まさかの再会

クルスの語った真実から少しだけ時間が過ぎて、ショウはクルスと一緒にとある場所に向かう為に準備をしていた。

先ほどまで泣いていたフェイトは泣き疲れて今は自分のベッドでぐっすりと眠っており、傍にはアルフとエリオとキャロがついている。


「それにしても先代フューチャーと会えるシステムがあったなんてな」

「正確にはあったんじゃなくて、僕が友人達に頼んで作ってもらったのさ」


そもそもフューチャーデバイスはフローラ・レン・ネメシスの三機が現在残っているだけで、デバイスとしての過去のデータは無限書庫にも残っていない。

ベルカ時代に凶王との戦いで使われた後は行方不明になったのだから。

だから技術も残っていないはずなのに、一体どうやってそんなシステムを作り出したのか?

クルスの言う友人達は一体どんな人間なんだろうか?


「ショウの疑問は最もだろうね。まぁ、とりあえず会ってみたらわかるよ。ただ……」

「んっ?」

「会っても驚かないでねショウ」

「……はっ?」


どこか濁した言い方のクルスにショウは首を傾げてしまう。

本当に大丈夫なのか?とショウは不安になるが、とりあえず向かうしかないためクルスが転移魔法を使おうとした瞬間、


「クルス君!」

「私らもついてくで!」

「はっ!?何をッ!?」


二人だけの転移のはずがなのはとはやての二人が勢いよくやって来ると、驚くクルスを尻目に転移は発動して四人が転移していく。

この時クルスは思ってしまう。

どうしてこうなってしまうのか……と。





~研究所~

「全く、急に現れるなんてね」

「にゃははは」

「ごめんな〜クルス君」


とりあえず研究所についたものの勝手について来た二人にクルスは呆れながらため息を吐く。

本当ならショウと二人で会うつもりだった。

ショウはまだフューチャーの事があるから黙ってもらうつもりだが、なのはとはやては勝手について来たためどう説明すればいいか。


(……あの二人の事は彼女達に任せるしかないか。それに……)


ここにフェイトがいなくてよかった。

フェイトがもしアイツと会えばただ事ではなくなってしまう。


「今さらアースラに戻す訳にはいかないか。とりあえず三人とも僕についてきてくれ」


ショウがなのはとはやての二人に苦笑しつつ、なのはとはやては元気よく返事をしながらクルスのあとをついていく。

手慣れた手つきでドアを開け、ゆっくりと研究所の中を進むクルスにはやては口を開く。


「ここにいる人ってどんな人なん?」

「ショウにも言ったが、会えばわかるさ。ただその人に会う前に三人に守ってもらいたい約束がある」

「「「約束?」」」


最後の扉に手を当ててその扉を開ける前にクルスはゆっくり振り返り三人を真剣な表情で見つめる。

これだけは守ってもらわなければならない。

今はまだアイツの存在を管理局に知られる訳にはいかない。

今回のフューチャーの事もあるが……

アイツにはまだやってもらわなければならない事があるのだから。

その為にも――


「今から会う人間の事を今回だけ黙認してもらうぞ」

「クルス君、それって!」


はやてはその言葉の意味がわかったようで、微かに驚きながらクルスに目を向ける。

そういう風に言うって事はこの先にいる人間は、普通の人やなくて犯罪者寄りの人間ってこと?

しかも私らに黙認してほしいって頼むって事は次元犯罪者の可能性が高い。


「………今捕まえたら困るんやな?」

「あぁ。アイツが捕まれば先代フューチャーに会う事も出来なくなるうえに、ラファスとの戦いにも勝てなくなる」


クルス君がここまで言うって事はこの先にいる人はかなりの力があるって事やな。

ショウ君もなのはちゃんも私に任せるって顔しとるし仕方ないか。


「ほんまクルス君には困ったものやなぁ」

「はやて…」

「今回だけやで。ほんまならリンディさんやクロノ君に話さなあかんのに」

「ありがとうはやて」


えぇよと笑うはやてにクルスは感謝しながら最後の扉を開ける。

そしてその扉が開かれて四人の前に立っていたのは、


「遅いわよクルス!」

「本当だよクルス君。私達かなり待ってたんだよ」

「すまないな。ここに来るまでに時間がかかった。けど……」


その部屋にいた二人の女性にショウとなのはとはやては目を丸くする。

何故ならそこにいた二人の女性は小中と同じ学校に通って仲良く遊んでいた二人。

高校は違う進路となってなかなか会えなくなって連絡もほとんどつかなかった二人。

なのはにとって最初にできた大切な友達。


「アリサちゃん……すずかちゃん……?」

「あら?なのはにはやてもいるじゃない。話じゃショウだけって言ってなかったかしら?」

「なのはとはやてに関してはイレギュラーだ」

「でも大丈夫なのクルス君?なのはちゃん達とドクターを会わせて」

「事前にアイツの事を黙認するように頼んだから問題ない。それでアイツは?」


驚く三人を放置したまま話すアリサとすずかとクルスの三人。

当たり前のように話す三人にまず我に返ったなのはが詰め寄りクルスに問い掛けた。


「どうしてここにアリサちゃん達がここにいるの!?それに三人は久しぶりの再会のはずだよね!?なのにどうしてそんなに自然に話せてるの!?」


なのはの驚きは最もである。

何せクルスとアリサとすずかが最後に会ったのはなのは達の記憶通りなら闇の書事件だったはずだ。

それから数年が過ぎてアリサとすずかは街から離れてクルスが二人に会うなど不可能なはず。

なのに何故三人は自然に話せるのか?

