどり着くどころかベルエスやあの巨大兵器が使われてしまう!」

「ハァッ!」


マルスは腰に装備していたブーメランを手にしそれをショウに向かって降り下ろすと、ショウはそれを左手のガントレットにプロテクションを張り受け止めるが、ショウの背後からセレーナの放った魔力の矢が迫り来てその矢をクルスがシャイニングバーストで消滅させ、さらにクルスは翼を広げて自分の視界に入る魔獣やクローン戦士をアブソリュートバーストで全て消滅させていく。


「なのは達も動力部の方に向かえてない!稟達も苦戦して動けないでいる!これじゃ俺達も動けないぞ」


動力部破壊を頼まれているなのはやフェイトは魔獣に囲まれ全く動けていない。

その魔獣を消すためにセフィリアやトレイン達も戦っているが、あの塔から出てくる魔獣やクローン戦士達があまりにも多すぎる。

ショウの言うようにこのままではマズイ。

どうする――――


「よそ見してんじゃねぇよ!クルスー!!」


クルスに全力で向かってくるのは様々な世界で戦ってきたアズールやノインの二人。

アズールは二、三度鎌を降ると鎌から閃光が放たれてクルスがそれを左腕のプロテクションで受け止めるとその隙に高速でノインが槍を構えた状態で突っ込んでくる。


「させっかよ!」


そのノインの突っ込みを将輝が対処するかのように現れてバルベリウスの刃を白く光らせて弾く。


「ショウとクルスは前に進む事だけを考えろ!」

「将輝の言う通りだ!ショウ!クルス!」


クロノはデュランダルを構えてオーロラエクスキューションを放ち魔獣達を一斉に消滅させていく。


「二人だけじゃない!なのはとフェイト達の道は僕達が作る!だから早く!」


クロノの放ったオーロラエクスキューションに続くようにセフィリアが愛刀のクライストを構える。


「将輝やクロノの言う通りですね。クライスト、カートリッジロード!」


深く息を吐き鋭い目付きのまま己の剣を眼前に広がる魔獣やクローン兵士に向けてただその力を一気に解き放つ。

二人の道を作ることが私達のやるべきこと。

だから―――


「アークス流剣術【滅界】!」


その目にも止まらぬ突きは魔獣とクローン兵士を全て消滅させていく。


「ここで私達と戦うよりも貴方達二人にはやるべきことがあるはずです。だから振り返らないで行きなさい。クルス・アサヅキ、ショウ・ヤナギ」

「セフィリアの言う通りだぜ二人とも!ハーディス、カートリッジロード。喰らいな!バーストレールガン!」


ハーディスから解き放たれた巨大な閃光を目にして二人は互いに頷くと翼を広げて真っ直ぐ突き進んでいく。

さらに二人の道を作るように湊と奏也が同じタイミングでブレイカー級の魔法でもある、『ルミナスアーク』と『スターダストレボリューション』を放つ。


「僕達なら大丈夫だ。だから行くんだ二人とも」

「……わかった」

「ありがとう皆!」


クロノの言葉に答えるようにショウとクルスは高速で動き自分達に近づく魔獣を消滅させながら塔に近付いていく。

しかし―――


「このまま簡単に行かれると困りますね」

「テメェの相手は俺だろうがクルス!」


二人を行かせないように聖騎士団のメンバーが立ち塞がる。

あの闇の書事件から今まで決着をつけられず、ラファスやユリナやジョカーズに利用されていた。

だが今は違う。

今自分達の前には宿敵の二人がいる。

だから誰にも邪魔はさせない!

終わらてやるよ!


