まさかの再会
アリサの言葉にそういえば、っとなのはとはやては記憶を思い返す。
アメリカで起きた実験中の事故で研究所が一つ消滅して当時世間を騒がしていた。
その時アリサとすずかがアメリカに渡米していた事を皆が知っていて、二人が無事なのかアリサの家族やすずかの家族が連絡していたのを二人は覚えていた。
確かその時にすずかの姉であり、なのはの兄高町恭也の妻でもある月村忍が二人は無事と教えてくれたが、
「あれは私達が忍さんに頼んだのよ。あの実験の爆発で私達はこの研究所に転移して元の世界に帰れなくなっちゃったから。でも連絡しないとマズイと思ってドクターに頼んだら…」
フハハハハとジェイルは立ち上がりその時の状況を詳しく語りだした。
誰も頼んではいないのだが。
ジェイルは話したくて仕方がないようだ。
「いやいやあの時は本当に驚いたよ。少し休もうと目を閉じたら巨大な爆発が起きて何事かと思って駆けつけたらアリサ君とすずか君が気を失って現れたからね。すぐにアリサ君が目を覚まして、家族に連絡をしないとって焦っていたから私の頭脳を使って発明した【どこでもダイヤル】を使って無事を伝えたのさ」
「でも何の実験をしてたんや?研究所が消滅なんて普通やないで」
当時研究所では何をしていたのかとマスコミが色々騒いでいたが、結局資料もなく何も残っていなかったので徐々にこの事件は人々の記憶から消えていった。
はやて自身も興味本意で調べたのだが結局わからないままだった。
「私達が研究してたのは……」
そう口にしながらすずかの視線はカプセルに入って深層世界にダイブしているクルスに向けられた。
アリサちゃんと私が研究していたのは普通の人達からしたら夢物語とも言われるし、無謀で無意味としか言われない研究だった。
ただ私達は友達の為にとある研究をしていただけ。
それがあんな結果になってしまったのだ。
「私やアリサちゃんがやってた研究は……パラレルワールドを見つける事だったの」
「パラレルワールド?」
「それって平行世界とかもしかしたらありえた世界とかの?」
「そうだよ。でもそれはあくまで建前。本当は…」
この実験をやろうと思った切っ掛けはあのクリスマスの時に偶然見てしまった光景だ。
「あれは小学生の最後のクリスマスイブの日だった。なのはちゃんとはやてちゃんは覚えてる?あの日フェイトちゃんが遅れてやって来てたの」
「そういえば…」
「そうやったなぁ」
あの日執務官の仕事で遅れたフェイトにお疲れ様っと口にしていた二人は微かに思い出したように呟く。
でもあの時フェイトちゃんは何事もなく笑ってパーティーを楽しんでいたし、プレゼント交換の時も嬉しそうにプレゼントを受け取っていたはずだ。
「実はあの日、フェイトちゃんが遅れた本当の理由は執務官のお仕事じゃなかったんだよ」
「えっ……」
「私とアリサちゃんしか知らない事だったけど、今だから二人に教えてあげるね。あの日本当はフェイトちゃん、とある場所で泣いていたんだよ」
「……泣いていた?」
「どういう事なん!?何でフェイトちゃんが…」
すずかの言葉になのはとはやては驚愕して目を丸くする。
パーティーでのフェイトは泣いた跡もなかったし本当にパーティーを楽しんでいた。
なのにパーティーに来る前に泣いていたなんて微塵も感じられなかった。
「フェイトが泣いていた場所なんだけど、アンタ達なら知ってるんじゃない?」
すずかの代わりに次はアリサが口を開く。
アリサとすずかが見たフェイトが泣いていた場所。
それは―――
「かつて私達に別れも言わず、挙げ句の果てにアンタ達の前から姿を消したクルスが消えていった公園って言えばわかる?」
「「……ッ!?」」
闇の書事件が終結してショウ君とクルス君が元の世界に帰る事になったあの日、クルス君はショウ君を気絶させて自分だけ元の世界に帰っていった。
あれからあの公園にはあまり行かなくなったが、もしかしてフェイトちゃんは毎年クリスマスイブの日に足を運んでいた?
私達の前では明るく振る舞っていたけど本当は?
