ビバ!夏休み

「クルス、どうかな?」


着替えを終えたメンバーが戻ってきてそれぞれのラバーズは水着を見せていた。

フェイトは黒い水着を着て恥ずかしそうに身体をもじもじさせていた。


「よく似合ってるよフェイト。その綺麗だ」


顔を赤くしながら答えるクルスにフェイトは嬉しそうな表情をする。


「じゃあクルス、僕とディアスは着替えてくるから」

「あぁ…」


クロードとディアスは皆に背を向けて着替えに向かってクルスは水を飲みながら静かに海を眺めていた。











△▼△▼△▼


「喰らえ稟!シェルブ「著作権的にやめろ~!!」…」


ショウのアタックをツッコミながら稟はブロックする。

ボールは指先に当たり上空に舞い上がると、


「おらぁぁぁ~!!」


ヴィータがジャンプして巨大なハンマーを出してボールに直撃させた。


「ヴィータ!ストップ!」


ショウの言葉も虚しくヴィータのハンマーは地面に落下して、当然だがボールは破裂して地面には巨大な穴が出来た。


「ヴィータ、やりすぎやで」

「ご…ごめん…!」


こうして第一回バレーボール大会は中止となった。


「いてて…せっかくのバレーボールが…」


砂を払いながら稟が嘆いている。


「心宿、何とかならないか?」


ショウの声にここにはいないはずの心宿は、


「5分お待ちください」


相変わらずいきなり現れて亢宿と共にコートを修復していく。

魔法を使いながら地面を元に戻して先程のようにコートが戻っていく。


そしてコートが元通りになると心宿と亢宿は消えていった。


「さぁて、またバレーボールやるぞ!」

「ヴィータ、またハンマー使ったら埋めるからな」


ショウの脅しにヴィータは怯えながら答えた。


「わ…分かってるよ!」


そんなバレーボールの光景を見つめるクルスの隣にはオレンジ色の水着を着た楓がいて、楓は緊張しながらもクルスを見つめていた。


「クルス君は海に入らないんですか?」

「僕は皆の楽しそうな姿を見てるだけで充分だよ。楓もプリムラと一緒に海で泳げばいいのに」

「私は――」


楓は柔らかな笑みを浮かべながらクルスを見つめるの。

私は――


「ここがいいんですよ」


アナタの隣で過ごせればいいんです。


「……そっか」


微かに笑みを浮かべていたクルスの頬に冷たい何かが触れてクルスは視線を楓に向けると、


「クルス君、ジュースでも飲みませんか?」

「…楓?」


楓がクーラーボックスからジュースを二本取り出して、その一本をクルスの頬に軽く触れるように当てていた。


「ありがとう…」


楓からはジュースを受け取りクルスは美味しそうに飲んでいる。

楓もそれを確認してジュースを開けて飲み出した。


すると―――














「ごめんなさい…」


「えっ!?別に謝ることじゃないと思うけど」


何故謝られているのか気になりクルスは楓に視線を向けると、


「…めんなさ…」


「楓!?何で泣いてるの!?」


何故楓が涙を流しているのか分からないクルスは本気で慌てている。

飲み物を置いておろおろと困惑していると、


「ごめんなさいクルス君!ごめんなさい…!」


楓はクルスと再会してからずっとためていた気持ちが爆発して涙を流していたのだ。

楓は過去に自分がクルスの腹部を刺したのをずっと引きずっていた。

そのせいで再会した時は罪の意識から自分の感情を胸にずっと隠し続けていた。

でもクルスと再会してクルスと一緒にいるうちにクルスを想う気持ちは強くなっていく。


「ごめ…んなさい…」


涙を流し謝る楓にクルスは優しく微笑みながら楓を抱き寄せた。


「楓、僕はキミに謝られる事をしたつもりはないよ」


クルスは楓の頭を優しく撫でながら再び口を開いた。


「楓の笑顔が見たかったから、その為なら僕は何でもするつもりだったんだ。だから泣かないで」


楓がクルスの服を掴む力が強くなる。