「今度こそ全てをー!!」


アズールが鎌を振り降ろそうとしたその時だった、


「悪いがお前ら聖騎士団の相手は俺達だ」


その言葉と同時にアズールの鎌がまるで狼の群れような衝撃波に襲われて鎌の刃がバラバラに切り裂かれる。


「邪魔しやがったのは誰だ!?」


ショウとクルスを守るように現れたのは、悠季と将輝と湊と奏也の四人だった。

その四人の姿にマルスは目を細めアズールは不愉快そうに顔を歪める。


「テメェらが相手だと?」

「あぁ。二人の邪魔はさせねぇよ」


将輝が白く光るバルベリウスをマルスに向けるとマルスは肩をすくめてやれやれとため息を吐く。


「……仕方ありませんね。貴方達を始末してからあの二人を追いかけますか」

「俺の邪魔をしてただですむと思うなよ雑魚共が!」


こうして聖騎士団と悠季達の戦いが始まる。

そのおかげかショウとクルスは一気に塔に向かってラファスの元に向かう。

その二人の姿を目にしつつ悠季は仲間達に言葉をかけていく。


「油断すんなよ将輝」

「誰に言ってんだか。湊に奏也も死ぬんじゃねぇぞ」

「………当たり前」

「負ける気なんてさらさらねぇよ!」


戦場はさらに激化していき誰もが未来の為に戦っていく。

そして二人が塔に向かう姿を目にしていたはやてはいまだに動けずにいた、なのはとフェイトの援護をするようにインフィニティレインを放ち魔獣を消滅させる。


「なのはちゃんとフェイトちゃんも早く行くんや!」

「はやてちゃん!」


アインスとフローラのおかげでユニゾンでマルチロックもできるようになった。

せやから二人の周りにいる魔獣もクローン兵士もまとめて消すことができる。



「私もフローラの力を使えるんやで!アインス!カバーは頼むで」

『お任せを主はやて!』


シュベルトクロイツの先端に赤き魔力が溜まり出して、はやてはそれを一気に目の前の魔獣とクローン兵士に放つ。


「『プロミネンスバースト!』」


赤き一筋の閃光がなのはとフェイトの道を作り出すように放たれてる。


「二人にはベルエスの動力部を破壊する役目があるやろ!早く行くんや!」

「はやてちゃん…」

「このまま二人が足止めされてたらいつベルエスが発射されるかわからへん。やからここは私達に任せて」


迫り来る魔獣をヴォルケンリッター達が消していく。

さらにユーノの持つデバイスメディによる砲撃魔法で一気に道を作り出す。


「はやての言う通りだよなのは」

「フェイトちゃん」

「クルスとショウもあの塔に向かってる。私達も私達の役目を果たさないと」

「………うん!」


フェイトの言葉に力強く頷くと二人はショウやクルスに続くように一気に塔に向かって飛び立つ。

ショウとクルスとなのはとフェイトが合流し塔に向かう姿を目にしつつ、はやてもはやてで戦況を確認しながら戦っていく。

頼むで四人とも。

全員生きて帰ってくるって私は信じとるからな。

だから私も負けへん。

四人の帰る場所は絶対に守ったる!


「クロノくん!」

「あぁ!合わせろはやて!」


はやてとクロノが並び立ち二人は一気に砲撃魔法を放つ。

はやてのラグナロクブレイカーとクロノのオーロラエクスキューションによりかなりの魔獣とクローン兵士は消滅していく。

これで少しは戦況が変わったと思った瞬間、二人の頭上から炎と水の閃光が降り注ぐ。


「……ッ!?」

「何だ!?」


頭上から降り注いだ閃光を確認するように顔を上げた二人の視界の先には、


「……次は当てる」


二人の前に現れたのはミステリアスな雰囲気で肌は陶器のように美しく、髪は銀色で瞳は青色をして白色と黒色のゴスロリファッションを着た一人の少女だった。


「アンタ何者や?」

「私はジョーカーズの元帝、アンジェ」

「……元帝だと」


まさかの人物にはやてとクロノは顔を歪める。

まさかジョーカーズの人間がここで現れるとは。

私とクロノ君は指揮をとらなあかんのに。

どうする?