「いつも笑っているフェイトがあんなに泣いていたのよ。アイツに――クルスに会いたいって言いながら。でも私達じゃ二人を会わせる事なんてできない。だから考えたのよ。どうしたら二人を再会させられるのかを――」
「そして私とアリサちゃんが考えた結果が――」
クルス君が元々いた世界を見つける事だった。
「でもそれは…」
「普通に考えれば不可能だろうね。何せ世界とは数千数万と途方もないのだから。」
ジェイルの言葉にアリサとすずかは苦笑する。
二人ともそれぐらいわかっている。
二人がやっている事は普通に考えて成功率がかなり低い。
それでも二人はこの実験を研究をやめようとしなかった。
何故なら―――
「大事な親友が大好きな奴に会いたがっているのよ。だったら私達がやる事は一つ!」
「フェイトちゃんを心の底から笑わせてあげることだって思ったの」
だから私もすずかもこの道を選んだのよ。
まぁ、おかげでこんなぶっとんだドクターに出会うし、私達が研究を完成させる前にクルスに再会しちゃうしで計画は破綻しちゃったけどね。
本当に何回クルスを殴ればいいのかしら?
私とすずかの苦労を本当にアイツは―――
「美しい友情だ。そんな友情に泣いてしまいそうだ」
「だったらその手に持ってる目薬はしまっとき。台無しやで」
「おっとこれはいけない」
それにしてもアリサちゃんもすずかちゃんも凄い行動力やなぁ。
フェイトちゃんの為にここまでするなんてびっくりや。
私らはフェイトちゃんが泣いてた事すら知らなかった。
もしそれを見てたら同じようにできたやろか?
「これが私達がやってた研究よ。それで次に私達がドクターに協力している理由とクルスと再会した時だけど――」
「待ちたまえアリサ君。どうやらショウ・ヤナギとクルスがダイブに成功して深層世界にたどり着いたようだ」
話すなら少し待ってくれないかい?とアリサに告げながらジェイルは二人の状態を確認していく。
ダイブした時にエラーがわずかに出ると思ったが、全くの異常なしのようだね。
△▼△▼△▼
「ここは?」
『おそらく私の深層世界です』
ショウがダイブに成功して最初に目にしたのは、まるで戦争をしたかのように荒れ果てた場所だった。
街は焼かれて地面には血の跡が飛び散って息が苦しくなるような光景にショウは顔を歪める。
『ここは私が先代マスターと出会った場所です。先代マスターはここでラファスに家族や恋人を殺されたんです』
「……そうなのか」
こんな場所で唯一生き残った先代マスターは何を思ったのだろう?
大切な家族を恋人を殺したラファスに対する燃え上がる憎しみや怒り。
復讐心だけでラファスと戦ったのだろうか?
もしそうなら俺は―――
『マスター!上です!』
「……ッ!?」
フローラの声にショウは我に返ると、すぐに後方に下がり上空から降り注ぐ紅き閃光を避けていく。
その紅き閃光がやむと同時に空から一人の青年が現れて、青年は大剣を肩に担いでショウと対峙するように目の前に立つ。
その青年は黒髪に血のように赤い瞳をギラつかせ、まとう雰囲気は歴戦の戦士のように研ぎ澄まされていた。
「オレの深層世界に来るとは、久しぶりだなフローラ」
『はい。本当にお久しぶりです。我が先代マスター。いえ……アスカ』
ショウは目の前に対峙する青年を見つめる。
この人が先代マスターでありかつてラファスを倒した一人。
「それでここに来たって事はフューチャーの進化の為だな」
『はい。あの男が再び私達の前に現れました。ですから…』
「事情はわかった。強くなる為に戦ってやるよ。ただしお前」
「俺?」
アスカという青年に大剣を向けられショウは首を傾げる。
「死ぬ気で戦えよ今代のマスター。オレに勝てないようじゃラファスには勝てねぇからな!」
「上等だよ先代マスター!俺は絶対に強くなるんだ。アイツと一緒に戦うためにもな!」
ショウの剣とアスカの大剣がぶつかり合う。
今代のマスターと先代マスターの戦いが今始まる。
先代マスターを倒さなければ強くなれない。
ショウは長くなろうである戦いに集中し、そのショウの相手をするアスカはわずかに口元に笑みを浮かべていた。
(久しぶりに本気で戦えるな。こいつなら俺の全てを受け止めてくれそうだ)
△▼△▼△▼
「無事にダイブしたようだね」
『流石はジェイルさんにアリサさんにすずかさんですね。完璧ですよマスター』
あの三人の頭脳には本当に驚かされる。
フューチャーデバイスのシステムを理解し、それを進化させる為に道具を作り出すなんて普通に凄いことだ。
僕では絶対にできないよ。
「それにしてもここは?」
クルスが今いる場所。
そこは夜空に星が散りばめられ、波の音が静かに耳に届いていた。
穏やかに流れる空間にクルスはただじっと海を眺めている。
「どうだい今代のマスタークン。ここは静かでしょ?」
「……んっ?」
『この声は…』
クルスとレンが海を眺めていると、少し離れた場所から一人の青年がゆっくりした足取りで近付いてくる。
「アナタが先代マスター?」
「そうだよ。今代のマスタークン」
静かに砂浜で対峙するクルスと先代マスター。
蒼い瞳とアメジストの瞳がただじっとお互いを見つめあう。
『お久しぶりです……ヤマト』
「そうだねレン。あの戦い以来かな?でもキミが今代のマスターとここに来たって事は……」
『はい。ネメシスお姉さまの人格を乗っ取り、ラファスが復活しました。おそらく……』
「………アランとネメシスが」
悲し気に笑うヤマトは視線を海に向けるとそのままゆっくり口を開く。
「僕はキミの事をずっと見ていたよ今代のマスタークン。闇の書事件から今こうして会うまでずっと…」
「………」
「キミは何の為に戦っているんだい?