その理由は―――


「落ち着きなさいなのは。訳なら後で話してあげるから」

「アリサちゃん…」

「今は二人のデバイスを進化させる必要があるから、話ならその時にお茶でもしながらしよっか」

「すずかちゃん…」


変わらない二人の雰囲気になのはは小さく頷く。

久しぶりの再会なのに素直に喜べないの。

クルス君がまだ話していない事があったなんて。

これは落ち着いたらゆっくりお話ししないと。

アリサとすずかとの再会で混乱している場所に、これまた一人の男が白衣のポケットに手を突っ込んで不敵に笑いながら現れた。


「やぁ、我が友クルス。こうして会えた事に私は感動しているよ。何せロンド・ラグナで死んだのかと思ったのだから」


その男の登場にはやては吹き出し目を見開く。

何故ならこの場に現れた男はかの次元犯罪者であり、自分の親友でもあるフェイト・T・ハラオウンが長年追っていた男。


「ジェイル・スカリエッティやないか!?何でアリサちゃんもすずかちゃんもこの男とおるんや!?この男は……」

「はやて」

「………ッ!!」

「二人ともジェイルの事は知っている。フェイトが長年追っている事も。だけど今は何も言わないでくれ」


そう約束したはずだよ、っと口にしないもののクルスの言葉にはやては唇をキュッと噛み締める。

確かに事前に約束はした。

しかしこの展開はさすがに予想外すぎるわ。

アリサちゃんとすずかちゃんがいる事も。

クルス君が言うてた協力者がジェイル・スカリエッティなのも。

これを私らはリンディさんやクロノ君に秘密にしとかなあかんのか。

それにフェイトちゃんにも。


「おやおや。エース・オブ・エースの高町なのはに夜天の書の主八神はやてまで一緒とはね。キミの話ではショウ・ヤナギだけではなかったのかねクルス?」


我が友発言に親しい者に対する口調。

スカリエッティとクルスの関係がただの協力者じゃない事にショウ達はすぐに気づいた。

だが何も言えなかった。

クルスと約束してしまったから。


「二人の事は僕も予想外だったからな。それよりも……」

「わかっているよ。今から準備を始めていくところさ」


スカリエッティは視線をアリサとすずかの二人に向けると、二人は小さく頷いて機械を操作していき準備を始めていく。


「さて私に聞きたいことがあるようだね」

「質問してもえぇの?」

「構わないさ。それに私とクルスの関係が気になるのだろ?それだけじゃない。アリサ君やすずか君が何故ここにいるのか?彼女達が何故私に協力しているのか?他にも色々とね…」


構わないだろ?と視線をクルスに向けるジェイルにクルスはため息を吐く。

確かに何も質問させないままここにいてもなのはやはやては納得しないだろ。

それにここでの話を秘密にしてくれるなら別に構わないしね。


「ドクター!準備できたわよ」

「こっちもシステムに問題なし。いつでもオッケーです」

「感謝するよ二人とも。じゃあショウ・ヤナギにクルス」


はやてとなのはの質問よりも先に、機械の準備が整ったようでアリサとすずかは機械から離れてジェイルの横に並ぶ。

二つの開いたカプセルにショウとクルスが入りフローラとレン専用のカプセルに二人はそれぞれ入れると最後にヘッドギアをつける。


「さて始めようか。二人とも準備はいいかい?」

「あっ、あぁ…」

「ジェイル、僕とショウが先代に会っている間に話は終わらせておくんだな」

「わかってるよクルス」


ショウは何がなんだかわからないまま戸惑うばかりで、クルスははやてとなのはの対応をジェイルに任せて目を閉じた。

二人の状態をモニターで確認しながらジェイルはボタンを押すと、二人の意識は徐々にデバイスの深層世界にダイブしていった。

その様子を目にしジェイルはふむふむと確認して、


「どうやら成功のようだ。何事もなくダイブしたか」


私の手助けはここまでだよ二人とも。

あとはキミ達次第だよ今代のフューチャーデバイスのマスター達よ。

先代マスターに認めてもらわないと私達の努力が水の泡になってしまう。

それだけは勘弁だよ。


「じゃあ話をしていこうか。……っとその前に」

「はい、ドクター!」


すずかが手をパチンっ!と叩くと地面からテーブルと椅子が出現して、ジェイルとアリサとすずかは椅子に座り、なのはとはやては驚きながらも椅子に座る。


「キミ達二人の質問は答えられる範囲で答えよう。まぁ、キミ達が聞きたいのは主にアリサ君とすずか君の事だと思うが」


「そやな。なら早速やけど二人ともどうしてここにいるんや?それに何でスカリエッティなんかに協力を」


はやての問いかけにアリサとすずかの二人は、お互いの顔を見合わせるとアリサが答えるように小さく頷く。


「それに答える前になのはとはやてに聞くわ」

「「……?」」

「私達が中学を卒業してから少したって研究所の爆発事件が起きたの覚えてる?」
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