「フォローしてくれハヤテ!純一は左を頼むぞ!」

「任せろ!」

「はい!稟君!」


ナイスタイミングとも言わんばかりに稟がアンジェの右側から純一が左側から接近して、斧と刀を降り下ろしハヤテが援護するように風の弾丸を放つ。

それによりアンジェははやてとクロノから離れて全てをシールドで受け止める。


「助かったわ三人とも」


あのままやったら確実に私とクロノ君が戦う事になってた。

ほんまにいいタイミングやったで三人とも。

ホッと息を吐くはやてに稟は真剣な表情で口を開く。


「はやて、ここは俺達に任せてくれ」

「お前やクロノは指揮を出さなきゃいけないんだろ?」

「ショウ君達が帰ってくるまで頼みますよ」


はやてとクロノは三人の言葉に「「任せた」」とだけ口にして離れていく。

あの元帝の強さはかなりのもんやった。

それでも私もクロノ君も三人を信じるしかない。

やから三人とも絶対に無理だけはせんといて。


「………邪魔」


三人めがけて放たれる雷と氷の閃光。

その威力はかなりのものであり稟と純一はシールドで受け止めハヤテは風の防壁で防いでいく。


「絶対に勝つぞ二人とも」

「かったるいが負ける気はねぇよ」

「いきますよ!稟君!純一君!」


こうして稟達三人とジョーカーズの元帝の戦いが始まる。

三人の想いはただ一つ。

自分達の帰りを待つ大切な人達の元へ生きて帰ること。

その為にも負ける訳にはいかないのだ。












▽▲▽▲▽▲


激化する戦場を駆け巡りながらショウ達四人は塔へとたどり着くと、なのはが壁を破壊して内部に突入した四人はラファスのいる場所と動力部の場所を確認する。


「ユーノとヴェロッサの話だとラファスは上のエリアにいて動力部は下のエリアにらしいな」

「なら僕達は上に向かうとしてフェイト達は下だね」


突入してすぐに離れる事になって不安気な表情になるなのはとフェイトの二人。


「安心しろよなのは。必ず帰ってくるから」

「ショウ君」

「俺とクルスが揃ったら誰にも負けねぇよ。ディアゴの時だってちゃんと帰ってきただろ?」


安心させるように笑いながらなのはの頭を撫でるショウになのはは小さく頷くのみ。

信じてる。

信じてるよショウ君。

絶対に絶対に帰ってきてね。


「クルス…」

「大丈夫だよフェイト。ラファスとユリナさんは必ず止めてみせる」


クルスは私を安心させるように言ってくれてるのにどうして胸騒ぎがするの?

本当に大丈夫なんだよねクルス?


「じゃあ二人とも動力部は頼むぜ。行くぞクルス」

「……あぁ」


ショウとクルスが離れていく姿を目にしつつなのはとフェイトも下部を目指していく。

その胸中に一抹の不安をフェイトは抱えながら。






ラファスのいるエリアにやって来た二人は玉座に座るラファスと対峙するように立つ。


『よもや下等な人間風情が我の前に再び現れるとはな』


圧倒的な雰囲気とピリピリする空気を感じながらも二人は臆する事なく剣と銃をラファスに向ける。

ショウは一度目は臆してしまったが今は違う。

フューチャーを進化させたのもあるが、今は隣に誰よりも頼りになる親友がいる。

それだけで俺は戦える。


「凶王ラファス、元帥ユリナ・ユドカルド。お前達の野望はここで僕とショウが終わらせる!」

『やってみろ下等な人間共が!」


ラファスの持つ剣が降り下ろされると同時にショウとクルスは翼を広げて動き出す。

今フューチャーを持つ者達がぶつかる。

ベルエスが放たれるタイムリミットはゆっくり確実に進んでいく。









次回予告―――

奏也
「刻一刻と時間だけが過ぎていく。

それぞれの戦いが始まっていく中で残る命と散る命。

そして動力部に辿り着いたなのはとフェイトが目にしたものとは?

次回S.H.D.C.―――
第五十八話―――
『終末の戦い』にドライブイグニッション!」
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