最初はアスカのように復讐かと思ったけど、根底にあるものは違っていた。
キミはキミの戦う理由は――」
「……僕は彼女のフェイトの笑顔の為に戦っている。そしてアナタなら僕がやろうとしている事を知っているはずだ」
「僕もキミと同じように一人の女性の為に戦った。でも彼女はお父さんをラファスに殺されて壊れてしまった。そして最後は……僕の目の前でラファスに殺された」
『……ヤマト』
「クルス、力は所詮力でしかない。それでもキミは戦うんだろ?」
「あぁ…」
クルスの言葉にヤマトは体が蒼く輝いてヤマトの背中に蒼い翼が生えてその手には双銃が握られ、ヤマトの瞳から光がなくなりクリアな状態へと変わっていく。
「いくよ今代のマスター」
こうしてフューチャーデバイスを持つ者達の戦いが始まっていく。
全てはラファスを倒すために。
世界を守る為に。
ジェイル
「ついに始まった先代マスターと今代マスターの戦い。
そして八神はやてと高町なのはは知る。
アリサ君とすずか君の今までの出来事を。
私も話さなければならないかな?
次回S.H.D.C.
第51話――
【もう一つの真実】に…
ドライブ・イグニッション!!」
アメリカで起きた実験中の事故で研究所が一つ消滅して当時世間を騒がしていた。
その時アリサとすずかがアメリカに渡米していた事を皆が知っていて、二人が無事なのかアリサの家族やすずかの家族が連絡していたのを二人は覚えていた。
確かその時にすずかの姉であり、なのはの兄高町恭也の妻でもある月村忍が二人は無事と教えてくれたが、
「あれは私達が忍さんに頼んだのよ。あの実験の爆発で私達はこの研究所に転移して元の世界に帰れなくなっちゃったから。でも連絡しないとマズイと思ってドクターに頼んだら…」
フハハハハとジェイルは立ち上がりその時の状況を詳しく語りだした。
誰も頼んではいないのだが。
ジェイルは話したくて仕方がないようだ。
「いやいやあの時は本当に驚いたよ。少し休もうと目を閉じたら巨大な爆発が起きて何事かと思って駆けつけたらアリサ君とすずか君が気を失って現れたからね。すぐにアリサ君が目を覚まして、家族に連絡をしないとって焦っていたから私の頭脳を使って発明した【どこでもダイヤル】を使って無事を伝えたのさ」
「でも何の実験をしてたんや?研究所が消滅なんて普通やないで」
当時研究所では何をしていたのかとマスコミが色々騒いでいたが、結局資料もなく何も残っていなかったので徐々にこの事件は人々の記憶から消えていった。
はやて自身も興味本意で調べたのだが結局わからないままだった。
「私達が研究してたのは……」
そう口にしながらすずかの視線はカプセルに入って深層世界にダイブしているクルスに向けられた。
アリサちゃんと私が研究していたのは普通の人達からしたら夢物語とも言われるし、無謀で無意味としか言われない研究だった。
ただ私達は友達の為にとある研究をしていただけ。
それがあんな結果になってしまったのだ。
「私やアリサちゃんがやってた研究は……パラレルワールドを見つける事だったの」
「パラレルワールド?」
「それって平行世界とかもしかしたらありえた世界とかの?」
「そうだよ。でもそれはあくまで建前。本当は…」
この実験をやろうと思った切っ掛けはあのクリスマスの時に偶然見てしまった光景だ。
「あれは小学生の最後のクリスマスイブの日だった。なのはちゃんとはやてちゃんは覚えてる?あの日フェイトちゃんが遅れてやって来てたの」
「そういえば…」
「そうやったなぁ」
あの日執務官の仕事で遅れたフェイトにお疲れ様っと口にしていた二人は微かに思い出したように呟く。
でもあの時フェイトちゃんは何事もなく笑ってパーティーを楽しんでいたし、プレゼント交換の時も嬉しそうにプレゼントを受け取っていたはずだ。