「大丈夫だから。僕はキミを恨まないし憎んだりもしないから。だから楓には笑っていてほしい」


楓はその言葉に胸を熱くする。

まるで自分の氷の棺を溶かすように、いつも笑顔でいられるように。


「はい…!ありがとう…ございます!」


顔を上げて満面の笑みで楓はクルスに向き合うとその笑顔にクルスもまた笑みを浮かべる。


「……楓」

「はい!」

「水着似合ってるよ。楓にぴったりのオレンジ色で可愛いよ」

「……クルス君」


アナタの言葉は私の心を温かくしてくれますねクルス君。


「どうやら上手くいったようだぞ稟」


「そうか、よかった!」


浜辺でクルスと楓の様子を見ていたショウと稟が話している。


「楓のやつずっと引きずってたからな」

「あぁ、クルスと再会してからもモヤモヤしていたようだし」


楓の様子を昔から見ていた稟は真剣な表情で言った。


「これで楓のリミッターが外れてクルスは大人の階段を……」

「登りますかね?」


背後からハヤテが現れて二人の会話に参加する。


「まぁ!それは楽しみに待っておくとしてだ。稟にハヤテよその格好は何だ?」


今の稟の姿は海パンが所々焦げて黒ずんでハヤテは頭がアフロとなっている。


「ショウ、これでも俺達はお前の炎のアタックの被害者だぞ」

「……プッ!」


二人の姿にショウは吹き出してしまう。


「ショウ、時には拳で語り合わないか?」

「僕も同意見です…」


拳を握り締めてショウに近寄る二人だが、


「倍にして返すぞ」


両手に炎の纏ってショウはニッコリ笑っていた。







三人は暫くクルスと楓の様子を見ていたが、


「羨ましい限りだねクルスは」


「樹、いろいろツッコミたいが何でお前鮫に頭を食いつかれてる?」

「愚問だな稟。答えは一つしかないだろ?俺様が美男子だからさ!」

「そのまま食われてろ」


稟は樹を蹴り飛ばして鮫と一緒に海に戻した。


「イタッ!鮫よ…はな…離してくれぇぇ~!!」


樹は再び鮫との海中デートに連れていかれてしまう。


「けど、よくフェイト達は動かないよな」


先程から楽しそうにバレーボールをしているフェイト達を見ながらショウが口を開いた。


「フェイトちゃん達も楓ちゃんの気持ちを知ってるから今回はいいんだって…」


ショウの問い掛けになのはがヒョッコリ現れて答える。

先程まで亜沙先輩やヒナギク達とビーチフラッグをしていたのにいつの間に。

えっ?

途中からシグナムが現れてビーチフラッグじゃなくて木刀での試合になった?

海に来てまで何をしているんだシグナム?

しかもヒナギクがいい勝負をしていたから逃げてきたのかなのは。

こりゃしばらく放っておいたほうがいいな。


ショウはシグナムとヒナギクの事を忘れる事にして視線を再びクルスと楓に向ける。


「ふーん、つまりこれからはフェイト達も遠慮なしにアピールするってことか」

「そして、クルス君はその度に他の方々から攻撃される」


これからクルスは可哀想だなと三人が同情する。


「夜が大変だな…」


「それって俺達もだぞ」


三人はガッチリと握手をして声を揃えて言った。



「「「一緒に戦おう!」」」

「にゃはははは」


そんな三人をなのはは苦笑しながら見つめていた。








その頃―――


「あれはターゲットの土見稟に綾崎ハヤテに間違いないな」


一人の青年が少し離れた岩場でその様子を見ていた。


「しかしクルスまでいてくれたんは嬉しい限りやな」


青年の視線の先には楓と話しているクルスの姿がいた。


「さてと!挨拶ぐらいはしとかな」


青年は一瞬で消えていった。









次回予告

クロノ
「海から帰った俺達に待っていたのは…」

ユーノ
「温泉と天国のはずだったのに…」

ザフィーラ
「そして初めてのゲーム」

ベルゼー
「次回S.H.D.C.――
第六話――
【癒しの時間】」
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