「実はあの日、フェイトちゃんが遅れた本当の理由は執務官のお仕事じゃなかったんだよ」
「えっ……」
「私とアリサちゃんしか知らない事だったけど、今だから二人に教えてあげるね。あの日本当はフェイトちゃん、とある場所で泣いていたんだよ」
「……泣いていた?」
「どういう事なん!?何でフェイトちゃんが…」
すずかの言葉になのはとはやては驚愕して目を丸くする。
パーティーでのフェイトは泣いた跡もなかったし本当にパーティーを楽しんでいた。
なのにパーティーに来る前に泣いていたなんて微塵も感じられなかった。
「フェイトが泣いていた場所なんだけど、アンタ達なら知ってるんじゃない?」
すずかの代わりに次はアリサが口を開く。
アリサとすずかが見たフェイトが泣いていた場所。
それは―――
「かつて私達に別れも言わず、挙げ句の果てにアンタ達の前から姿を消したクルスが消えていった公園って言えばわかる?」
「「……ッ!?」」
闇の書事件が終結してショウ君とクルス君が元の世界に帰る事になったあの日、クルス君はショウ君を気絶させて自分だけ元の世界に帰っていった。
あれからあの公園にはあまり行かなくなったが、もしかしてフェイトちゃんは毎年クリスマスイブの日に足を運んでいた?
私達の前では明るく振る舞っていたけど本当は?
「いつも笑っているフェイトがあんなに泣いていたのよ。アイツに――クルスに会いたいって言いながら。でも私達じゃ二人を会わせる事なんてできない。だから考えたのよ。どうしたら二人を再会させられるのかを――」
「そして私とアリサちゃんが考えた結果が――」
クルス君が元々いた世界を見つける事だった。
「でもそれは…」
「普通に考えれば不可能だろうね。何せ世界とは数千数万と途方もないのだから。」
ジェイルの言葉にアリサとすずかは苦笑する。
二人ともそれぐらいわかっている。
二人がやっている事は普通に考えて成功率がかなり低い。
それでも二人はこの実験を研究をやめようとしなかった。
何故なら―――
「大事な親友が大好きな奴に会いたがっているのよ。だったら私達がやる事は一つ!」
「フェイトちゃんを心の底から笑わせてあげることだって思ったの」
だから私もすずかもこの道を選んだのよ。
まぁ、おかげでこんなぶっとんだドクターに出会うし、私達が研究を完成させる前にクルスに再会しちゃうしで計画は破綻しちゃったけどね。
本当に何回クルスを殴ればいいのかしら?
私とすずかの苦労を本当にアイツは―――
「美しい友情だ。そんな友情に泣いてしまいそうだ」
「だったらその手に持ってる目薬はしまっとき。台無しやで」
「おっとこれはいけない」
それにしてもアリサちゃんもすずかちゃんも凄い行動力やなぁ。
フェイトちゃんの為にここまでするなんてびっくりや。
私らはフェイトちゃんが泣いてた事すら知らなかった。
もしそれを見てたら同じようにできたやろか?
「これが私達がやってた研究よ。それで次に私達がドクターに協力している理由とクルスと再会した時だけど――」
「待ちたまえアリサ君。どうやらショウ・ヤナギとクルスがダイブに成功して深層世界にたどり着いたようだ」
話すなら少し待ってくれないかい?とアリサに告げながらジェイルは二人の状態を確認していく。
ダイブした時にエラーがわずかに出ると思ったが、全くの異常なしのようだね。
△▼△▼△▼
「ここは?」
『おそらく私の深層世界です』
ショウがダイブに成功して最初に目にしたのは、まるで戦争をしたかのように荒れ果てた場所だった。
街は焼かれて地面には血の跡が飛び散って息が苦しくなるような光景にショウは顔を歪める。
『ここは私が先代マスターと出会った場所です。先代マスターはここでラファスに家族や恋人を殺されたんです』
「……そうなのか」
こんな場所で唯一生き残った先代マスターは何を思ったのだろう?
大切な家族を恋人を殺したラファスに対する燃え上がる憎しみや怒り。
復讐心だけでラファスと戦ったのだろうか?
もしそうなら俺は―――
『マスター!上です!』
「……ッ!?」
フローラの声にショウは我に返ると、すぐに後方に下がり上空から降り注ぐ紅き閃光を避けていく。
その紅き閃光がやむと同時に空から一人の青年が現れて、青年は大剣を肩に担いでショウと対峙するように目の前に立つ。
その青年は黒髪に血のように赤い瞳をギラつかせ、まとう雰囲気は歴戦の戦士のように研ぎ澄まされていた。
「オレの深層世界に来るとは、久しぶりだなフローラ」
『はい。本当にお久しぶりです。我が先代マスター。いえ……アスカ』
ショウは目の前に対峙する青年を見つめる。
この人が先代マスターでありかつてラファスを倒した一人。
「それでここに来たって事はフューチャーの進化の為だな」
『はい。あの男が再び私達の前に現れました。ですから…』
「事情はわかった。強くなる為に戦ってやるよ。ただしお前」
「俺?」
アスカという青年に大剣を向けられショウは首を傾げる。
「死ぬ気で戦えよ今代のマスター。オレに勝てないようじゃラファスには勝てねぇからな!」
「上等だよ先代マスター!俺は絶対に強くなるんだ。アイツと一緒に戦うためにもな!」
ショウの剣とアスカの大剣がぶつかり合う。
今代のマスターと先代マスターの戦いが今始まる。
先代マスターを倒さなければ強くなれない。
ショウは長くなろうである戦いに集中し、そのショウの相手をするアスカはわずかに口元に笑みを浮かべていた。
(久しぶりに本気で戦えるな。こいつなら俺の全てを受け止めてくれそうだ)
△▼△▼△▼
「無事にダイブしたようだね」
『流石はジェイルさんにアリサさんにすずかさんですね。完璧ですよマスター』
あの三人の頭脳には本当に驚かされる。
フューチャーデバイスのシステムを理解し、それを進化させる為に道具を作り出すなんて普通に凄いことだ。
僕では絶対にできないよ。
「それにしてもここは?」
クルスが今いる場所。
そこは夜空に星が散りばめられ、波の音が静かに耳に届いていた。
穏やかに流れる空間にクルスはただじっと海を眺めている。
「どうだい今代のマスタークン。ここは静かでしょ?」
「……んっ?」
『この声は…』
クルスとレンが海を眺めていると、少し離れた場所から一人の青年がゆっくりした足取りで近付いてくる。
「アナタが先代マスター?」
「そうだよ。今代のマスタークン」
静かに砂浜で対峙するクルスと先代マスター。
蒼い瞳とアメジストの瞳がただじっとお互いを見つめあう。
『お久しぶりです……ヤマト』
「そうだねレン。あの戦い以来かな?でもキミが今代のマスターとここに来たって事は……」
『はい。ネメシスお姉さまの人格を乗っ取り、ラファスが復活しました。おそらく……』
「………アランとネメシスが」
悲し気に笑うヤマトは視線を海に向けるとそのままゆっくり口を開く。
「僕はキミの事をずっと見ていたよ今代のマスタークン。闇の書事件から今こうして会うまでずっと…」
「………」
「キミは何の為に戦っているんだい?
最初はアスカのように復讐かと思ったけど、根底にあるものは違っていた。
キミはキミの戦う理由は――」
「……僕は彼女のフェイトの笑顔の為に戦っている。そしてアナタなら僕がやろうとしている事を知っているはずだ」
「僕もキミと同じように一人の女性の為に戦った。でも彼女はお父さんをラファスに殺されて壊れてしまった。そして最後は……僕の目の前でラファスに殺された」
『……ヤマト』
「クルス、力は所詮力でしかない。それでもキミは戦うんだろ?」
「あぁ…」
クルスの言葉にヤマトは体が蒼く輝いてヤマトの背中に蒼い翼が生えてその手には双銃が握られ、ヤマトの瞳から光がなくなりクリアな状態へと変わっていく。
「いくよ今代のマスター」
こうしてフューチャーデバイスを持つ者達の戦いが始まっていく。
全てはラファスを倒すために。
世界を守る為に。
ジェイル
「ついに始まった先代マスターと今代マスターの戦い。
そして八神はやてと高町なのはは知る。
アリサ君とすずか君の今までの出来事を。
私も話さなければならないかな?
次回S.H.D.C.
第51話――
【もう一つの真実】に…
ドライブ・イグニッション!!」